VRMMOでアフロになったので嫁とデートしたいと思います   作:久木タカムラ

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ダイミョウ○ザミ。


014.『一天四海悪逆無道』

 丘陵地帯にて本日の夕飯となるコカトリスの肉――ネギと一緒に竹串に刺さって調理済み――の大量ドロップに満足したヨメカワイイは、東に見える砂浜に向かっていた……いや、跳んでいた。

 今のところ現れるのはモンスターばかりで、他のプレイヤーの姿はない。

 イベントが始まってまだ一時間も経っていない――こんな見晴らしの良い丘陵ではなく、各々が怪しいと思った場所を片っ端から調べて回っているのだろう。

 

「はい到着っと」

 

 空き缶も花火の燃えカスもない砂浜に、制動のための長い直線を両足で引いて、ヨメカワイイはレザーコートの裾に付着した砂粒をぱんぱんと叩き落とす。

 本当に【跳躍Ⅹ】には世話になりっ放しだ。

 弱体化されたのが他でもないこのスキルだったとしたら、運営に文句の一つでも言っていたかも知れないほどにはお気に入りとなっている。

 宝探しと言えば埋蔵金か沈没船、沈没船と言えば海――で来てはみたものの、よくよく考えれば沈没船が眠る海底まで行くための手段がない。

 サリーならば【水泳Ⅹ】と【潜水Ⅹ】で水中探索など訳もないだろうが、今からそのレベルまでスキルを上げるとなると、イベント最終日までふやけるまで海水に浸からなければ不可能だ。

 

「ボートなんて都合の良いものも……ないよなぁ」

 

 少し遠くに桟橋らしき影はある。しかし舟が繋いであるようには見えない。

 仕方なく、波打ち際に沿って歩を進める――途中、朽ちた流木や紫色のヤシの実などの漂着物に紛れて、大部分が砂に埋もれたメッセージボトルを発見した。

 中身は銀のメダルが一枚と、今いる海岸線を示しているらしい古びた地図。

 

「……どうやら魚の餌にならずに済みそうだな」

 

 地図の上方、北に向かった先の地点に、赤で大きく書き殴られた×印。

 そのまま、誰のものとも不明な道案内に従ってしばらく進むと、砂浜を分断するかのように高くそびえる断崖絶壁に行き着いた。

 海鳥の巣がいくつもへばり付いた岩壁の下、打ち寄せる波に隠れて分かりにくいが、人間一人が爪先立ちでようやく乗れるかどうかの極狭の足場がある。

 

「ここを行けってか。もう道じゃねぇだろ……」

 

 地図なしでは間違いなく引き返すか迂回するだろう正規ルートを、濡れた岩肌のわずかな凹凸に手指を掛けて、波飛沫を頭から浴びながら一歩一歩慎重に足先を乗せていく。

 もう素直に泳いだ方が楽な気がしてきた。

 

「これで、待ってるのが『大マヌケ』の落書きだったら、二度と、やらねぇからなこのゲーム!」

 

 悪路とすら呼べない道を愚痴混じりに攻略し、やがて大滝へ到達した。

 轟々と音を立てて、岩壁を浸食しながら落下し続ける大量の水の障壁。流石に、この瀑布を横に突っ切るのは不可能だ――まさかここから上へ登れと言うのか。

 思わずフィールドをデザインした運営を呪うが、直後に滝の裏に道が続いている事に気付く。

 

「……滝に隠された洞窟、ね。定番っちゃ定番だが」

 

 たっぷり海水を吸収して重くなったアフロを絞り、明らかに人の手によって掘られた隠し洞窟に黒ずくめの長身痩躯を滑り込ませる。

 内部もやはりジットリとした湿気で満ちているが、波を直接浴びるよりは何倍もマシだ。

 奥に進むほど滝の音は小さくなり、代わりに天井からの水滴が奏でるリズムが洞窟に木霊する。

 ダンジョンに続くものと思っていた無明の洞窟はそれほどの距離はなく、十分も歩いたところで終点に到着した――暗闇に慣れた目が陽光に眩むもすぐに治まり、回復した視界に飛び込む光景にヨメカワイイは息を飲んだ。

