VRMMOでアフロになったので嫁とデートしたいと思います 作:久木タカムラ
アニメが面白かったので書きます。
「ふんふんふ~ん♪」
お気に入りの巨大な熊クッションに埋もれる嫁は、何時にも増して上機嫌だった。
たかがゲームで遊ぶだけなのに大袈裟な……とも思うが、鼻歌交じりでハードのセッティングを進める嫁の笑顔を見ていると、まあ良いか、と全て頭の片隅に放り投げてしまいたくなる。
「長続きしなくても文句言うなよな? 俺のゲーム歴はひのきのぼうとおなべのふたの魔王退治で止まってんだから」
「大丈夫大丈夫、絶対旦那様も夢中になるから」
「そんなもんかね」
『NewWorld Online』――どうやらファンタジーな内容らしいゲームのパッケージを、天井の照明に透かすように眺める。
嫁の思惑としては単純に一緒に遊びたいのと、VRMMO初心者を手取り足取りサポートする事でベテランプレイヤーらしくありたい欲が半々なのだろう。どれほどの時間をプレイに費やしたかは知らないが、要するに『○○はわしが育てた』をやりたい訳だ。大人しい性格で対人恐怖症気味なこの嫁が、一体誰に自慢するつもりなのかはさておき。
「はいこれ、旦那様の頭に合うようにサイズ調整したけど、キツかったら直すから言ってね?」
「へーへー」
ヘッドギア型のハードを受け取り、お返しとばかりに嫁の頭をわしゃわしゃと撫で回す。
一回りも離れた年の差婚、式は挙げていないが役所に婚姻届を提出して早半年。
子供じみた――実際まだ未成年でふわふわしたファンシーグッズが好きな少女である――愛妻はイソギンチャクのような髪型にされて、ぷくりと頬を膨らませる。それもまた可愛らしい。
「そう言えば、俺が遊んでる間お前はどうするんだ? ソフトもハードも一つしかないんだろ?」
「うん。だからネットで新しいの注文しちゃった」
「注文しちゃったって……」
一人一台必要なのは分かる。しかし安い買い物ではないし流石に衝動買いは見過ごせない。
あまり娘を甘やかさないように、と嫁の両親からも厳命されている。
いくら気心の知れた家族ぐるみの付き合いだったとは言え――娘の成人よりも先に嫁入りを快く祝ってもらった手前、義父母の顔を立てるためにも出来る限り甘やかさないよう気を付けてはいるつもりなのだが、周囲の目にはそう映っていないらしい。
「あのな、買うなら前もって一言くらい相談してくれよ」
「だってだって、どうしても旦那様と一緒に遊びたかったんだもん! それに……」
「それに?」
「ゲームの中なら、デートしてても職務質問とかされないと思うし……」
「…………確かに」
確かにそれは重要だ。
一緒に星を見ようとちょっと外出しただけなのに、いかがわしい関係を疑われて巡回中の警官に呼び止められた事が今まで何度あったか。
その度に、嫁の両親に確認の連絡が行ったり、戸籍を照会されたり――パトカーに道を塞がれる回数が二桁を超えた頃には、警官ともすっかり顔馴染になってしまった。
「デートはしたいよなぁ……」
「うん、したい。すっごくしたい。一緒にショッピングしたり、ちょっとお高そうなレストランでご飯食べたり、良いふいんきになって手とか繋ぎたい」
「雰囲気な」
順序は逆になってしまったが、夫として、幼妻にも普通の恋愛をさせてやりたい。
結局の所、猫科動物のような嫁が世界で一番可愛いのは事実なのだ。
「……そんじゃあまあ、ちょっと潜ってみるか。勇者にはなれそうもないが」
「頑張ってね、旦那様」
嫁が使っているシャンプーの香りがするハードを装着し、何年振りかのゲームを開始する。
嫁との真っ当なデートを実現させるために。