な ん や か ん や あ っ て 。
俺たちは勝利した。
正確に言うと途中までは俺たち皆で戦って、最後の方は空斗先輩や彼の物語で活躍していた人物たちによって、今回の騒動は幕引きとなった。
敵は強大というか大量で、めっちゃ大量生産された能力者のホムンクルスたちが敵だった。
そして親玉は何かめっちゃ強くて能力も奪えるやつで、まさにラスボスに相応しい敵で。
シーさんや寝子ちゃんのロボットことヴァルゴが大暴れして戦況を互角にはしていたものの、途中で黒幕が特殊な結界を発動。
空斗先輩とハーレムメンバーの少女たちのみを隔離し、俺たちの手が届かない場所で彼らとの最終決戦を開始した。
結果的には逆境で能力を覚醒させた先輩が黒幕と互角になり、三人のヒロインたちと力を合わせた合体技でトドメ──そして決着という流れだった。
あれカッコよかったな、最後の一撃。
『僕たちは生きるッ! お前を超えて──その先にある未来を掴むッ!!』
眦を決した空斗先輩の大迫力の斬撃をくらって、黒幕は後悔と怨嗟を口にしながら消滅し、決着がついたのだった。
うん、空斗先輩はめちゃくちゃ王道な主人公をしてたし、ハーレムメンバーの娘たちもしっかりヒロインをしていた。結界の外にいて、そもそもこの戦いにおいて途中参加だった俺なんか、言葉通りの意味で蚊帳の外だったワケだ。誰がヒロインかなんて一目で解るね。
そんで先輩たちは敵を倒して仲間を取り戻し、僅かに残った大人たちが組織を再興させることを決め……ハッピーエンド、という感じだな。いやぁよかったよかった。
これにて一件
◆
てなわけで。
空斗先輩にはまたいつも通りの日常が戻ってきた。今日も今日とて、俺と一緒にコンビニでアルバイト中だ。
変わった事といえば、以前とは違って戦いに追われることはほとんどなくなった、という部分か。
黒幕の暗躍によって一部を除いた世界中の能力者たちは能力を失ったらしく、また悪の能力者軍団が潰えたことで能力犯罪もほとんど無くなったらしい。
再建中の彼の組織もまだ機能復旧を急いでいる段階で、今回の一件で英雄のような扱いになった空斗先輩を、以前のように戦いへ駆り立てるようなことはしていないとのことだ。
つまり、先輩から見れば物語は既にエンディングを迎えている。
俺と働いているこの一面も、エンディングで一瞬映る本編後の一枚絵程度の些細なモノなんだろう。
ていうかこんな場所で働いてないで、ハッピーエンドを迎えたヒロインたちともっとイチャコラしなさいって話だ。
「あの、空斗先輩」
「んっ? どしたのかなめちゃん」
お客さんが少ない夜の時間帯。俺はレジの隣にあるホットスナック類を片付けながら、レジ前のお弁当コーナーの棚を整理している彼に声をかけた。
新人の小春ちゃんはもう帰ったし、店内には他に誰もいない。彼と話すなら今がチャンスだ。
「聞きたいことがあって……いいです?」
「いいよ全然。なんだい」
よーし、聞くぞ。何より気になってたことだからな。
ハーレム主人公のその後で一番気になることなんか一つだ。
「すいません、下世話な話になるんですけど……ぶっちゃけ、
「うぇっ!?」
俺に質問された瞬間、狼狽しておにぎりを落としかけた先輩。
なんとかキャッチして棚に戻すと、苦笑いをしながらの返事。
「そ、そんなこと気になってたの……?」
そりゃあそうよ。他に何があるってんでい。
「ほら先輩、最後の戦いのときはあの人たちと何かすっごい必殺技使ってたじゃないですか」
「ま、まぁ……」
「アレって相当な絆がないと出来ない芸当だと思うんです。ていうかめっちゃラブラブでしたよね。戦い終わった後のハグとかもうキスしそうな勢いでしたし」
「いやっ、えと、あれは……」
