主人公が多すぎる   作:バリ茶

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また未来編の最終回が次回に繰り越しになりましたが今度こそ次回でラストです 本当です 本当日本刀



コッコのパパさん

 

 いずれ未来を支配するであろう魔王との最終決戦。

 そこで二人の主人公、絶望の未来で生まれた光と影が一つになって誕生した最強ロボット『ヴァルゴ・エックス』。

 

 驚異の力を発揮したそれは、膠着状態にあった戦況を瞬く間に一変させた。

 詳細は省くが俺たちは一気に優勢となり、残るはラスボスの男だけになったのだが、そこでヤツは最後の悪足掻きというかラスボスにありがちな形態変化みたいな感じで、ともかく巨大化してゴツくなった。

 その後はなんやかんやあってワチャワチャして、ヴァルゴXとラスボスが大激突。

 

 結果的には勝利した──のだが、俺にとってはどうしても一つだけ、見逃せない場面が存在していた。

 

 それはヴァルゴエックスとラスボスが、ビーム攻撃の鍔迫り合いをしていた時のことだ。

 どうしても相手の威力の方が高くて押し負けそうになったそのとき、俺以外の主人公(みんな)が上空に手をかざして、未来の主人公二人が乗っているロボットに主人公パワーを注いでいた。

 俺は特別なパワーなんか持っていないので応援に徹していたのだが、他のみんなはその限りじゃないため持ちうる最大のエネルギーをコッコとカゲくんに送っていて。

 

 それでもビーム相撲に負けそうになってしまったその瞬間、光子はとあることを叫んだ。

 

 

「パパぁ!! もう少し──あと少しだけっ、力を貸してぇッ!!!」

 

 

「「「──ッ!!」」」

 

 

 俺の娘が張り裂けんばかりの声で助けを願ったそのとき、なんと()()()()()()()()()()()()()()()()()が決死の表情に切り替わり、限界を超えてロボットに送るパワーを更に強めたのだ。

 

 そう、()()だ。弥生くん以外の全員。

 浩太くんも空斗先輩もシーさんも、寝子ちゃんや果ては皐月かなめまで。

 光子の『パパ、力を貸して』の一言に奮起し、彼ら彼女らが更に高めたパワーのおかげでエックスはパワーアップし、結果としてラスボスを倒して破滅の未来を救った。

 

 

「……うん」

 

 家に帰って風呂に入り、ソファでウトウトしているトマルに膝枕して耳かきをしながら小さく呟く。

 

 

 ……いやいやいや、おかしいでしょ。え、どういうこと?

 確かに光子から父親が誰なのかは聞いてなかったよ。でも仲間のほぼ全員から光子の父親もとい俺の旦那の可能性が出てくるのはおかしいでしょ。

 

「ワケわかんねぇ……」

 

 寝落ちしたトマルの頭を撫でながら項垂れる。

 他のみんなは自分の家に帰って、光子と影男くんは戦闘の疲れがドッと出てきたのかウチの寝室で爆睡しているため、寝てる光子に親子事情を聞くことは出来ないし、他のみんなからも光子から何か聞かされたのかを問い詰めることも当然叶わない。

 ゆえにこうして孤独に頭を抱えているわけだ。マジで悩ましい。

 

 ていうか”パパ”と呼ばれて味方の女の子たちまで反応したの本当になに? キミたちどちらかと言えば確実にママでしょ。

 百歩……いや千歩くらい譲って浩太くんや空斗先輩との可能性があったとしよう。男の子と恋に発展すること自体が、自分の精神性別上まっっったく想像できないことは一旦置いといてね。

 でも肉体的に同性の女の子たちとか、ましてや種族すら違うシーさんまで『パパ』に反応したのバグじゃない? 

