VRMMOでアフロになったので嫁とデートしたいと思います   作:久木タカムラ

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オーブって聞くとどうしても『光の力、お借りします!』の方を連想する今日この頃。

そのうちプ○キュアとかも過去シリーズのヒロインの力とか借りかねない気がします。今合計何人いるんだ……?


039.第四回イベント・開戦の血煙

 運営より通達された第四回イベントの概要は以下の通り。

 各ギルドは所属人数によって大規模、中規模、小規模に分類される。

 ギルドごとに配備されたオーブを六時間自衛、または他軍から奪取したオーブを自軍に持ち帰り三時間防衛する事でポイントが増え、奪われたギルドはポイントが減る――防衛中、三時間以内に奪還された場合ポイントの増減はなく、オーブはポイント処理後に元の位置に戻される。

 

「ただオーブを奪いに行くだけじゃないんだよね」

「三時間防衛して初めてポイントが増えたり減ったりするから、奪った後の方が大変だと思う」

「だろうな。自軍オーブの位置はマップに表示されるから、敵のを持ち帰ると俺達の拠点の場所も知られちまう。奪ったオーブの数だけ他ギルドに攻め込まれるぞ?」

「小規模ギルドの私達には防衛しやすい地形が選ばれるらしいが……」

 

 イベント開始を前に、見落としがないか最終確認をする『楓の木』のメンバー。

 カナデの魔導書、マイとユイのレベル上げと戦闘技術、イズのゴールド――メイプルとサリーは言わずもがな、クロムとカスミもそれぞれが必要だと考えた強さを手に入れて、可能な限り万全の準備を整えた。

 けれど、潰した端から芽を出すのが不安要素というもの。

 

「5デスでリタイア……戦闘可能な限界ラインは3デスってところかしら」

「四回死んじゃうとステータス半減ってのが痛いよねー。人数多いギルドなら自爆覚悟で力押しもできるだろうけど、僕達は八人しかいないし」

「攻撃役と防衛役をどう分担するかも重要だけど、五日間休みなしなんて事になったら最悪だよ」

「うー……起きてられるか不安です……」

「私も……」

 

 群雄割拠の戦国乱世と言える内容とルールに加え、第一回イベントで猛威を振るったメイプルの勇姿とトラウマはまだ記憶に新しい。

 裏で結託でもしない限り、そのメイプルが君臨する『楓の木』を全てのギルドが同時に狙うとは思えないので、八人揃って五日間完徹するような事態にはならないだろうが――何にせよ、疲労をなるべく蓄積させず、スキルの回数制限も考慮した立ち回りが要求される。

 特にメイプルは貴重なMP回復手段である【悪食】をどう使うかが重要となってくる。

 

「有名なギルドが要注意なのは当然として、気になるのは……」

「……カワイだよなぁ」

「師匠もこれに出るんですよね?」

「うん、そう言ってたのは間違いないよ」

 

 よりにもよってこのタイミングで自分のギルドを作ったあのスチールウール頭。

 フリーのプレイヤーが今回のイベントに参加申請した場合、運営側が複数作成した臨時ギルドにランダムに配属される形になり、当然ヨメカワイイもそうするだろうと誰もが思い――あわよくば同じギルドになって勝ち馬に乗ろうと目論んで参加する未所属プレイヤーが大勢いた。

 しかし期待と思惑は裏切られ、掲示板では優勝予想の下馬評が荒れに荒れた。

 ギルドの名は『闇鍋』――所属人数、一名。

 

「何が入ってるか分からない……彼らしさを表していて言い得て妙ではあるな」

「ま、中身が未知数なのは俺達のマスターも同じだけどな」

 

 たった一人しかいないのに果たしてギルドと呼べるのかどうかはさておき、ダークホースとして注目されているのは『楓の木』も同じ。

 向こうも争う意志があって参加しているのだから、親しい仲でも出会ったのなら戦うのが礼儀。

 

「メイプル、分かってるだろうけど、相手がカワイさんだとしても手加減しちゃ駄目だからね?」

「大丈夫! カワイさんもお友達だけど、それとこれとは話が別だもん!」

「私達もどれくらい強くなったか師匠に見せようと思います! ね、お姉ちゃん!」

「うん、頑張ろうね、ユイ!」

 

 そうこうしている間に、いよいよ開始の時刻となる。

 第二回と第三回の時のような探索型やモンスター相手のアイテム収集ではなく、本格的なPvPを目的とした大規模戦闘イベント――『楓の木』のメンバー八人での初めての団体戦。

 期待と興奮で胸が膨らまないはずがない。

 

