新人魔法少女囲って幼女ハーレム作ろうとしてたらもっとやべぇ奴が転がり込んできた件   作:オーバードライヴ/ドクタークレフ

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 私は暗い城のやうな家の門に立つてほとほとと扉を敲いてゐる。
 ――この扉をあけて下さい。私を通して下さい。どうぞそつと私をこの中へ入れて下さい。
 すると中からしづかな声が答へる。
 ――お前はそもそも何ものだ? もう今夜の人々はみんな入つてしまつた筈だ。お前は誰に呼ばれてきたのだ?
 ――いいえ、私は詩人です。私はひとりでまゐりました。
 ――それはいけない。この扉は、呼びよせられた者に向つてのみ、開かれることが許される。その他の者にはいつもとざされてあるのだ。お前は帰るがよい。

――――三好達治『測量船拾遺』より「暗い城のやうな家」より一部抜粋


§6 暗い城のやうな家

「……それで、この状況と」

 

 上空から飛び降りてきた北条が給水タンクの上に立つ。小脇に抱えられていた西海瑞波がすぐにトランクを開き、ヒールに入る。水波レナはうつむいたままだ。北条は左耳にヘッドセットを差しているらしく、そこを叩く。

 

「いろはちゃん、こっちはレナちゃんと合流した。場所は変わってない。後どれくらい? ……ん、了解。もう少しで着くね」

「……なんも言わないの?」

「なにが?」

 

 レナの問いに質問で返す北条。東仲里陽奈は北条になにやら合図を送って飛び降りていった。

 

「アンタの情報活かせなかったのよ」

 

 瑞波の『痛いの痛いの飛んで行け』のおかげで、一瞬のうちに全快したことに驚きながらもそういうレナ。北条は瑞波のソウルジェムにグリーフシードを押しつけながら笑った。

 

「そりゃあレナちゃん、甘える相手を間違えてるよ。悪いがわたしには君を赦すことも罰することもできない。いわば他人だ。そして、ももこちゃんほど優しくもなければ、甘くもない。怒鳴ってほしけりゃももこに頼みなさい」

 

 そう言いレナのソウルジェムも浄化していく北条。

 

「こうなることも想定していたが、まさかスイトまでつけて60秒も保たないとは」

「何なのよあれ、アレが絶交階段の正体?」

「もしくはその一端か。今ヒナがももこちゃんといろはちゃんをつれてやってくる。いけ好かないかもだけど七海さんにも協力を仰いである。七海さん側は放っておいても死なないだろうからいいとして、ももこちゃんとレナちゃんはどうするの?」

「アンタ馬鹿にしてんの?」

 

 明らかにむっとした表情のレナ。

 

「いいや。参加意思の確認程度の問いなんだけど、覚悟はあるかどうかを知りたい。可能性は低いとは思うけど、かえでちゃんを迎えに行ったら既に死んでるかもしれないけど、死体とご対面になっても取り乱さない自信はある?」

「そんなこと、あるわけないでしょ!」

「それはレナちゃんに覚悟がないって言ってる? それともかえでちゃんが死んでるはずがないって言ってる?」

 

 北条は獰猛な笑みを浮かべて続ける。

 

「悪いけど、沈黙はナシにしてもらう」

「……レナは、かえでを信じるわ」

「そう。美しい友情に敬意を表するが、この状況では残念ながら不合格だ。君を連れて行くわけにはいかない。……ももこに来てもらったのも無駄にならなくて良かった」

 

 それはすなわち、最初からレナを戦力とは見なしていなかったわけで。ももこも同じように戦力外として扱われていたわけで。レナを保護して下がってもらうための人員として、ももこが扱われたということで。――――――それを理解してしまった瞬間に、レナは北条の胸倉をつかみ無理やり引き寄せていた。

 

「アンタ何様のつもりよ! チームメイトがさらわれて、今にも死ぬかもしれないのに黙って見てろって言うの!?」

「当事者を巻き込まないのが鉄則なの。冷静に対処できずに勝てる相手じゃなさそうだし、引き際を見失って死体が一つから三つに増えるのはさすがに御免被る。使えない人間を連れて行って守れるほど甘い状況じゃない」

 

 淡々とそういったタイミングで、いろはとももこを連れて陽奈が再度合流する。すでにももこは泣きそうな顔をしている。

 

