新人魔法少女囲って幼女ハーレム作ろうとしてたらもっとやべぇ奴が転がり込んできた件   作:オーバードライヴ

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風のふくあたりに忘れられた 草の葉と砂を盛つた小さな食器 ああ
この庭の ここに坐つて
家庭の遊戲をして遊んだ それらの手 ちりぢりに歸つてしまつた手を思へば
それらの髮 それらの着物の匂ひもきこえるやう

――――三好達治『南窗集』間庭より「夕燒」


§2 夕燒

 

 

「で、なにがあったのももこ」

 

 あっかんべーをして走り去っていった青髪を見送って北条は肩をすくめた。

 

「私も聞こうと思ったんだけど、だんまりでさぁ。レナはいつも通りなんだけど、かえでもね」

 

 公園の夕日の中でつーんとそっぽを向く秋野かえでの様子をみて、十咎ももこがため息をつく。公園の中は静かだが、さっきまでのやりとりが嘘のようだ。地面にへたり込んでいるいろはを助け起こしながら、北条は笑う。

 

「結構ケンカが多いっていうのはももこから聞いてたけど、魔法つかって逃げるとは思わなんだ」

 

 それを言うといろはは今日何度目かわからない苦笑いだ。

 

「多分あれはレナちゃんが驚いたせいだと思う……」

「まぁ、そりゃあこっちも悪かったけどさぁ、魔力の気配を遮断してたわけでもないし、普通にスタスタ歩いて肩叩いただけだたんだけどなぁ」

「でもあれは私でも驚いちゃうかも……」

「それはあたしも同感」

 

 いろはやももこに指摘され、北条は演技とわかる大げささで自身の額を叩いた。

 

「失態失態」

 

 北条がレナの背後からトンと肩を叩いた途端、その場で飛び上がったレナがそのまま変身して戦闘に入ってしまったのだ。半分以上北条の悪ノリで付き合ったのだが、彼女の固有魔法でいろはと瓜二つな姿になり、驚いたいろはの横をすり抜けて逃走したのである。

 

「ま、そんなこともあるよね。それでさ、ももこたちに用があったんだ」

「レナを驚かしたのはついでか」

「うーん……そっちが本題ではあったんだけどさ。情報が得られなさそうだから、方針転換。ところで、ももこんところでさ、変なうわさの情報ながれてない?」

「変なうわさぁ?」

 

 うさんくさげな表情でももこがオウム返しに返した。

 

「そう。変なうわさ」

「不審者情報とかは時々学校からのメールで来るけど。変な踊るおっさんが出たとか、連れ去り事件未遂とか東であったとか」

「そういう()()()()()()()とは違うんだけどさ……そうだね、例えばの話だけど、魔女が関わってそうなもの……子どもが消えるとか、変な呼び声が聞こえるとか、魔女の口づけが関わってそうなもの」

 

 北条はそう言ってそっとかえでに目を流す。

 

「そう、たとえば『絶交階段のウワサ』とか」

 

 びくりと肩をふるわせるかえで。

 

「絶交階段のうわさ? なんだそれ」

 

 ももこは訳がわからない顔だが、かえでは聞いたことがあるようで、不安そうな顔をする。

 

「ケンカで絶交と言い合った後、仲直りをしようと謝るとどうやら神隠しにあって、ずっと階段掃除をさせられるんだそうだ」

「なんだそれ。だから絶交なんて言っちゃいけないよっていう寓話かなにかじゃないの?」

「わたしもそう思うんだけどね、どうやら七海がそこのいろはお嬢に忠告したらしい」

「はぁ……」

 

 さらに胡乱な顔になるももこ。

 

「またやちよさんは変なこと言い始めたのか。最近どうしたんだあの人」

「まぁ、それはそう思うんだけどさ。それでもあの西側最強を6年以上我が物にし続ける七海やちよだ。あれが根拠もなく動くとは思えない。それはももこ、君もわかってるでしょ?」

「……」

 

 そう言われ、ももこは黙り込む。にらみ合いの隙間でかえでの戸惑う視線が揺れる。

 