「目指すは上位で!」

「異議なし!」

 

 ギルドを立ち上げたメイプルとサリーの掛け声と共に、一同は光に包まれた。

 時間が加速する世界の中、五日間も戦い抜かなければならないバトルフィールドへ転送されると光は弱まり、白く塗り潰されていた視界も元に戻る。

 そこは洞窟の中だった。

 正面には緑色のオーブが乗せられた台座があり、誰かが言葉にするまでもなく、それが自分達の守るべき宝であると瞬時に理解する。

 

「通路は三本か。ちょっと奥見てくるね」

「ではもう片方は私が行こう」

 

 言うが早いか、メンバーの中で機動力に長けたサリーとカスミが台座の後ろにある二本の通路にそれぞれ走っていき、すぐに戻ってくる。

 サリーの方はただの水場、カスミの方は行き止まり――必然的に、残された最後の一本が外へと繋がる唯一の通路であり、なるほど確かに、この通路からの侵入だけを阻止、もしくは撃退すればいいのだから少人数でも防衛しやすい地形ではあった。

 極論、この最深部からメイプルが【毒竜(ヒドラ)】か【機械神】の砲撃を通路に撃ち込めば事足りる。

 

「それじゃあ打ち合わせ通りにね」

「私とマイとユイ、イズさんが防衛組だね!」

「俺とサリーとカスミが攻撃組で」

「僕は状況に応じてどっちかのサポートに回るって事で」

 

 重要となるのは、近隣のギルドを如何にして弱体化させるか。

 攻めるにしろ守るにしろ、『メイプルが近くにいる』というだけで警戒されてしまっては色々と支障をきたす――何度も拠点に攻め込んでは倒される前に撤退し、メイプル達を休ませず精神的に疲労させる事も不可能ではないのだ。

 だが『楓の木』の人員不足は、弱みであると同時に格好の撒き餌にもなる。

 ギルド名が記された大きな立て看板がある訳でなし、正体さえ露見しなければ、小規模ギルドと侮った愚かなプレイヤー達を猛毒と超火力で返り討ちにして死亡回数を稼げる。

 行って戻ってこなければならないサリー達にとって、敵の弱体化はそれだけでありがたい。

 

「じゃあ、留守番は任せたよ!」

「サリーこそ気を付けてね! カスミとクロムさんも!」

「ああ、無論だ」

「死に戻らないよう努力するさ」

 

 顔を隠すためにローブを被った五人を残し、一分でも時間が惜しい攻撃組は洞窟の外に出た。

 そして、鬱蒼と生い茂る深い森の上空で何かが弾けるのを目撃した。

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 最初にそれに気付いたのは、とある中規模ギルドに所属する槍使いだった。

 場所は『楓の木』の拠点から西へ五キロほど進んだ山の麓。

 

「何だ、ありゃ?」

 

 屋根を失った廃屋にて、オーブが乗った台座を守る彼がふと見上げた空を、光の筋が駆ける。

 十や二十どころか軽く見積もっても百に届きそうな数のエフェクトが、流星群のように大気中で燃え尽きたりはせず、形を留め続けながら地上との距離を縮めていく。

 まだ『NWO』歴の浅い槍使いはイベントスタートの花火と勘違いしていた。だが、彼の呟きを聞いて遅れて空を確認した魔法使いは――第一回イベントで一人の弓使いに辛酸を舐めさせられたプレイヤーは、その光条が自分達にとっての凶兆だとすぐに悟った。

 

「全員ここから離れろ!」

「はぁっ!? オーブほっとくのか!?」

「いいから、とにかく絶対にあの矢の着弾範囲に入るなぁっ!!」

 

 顔色を変えて叫ぶも時すでに遅く、瞬く間にバトルフィールドへと降り注ぐ。

 攻撃力を有してはいなかったのか、慌てて逃げ惑うプレイヤー達の背中や頭部に矢が当たってもダメージを受ける事はなく――しかしそれが彼らに良い結果をもたらす未来などありはしない。

 通り雨が過ぎ去った後も顔色は晴れず、むしろここからが災厄の始まりだった。

 

「やばい、やばいやばいやばい! これバレた! 俺達の拠点がバレたぞ!」

アイツ(・・・)が来る! 迎撃準備、迎撃準備ィ!」

 

 蜂の巣を突いたような騒ぎ。

 急ぎ襲撃に備える者と事情が分からず困惑する者に二分化される中、後者である槍使いは愛用の武器こそ構えたものの、古参のメンバー達が何故ここまで取り乱しているのか状況が飲み込めずに狼狽えるばかりだ。

