新人魔法少女囲って幼女ハーレム作ろうとしてたらもっとやべぇ奴が転がり込んできた件 作:オーバードライヴ
……オリ主が出るのはしばらく先です。
あ、幼女は出ます
よろしくお願いいたします。
私はおかしくなったのだ。そんなことを言ったら、きっと誰もが心配するか笑うかするだろう。だから環いろはは静かに黙って曖昧に微笑む。それを続けていたら「何を考えているかわからない」なんて言われたこともあったが、謝ってからまた曖昧に笑っていた。
だからと言って『実は魔法少女なんです』とか、『呪いを振りまく悪い魔女を倒してまわってます』なんて言ったらいきなりカテゴライズがクラスでどこか浮いている子から言動がイタい子にランクアップしてしまいそうで言えていない。
魔法少女なんているはずないと思っていたし、いたとしてもまさか私が魔法少女になるなんて思っていなかった。ましてや私は魔力の破魔矢を放つボウガンで悪を成敗してまわるような人間じゃないと思っていた。現実は非情である。願い事と引き替えに魔法で戦う正義の味方になった以上は嘆いてもしかたないのだけれど。
「……くっ!」
目の前で魔法が弾けて、意識が一気に引き戻される。いけない、最近はどこか上の空になることが増えた。砂の浮いた地面に足を取られないように気をつけながら一旦距離を取る。
美術の授業で見たコラージュのような空間の中、三色団子のような姿をしたナニカが付け狙ってくる。思ったよりも動きが速い。
いろはは、腕につけたボウガンを引く。射程はあまり長くない。それでも魔力を封入した破魔矢なら一撃必殺も狙える。
相手の攻撃は串の頭から団子を飛ばして体当たりしようとしてくるもの。破魔矢が団子に当たっても撃破自体はできたのであまり狙いを正確につける必要がないのは正直助かった。
「いっけぇ!」
近くに寄ってきていたそれを撃破。結界が消える気配がしたので、いろはも魔法少女としての変身を解除する。
「ふー……使い魔なのに強いなぁ……本体はどんなに強いんだろう……」
周囲は一軒家の多い住宅街。この地域は前に何度も来ていたし、小さいキュゥべえに出会ったのもこのあたりだった。このあたりで探せばすぐに見つかると思っていた。
「はぁ……」
でもお目当ての『小さいキュゥべえ』どころか、神出鬼没ないつものキュゥべえすら見当たらないのである。魔法少女として願いを叶えてくれて、戦う力をくれたキュゥべえは、たいていすぐ見つかるものだ。魔女の反応が近かったりすると
「本当に多いよね……魔女の反応も、使い魔の反応も」
問題はこの街には予想よりも多い魔女や使い魔が潜んでいるということだ。今倒したのも使い魔だが、似たような反応はいくつもある。これは全部同一の魔女の使い魔の可能性が高いだろう。それはつまり既に何人も
「放っておけないし、人通りの多いところを中心に……あれ?」
最寄りで反応がある結界に近づいた時、その結界の反応が揺れた。
(だれか戦ってる……?)
魔女以外の魔力反応がその結界から漏れ出てきている。魔女の魔力パターンは先ほどと同じだ。魔力干渉を強めて、中の様子をうかがう。
「――――いけないっ!」
変身しつつ魔女の結界に飛び込んだ。さっきと同じ空間だ。公園の砂場で使うようなスコップやバケツが宙に浮いた、砂だらけの空間。足下の砂を蹴りながら魔力で改めて空間を探る。
「やっぱり……! 多分苦戦してるんだ」
助けないと。まだソウルジェムの濁りは大丈夫なはずだ。とりあえず使い魔に侵入者が来たことを盛大に知らせるようにまず一発、放つ。
「とりあえず中で戦ってる魔法少女と合流しないと……!」
魔力で探査しつつ、目の前に飛びだしてきた使い魔に魔法の矢を叩き込む。一発ではやはり倒れてくれない。かなり正確に射貫いたつもりだったのに。
(強い……っ)
直前まで踏み込まれた。左手で殴りつけるようにしてボウガンをゼロ距離に突きつける。発射、撃破。そのまま前へ。
(とりあえずは助けたらそのまま逃げないと危ないかも……!)