「かえでは……連れて行かれた、んだな」

「そうだ」

 

 端的にそう答えた北条が、ももこを睨む。

 

「レナちゃんには私から連携をかけ続けていたし、ももこちゃん側にいろはちゃんも派遣して、情報は常にアップデートを続けていたはずだ。学校外の放課後のこのタイミング、しかもレナちゃんに謝りに行くと直前で会ってわかっていただろう? なんでここまで対応が遅れる?」

「それは……」

「言葉に詰まるなら無理に聞かないし、答えを聞いてももう遅い。再発防止は後でやる。この件はかえでちゃんの身柄(ボディ)を保護できるか、回収不能と判明するまでコメットが預かる」

「なんだよそれ……なんなんだよそれ!」

 

 ももこが北条に詰め寄ろうと大股で近づくが、その間に陽奈が割り込んだ。陽奈の両手は脇に垂れた姿勢だが、ももこはそれを前に足を止めざるを得ない。

 

「レナちゃんと同じ説教が必要とは言わせないし、自分の気持ちとの折り合いぐらいは自分でつけてよ。君たちのメンタルケアまで気を使ってかえでちゃんの救出作戦を決行できるほど、戦力的余裕はないんだ」

「北条さんそんな言い方……」

 

 いろはが話に割って入る。

 

「こうなるってわかってればももこさんだって……」

「そう、こうなるとわかってれば誰だって防げる。そしてその可能性を私たちは警告した。その可能性が実現してしまった今、状況は感情で解決できる領域を遙かに上回った。私たちだって油断すれば喰われる。猫の手を借りたい状況でも本当に猫を連れてこられては使えないんだよ」

「……要は、あたしたちが『使える』ってことを証明すればいいのね」

 

 レナがそうつぶやくように言い、皆の視線が彼女に集中した。北条が虚を突かれたような顔をしていたが、すぐにそれが無表情に戻る。

 

「どうやって?」

「もう一度アレを呼び出す。かえでに謝ればいいんでしょう? あれが絶交階段なら、呼び出せる。呼び出したらぶん殴ってかえでを連れて帰る。それでいいんでしょ?」

「つまり、レナちゃん自身がアレにわざと()()()()と?」

 

 北条の声にびくりと震えたのはももこだ。それをチラリと見てから北条が続けた。

 

「死体が一つから二つに増える可能性があるわけだけど、わかってて言ってる?」

「北条さんたちがわかっててもわかってなくてもどうでもいいわ。どちらにしてもアレは呼び出すし、かえではレナとももこが連れて帰る。その後はお説教でもなんでも好きにすれば?」

「下手な交渉だ」

 

 肩をすくめて北条が笑った。つまりは『北条が戦力外と評した人間だけで突っ込むよりは提案をのむ方がましだろう』と言い切り、判断を投げてきたのだ。

 

「……いいだろう。レナちゃんの覚悟に免じて同行を認めるが、ヤバい事態になったら切り捨てる。いいね?」

「上等」

 

 そうにやりと笑ってレナはももこの方を向く。

「ももこごめん、もう少しだけ付き合って」

「……謝ってくれるなよ。ばか」

 

 そう言ってレナの頭をそっと抱くももこ。ソレを一瞥して北条はいろはを見た。

 

「いろはお嬢はたしか治癒魔法が使えたね?」

「はい……、治癒が必要な状況になるって……もう……」

「かえでちゃんの状況がわからない。さっきも言ったけどまだ生きている保証はどこにもない。ミズの魔法は自己治癒の発展系だから、怪我がひどい相手には使わせられない。かえでちゃんの消耗が厳しい事態ではいろはお嬢の治癒魔法が頼りになる。そのときは頼むね」

「はい。わかりました。……あの、北条さん」

「なに?」

「かえでちゃんが生きてるって、北条さんは信じてますか?」

 

 その問いに北条は肩をすくめた。

 

「信じてみたいとは思っているよ? 答え合わせを急ごう。時間がこちらの味方をするとは限らないからね」

 

 そう言ってインカムらしきものを押した北条。

 

「スイト、こっちの戦力がまとまった。そちらに合流する。ポイントの指示を」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あららぁ、やちよさんの方が先でしたかぁ」

 

