VRMMOでアフロになったので嫁とデートしたいと思います 作:久木タカムラ
【NWO】第一回イベント観戦席5
302名前:名無しの観戦者
暫定成績ランキングの名前もほとんど固まり始めたな
303名前:名無しの観戦者
まあペインが一位なのは順当だとして、ドレッドにミィ、クロム。他にも聞いた事ある名前ばかり
304名前:名無しの観戦者
個人的には大番狂わせも期待してるなんだけどなー
305名前:名無しの観戦者
暫定三位のメイプルって大盾が無傷で敵を食いまくって毒と麻痺撒き散らしてるw
306名前:名無しの観戦者
あれはもう戦闘じゃなくて蹂躙だから……
307名前:名無しの観戦者
蹂躙って言えば、十位以内には名前ないけど、たまにスクリーンに映るおかしなアフロがいる
308名前:名無しの観戦者
あ、今ちょうど映ったわ
……ちょっと待って、アフロ空飛んでね?
309名前:名無しの観戦者
飛んでますね……
しかもそこから撃ってる矢が爆発してるし
310名前:名無しの観戦者
人間爆撃機かよ
地上からじゃ攻撃届かないっしょ
311名前:名無しの観戦者
当たると爆発する矢ってのがまず意味不明
312名前:名無しの観戦者
火矢とか魔法系ならともかく、撃つ直前まで普通の矢にしか見えないのも厄介
313名前:名無しの観戦者
だから逃げずに盾で防ごうとしてドカン
そして逃げても上からドカン
314名前:名無しの観戦者
もっと分からんのが、矢が刺さってもやられないで逆に回復してるプレイヤーもいるって事
315名前:名無しの観戦者
大人数で混戦してる所にわざと乱入してる感じ
やられかけてた奴らが回復されて息吹き返してるからもうゾンビゲー
316名前:名無しの観戦者
弾速もくそ速い
撃ったと思った時にはもう当たってるって何……
317名前:名無しの観戦者
真面目な話、魔法職でもないのに攻撃と回復の両立って出来るの?
チート?
318名前:名無しの観戦者
運営が何も言ってないんだからチートではない、はず
319名前:名無しの観戦者
動きが人間辞めてるペイン
堅さが人間踏み外してるメイプル
もう人間とは思えない空飛ぶ爆弾魔
320名前:名無しの観戦者
NWOはまさかの人外魔境だった!
◆ ◆ ◆
などと、自分の話題で盛り上がっているとは知りもせず。
ヨメカワイイはついうっかり発動してしまった【跳躍】による長い滞空から、ようやく地上へと戻る事が出来て胸を撫で下ろしていた。
空中では方向を変えられず、慣性のままに進んだ先がまさかの大乱闘会場――しょうがないので上空から爆弾矢をばら撒いて全員蹴散らしたまでは良かったが、嫁もイベントに参加している事を思い出し、慌てて女性プレイヤーに片っ端から【ヒール】を【装填】した矢を撃ち込む。
それでも、十数人は回復が間に合わずリタイアしてしまった。
場合によってはイベント後に嫁に土下座する事になるだろう。
「まいったねぇ、こりゃ」
爆発で穴だらけの地面、光の粒と化して消える死屍累々、遠巻きにこちらを窺うプレイヤー達。
元々、今回のイベントでは上位を狙う気など毛頭なかった――スキルとアイテムを組み合わせる戦法の利点や改善点の発見、ついでに一般的な対人戦がどのようなものなのか一度経験するためのお試し感覚であり、得られる名誉にも限定品にも正直さほど興味はない。
イベント終了まで残り十五分かそこら。
上位三名の中にメイプルが入っている事をアナウンスで聞いた時は驚いたが、ゲームで初めての友人が頑張っているのはちょっと誇らしい気持ちになる。
大量に持ち込んでいたイズ印の七星爆弾も数個を残すのみで、そろそろメイプルの戦いぶりでも見に行こうかなぁ、などと考えるヨメカワイイ。
その油断がいけなかったのか。
「【爆炎】!!」
因果応報とばかりに、横からの爆風に飲み込まれた。
どうやら威力よりもノックバック効果が優先された魔法らしく、【施しの報酬】で全快した上に最大値も大幅上昇しているヨメカワイイのHPを削り切るまでには至らない。
数メートルほど吹き飛び、受け身を取って立ち上がる。
アフロやレザーコートをぷすぷすと燻らせながら、火魔法を放った人物を見ると、
「……私のギルドの者が随分と世話になったようだな。この礼は高くつくぞ、怪人」
「ミィ様!」
「ミィ様が来てくれた!」
赤い髪と赤いマントが印象的な、魔法使いと思しき女性だった。
歓声を上げた数名のプレイヤーがこのミィとやらのギルドのメンバーなのだろうか――なるほど道理で同じようなデザインの衣装がちらほらと目に入る訳だ。
それにしても、怪人とは。
文句の一つも言ってやろうかと思ったが、見上げるような背丈で黒一色で顔面包帯で、おまけにアフロで今はあちこち焦げている風貌は確かに怪人そのもので反論の余地はなかった。
「【炎槍】!!」
ヨメカワイイ目掛けて一直線に飛んで来る、槍を形取った炎の塊。