「……それが、魔女の仕業だって北条さんも思うんだ」

「まだわからない。それでももしそれが本当なら、これまでに見たことがないタイプの魔女だし、結構ヤバいんじゃないかなってね」

「それで、かえでとレナを使おうって?」

「まさか。そんな人身供養みたいなことを私が許すとでも? さすがの私でもそこまで落ちぶれてないよ」

 

 北条は肩をすくめる。

 

「まぁ、9割9分ガセだとしても、それでも警戒するに足るリスクだと思うよ。少なくとも私はね」

 

 そう言ってももこの横を通り過ぎようとする北条。あわてていろはが彼女を追いかける。

 

「おい、北条さん!」

 

 止めようとしたももこの肩を逆に叩き、北条が耳打ちする。いろはにもギリギリ聞き取れた。

 

「警告だ。かえでから目を離すな。レナの方はコメットでチェイスする」

 

 ももこの目が見開かれる。北条がもう一度だけ肩を叩き、歩き出す。いろはがなんども振り返り、頭を下げて追いかける。

 

「なんなんだよもう……」

 

 いろははがそんな声に後ろ髪を引かれつつも先を行く北条になんとか追いつくと、北条は携帯を耳に当てていた。

 

「スイト? 私だ。いきなりごめん。うん、状況が変わった。状況1-4Y。そうだ。レナちゃんわかるね? そうそう。ももこんところの。うん。ラストコンタクトは里見メディカルセンター南の児童公園。位置はマップコードR14N1。……おっけ、2時間後R13N35で一度ジョインナップ。ヒナとミズにも声かけとくよ。あと、こっちには件の“アイリス・ヘンダーソン”もいるから。……そうだね、スイトとは初顔合わせだ。うん、頼むよ」

 

 いろはにウィンクをしながら、北条は通話を切る。

 

「いろはちゃん。ちょっと寄り道に付き合ってほしいんだけど、いいかい?」

「えっと、それはいいんですけど……今の電話って……」

「コメットカンパニーのサブリーダ。とりあえずこの先二時間はあの子に任せておけば大丈夫。その間に私たちも調べられるだけ調べて合流しよう。ヒナたちも多分そろそろ動けるようになる時間だから」

 

 いろはがどこか緊張した面持ちでうなずく。

 

「大丈夫大丈夫。うちの子たちは優秀だからね。ちょっと知り合い巡りしつつ、いろはちゃんの味方になってくれそうな人に挨拶回りといこうか。列車乗って移動になるけどいい?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はーい、エミリーのお悩み相談室へようこそ……ってホー先輩!? どうしてここに!?」

「や、エミリーちゃん。ちょっと聞きたいことがあってね。10分くらいお邪魔していい?」

 

 商店街の一角、色とりどりの風船などで飾り付けられたやたらとファンシーなスペース――イベントスペースかなにかに使われているらしい――に足を踏み入れた北条といろはにハイテンションな女の子が絡んでくる。どうやら北条と女の子は顔見知りらしい。

 

「ヤバっ、ホー先輩の相談に乗れるかな……」

「えー、相談乗ってくれないのー?」

「いやいやいやっ、嫌いなわけじゃないし、マジでホー先輩なら喜んで女子トークしたいんだけど、大抵ホー先輩が動くときってマジ☆ヤバになってからじゃん……あ! そうだ! あきらっち呼んでくる! すぐ裏にいるから!」

 

 そういって女の子が裏手のスタッフ専用のスペースに飛び込んでいく。

 

「えっと……ここって……」

 

 北条はパイプ椅子に腰掛けた。促されてその隣に座ったいろはに優しく笑って、小さなかんばんを示す。

 

「今の子、木崎衣美里ちゃんっていうんだけど、その子がやってるお悩み相談コーナーみたいなの。エミリーのお悩み相談室ってね、結構人気なんだ。押しが強いのが玉に瑕だけどなかなかいい子だよ。それにあの子も魔法少女で、時々協力してもらうんだ」

「そうなん……ですね……」

「押しの強い子は苦手?」

「いや、そういうわけじゃないんですけど……」

 