 

「こりゃ、メダル探すのも一苦労だな」

 

 船の墓場。

 広い砂地に、ボロボロの木造帆船が所狭しと打ち捨てられている。

 周囲を崖がぐるりと取り囲んでいるのに、一体どうやって流れ着いたのか――あるいは何者かが運び込んだのか、手の込んだ装飾の客船、赤く錆びた砲身が並ぶ軍船、骸骨旗を掲げた海賊船まで分け隔てなく、目に入った獲物を手当たり次第に蒐集したという感じだ。

 どの船底にも巨大な穴が開いているのが気になる。

 

「一日で片付けば良いが……無理だろうなぁ」

 

 サクサクと砂を踏み締め、ひとまず一番近くの横倒しになった商船の亡骸に向かう。

 マストが半ばからへし折れたこの商船の船底にも、他の船と同様に人間の背丈よりも大きな穴が開いていて、ヨメカワイイはそこから船内部へ潜入しようとした。

 しかし商船まで七、八メートルのところで、不意にその足が止まる。

 

「まあ、こんだけ船だの海だのアピールしてんだから、そりゃいるわな」

 

 包帯の奥の目が睨む先。

 商船の大穴から姿を現したのは、雑巾のように劣化した海賊衣装に身を包むモンスター達。

 肉や内臓は海の生物に食い尽くされたのか、骨だけの身におびただしい数のフジツボが寄生した醜悪な風貌で、カトラスや斧、フリントロックピストルを手に重い足取りで何体もわらわらと。

 加えて最悪な事に、フジツボ海賊が巣にしていたのは目の前の商船だけではなかった。

 周りを見れば、ほとんど全ての船の大穴からスケルトンが湧き出ていて、確実にヨメカワイイを標的とした動きで包囲網を狭めてくる。

 

「……さてさて、スケルトンに弓はあまり効かないんだったか?」

 

 あの外見では本当にスケルトンなのか寄生型モンスターなのかも判別は難しいが、何にせよ、

 

「荼毘に付しちまえば同じだな」

 

 手前の一体に【ファイヤボール】を【装填】した火矢を撃ち込む。

 乾き切った海賊衣装とフジツボを焼き尽くし、偽の肉の支えを失った骨格が砂の上にカラカラと崩れ落ちる――それが開戦の合図となった。

 

「【装填】【ウィンドカッター】――【スプレッドショット】」

 

 風の刃を纏う無数の矢が放射状に広がり、海賊スケルトン――正式名パラサイト・バーナクルの集団を微塵に切り裂いて光の粒子に変えていく。

 当然ながら、敵性モンスターである以上パラサイト・バーナクル達もただ黙って狩られるために徒党を組んでいる訳ではない。

 振るわれるカトラス、飛来する斧、火を吹くフリントロックピストル。

 それまでの緩慢な歩みが嘘のように砂地を駆け、同族を巻き込む事も躊躇わない斬撃と銃撃。

 

「あ゙ー! ったく鬱陶しい!! 【装填】『七星爆弾』――【フレシェットスコール】!!」

 

 爆弾矢の驟雨が空中で連鎖的に炸裂し、爆炎と衝撃波が凶器を砂ごと吹き飛ばす――しぶとくも生き残った弾丸がヨメカワイイの身体に吸い込まれるが、HPバーを二割ほど削るに留まった。

 メイプルならば圧倒的なVITで痛痒すら感じないだろう。しかし生憎とこちらは防御に関しては一般プレイヤーの域を出ない。さらに言うなら、被ダメージ五割増のデメリットでHPの消費量は他よりも格段に多いはずだ。

 

「【跳躍】!」

 