それくらいに相手は厄介だ。どうやって相手を倒そうか考えている間にも使い魔が増えてくる。そのとき、人の声がした。
「ふゅぅ……!」
「――――こっちだ!」
息が詰まったような声の後、バキバキと何かが壊れるような音がした。軽くアップダウンする砂地の向こうで、何やら木の枝のようなものが吹き飛んでいる。乗り越えると同時に矢を放つ。
「こっち!」
「えっ……あなたは」
赤みの強い髪に色づいた木の葉の髪飾りをつけた少女が驚いたようにこちらを見ている。
「いいから! とりあえず一旦逃げて立て直そう!」
その魔法少女が走っていろはの方に寄ってくる。その子に追いすがろうとしたのを迎撃。そろそろ息が上がりそうだ。それでも止まるわけにはいかない。その子が自分の横に並んだタイミング、その子をカバーするように飛び出す。相手が吹っ飛ばしてくる攻撃はなんとか躱し、結界の外に出る。
「ふゅぅ…………」
「はぁ……なんとか逃げられたね。もう、落ち着いた?」
二人とも魔法少女としての変身を解除してへたり込む。なんとか息を整えながらいろはが問えば、その女の子が力なく笑った。
「う、うん、ごめんね。助けてくれてありがとう……」
「ううん、気にしないで。ただ、使い魔が強くてちょっと驚いちゃった」
そう言えば女の子はきょとんとした顔をする。
「強くて……? あの、もしかして、神浜の外から来たの……?」
「え? うん。そうだよ」
「それなら戻った方が良いよ。この町の魔女って強いから……。今の使い魔でも、きっと弱いくらいだもん」
「え、うそ……?」
その言葉に耳を疑う。普段倒している魔女の本体並みに強かったのにあれで弱いのか。
「嘘じゃないよ、だから……」
女の子が言いたいことはよく分かる。この街で戦うということを考えればいろはは『足手まとい』の側だ。それでも
「心配してくれてありがとう。でもね私、まだ帰れないんだ」
「え、でも本当に……」
「あ、えっと、疑ってるわけじゃないの! ただね、ちょっと、ここに来たのは理由があって……」
「理由?」
聞き返されて、少しだけ考える。この子になら話しても大丈夫だろうか。
「うん……“小さいキュゥべえ”なんだけど……この町で見たことないかな……?」
「小さい……キュゥべえ……?」
きょとんとした顔をされる。それはそうだろう。魔法少女になるにはキュゥべえと契約する必要があるので知っているのは間違いないのだが、大小があるなんて聞いたことはないだろう。
「ご、ごめんね、知らないよね……」
「う、ううん、見たことあるよ」
返ってきた答えに一瞬ぽかんとしてしまう。
「…………ホント!?」
「う、うん、最近ね、この町ってあのキュゥべえしかいないから」
「私ね、その子を探しにきたの!」
「ふぇえ!?」
「前に一度見てるんだけど、どこにいるか分からなくて……」
「あ、えっと! それなら急いだ方がいいよ!」
女の子はそう言って結界のあったほうをちらりと見てから視線を戻した。
「え、急いだ方がいい……?」
「うんうん! さっきの結界に居たと思う! 見間違いじゃなければ……だけど……」
「えぇ!?」
言われて魔女の気配を探るが、反応は薄い。大分遠くまで逃げてしまったようだ。それでもまだ、追えないレベルではない。
「教えてくれてありがとう! 私、さっきの魔女を追ってみる!」
そう言って立つ。女の子も立ち上がった。
「でも、慎重にね。あの小さいキュゥべえ、警戒心が強くて逃げちゃうから……」
「うん、分かった。ありがとう!」
「私こそ、助けてくれてありがとう!」
その答えを聞くよりも早く、走り出す。
「……小さいキュゥべえなんて見つけてどうするのかな?」
女の子の声は、聞こえないふりをした。
「う……うん……?」
「あ? 起きた?」
いきなり声をかけられて戸惑う。
「驚いたよー。結界に飛び込んだら死にそうな顔でぶっ倒れてるんだもん。お姉ちゃん大丈夫? 神浜の魔法少女じゃないよね?」
そう言う声に意識が一気に覚醒した。慌てて飛び起きる。
「――――いけないっ! ――――っ!」
「いった……急に体起こしたら駄目だよ」
いろはのおでこに激痛が走って、はね起きた頭がもう一度下へ逆戻りした。落ちた場所は地面より柔らかかった。少し首を振ると。青いデニムのショートパンツが見える。その時になって膝枕をされているとやっと理解する。
「大丈夫?」
やっと目のピントが合ってきた。栗色のどんぐりみたいな瞳が心配そうにのぞき込んでいる。青白い蛍光灯の光が少しまぶしい。
「は……はい……」
「はいダウト。ふらふらなのに無茶をしない」
なんだかてきぱきと手当をされている。この栗色の髪を持った子ども……たぶん、まだ小学生だ……に手首をとられる。
「脈拍は……うん、手首で測れる。アッパーは80越えてる……でいいんだよね?」
そう言ってその子の目が明後日の方向を向いた。その時になって初めて、いろはは側にもう一人誰かがいることに気が付いた。真っ白い髪をした女の子がこくりとうなずくのが見える。白い子は丈の長い水色のフレアスカートをはいている。
「うん、じゃあこれでいいとして……お姉ちゃん、3×7は?」
「え? ……21です」
「4×8」
「32……ですよね」