 河川敷にぺたりと座って水面をのんびりと眺めていた南方水渡が横に差した陰にそう声をかけた。古くなった水門の改修をしていますの看板を無視して入り込んだ広いスペースは人も来ず、好立地だった。

 

「ずいぶんのんびりとしているのね」

「他のメンバーがくるまで仕掛けられませんからねぇ。荒事は苦手なんですぅ」

「よく言うわ。嫌いじゃないくせに」

「それは心外ですねぇ」

 

 ふんわりと笑って夕焼けに染まる空を見上げる水渡。すでに槍を手にしているやちよが表情を変えずに水渡を見る。

 

「状況は?」

「私からのアップデートはあまりないですよぉ。レナちゃんとももこちゃんが付いてくる状況になりましたけどねぇ、まぁ()()()()()()()()()()()()()()()()

「正気?」

 

 呆れた雰囲気のやちよに水渡は笑いかける。

 

「レナちゃん、言動はともかく根はまっすぐで助かりますねぇ。コメットがあの結界に乗り込むには、レナちゃんに協力してもらうしか手がないんですよぉ。どうやら別次元っぽくてですねぇ。位置的にはここで間違いないんですが、どうも扉が開かない……まぁ、私とサラが絶交すればいいんですけどぉ」

 

 そう言って手元に再現した魔力製のM1ガーランドの槓桿を引く。飛び出してきた金色の薬莢は地面に付く前に空気に溶けた。

 

「ほんと、最低ね」

「えぇ、最低ですよぉ。でもその言い草は今更ないでしょう、七海やちよさぁん。あなただってこうなることを知ってて待ってたくせにぃ」

 

 語尾が伸びる甘ったるい言い方だが、その言葉は静かにやちよを刺した。

 

「やちよさんがこの南方水渡を誹ったところで、状況は打破できませんし、うまくは回りませんよぉ。問題はこの最低からどう少しでも解決策を見いだすかで、私たちはそれに水波レナを利用した。それを誹るならあなたは北条更紗からの誘いを蹴るべきだったと思いますよぉ」

「……それこそ今更だわ」

 

 下唇を噛むようにしてそれ以上の言葉は飲み込んだ。

 

 今更、言われなくともわかっていた。

 

 絶交階段のうわさとしてファイリングしたそれは、北条から情報提供があった時点でかなりの確度をもった存在だった。それが本当に存在したのなら、水波レナと秋野かえでは否応なく巻き込まれる。だから二人を監視しつつ、情報と戦力を整える。そのために水波レナに北条がコンタクトした。レナに依頼したのは『秋野かえでから逃げ回れ』ということ。実際それで5日間の時間を稼いだ。

 

 その流れを北条からやちよは聞かされていた。同時に、情報と戦力を提供しろとお願いをされていた。程度の差こそあれ誘いに乗った以上、コメットのやり口を誹る資格は七海やちよにはない。

 

「さて、やっときましたね。いい加減仕事をしないと怒られそうです」

 

 そう言って立ち上がる。

 

「サラ、これで全員ですかぁ?」

「そうなるね」

 

 すたん、と飛び込んできた北条に声を掛ける。後ろに続くのは瑞波に陽奈のコメットチームといろは、レナとももこの当事者全員。やちよがいることに明らかに嫌そうな顔をしている陽奈を瑞波が引っ張っているのは最近やっと見慣れてきたところだった。

 

「最終確認といこう。レナちゃんが扉を開けるまでが第一段階。第一段階までの指示出しはレナちゃん自身に頼む。扉が開いたら第二段階。その瞬間に使い魔が登場する可能性が高い。取り急ぎ使い魔を“ラッタル”と呼称する。基本はラッタルに対処することとなるが、ヒナは“ラッタル”に構わず逆侵攻を掛け、当事者以外も結界内に入れるか確認せよ。ミズ、援護してやれ」

「了解っ!」

 

 陽奈が両手の拳を合わせるようにして気合いを入れた返事を返す。瑞波も頷いている。

 

「ヒナが結界内に侵入できた場合、すなわち、全員での逆侵攻が可能な場合をシナリオ1とする。シナリオ1で進行可能な場合、私とやちよさん、ミズがヒナに続行し、退路を確保しつつ“ラッタル”を撃滅する。スイトは残りのメンバーを指揮しかえでちゃんの捜索および周囲の安全確保」