 舳先の女神像が特徴的な海賊船の甲板まで飛び退き、敵を見下ろせる高所に陣取る。

 そこからは物量と物量のぶつかり合いだ。

 さながらゾンビ映画のように、ヨメカワイイが立つ海賊船へ押し寄せるモンスター達。

 ヨメカワイイの範囲攻撃が紙一重で勝るのか、火炎と爆破、風刃と水弾により無限とも思われたパラサイト・バーナクル達の数が徐々に減っていく。

 戦闘開始時と比べて三分の一程度まで亡者の数が減らされた時――背後にある船室の扉を砲弾で撃ち破ってその敵は現れた。

 振り返り、問う。

 

「…………お前がここのボスって事で良いんだよな?」

 

 ならず者達を束ねる証である黒い三角帽子を被った髭面の巨体。右手には鎖が絡み付いた鋼鉄の舵輪を握り、撃ったばかりで硝煙を吐く大砲を左脇に抱えている。

 船長は一対一がご所望なのか、手下達も顔を上に向けたままじっと動かない――どうやら決闘の行く末を見届けるつもりらしい。

 

「…………」

 

 鉄製舵輪の鎖を掴み、頭上で振り回す船長。

 先ほど受けた銃弾など、豆鉄砲も同然――あんなモーニングスターの一撃をまともに食らったらどうなるか考えるまでもないし考えたくもない。メイプルじゃなくとも痛いのは嫌なのだ。

 勝負は一瞬。

 ピンと張り詰めた空気の中、

 

「――【装填】『七星爆弾』!」

 

 最初に動いたのはヨメカワイイだった。

 矢を番えながら甲板を蹴り、およそ十五メートルの距離を一気に詰めようとする。

 それに応えるかのように、船長はあらん限りの力をもって鉄製舵輪を投げ放つ――唸りを上げて迫り来る重撃を身を捩って回避し、照準を合わせて必殺の一矢を放つヨメカワイイ。

 狙ったのは、今まさにこちらへ向けて砲弾を吐き出そうとしていた左の大砲の、その砲口。

 イズお手製爆弾の元々の威力が高かった事もあり、内部の火薬にまで誘爆して砲身は跡形もなく破裂し、船長の上半身が綺麗に吹き飛んだ。

 残った下半身が膝から崩れ落ち、ゼロになったHPゲージと共に砕け散るのを確認して。

 

「……ふぃー」

 

 ヨメカワイイは長く息を吐き、肩の力を抜く。

 甲板の何処かに宝箱でも出現していないかと、視線を巡らせたのも束の間。

 

「っ!? おっと……!?」

 

 ズシン、と。

 海賊船全体が大きく一度揺れた。

 揺れは瞬く間に振動と化して激しさを増し、とても立ってはいられなくなる――同時に、周囲の景色が下に沈み始めている事に気付いた。

 いや、違う。

 ヨメカワイイの乗る海賊船の方が上昇しているのだ。

 

「おいおい、カリブの海賊の次は何のアトラクションだ!?」

 

 慌てて船の縁から下を覗き込むと、甲殻類のものと思しき特大サイズの――人間と比較するのも馬鹿馬鹿しくなるほどに巨大な脚と鋏が砂中から生え、頭目を失ったパラサイト・バーナクル達を羽虫でも払うように蹴散らしているのが見えた。

 船長はボスではなかった。

 この甲殻の持ち主こそが、このエリアの本当のボス。

 

「道理で簡単に倒せた訳だよコンチクショウ!」

 

 海賊船から飛び降り、巨大甲殻類の全貌を視界に収める。

 左右非対称の一対の鋏と二対の脚を不気味に蠢かせ、青と緑のマーブル模様の甲殻をギチギチと不快に軋り鳴らす――感情の窺えない黒い目でヨメカワイイを見つめ返すのは、海賊船そのものを堅固な鎧として着込むヤドカリだった。

 思わず目頭を揉む。

 

「……なるほど? つまりここはクローゼットで、俺は服を食いに入り込んだ虫って事か」

 

 驚きを通り越して呆れてしまう。

 船底に穴を開けられて大量に放置された船の残骸は、この怪物の『衣服』だったのだ。

 振り下ろされる解体重機のような右の巨鋏。大量の砂塵が巻き上げられ、エリア一帯が白一色に塗り潰される。

 

「【反響】!!」

 

