VRMMOでアフロになったので嫁とデートしたいと思います 作:久木タカムラ
一週間後。
イベント参加者が集結し、熱気と興奮に満ちた町の広場。
開始時間まで残り五分――その不気味極まりない装備と背丈、ついでにアフロのおかげで周囲の目を否応なしに惹くヨメカワイイも、戦闘前のステータスチェックを行っていた。
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ヨメカワイイ
Lv25
HP 730/730〈+530〉
MP 720/720〈+10〉
【STR 5〈-50〉】
【VIT 15】
【AGI 25〈+25〉】
【DEX 30〈+25〉】
【INT 25】
装備
頭 【不死病の束縛帯:鋭敏化】
体 【人面獣心の皮衣:獣性解放】
右手 【罪悪滔天:狩人の執念】
左手 【罪悪滔天:狩人の執念】
足 【人面獣心の皮衣:獣性解放】
靴 【不死病の束縛帯:鋭敏化】
装飾品 【空欄】【空欄】【空欄】
スキル
【チャージショット】【マルチショット】【アローレイン】【ファイアボール】
【リフレッシュ】【ヒール】
【弓の心得Ⅴ】【火魔法Ⅰ】【光魔法Ⅱ】【反響】【施しの報酬】【毒耐性中】【麻痺耐性小】
【HP強化小】【MP強化小】【装填】【
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この一週間、時間の許す限り集めたスキルと経験値。
残念ながらメイプルのような幸運は持ち合わせていなかったため、スキルショップで購入したり掲示板で入手方法が判明しているものがほとんどだが、組み合わせ次第で十分に戦えるだろう。
装備補正によりHPだけは群を抜いている。逆に言えば、それ以外のステータスは同レベル帯の一般プレイヤーと大差ない。外見と比べて控え目ですらある。
装飾品に関しては、このイベントの結果次第だが――何にせよ、対人戦でどれだけ通用するかはやってみなければ分からない。
「ただいまより! 第一回イベント! バトルロイヤルを開始致します!!」
祭の開幕を告げるアナウンスに、会場のボルテージが一気に爆発する。
異口同音に割れんばかりの歓声を上げ、自慢の武器を振りかざすプレイヤー達。その中に重厚な黒い鎧のメイプルも見受けられたが、彼女の場合は少し照れが残っているようで頬が赤い。
「それでは、もう一度ルールの説明を致します! 制限時間は三時間。ステージは新たに作られたイベント専用マップとなります! 倒したプレイヤー数と倒された数、与ダメージと被ダメージの四つの項目からポイントを算出し、順位が決定されます! さらに上位十名には運営より記念品が贈呈されますので、皆様頑張ってください!」
うおおおおおっ、と再びの歓声。
運営のアナウンスが終了すると同時に、広場上空に大小いくつも投影された巨大なスクリーンでカウントダウンが始まり、参加者全員が光に包まれて専用マップへと転送された。
ヨメカワイイが飛ばされた先のフィールドは、子供ならすっぽり隠れてしまうほど背の高い草が生い茂る湿原。濃霧が立ち込めていて他のプレイヤーの姿は視認出来ない。
まあ、見えようが見えなかろうが、最初にやる事は決まっているのだが。
「……【跳躍】」
足元の泥を盛大に巻き上げ、宙を舞う。
この【跳躍Ⅹ】はロングレザーコート『人面獣心の皮衣』に付属する【獣性解放】に内包されたスキルの一つだが、跳ぶ角度を誤ると落下時のダメージで死亡する可能性すらある危ういものだ。
実際、試しに町中で使ってみた所、家を何軒か跳び越えてしまい――軽い気持ちで発動させると壁に激突するか洞窟の天井に頭が埋まる羽目に陥るのは目に見えていた。
しかしながら、便利なスキルである事に変わりはなく。
たった一度の踏み込みのみでヨメカワイイは湿原と森林との境界へ到達、狙撃ポイントとしてはおあつらえ向きな大木の頂上に着地する。
正面に湿原、背後に森林。
森林側からヨメカワイイを攻撃しようとすれば枝葉が邪魔になり、湿原側からはそもそも大木の輪郭さえ見えないほど霧が濃い。
「【
意識を集中した右手の中に、紫色の水晶が生成される。
◆ ◆ ◆
【
HPを50単位で消費してMPを回復する。余剰分は魔力水晶としてアイテム化される。
取得条件
スキルショップで購入
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本来であれば前衛に守られた魔法使いなどが、ポーション切れになった際に代用として使用するMP回復のためのスキル。
しかしヨメカワイイの場合は回復ではなく、むしろHPを減らす点に着目していた。
HPが予定の数値まで減少した事を確認し、いよいよ攻撃態勢に入る。
「【装填】【反響】」
続けざまに、今後の戦闘で一番重要と言えるスキルを使用。
◆ ◆ ◆
【装填】
スキルや魔法、アイテムを矢に装填し撃ち出せる弓専用スキル。他スキルと併用可。
取得条件
弓を装備した状態で、武器やスキルを使用せずアイテムのみでモンスターを一定数倒す。
◆ ◆ ◆
ヨメカワイイが番えた矢には【装填】の効果で【反響】のスキルが宿っている。
イベント前にいくつか実験を重ねた結果、この二つのスキルと、さらに感覚強化の【鋭敏化】を組み合わせる事で索敵能力が大幅に向上する事が判明したのだ。
「【アローレイン】」
当てる事が目的ではないため、やや上向きに放つ。
矢は上空で拡散し、その名の通り雨となって湿原内に降り注ぎ――着弾地点を中心として広がる超音波により、ヨメカワイイは濃霧の中の状況を事細かに把握出来た。
単独で動く者もいれば、数人で徒党を組んでいる反応もある。
剣が激突し、魔法が飛び交う戦闘を高みの見物するのも面白いが、
「嫁が見てるかも知れないし、少しは動きますか……」
包帯の下で悪い笑みが浮かぶ。
「【装填】『七星爆弾』……【魔弓の極技】」
一日一回限定の必中スキル。
けれども、その説明文には『一回』と記されてはいても『一発』とは記されてはいない。単純に次に使う弓系のスキルが必中になると言うのなら。
「景気付けの花火だ、遠慮なく受け取りな! 【アローレイン】!」
数にして五十二人――【反響】で位置を掴んだプレイヤー全員に狙いを定め、二度目の矢の雨を撃ち放つ。ただし、今回【装填】したのは無害な超音波ではなく、とある鍛冶屋に爆発テントウの素材で作成してもらった高性能爆弾である。
「うわあああああっ!?」
「何だ!? 一体何処から!?」
蛇行する軌道で無数の矢が獲物に襲い掛かり、濃霧を吹き飛ばして生まれる爆炎と悲鳴。
敵を光の粒子に変えた凶悪な絨毯爆撃に満足げに頷き、ヨメカワイイはMPとインベントリ内の爆弾の残量を確認して。
「あと五、六回は補給なしでもいけそうだな」
相対する者に絶望しか与えない言葉を漏らしたのだった。