 皆が一様に怯えるとは、一体誰が――何が来るというのか。

 

「【鉄蝗団(アバドン)】」

 

 その答えは、弾丸を模した黒蝗の群れによって否応なく思い知らされる事となる。

 防御貫通効果を持つ飢えた軍勢に、頭上に掲げた盾すら障子紙の如く食い破られ、防御のために足を止めてしまった者達から順番に餌食となっていく。

 弾雨が止み、一瞬で惨劇を作り上げた人物が悪魔の翼を収納して地に降り立つ。

 

「来やがった……やっぱりカワイだぞ畜生!」

「よりによって初日、しかも開始直後かよ!」

「あれが……」

 

 革製の黒衣と血の染みが目立つ包帯から金属部品が飛び出した長躯。

 胸の青白いコア、両眼の中で赤い光が明滅するペストマスクに、スパークするアフロ。

 夜に口笛を吹くと現れる、出会ったら親指を隠せ、声を聞いたらヘソを守れ――掲示板の噂話やギルドの仲間から嫌と言うほど見聞きした特徴と合致する。

 

「用件は……言わなくても分かるよな?」

 

 鉄パイプ型の武器を肩に担ぎ、淡々と言う。

 逸話には事欠かない異常枠プレイヤーの一人、『怪人』のヨメカワイイ。

 

「ビビるな、相手はたった一人だ! 残りの人数で取り囲んでぶっ倒すぞ!」

「【パワーブレイド】!」

「【重突進】!」

 

 まだHPに余裕のあるパワーファイターの二人が、スキルを発動させて左右から大剣を振るう。

 ヨメカワイイは右手に握る鉄管弓で一方をあっさり受け止めると、

 

「【ヒートチョッパー】」

 

 左腕から生やした赤熱の鎌刃で逆側から迫る大剣使いの胸を刺し貫き、返す刀で残るもう一人をいとも容易く斬り伏せる。

 大剣に限らず片手剣に短剣、大盾、槍に大槌、メイス――仲間の仇を討たんと心を奮い立たせたあらゆる近距離職が報復に走るが、怪人の鉄管弓と両腕の熱刃を用いた変則三刀流で次々にHPを狩り尽くされ、倒れた味方が人魂のように光のエフェクトを散らす。

 たまらず味方の一人が怒鳴る。

 

「だから! どうして! 弓使いが近接戦闘に強いんだよ!? つーか弓で殴るな!」

「知らねぇのか、最近じゃ弓を使うアーチャーの方が珍しいらしいぞ? それに……文句なら俺に勝ってから言え」

 

 ゆっくりと上げた怪人の右足の裏が変形する。

 踵の部分より地面に向かって上下逆さの火山を思わせる円錐型の突起が伸び、物々しい音と共に回転を始めた。

 もう悪い予感しかしない。

 

「奴を止めろぉぉっ!!」

 

 オーブを奪われたのなら取り返せばいい。

 だが、今ここであの怪人に持っていかれたが最後、恐ろしい事になってしまうと、この場にいる誰もが――動けず、ただ目の前の悪夢を傍観するしかない槍使いさえもがそう直感した。

 

「……【マグマゲイザー】」

 

 怪人の右足が地面を踏み締め、めり込んだ回転突起を中心点に噴出する大量のマグマ。

 それが、槍使いが怪人との戦いで最期に見た光景だった。

 粘性の高い波濤が存命者を飲み込み、焼き溶かし、何の変哲もない廃墟だったはずの他軍拠点を岩石が煮え崩れる焦熱地獄へと変えた。

 

「さて、ぞろぞろリスポーンしてくる前に取るもん取って逃げるか」

「ニャー」

 

 周囲に息のある者はなく、返事はアフロの中で昼寝をしていた小動物らしき鳴き声だけ。

 ざぶざぶと、マグマを足湯か何かのようにダメージも負わないまま浸って進み、無防備になった台座からオーブを回収してインベントリ内を確認する。

 

「まずは一つ目」

 

 頷き、【跳躍】で消えたヨメカワイイ――そして誰もいなくなった拠点には、冷めやらぬ熱気と静寂だけが残った。

 時間にして三分にも満たない殲滅劇。

 第一回イベントのメイプルのデビュー戦という名の蹂躙無双。

 第二回イベントでサリーが演じた『六日目の悪夢』に続いて。

 後に『第四回の蹂躙劇』と呼ばれて恐れられ、運営の黒歴史に新たな一ページを加える事となる怪人の略奪は、まだ始まったばかりだ。




NWO運営よ。
マイやユイも五日間休めないかも知れないイベントって何……?
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