 弱体化メンテナンスで探知範囲が半分にされたとは言え、それでも視界が塞がれたこの状況では何よりも頼りになるスキルである事に違いはない。

 その超音波レーダーがこちらに突っ込む巨体を感知。

 数瞬遅れて、細かい刃がびっしり生えた鋏が砂煙を破って左右から襲い来る。

 

「【ファイアボール】!」

 

 右の鋏に火球をぶつけるも、甲殻に多少の焦げ目を付けただけで勢いは全く衰えない。

 かろうじて身体を両断される事は免れたが、右を回避した間隙を狙って左の鋏が追撃し、刃先に肩を抉られHPをごっそり持っていかれた。

 

「装甲はメイプル並みか!? 【ヒール】!」

 

 バックステップで距離を取り、回復魔法を使用する。

 この孤立無援の状態では【施しの報酬】も意味を成さず、今のヨメカワイイはちょっとHP量と爆破に自信があるだけの一人のプレイヤーに過ぎない。

 しかし、どれだけ巨大だろうとヤドカリはヤドカリ。

 傷一つ付けられない甲殻でも関節部までは覆い隠せないし、何より弱点があるからこそ海賊船を鎧代わりにしているのだ――敗北前提イベントでもない限り、完全無欠のボスなど存在しない。

 

「その自慢の宿ひん剥いてやる!! 【装填】『七星爆弾』!!」

 

 ヤドカリ本体ではなく海賊船に爆撃を浴びせ掛ける。

 甲殻と違って常識的な強度なのか、ダメージエフェクトと共に飛び散る大小の木片。

 お気に入りの服を台無しにされたヤドカリは鋏を掲げてヨメカワイイを威嚇し、憤怒に呼応して船体の両舷から砲身が突き出した。

 その数、左右合わせて四十以上。

 ヤドカリは歩脚を動かして超信地旋回すると、片側二十門の砲口をヨメカワイイに向ける。

 

「戦車かよ……」

 

 一斉射撃の爆音が響き渡った。

 放物線を描いて飛来する砲弾が船の残骸を砕き、砂地にクレーターを作り出す。

 弾切れにはならない仕様になっているのか、次弾発射まで一定の間隔こそあるものの、嵐の如き砲撃が止む気配は一向にない。

 圧倒的な火力にお株を奪われ、まるで自分自身を戦っているような錯覚に笑うヨメカワイイ。

 

「上等だ。どっちが猿真似なのかはっきりさせようか?」

 

 そこから先は、陸地での大海戦の様相を呈した。

 

「【スプレッドショット】!」

 

 互いの息の根を止めるため砲弾と爆弾矢が飛び交い、その余波で、荒れ果てていたはずの地形がさらなる地獄絵図へと変えられていく。

 砂海に完全に埋没していた他の船体まで爆風によって掘り起こされ、吹き飛ばされた生き残りのパラサイト・バーナクル達が岩壁にぶち当たって粉々になる。

 

「【フレシェットスコール】!」

 

 降り注ぐ爆撃の流星雨。

 対して回転速度を格段に上げ、鋏を振り回しながら四方八方に砲撃を見舞うヤドカリ。

 他のプレイヤーにとって何より幸運だったのは、動く爆心地と化した一人と一匹がこの砂地から出られなかった事だ――隔離壁のように取り囲む断崖がなければ、戦闘は激化の一途を辿りながら誰彼構わず巻き込んでフィールドを蹂躙しただろう。

 

「【装填】『七星爆弾』――【魔弓の極技】」

 

 商船の舳先に立ったヨメカワイイが弓を構える。

 真正面に見えるのは、旋回砲撃を続ける限り、何時かは必ずこちらに振り向かなければならないヤドカリの頭部。

 

「……【スプレッドショット】!」

 

 完全必中の極限技で一点に集中された拡散矢の全てが、ヤドカリの口内に吸い込まれた。

 一瞬の沈黙の後、くぐもった爆発音。

 弱点の一つであった口から体内をズタズタに破壊された巨大甲殻類は全身を痙攣させ、三割近く残っていたHPゲージを全て失って、鎧の海賊船ごとさらさらと崩れ去った。

 それこそ、砂のように。

 

