HUGっと!プリキュア ROAD TO MAESTRO 作:シロX
ではスタート!
「あちゃ〜」
拓人は、目の前で降り続ける雨に困っていた
傘を忘れてしまったのだ。此処はラヴェニール学園。走って帰るにしても家だと少し遠い
「やっぱりえみるちゃん達と帰れば良かったな」
図書室で借りていた本がもう少しで読み終わりそうだったので、放課後を使って読んでいたのだ。しかしそれが招いた災難
「走って帰るしか……?」
鞄を傘代わりにして帰ろうとしたのだが、不意に目の前から来る人に目が行ってしまい踏み出す足を止めた
ロングコートにシルクハットを被った傘をさした初老だ
拓人は誰かの親か祖父かと思い、止めた足を動かそうとすると影が差し掛かる
「え?」
「そのままだと風邪を引いてしまうよ?」
初老は拓人に傘を差し出すのだ
「ですが…」
「人の親切は素直に受け取るものだ」
「そういう意味では無く。誰かを迎えに来たのでは?それにその傘を貰ったら貴方が風邪を引きますよ」
初老は目をパチクリさせた後、何かを懐かしむ様に優しく微笑んだ
「君はいつになっても優しいね」
「あの…誰かと勘違いしていませんか?」
初老の言葉に違和感を感じて、誰かと見間違えるだろうと思っていたのだが
「間違いなんて有り得ない。君はあのマエストロの音宮拓人君だろう?」
「え、は、はぁ…。でもマエストロなんて呼ばれる資格も無いですけどね」
昔の事を掘り返されて苦笑いしか浮かばない
「相合い傘しながら少しお話しを良いかね?」
「良いんですか?」
「私の方こそ」
拓人はその初老と傘を共有しながら適当に道なりに歩き進む
「拓人君の奏でる音楽はどれも心に響いて心地良かったよ。私の娘も分からないなりに聴いていたよ。何か思うところがあったんだろう」
「そんな大層な事でも…」
「いいや。君は私達家族を救っただけじゃ無く、娘の心の支えになってくれていたんだよ」
「お、オーバーですよ!」
「だけど君は突然私達の目の前から消えた。とても残念だったよ」
拓人は歩みを止めてしまった
理由までは知らないが、そこまで自分を思ってくれてる人の期待を裏切ったのだ
しかし、それと同時にある疑問も浮かび上がる
「俺って…俺って必要な存在だったのですかね?」
「少なくとも私達家族はそう思ってる。今も」
そんな事を言われたのは初めてだった。
嬉しい気持ちもあったが、それに比例してその気持ちに応えられなかった自分に対しての怒りも湧いて来る
「…何か好きだった曲はありますか?もしくは思い出のある曲でも。貴方達家族の為に弾きますよ」
罪悪感を感じて自分からそう言った。普段なら絶対に言わないのだが、この家族だけはと罪滅ぼしのつもりで言葉に出たのだ
「そうかい?曲は任せるとして…そうだなぁ…」
初老は顎に手を当てて考えた。そして拓人を一度見た
「楽器はハーモニカで」
「ハーモニカ?あ、良いですよ」
一瞬、何故自分がハーモニカを持ってる事を知っているのかと思ったが、普段から持ち歩いているのだった
腰から下げてるのに気付いたのだろうと自分で勝手に納得した
「
「え、毎日?」
「どうやら雨は上がったみたいだ。見てご覧なさい」
拓人は空を見上げると、確かに雨雲無く太陽が見えて晴れていた
「あ、そうだ。さっきのはどういう──」
話を逸らされてしまって聞こうと初老の方に目を移すも、いつの間にか影も形も居なくなっていた
「居ない」
周りを見渡してもやっぱり居ない
「不思議な人だ」
拓人は、道端にある水溜りを覗き込む
「もう一度…もう一度音楽始めようかな…?」
水面に映った自分を見ながら、ハーモニカに口を当てようとする時地響きを感じた
「あれは!」
遠くからでもハッキリと見える。プリキュアに変身して戦う友達の姿が
「急いで行かなくちゃ!」
////////
「なっ!?」
オシマイダーが現れた場所に着いたのだが、見渡せばエール達皆んなが倒れていた
「猛オシマイダー!!」
そして目の前にはいつもと様子の違うオシマイダー
「拓人気を付けて下さい…!そのオシマイダーはパワーアップしています!」
「分かった!──デュアルクラリネット!」
武器を召喚して攻撃しようと脚に力を込めるのだが
「君も来たんだ」
「え…な、何で貴方が?」
オシマイダーの隣には、先程まで話し合っていた初老の姿があった
「自己紹介がまだだったね。私は『ドクター・トラウム』。宜しくね」
「さっきまであんなに楽しくお話ししてた人が何で!?」
「何でだろうねぇ〜?」
「ちゃんと答えて下さい!!」
「それは…おや?遅いぞ社長」
トラウムの視線が拓人より後ろへと向けられた
振り返れば1人の男性が本を持って立っていた
「何でこんな所に人が?」
「違う拓人!ソイツはクライアス社の社長『ジョージ・クライ』や!」
クライアス社の社長といえば敵のボスだ
ジョージの持つ本が光ると、エール達が持っていたミライクリスタルにプリハート全てを奪われてしまった