「はあい、承知ですよぉ」

「かえでちゃんを発見できた場合は、レナちゃんとももこちゃん、いろはちゃんで回収班を形成、かえでちゃんを確保、そのまま離脱してもらう。絶交階段の撃破はオプションとするが、かえでちゃんの発見ができない場合、もしくは、かえでちゃんの奪還のためには撃破が不可避である場合には、撃破を優先する。以上がシナリオ1」

 

 北条がさらさらとコメントをしていると陽奈が手を上げた。

 

「突入できなかった場合は?」

「それがシナリオ2だ。その場合はレナちゃんの防御を最優先とする。当事者以外は入れないなら、相手を引きずり出すことになる。単純に“ラッタル”を撃破し続け、親玉を引きずり出す」

「引きずり出せない場合は?」

 

 こんどはやちよだ。

 

「どうしても引きずり出せない場合、もしくはレナちゃんのみが向こうに転移した場合はシナリオ中止だ」

「中止判断は誰がしますかぁ?」

 

 のんびりと声を上げたのは水渡である。

 

「決定順位は私、やちよさん、スイトの順だ。私とやちよさんをロストした場合はスイトが撤退指揮をとれ」

「まぁ、妥当ですかねぇ」

「そもそも私とやちよさんをロストする状況なら、何人生き残ってるかすら怪しい状況だけどね」

「縁起でも無いこと言わないでくれないかしら」

 

 北条の追い打ちにげんなりした表情のやちよ。その返事は肩をすくめるに留めた北条が話題を変える。

 

「相当に厳しい進行となる可能性が高い。各自自衛はできる前提で行動することになるが、間違えてもスイトの指示に逆らわないように、命の危機に直結する」

「サラ、そんなに私は怖いですかぁ?」

「そういう意味じゃないさ。ま……とりあえずは以上が方針だ。疑問点は? ない? よし。じゃあレナちゃんのタイミングで始めようか」

 

 レナが北条にむかってゆっくりと頷く。

 

「スイト、本当にここで合ってるのよね?」

「えぇ、かえでちゃんの魔力反応はここで()()()ので、一応はそうですねぇ。でも本当にレナちゃんが呼び出せるのなら、どこでやっても結果は一緒でしょうけど、ここなら人払いもたやすいですし、ここでやるのがベストだと思いますよぉ」

「そう、わかったわ。人払いお願いね」

「任されましたぁ。扉が開いたらあとは私たちの仕事ですから、任せてくださいねぇ」

 

 そう言ってトンと地面を蹴る水渡。全体を見下ろす位置、解体途中の水門の上に立つ。直後、空気が一度、キンと甲高い音で震えた。

 

「あの、北条さん、今の……スイトさんの……」

「ん? あぁ、いろはお嬢ははじめてか。スイトのアレは」

 

 北条は苦笑いで空を仰ぐ。蛍光グリーンの小さな魔法円が水渡のネコミミヘッドセットを彩っている。

 

「いろはお嬢もこれだけは覚えておいて。戦闘中、スイトの指示だけは絶対だ」

「それは……」

 

 北条が視線を上げたまま続ける。

 

「アレはマッコウクジラみたいなものでね、固有魔法として音響探査能力を持っていて、音響空間を視覚的に認識できるんだそうだ。空間そのものを掌握し続ける、文字通りのバケモノだ。空間を立体視し、最短最速で敵の居場所とルートを丸裸にする空中哨戒機、彼女が空にいる限り、相手からの先制攻撃を許さない“凍てつく目(フローズンアイ)”、それが南方水渡だ。彼女の指示には一も二もなく従え、逆らった次の瞬間には攻撃が突き刺さってる可能性がある」

 

 そう言われる間にもスイトの魔法円はゆらゆらと拡大縮小を続けている。

 

「周囲200メートル圏内の安全を確保しましたぁ。シナリオ2に備えて、防音処置完了ですぅ。レナちゃんいつでもいいですよぉ」

「で、あんな風に音波で関係者以外を狙い撃ちして『あっちに近づくとなんか不快』と思わせて人払いができたりするわけ」

 

 そう言って北条は肩をすくめた。

 

「これで最低限のリスクヘッジはできそうだ。……さて、あとはこっちのやり方次第だな」

 

 そう言って北条は視線を上から前へ、一人空き地の真ん中に移動したレナへと向けた。

 