「やれやれ……初日からこれだ。爆弾も使っちまったし最終日まで無事でいられるのかね俺は」

 

 ヤドカリがいた場所に出現した宝箱と転移魔法陣。

 宝箱の中身は奮闘の甲斐もあってメダルが二枚と――

 

「何だこりゃ。船の、錨……?」

 

 鈍色に輝くその錨を手に取り、性能を確認する。

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

『一天四海悪逆無道』

【STR+?】【破壊耐性】

 スキル【命を振るう者】

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 驚いた事に、身の丈ほどのそれは『弓』にカテゴライズされる武器だった。

 中心からはシャンクと呼ばれる錨柄が伸びているが、三日月を描く形状と、その両端の爪の間に張られたワイヤーで、自分は弓であると主張している。柄の先で大笑いするかのように口を開けた髑髏がアクセントと言えばアクセントか。

 装備してみると、髑髏の口から伸びた鎖が右手に巻き付いた。

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

【命を振るう者】

 このスキルを持つ武器のSTR補正値は、装備したプレイヤーの残りHPと同じ値になる。

 上限は【STR+300】

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 スキルを確認し終えると同時に。

 あちこちで砂が大きく盛り上がり、見飽きたばかりの鋏が次々に生えてくる。

 死闘を繰り広げたヤドカリと比較すると、どの個体も一回り小さい――それでも巨体である事に変わりはなく、それが十体、二十体ともなれば、すぐにでも転移魔法陣に飛び込まなければ彼らの糧になるのは目に見えていた。

 だが、ヨメカワイイは魔法陣に背を向けた。

 その理由は。

 

「……試し斬りには丁度良いな。いや、試し撃ちか?」

 

 新装備『一天四海悪逆無道』の柄を右肩に載せ、弓弦代わりのワイヤーを引く。

 ロケットランチャーさながらの構え方。

 となれば、飛ばすのも普通の矢ではなく――

 

「Rock 'n' Roll!!」

 

 声高らかにワイヤーを弾く。

 弓の前方、伸ばした左手のすぐ先の空間が歪み、大砲と同等の威力で砲弾が撃ち出される。

 極小ワームホールから放たれた砲撃は、破壊不可能とさえ思えたヤドカリの甲殻をいとも容易く粉微塵にし、致命的なダメージを与えて光の粒へ強制昇華させた。

 HPを減少させる事で矢の速度と飛距離が増す黒弓『罪悪滔天』と対を成す、自身の命の残量を破壊力に変える錨弓。

 

「はっ、こいつは爽快だな」

 

 錨柄を両手で握り、ヤドカリに肉薄する。

 通常の弓と一線を画すもう一つの特徴は近接戦闘、打撃武器として使える点にある――接近戦の脆さとアイテム大量消費の問題を一度に解決する、今のヨメカワイイにはうってつけの特異武装。

 客船を纏ったヤドカリの鋏に、鋼鉄の爪が深く深く突き刺さる。

 

「ぃいいいやあああああああっ!!!」

 

 気合一閃。

 獲物に刺さったままの『一天四海悪逆無道』を、ハンマー投げの要領で振り回し、その円運動に引っ張られたヤドカリが他の個体に衝突、次々に同士討ちとなる。

 柄頭の髑髏の口からじゃらじゃらと鉄鎖が伸び、攻撃範囲が格段に広がった暴虐の竜巻によって薙ぎ払われる甲殻類達。

 だがそれだけでは終わらない。

 

「【フレシェットスコール】!」

 

 ヤドカリの群れが最期に見る事となったのは、上空から数多降り注ぐ砲弾だった。

 船体も甲殻も関係なく破壊し尽くし、鎖を鳴らしてヨメカワイイは錨弓を肩に担ぐ。

 こうしてただ一人、長身痩躯の黒い人影だけを残して、白い砂地は船の亡骸が眠る墓場としての静寂をようやく取り戻したのだった。




デビルメイクライの武器入手時のイベントが好きです。
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