「この時を待っていた」
変身アイテムを全て奪われて皆んなの変身が解けてしまった
「君達がミライクリスタルを生み出し、アスパワワを集めてくれると信じていたよ」
「返して!」
拓人はデュアルクラリネットを投げるも、ジョージの目の前で静止し灰となって崩れ落ちた
「ドクター!」
トラウムは何かの装置をジョージに渡した
「明日への希望よ消えろ!」
その装置で、ミライクリスタルとプリハートの輝きを無くしてしまった
「想定通りだ。大きな希望程敗れた時に発する負の力が凄まじい」
「どうして?夢があるって…皆んなが笑顔になる国を造るって、話して…」
「新たな苦しみが無ければ、皆笑顔で居られるだろう?だから時間を止める。共に終わらぬ永遠を!」
発した黒いオーラが全ての時間を止めてしまった
人の声、小鳥の囀り、靡く風の音も何もかも止められてしまった
世界は静かなモノクロの世界へと変わってしまった
「もう何も生まれない。永遠の幸せの始まりだ」
「は〜ぎゅ〜!は〜ぎゅ〜!」
「はくだん!」
これから新たな世界の始まりを予感していたのだが、予想外な事に拓人とはぐたんの2人だけは動けていた
「時が止まった中で動けるとは?…む?」
ジョージは拓人に何か異変を感じた。目を凝らして見ると、誰かに背中から抱かれている様に見えた。
その事に拓人は気付いていない
「君は面白い。しかし」
地面から出て来た鎖に拓人は縛られてしまう
「君の事は後でじっくりと相手をしよう。今は」
ジョージははぐたんを優しく引き寄せる
「おいで」
「やめて…」
「ほまえ〜!しゃあや〜!えみゆ〜!る〜!る〜!ま〜ま〜!」
「やめてって…」
「たあ〜と〜!」
「やめてって言ってるだろ!!」
ジョージの手がはぐたんに触れようとする直前で、拓人の胸の内から小さい緑色の光と膨大なアスパワワが溢れ出した
「これは…?」
拓人は鎖を引き千切り、一瞬でジョージの前まで跳躍してはぐたんを抱き抱えて取り返した
そして不思議な事に止まった時間が動き始め、それぞれのミライクリスタルとプリハートが持ち主の元へと戻って行く
そしてはな達は再度プリキュアへと変身したのだ
「はぐたん!拓人さんありがとうございます!」
エールははぐたんを抱き締めて安堵した
「本当に君は…いや、君も面白い」
ジョージは拓人の瞳の中の光を見た
「どうやら
けれど拓人は何を言っているのかさっぱりだった
「何となくだけど、何故君が止まった時の中で動けたかも予想はついた。けれど、それに君自身が気付いていない」
「気付いていない?」
「ドクター後は任せるよ」
「待って!」
「また会えるよ」
エールの声は届かず、その場をトラウムに任せて何処へと消えて行った
「さてと、行け!猛オシマイダー!」
進化した猛オシマイダーが突撃して来たが、アンジュとエトワールの2人が牽制を混じえつつ一瞬だけ動きを止めた
そして今度はエール、マシェリ、アムールの3人での同時攻撃
「猛オシ!?」
堪らず地面へと倒れた
「猛オシマイダー!!」
立ち上がり雄叫びを上げて襲い掛かって来る
「ミライクリスタル来て!」
拓人の元に、ミライクリスタル・ローズ、ネイビー、オレンジ、ルージュ、バイオレットが集まる
そしてそれに合わせて、それぞれの武器を展開してミライクリスタルをセットした
「行け!」
五つの楽器から放たれる技を直撃し、猛オシマイダーの身に纏っていた鎧を全て打ち砕いた
「マシェリ!アムール!頼んだよ!」
「「はい!」」
ミライクリスタル・ルージュとバイオレットを受け取る
「「ツインラブギター!」」
「「ミライクリスタル!」」
「Are you ready?」
「行くのです!」
「「届け!わたし達の愛の歌!」」
「心のトゲトゲ」
「ズッキュン打ち抜く!」
「「ツインラブ・ロックビート!」」
「モウヤメサセテモライマ〜ス」
「愛してる♡」
「Thank you!」
「年寄りを労る気持ちは無いんかね!?」
猛オシマイダーが浄化されてトラウムは退散したのだった
////////
「クライアス社はこれからもミライクリスタルを狙い、この世界のアスパワワを奪い来ると思われます」
「きっとドンドン敵も強くなる…」
「わたし達はどうすれば…」
「…」
今回の戦いで改めて力の差を思い知らせ、暗い雰囲気に呑み込まそうな時
「これまで通りだよ!」
はながそう言ってくれた
「わたしの13歳の夏休みは一回だけだもん。はぐたんと一緒に楽しい事いっぱいする!クライアス社に負けない!わたし達のアスパワワは無限大だぁ!!」
「そうだね」
「暗くなり過ぎたみたいだね」
「ルール、えみるギター弾いて!」
「OKなのです!」
「練習の成果お見せします!」
奏でられる音楽と共に、明るい笑顔とアスパワワが溢れ出していた
結構重要な事を言っていた今回。なのに何故そんな大事な話を後回しにしていたのか。私にも分かりません!
ここまでの拝読ありがとうございました!