 なんなの、未来だと女の子が女の子に種を仕込む技術とかあるのかよ。……シーさんに関しては海の奇跡で孕んだとか言われてもおかしくないから深くは考えないけどさ。

 

「うぅ~……っ!」

 

 なんか光子の存在で自然と自分が母親であること受け入れてたけど、いま冷静になって考えてみればおかしいことだぞ。

 中身が男の俺がどういう心境に陥ったら妊娠したいなんて考えるんだ。そりゃ進くんと恋人同士になってる別世界も確かにありはしたけども、それでもこことは違う世界の話だ。

 

 物理的にも精神的にも一番距離が近い相手は親友の弥生くんだけど、彼はパパという言葉には反応しなかったし、なにより──

 

「少なくとも、いまの俺はメス堕ちしてねぇしな……」

 

 女として男の子に惹かれてることは現状まったくないし、身内の女の子たちも可愛いとは思うが別に恋愛感情を抱いてるわけじゃない。

 ……いやでも強く迫られたらそのまま流されちゃいそうな雰囲気は感じるな。特に寝子ちゃんとかユリ先輩に身体で誘惑されたら負けそう。皐月は無い。

 男の子たちもみんな俺より強いし……考えたくはないけど、力づくで俺に種を仕込むことは決して難しくはないだろう。

 

 光子のモノローグの内容からしても、彼女を育てていたのは主に俺とトマルだ。父親がずっと家にいなかったのなら、さっき考えた無理やりおセッセ──からの出産で別居なり夜逃げなりで一応説明はつく。絶対あり得ない筈だけどな。

 仲間はみんな誠実で良い子たちばかりだし、間違っても強姦するような輩は皐月以外いない。……皐月なのかな。でもアイツの手綱は浩太くんがしっかり握ってるし……うーん。

 

「はぁ~……あのとき吹き出しを読めてればなぁ」

 

 戦闘中にパワーを送っていたあの時は、ビームとビームのぶつかり合いによって発生した暴風で、主人公たちの吹き出しはすべて吹き飛ばされてしまっていた。そのせいで誰一人心境を読み取ることができず、こうして真意を知ることができず苦悩しているわけなのだ。

 

 

「……まぁ、いいか。難しいことは明日考えよう」

 

 気持ちを切り替え、すっかり眠っているトマルを抱っこして自室のベッドへ移動する。

 明日一日でロボットのメンテと休養を終えたのち、影男くんと光子はすぐ未来へ帰還することになっている。そういうわけで光子に何かを聞くにしてもまだ時間はあるんだ。一人で考えててもしょうがない。

 

 ちなみに影男くんと光子が帰るべき未来のことだが、どうやら良い感じに歴史改変されたらしい。

 魔王の支配やウイルスのことは最初から無くなり、魔王に操られてるわけではない普通の時空獣を倒すロボットのパイロットとして、二人の立場は修正されているとのことだ。

 戦力不足という事もなく、時空獣も厄介ではあるが対処可能な害獣程度の、至って平和な世界なんだと。

 

「トマル……」

 

 すべて未来から通信を入れてきた”十九年後のトマル”から聞いたことだ。しっかりと喋れるようになっていて、肉体もちゃんと成長していた。大人の女って感じだったな。

 何でトマルや過去に来た二人の記憶は改変されてないのか気になったが、ヴァルゴのパイロットには歴史改変を受け付けない力が与えられるから、とのことだった。

 そう、未来で寝子ちゃんが動けなくなったあとは、影男くんと光子が成長するまでトマルがロボを使って世界を守っていたのだ。とてもえらい……。直接撫でてやれない分めちゃめちゃ褒めてあげた。

 

「いい子に育つぞぉ~トマル~っ」

「……んぅ」

 

 まだ幼い彼女の頭をそっと撫でつつ俺もベッドに入り込む。

 如月家がすっかり世界を守る一族になっちまったことに苦笑しつつ、俺は未来の旦那(嫁?)のことを脳の片隅に追いやって、現実逃避気味に寝るのであった。

 

 ちなみに欲を言えば光子とも一緒に寝たかったけど、アイツ眠って意識ないまま影男くんを抱きしめてイチャイチャしてやがったので自重しました。娘の成長が嬉しいようで悲しい……。

 

 

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