「ももこ……」

「……どうした、レナ」

 

 ゆっくりとももこが言葉を紡ぐ。

 

「信じていい? なにがあっても、レナとかえでを守ってくれるって」

「当たり前だろ。これまでも、これからも」

「……わかった。信じるからね」

 

 そう言って深呼吸をするレナ。何度か吸って吐いてを繰り返す。

 

「かえで――――――――――! 聞こえてるんでしょ!?」

 

 空間そのものを震わせる大声が響く。

 

「絶交するなんて言ってごめん! レナもかえでとももこのチームに戻りたい! だから、謝らせて!」

「レナ……」

 

 思わずといった様子のももこの声が漏れる。

 

「レナだってちゃんと気づいてたのに! かえでが怒ってていやだってわかってたのに、無理矢理使いっ走りにしてごめん! わざわざフルーツタルト探してくれたのになくて怒ってごめん! ちゃんと他の買ってきてくれたのに怒って投げてごめん! 服汚してごめん! お金返さなくてごめん! ペットの餌代だって知ってたのに無視しててほんとごめんなさいっ! あと、そのペットのことキモいって言ってごめん! 今もキモいと思っててごめんっ!」

 

 まくし立てるように一気に叫び散らしていくレナだったが、息が切れたのか、そこで言葉が途切れる。

 

「そこまでされたら私だったらへこんじゃうかも……」

「最後のは現在進行形だしねぇ……」

 

 いろはの小声に北条も片眉が引きつっている。

 

「全部、全部謝るから……後悔してるから、ずっと、つらかったから、そのつらさも、かえでに押しつけてきたのも知ってるから。だから、だから――――――出てきなさいよ! かえで――――――っ!」

 

 その叫びの余韻も全部消えて、静寂が落ちる。

 

「だめ……なの……? っ!」

 

 いろはの声を断ち切るような金属音。音は頭上――――――水渡の手元のライフルの槓桿が引かれた。

 

「ヒナちゃん、グリッドe6、ラッタル001迎撃(インターセプト)、レディ」

 

 水渡の声が淡々と響く中、レナのすぐ真横を爆発的な加速で陽奈がすり抜ける。

 

「――――ナウ」

 

 虚空を殴りつけるような形になるが、ちょうどそこで空間が()()()。青い稲光のような閃光がほとばしり、顔を出した使い魔をそのまま叩き潰して奥へ、口を開けた異空間へと飛び込んでいく。

 

「シナリオ1で進行する、レナに相手を近づけさせるな!」

「おうっ!」

 

 ももこがレナをかばう位置に入って伸びてきた赤い帯をたたき切る。帯を伸ばしてきた相手は、やちよが槍で黙らせた。それを横目に瑞波と北条が陽奈を追いかけて空間に飛び込んでいく。レナを射撃でバックアップしながら、いろはも飛び込んで、息をのむ。

 

 異様だ。

 

 真っ赤な空間。肺の奥底にべったりとまとわりつくような嫌な空気。クスクスと誰かが笑っているような感覚。魔女の結界ほどナンセンスではないが、それでも十分に狂気に満ちた、有象無象。

 

「これが……絶交階段のウワサ……!」

 

 

 

 

「階段さんは階段さんだよ?」

 

 

 

 

 すぐ正面でそんな声がする。

 

「かえでちゃん……!」

「聞こえてたよ、レナちゃん。来てくれてありがとう。一緒に階段さんをお掃除しよう?」

 

 レナの前にそういって下りてくる、見覚えのある魔法少女としての装束に身を包んだ少女。

 

「なに言ってるのよ。アンタはレナと一緒に帰るのよ!」

 

 水渡が引き金を引いた。その弾丸はかえでに向かい、それが弾かれる。ツタが粉々になって足下に落ちる。

 

「まあ、こうなりますよねぇ。一番面倒な展開ですよぉ」

「階段さんの言うことだし、傷つけるなら許さないよ」

 

 かえでが、光のない瞳を細めて笑った。

 

 

 

「レナちゃんもつれてってあげる、きっとレナちゃんも気に入ってくれるよ」

 

 

 




お待たせしました。やっと戦闘マシマシ突入です。

仕事で死にかけているのでのんびり投稿となりますが、ゆっくり書いて行ければとおもいますのでよろしくお願いします。

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