「ちっ」
七星爆弾をそのまま投擲し、誘爆させる。
通常のスキルや魔法と異なり、ヨメカワイイの攻撃はダメージを与えるためにまずは【装填】の過程を必要とする。他のプレイヤーと比較して一連の攻撃動作の完了までに踏まなければならない段階が一つ増えてしまうので、どうしても正面からの撃ち合いだと迎撃が遅れがちになるのだ。
「【爆炎】!! 【炎帝】!!」
再びのノックバック魔法で体勢を崩されてからの、一メートルサイズの火球の追撃。
いくらHPには自信があるとは言っても、【鋭敏化】のデメリットと合わせて痛いものは痛いし熱いものは熱い。
そして何よりも、相手が女性プレイヤーである以上、正体が嫁である可能性を捨て切れないためヨメカワイイから攻撃は出来ない。
「どうした、防戦一方ではないか!! 【炎槍】!!」
「ぐっ……!」
両腕を交差させて炎の槍を防ぎ、相手がMPポーションを使ったタイミングで矢を番える。
「【装填】【ヒール】――【アローレイン】!」
真上に撃ち放った矢が、一帯のプレイヤーを分け隔てなく癒す雨となって降り注ぐ。
回復した人数分だけヨメカワイイのHPとMPも増強し続け、その最大値は5000という前人未到の域に到達しようとしていた。
ひたすら炎と戯れる時間が続く。
「……まだ倒れないのか」
何本目かのMPポーションを空にして、ミィが恐れ半分呆れ半分に言う。
ミィを応援していたギルドメンバー達も、どれだけ吹き飛ばされても起き上がるヨメカワイイの異様さに気圧されて言葉を失ってしまっているようだった。
「……そろそろ止めないか? 俺に構うより別の奴を相手にした方がポイント稼げるだろ?」
「ふん、命乞いのつもりか!?」
この戦いが不毛だとミィも気付いているはず。
MPポーションを浪費してヨメカワイイを倒したとしても、加算されるポイントは与ダメージを含めても二、三人分だろう。
高威力の魔法をあれだけ撃てるなら、他の一般プレイヤーを大勢相手にした方が圧倒的に効率が良いに決まっている。
「私は『炎帝ノ国』のミィ! ギルドと私の名に懸けて、立ち塞がる敵は焼き尽――」
「終了! 結果、一位から三位の順位変動はありませんでした! それでは表彰式に移ります!」
「…………」
「…………」
言わんこっちゃない。
◆ ◆ ◆
「あ、おかえりー」
メイプルが盛大に噛んだ表彰式も終わり、アイテム補充や護衛の依頼も兼ねたイズとの世間話もそこそこにログアウトすると、愛妻と何か焦げているような臭いに出迎えられた。
エプロンとフライ返し装備で満面の笑みの嫁に、猛烈に嫌な予感がする。
「料理、したのか? 台所に立つなってお義母さんからも言われてたろ」
「だいじょぶだいじょぶ子供じゃないんだから。これでも炎の扱いは得意なんだよ?」
その自信は一体何を根拠にしているのか。
もうちょっとで出来るからー、とコンロの前でガッチャンガッチャン異音を奏でる嫁。
「そう言えば、旦那様はイベントどうだったの?」
「ん? あー……倒したり吹き飛ばされたり? 初心者ならあんなもんだろ」
「ふーん? あ、そうだ聞いてよ旦那様!」
「フライ返しを振り回さない」
今日の夕飯は嫁特製の炒飯(自称)だった。
イカスミでも使ったのかと思えるくらいに真っ黒焦げである事さえ除けば、誰の助けも借りずに炒飯を作れるようになり、火災報知機が鳴らなかっただけでも大進歩だ。
せめてもの救いであるインスタントの中華スープを一口啜り、スプーンが刺さらない暗黒炒飯をどう攻略しようか考えつつ、嫁にさっきの話の続きを尋ねる。
「で? そっちはイベントで何かあったのか?」
「そうそうそれそれ!」
興奮冷めやらぬ様子で、今度はスプーンを振り回す嫁。
「私の方はね、黒い装備を着た変なのに仲間が大勢やられちゃって大変だったんだから! 何なのあれ、どうして私の最強魔法を食らっても平然としてられるのよもうぅ……」
こちらは今から最凶魔法を食らわなければならないのだが。
それはともかく、上級プレイヤーの嫁の攻撃を受けても平気でいられそうな黒い装備の変なのと言えば、謎の大盾と状態異常魔法で猛威を振るったメイプルくらいしか思いつかない――同じ黒い装備でも、上位十名にも入れなかった自分でない事は確かだろう。
運営が編集したダイジェスト映像をイズの店で見せてもらったが、何をどうすればVIT極振りでああも一方的な殲滅が出来るようになるのやら。
フレンド登録している事は黙っておこう。
「まあ、次のイベントの時にでもリベンジすれば良いだろ」
「うん、もっと強い魔法とスキル覚えなきゃ。さ、炒飯食べよ? 今日のは自信作なのです」
「…………おう」
魔法よりもスキルよりも。
まずは料理を覚えるべきでは、とは言えなかった。
◆ ◆ ◆
第一回イベント最終順位
第四位:ミィ
第十一位(ランキング外):ヨメカワイイ