「あの人たち絶対先輩のこと……ていうか先輩もあの人たちのこと好きですよね。どうなんですか。もう誰かとお付き合いしちゃってるんですか。それとも三人一緒に……?」
「ちょっ! それはないから! そんなことしないからッ!」
別にいいと思うんだけどね。ほとんど世界を救ったようなもんだし、ヒロインの三人も先輩のこと大好きだろうし、別に三人と付き合っちゃっても許されるくらいでしょ。英雄だぞ英雄。
| なんだ、どうしたんだ急に……!? 何で急にそんなこと聞いてくるんだ……! |
すいませんね、気になっちゃって。
やっぱり今までを見てきた俺からするとですね、どのヒロインのルートに行ったかスゲェ気になっちまうワケなんですよ。ゲヘヘ。
「話しちゃいましょうよせんぱ~い。私と先輩の仲じゃないですか~」
「ほ、ホントに何もないから……」
むぅ、強情だな。
なにもないわけないでしょ。今まで一緒に死線を潜り抜けたり、助けたり助けられたりした間柄だぞ。それにヒロインたちの態度を見てれば先輩に惚れ込んでるのは一目瞭然だし、先輩だってかわいい女の子たちに囲まれてそういった好意を向けられてたら
それともなんだ、アレか。本編後の続編とか劇場版で結ばれるタイプのやつか。あえて最終回でも関係をハッキリさせないハーレムものあるあるなのか!
「先輩って罪な男ですね……」
「……キミには言われたくないな」
どういう意味だコラ。俺はたぶらかしてる相手なんていねぇぞ。一応言っとくけどあのクレイジーサイコレズは例外中の例外だからな。アレただのストーカーだから。
「……いや、まぁ、確かに僕は優柔不断だよ」
「あれ、認めるんですか。それならなおさら早めにハッキリしないと、あの人たちでも流石に怒りますよ? みんな絶賛恋する乙女なんですから」
「そう……だね」
| ──でも。 |
ん?
| まだ、自分の気持ちをハッキリと整理できていない。大切な仲間へ向ける好きという感情はあるけど……それとは違う |
ふむ、なるほど。確かに仲間と異性への好きは違うし、あの三人の中から一人を選ぶってなると、確かに優柔不断になっちゃってもしょうがない部分はあるな。
三人とも美少女だし、それぞれが相手に負けず劣らず先輩のことが好きだし。そう易々と決められるものでもないか。
| すきな、ひとは…… |
誰なんだい! もう好奇心に負けてめっちゃ吹き出し読んじゃってるよ! 気になってしょうがないぜ!
| ──── |
おっ、吹き出しが──
「あのー、すいません。45番ひとつ」
「っ!? ぁ、は、はい! 45番……」
いつの間にかレジに来ていたおじさんが煙草を注文してきた。
あっ……内容確認するまえに吹き出し消えちゃった。残念。
とりあえず指定のタバコと残りの商品を会計して、お客さんが退店したのを見計らってから再び先輩の方を向いたけど、そこに吹き出しはほとんど残されていなかった。
レジに集中して吹き出しを観測していなかったからか……いや、結果的にはこれでよかったのかな。
「かなめちゃん。ちょっと外の掃除してくるね」
「あ、はい。了解です」
好奇心に負けていろいろ無神経なことをしすぎた。しかも露骨に心の中まで読もうとして……ああぁー、ダメだ。俺はわるいヤツだ。こういう悪い部分も是正していかないと。
もうこれ以上彼のハーレムヒロイン事情について詮索するのはやめておこう。どう考えても余計なお世話ってやつだよな。ようやく冷静になれた。
「……気をつけよ」
先輩を怒らせるのは本意じゃないし、馴れ馴れしく余計なことをしちゃダメだ。
今まで通りの丁度良い距離感を保っていこう。うん、そうしよう。
※このあと談笑しながら一緒に帰った。