 ここでも顔が利く北条さんってどんな人なんだろう……というのはさすがに口に出せずに心の中にしまい込むいろは。その間にもさっきの女の子に背中を押されるようにして銀髪の子がやってくる。えんじ色の制服で女の子とわかるが、私服でジーンズでもはいてたら男の子と勘違いしそうとか益体もないことを考える。

 

「ヤバい相談者って北条さんのことだったの? 衣美里、ちゃんと言ってよー」

「や、あきら君久しぶり。夕方遅い時間にごめんね。そんな私ってクレーマー扱いされてる?」

「いや! ホー先輩はいい人だけどここに直接来るときって結構ヤバい時じゃん」

「やだなーエミリーちゃん。いろいろ情報聞いてるだけじゃん。みんなで幸せになろうよ、ね?」

 

 そう笑う北条の顔が怖い。

 

「えっと……そっちの子は、はじめまして、だよね?」

「は、はい!」

 

 北条に「あきら君」と呼ばれていた人に声をかけられ慌てて背を伸ばす。

 

「そうそう、その子の顔合わせに来たのが理由その①。この子は環いろはちゃん。人捜しの最中で、いろいろあって今コメット(うち)で預かってる」

「あの、よろしくお願いします。環いろはといいます」

「うん。ボクは志伸あきら。よろしく」

「あーしは木崎衣美里。よろしくねろっはー☆」

「ろ、ろっはー……?」

「え? だって、いろはちゃんでしょ? だから、ろっはー。あ! ろっはー、パインやってる? ID交換しとこ! 人捜しだっけ? 力になるよー!」

 

 ぐいぐい来る衣美里に戸惑いながら視線で北条に助けを求めるいろは。人捜しの詳細を根掘り葉掘り聞き出されているのを北条は生暖かい笑みで見守っていたが、エミリーと一緒にいろはの話を聞いていたあきらの手の甲をトントンと叩いて注意を引く。

 

「んで、理由その②の方なんだけど、あきら君、絶交階段のうわさって聞いたことある?」

「絶交階段……? いや、ない、と思う。……わざわざボクに聞いてきたってことは、北条さんはそれを魔女だと思ってる?」

 

 あきらの声のトーンが下がる。首を横に振る北条。

 

「まだわからない。私たちも今日調べ始めたところでね、もし魔女なら相当にやっかいだ。特定の条件を満たした場合に出現する可能性が高い。その場合事前の検知に困難が生じる可能性が高い」

 

 あごの下に指を当てて考えるような仕草をするあきら。

 

「……特定の条件って?」

「ケンカになって『絶交』って言った後、復縁しようと謝ることがトリガーとなる……らしい」

「らしいって……」

「私もまだ二次情報にしか当たってないから確度が低い。それに、もしこれを真とするなら、当事者は全員消え去っているはずなんだけどね」

 

 北条はそう言って首を振った。それを見てあきらが口を開く。

 

「じゃあ、その情報はどこから流れてきたんだろう……ってこと?」

「まあね。そのあたりはガセの可能性もあるけど、ね」

「わかった。少し調べてみる」

「ごめんね、助かる。今詳細を送るよ」

 

 北条がスマートフォンを操作すると、あきらのバックらしい通学鞄から電子音がした。

 

「さっきも言ったけど、まだ二次情報にしか当たってない状況だから話半分で聞いておいてよ。あと……」

 

 そう言いつつ北条は黒いかんざしのような形をしたナニカを胸ポケットから取り出し、あきらの胸ポケットに差し込んだ。

 

「……っ」

「とっておいて。エミリーちゃんの言うとおりとはこっちも思いたくないし、万が一の保険だけどさ」

「……わかった。今後の連絡はパインで?」

「うん。それでいこう。明日夜ぐらいを目処に中間報告をお願い。こっちもわかった情報は随時連携するから。本当なら現在進行形で広範囲で神隠しが進行してることになる」

「どこまで情報流していい?」

「あきら君が信頼してる人まで」

「ボクも信頼されてるんだ」

「なにせ私の一番弟子が認めた人だからね」

 

