VRMMOでアフロになったので嫁とデートしたいと思います 作:久木タカムラ
すぐに視界が暗転し、少しの浮遊感の後に暗闇に現れるゲームタイトル。
「おおー」
十字キーとボタンのコントローラーを手垢で汚し、薄型ではないテレビの前で勇者の生き死にに一喜一憂していた世代にとって、不覚にもこの演出だけで少し感動しそうになった。
ゲームタイトルが背景に溶けて消えると、今度は周囲がぼんやりと明るくなり、水色の四角柱が無数に飛び回る電子的な世界が広がる。
表示された案内を読むと、どうやらキャラクリエイトをしなければならないようだ。
部屋着だった服装は如何にも『冒険初心者』とでも呼ぶべきデザインに変わっていたが、体型や髪型に関しては現実そのままで、プレイヤーの意識をダイブさせる仮想現実という特性上、極端な体型の変更は不可能らしい。
「まずは名前か。個人を特定されそうなのは論外として……」
どうせゲームなんだからこれで良いか、とパネルに指を走らせて手早く入力し、決定を押す。
名前の次は初期装備の選択。
少年ならば一度は振るう事を夢見たであろう武具の数々が羅列される中、
「……ん?」
見慣れた武器が目に留まる。
「弓、か……」
高校時代は弓道部だったため、洋弓と和弓の違いこそあるが、紹介された装備の中では一番手に馴染みそうではある。
どのみち、新しいハードが届けば嫁と二人でのプレイになるのだろうし、攻撃はもう全部任せて後方からのサポートに徹した方が、自称プロプレイヤーらしい嫁の気分も良くなるだろう。あまり動き回らなくて済みそうなのも好ましい。
「髪型も変えて……お次は何だ? ステータスポイント? ああもう知らん知らん!」
本番が始まる前から既に面倒臭くなってきた。
事前に嫁のレクチャーがあったため【STR】や【VIT】が何を指してのは分かるが、あの武器を選んだならこの数値を上げなければならない――なんて知識が初心者にあるはずもなく。
与えられていた100ポイントを、各ステータスを見もせず適当に連打して振り分け、ぐだぐだになりながらもついに電脳世界での肉体が完成した。
正直これだけで疲れた。
「年かなぁ……」
昔は資料作成なども徹夜でこなしたものだが、今も変わらないのは目付きの悪さくらいだ。
VRMMOならば長時間のプレイでも疲労するのは脳だけのはずだが、ちょっと無理をしただけで全身筋肉痛に苛む事になりそうな予感さえしてしまう。
おそらくは『NewWorld Online』を始める人間の中でただ一人。
ドキドキよりも、ワクワクよりも、もうログアウトしたいという思いを抱きながら。
後に数多くのプレイヤーから『
身体を光に包まれ、始まりの地である城下町へと降り立った。
誰もが見上げるアフロの弓使い、プレイヤー名『ヨメカワイイ』として。