主人公が多すぎる   作:バリ茶

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前後編です!


ループくんと復讐くん 前編

 

 今日は休日。といっても遊びに行ったり家でゴロゴロするわけではなく、今日の俺にはちゃんとした用事がある。

 訪れたのはとある共同墓地。本日は五年前におっ死んだおじいちゃんのお墓参りだ。ちなみに俺一人です。主人公でもなんでもないけど何故かウチの両親は海外出張中なので。

 

「……んっ?」

 

 墓洗いの道具とお花を持って共同墓地に入ると、足元に何かを見つけた。

 

 

──こうして妹の墓参りに来るのは、これで何度目だろうか

 

 

 うわっ吹き出しだ。

 先客に主人公の誰かがいるのかな?

 

(……あっ、ループ主人公くんだ。久しぶりに見たな)

 

 お墓の前にしゃがみながら手を合わせている人物には見覚えがあった。

 あの男の子は以前街で見かけた主人公だ。吹き出しの内容からして、おそらくは時間を繰り返して何度か俺と接触したであろう人物。

 

 ……あと()()()を”女”にしやがってくれた男でもある。

 何をどうしたら俺から彼に対してキスを仕掛けることになるのかは想像できないけど、確かに『そういう世界』もあったらしい。

 なにはともあれ、関わる際は気をつけた方がいい人物であることは間違いない。

 

あの組織に誘拐された妹を助けに向かって、力及ばず俺は目の前であの子を失った。

 

絶望した。そしてどうしても妹を助けたいと願ったが故に手に入れたのが、このタイムリープの能力だった。

 

だが、無情にもこの能力ではどう足掻いても、妹が死んだ翌日の朝までしか戻れなかった。やり直しの力を手に入れた俺にできるのは、組織が生み出した妹のクローンであるジスタという少女を助けだすことだけだった。

 

 ……予想はしてたけどやっぱ重いな。この世界ってちょっと主人公たちに厳しくない?

 

もう一人の自分であるジスタを救ってほしい──それが妹の残した最後の願い。だから俺は抗い、組織から彼女を奪還した。……いや、とある少女が俺を支えてくれたからこそ()()()()()()()

 

 はぇ~、なるほど。

 噴水のところでループくんと一緒にいたあのロリっ娘、妹さんのクローンだったのか。……二股とか騒いでた俺めっちゃバカじゃん。はずかし……。

 

 にしても吹き出しが多すぎるな。パッと見た感じ墓石が無限増殖してる感じだ。というか俺目線だとループ君が左右と後ろを吹き出しに囲まれていて、前方には墓石があるから前後左右逃げ場なしの四面楚歌になってる。

 まぁ俺が触んない限り吹き出しはすぐに消えるんだけども。

 

妹はジスタを『家族として迎え入れてほしい』と言った。ジスタは妹をおねーちゃんって呼んでたし、俺の事もお兄と呼んでいるから……また妹ができたって感じだ。

 

──だが、あの子の代わりはいない。ジスタはジスタだ。俺と兄妹だったあの子じゃあない。

 

 吹き出しがめっちゃ積み上がってる。

 ループくん一人でテトリスしてる……。

 

それはあの少女にも言えることだ。

 

 

『こんな(おれ)じゃなくて、もっと相応しい人を選んでほしい』と、あの子はそう言ったけど……かなめの、代わりなんて──

 

 

 あっ、こっち気がついた。

 ヤバくない? 独白の内容があまりにもアレだったし、ループくん視点で見たら俺の今の登場の仕方めっちゃヒロイン指数高いぞ。たぶん。

 

 噂をすればってやつじゃん。俺おじいちゃんに会いに来たのであってキミに会いにきたワケじゃないんだけども。

 ……まぁいっか。吹き出しの内容からしてあの子本編終了後っぽいし、関わっても変な事には巻き込まれないでしょ。

 

 ループくんに向かって一度お辞儀をしてから、俺は足を進めた。偶然にもおじいちゃんのお墓は、彼の妹さんのお隣だ。

 

「こんにちは。お邪魔します」

「……かな──如月、さん」

「かなめでいいですよ。そっちの方が呼びやすいんでしょう?」

「えっ」

 

 余計に気を遣われるのも本意ではない……というのもあるけど、さっきの独白を聞いてから、少しだけ同情してしまっている俺がいるのも事実だ。

 妹さんを失っただけでも辛いだろうに、おそらくは唯一の味方であったハズの俺にすら忘れられて、自ら遠慮をして距離を取る──なんて、酷な話じゃないか。

 

「いや、でも……」

「その代わり、あなたの名前も教えてください」

「……。……うん、わかった」

 

 名前呼びくらい構わない。俺は彼の知っている俺ではないけれど、多少の気休めになってくれれば……と思ってるけど、多分余計なお世話なんだろうな。

 俺は善人ぶりたいだけなのかもしれない。つくづく厄介な偽善者だと思う。

 

 ……いかん、思考が暗くなってきた。

 らしくない! わー! うわー! かなめさんは明るいッ! やる気げんき如月ッ!

 

「オレは神無月(すすむ)。学園の一年生だから敬語はいいよ」

 

 タメだったらしい。

 

「じゃあ……進くん、で」

「っ──! ……あぁ、うん。それで頼む、かなめ」

 

 一瞬驚いたあと、彼は郷愁に浸るかのような優しい笑みを浮かべた。きっと前の世界の俺は、彼のことを進くんと呼んでいたのだろう。鈍感じゃないのでね。気づきますよええ。

 

「進くん。このあと、ヒマ?」

「えっ。まぁ……予定はないけど」

「それならお昼一緒に食べない?」

「えっ? ……え? えぇっ!?」

 

 ビックリする進くん。別にデートではないぞ。俺はきみの女ではないからな! 一応言っとくぞ!

 

 

 ……と、まぁなんやかんやあってお墓参りが終わったあと、俺は彼と一緒にファミレスへ寄ったのだった。

 あとその店で弥生くんがアルバイトしてた。

 こんにちは!

 

 




後編に続きます
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