 そういい、椅子からそっと立ち上がる。

 

「あ、ホー先輩もしかして忙しい?」

 

 衣美里がそう言って首をかしげた。いろははあうあう言いながら北条の袖をとる。

 

「まあね。エミリーちゃん、今後もいろはお嬢が相談にくるかもしれないから、そんときはよろしくねー」

「ろっはーとはパインも交換したし! いつでもバッチコイだよ! そっちの難しそうな話は終わった?」

「いったんの情報共有はね。何かあればまた連絡するかここのぞいてみるよ。それじゃ、またよろしくね」

 

 そう言って外に出ると、すでに時間は夜の始まりと言った雰囲気だった。薄暗い雰囲気のアーケードの外れを歩きながら少し意識して低い声を出すいろは。

 

「北条さん……私スマホ苦手だって知ってますよね……」

「あー、もしかしてパインの使い方苦戦した……?」

「エミリーさんに『マジでわからないの……?』って困惑されました……」

「……それはごめん。でもエミリーちゃんに任せたら大丈夫だったでしょ?」

「それはそうですけど……。そうなんですけど……」

 

 なんだかやるせない感情の行き場を探していたが、その様子を見てクスリと笑う北条。

 

「でもエミリーは不思議な子だけど、いい子だからね。力になってくれるよ。妹さんの話をしても、あの子は否定しなかったでしょ」

 

 こくりとうなずいて答えるいろは。

 

「否定しないどころか、いろいろ聞いてくれて。マシンガントークで、あまり私がしゃべってないんですけど」

「あはは、エミリーちゃんらしいや」

 

 北条は苦笑いだ。

 

「でも、不思議です。なんというか……ういがいたって思っていいんだって、そう感じられるような。話を聞いてるうちに、ういと遊んだ時の記憶とかがふっと浮かんできたりして……」

「なるほど……。君にはそう作用したんだ」

「え?」

「エミリーちゃんは人を元気つける天才だからね。エミリーちゃんのテンポに乗せられてるうちにいつの間にか問題が解決した気になる」

 

 北条はそう言って軽く振り返った。暗くなってきた時間のせいか、相談室の方向がやけに明るく見える。

 

「私は『勝手に問題だと思ってたことと本当の問題を問答無用で切り分けさせる』感じを受けてるかな。それでいろんな気持ちをチューンしてくれる」

「勝手に問題だと思ってたこと……」

「うん。エミリーちゃんと話して解決しないことが本当の問題で、それは本人が向き合わないとどうしようもないもの。そうじゃないものを()()()にかけてくれるんだ。だから今のいろはお嬢にはよかったんじゃない?」

「そう……ですね」

「エミリーちゃんに相談しても妹さんの存在は証明できないけど、それでも君の中での疑念は一つ消えたんじゃない?」

 

 そう言われ、いろはは胸に手を当てる。

 

「私はきっと、私を信じていいんですね」

「君が七海さんに啖呵を切った通り、君が信じる姿が君のあるべき姿だと思うよ。それを評価はまた別の話だけどさ」

 

 そう言って歩きながら伸びをする北条。

 

「痕跡一つ残さずに消えた妹さんを探すのは難しい。でも、きっと一人だけで戦っているわけじゃないんだし、それにこの神浜で活動するなら、私たち以外にも人脈は持っておいた方がいい。エミリーちゃんは人脈の塊みたいな子だからしっかり頼るといいことあるよ。ちゃんと依存先を作っときなよ?」

 

 北条は空を見上げるように視線をあげるが、そこにはアーケードの薄汚れたクリーム色の屋根があるだけだ。

 

「そう、一人で戦ってる訳じゃないんだよ。みんな」

「北条さん?」

「ごめんごめん、気にしないで。まずは絶交階段のうわさの正体を探さないといけないからね」

 

 北条はそう言って視線を前に戻したのだった。

 




大変お待たせしました。

次回はオリキャラでは暫定最後の一人になる子が登場です。よろしくお願いいたします。
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