いろはが面くらいながらも答えると、栗色の子は満足そうに頷く。
「はい、意識も大丈夫そう。ゆっくりと身体を起こそう。みーちゃんも支えてあげて」
白い子に背中を支えられるようにして身体を起こす。もう日が暮れた公園のベンチの上に座った栗色の子がどこか人懐っこい笑みを浮かべる。
「あんまり無茶したらダメだよ? 神浜の魔女は結構強いんだから」
「あ……ありがとう。助けてくれた……んだよね」
「助けたというか……見過ごせなかったというか……押しつけられたというか……」
そう言う栗色の子。その間にも白い子が肩にかけていたポシェットを抱えて、何か弄って見せてきた。
そのポシェットに見えたものは、小ぶりなタブレットが入ったふわふわなクッション付きのケースだったらしい。それを読み終わるぐらいのタイミングを待ってか、今度は栗色の子が口を開く。
「直接助けたのは別の魔法少女の人たちなんだけど、その人たち、ずーっとケンカしてたから二人でお姉ちゃん連れて先に脱出しちゃったの」
どうやらいろはが気絶している間に、いろいろな人がいろいろな形でいろいろあったらしい。
「ごめんなさい……」
「ううん。大丈夫大丈夫。
『私は
白い子――――瑞葉がタブレットを見せながらぺこりと頭を下げる。
「私は環いろは、です」
『名前の書き方は『玉木いろは』さんですか?』
「えっと、『たまき』は王へんを使う、えっと……漢字一文字の……そう、それ」
『環いろはさんですね、よろしくお願いします』
そっか、本当に声が出ないんだこの子。そんなことを考えつつ、頷いて答える。
「陽奈ちゃんと、瑞葉ちゃんだね。二人とも助けてくれてありがとう……使い魔があんなに強いなんて思わなくて……」
素直に頭を下げたいろはに、栗色の子――――陽奈が笑う。
「わたしも引っ越してきた組だからよく分かるなー」
『あーちゃん顔が近いですよ。初対面の人との距離感は気をつけましょうっていつも言われてるじゃないですか』
陽奈にそんなメッセージを突き付ける瑞葉。半分顔にタブレットを押し込むように無理やり距離を放させる。
「それで、いろはさんは何をしてたんですか? 巻き込まれ?」
「ま、巻き込まれたというか……小さいキュゥべえを追いかけてたんだけど……」
「あー……ミニ・キュゥべえかー。最近普通のキュゥべえも見なくなったしねー。グリーフシードの処理だけでも大変だしね」
うんうんとうなずいて見せる陽奈。いろはは、別にそう言うわけじゃないんだけど、とは言わないで曖昧に笑って済ませた。
「ふたりとも知ってるの? 小さいキュゥべえのこと……」
「知っているというか、この2か月ぐらい、普通のキュゥべえを見なくなって、時々小さいのがいるらしいよね、って話を聞いたぐらい。ナマで見たことはないよ」
『私はたぶんアレかな、っていうのを遠くで見ただけ』
「そっか……」
それでもいろはは、あの小さいキュゥべえが幻ではないということは間違いなさそうというだけで、少し安心した。そんなことを考えていると、そっとタブレットがさしだされる。
『いろはさんは市外の方ですよね?』
「えっと……どうしてそれを……」
瑞波はニコリと笑って再入力。
『神浜ってチームで動いている魔法少女が多いんです。なので、魔法少女同士顔見知りで、知らない魔法少女がいたら、まず外の人です』
「たまーに新人さんのこともあるけどね」
「そうなんだ……」
「そうそう。使い魔も強いのが多いから、一人で一匹倒すより、みんなでたくさん倒す方が安全だからね!」
陽奈はハイテンションにそういう。その頭を小突く瑞波。
「みーちゃん痛い!」
『とりあえずこれからなんですけど』
「無視!?」
陽奈の抗議はさらりと受け流した瑞波だが、ものすごい勢いでタブレットの画面を叩く。
『いろはさんはこの後も神浜市で魔法少女として活動するんですか?』
「えっと……」
いろはは、周囲を見回す。目的だった小さなキュゥべえの姿は見えない。
「うん……そうするつもり。どうしても確かめなきゃいけないことがあるから……」
「だったら調整屋に行かないとだね!」
陽奈がそう言う。聞き覚えの無い言葉に首をかしげる。
「調整屋……?」
「私たちの魔力の流れをよくしたりいろいろして、強くしてくれるところ!」
「そんなことが……?」
「神浜だとジョーシキだよ。みんな調整してもらって戦ってるの。特に最近は魔女も多くてなんだかパワーアップしてるし」
『調整屋さんの前にケガの治療をしっかりとしましょう。近くに私達の拠点があるので、そこでグリーフシードを補給して少し休んでから行きましょう』
瑞葉のコメントに陽奈がうなずくが、一瞬顔が曇った。
「そうだね。グリーフシードを持ってかないとだけど……しゃちょーになんて説明しようか……ま、なんとかなるか! 案内するよ! ついてきて!」
陽奈に手を取られるように、いろはは公園を後にする。無人になった公園に、金属質な音が響いた。
「……小さいキュゥべえ、ね」
子供二人に手を引かれるのを見送った影は、青い目を細めて、桃色の髪の少女の言葉を反芻する。
「コメット・カンパニーがそばについたなら、あの子もしばらくは大丈夫そうかしら」
青い影は、そう言うと高く跳ぶ。月が昇るにはいささか早い夜の住宅街に、その影は溶けて消えた。