新人魔法少女囲って幼女ハーレム作ろうとしてたらもっとやべぇ奴が転がり込んできた件   作:オーバードライヴ

3 / 14
やっと、主人公(と勝手に思っている)が登場です。


§3 あるいは、ただのお騒がせ

「――――捨ててこい」

 

 木造アパートの二階、野ざらしの外廊下でいろはたち三人が家主からかけられた第一声はそれだった。黒い長い髪を後ろで一つ括りにしたその家主は、白い襟付きシャツにジーンズというラフな格好だ。不機嫌そうな家主がドアを閉めようとするやいなや、陽奈はすかさずつま先をドアに突っ込んだ。ご近所迷惑にならないか心配になる音量で怒鳴りだす。

 

「しゃちょーしゃちょーしゃちょー!! 待って待って待って! これにはふかーい、ふかーい、わけがありまして……」

 

 もうとっくに日の沈んだ知らない町で、目の前でそんな会話が繰り広げられ、苦笑いを浮かべずに済むのだろうか。そんなことを環いろはは思いながらせめて愛想のよい表情を浮かべてみる。盛大に溜息をついた家主。

 

「2週間前は猫、おとといはインコ! 毎度毎度出かける度に何かしら拾ってきて『飼っていい?』で済む話じゃないの! 下手に噛まれる前に捨ててきなさい! このアパートはペット禁止なの!」

「大丈夫です! 噛みません! ほーら、いろはちゃんは人間のひとでいい子ですよー! ちゃんとしつけてます! 噛まれないからそんなに怒らなくてもいーじゃん!」

「噛まれてたまるかド阿呆っ!」

 

 目の前で陽奈と家主……陽奈からは『しゃちょー』と呼ばれているらしい……が言い合いをしていたが、じっと家主をにらみながら見上げる陽奈に、家主の方が先に折れた。

 

「……ミズ、なんで止めない」

 

 問われた瑞波はタブレットを家主に渡す。それを見てから、まるで品定めをするようにいろはをつま先から頭のてっぺんまでじっくり眺める。

 

「……なるほど“関係者”ってわけね。ミズ、ヒナ、これからはちゃんと事前に連絡ちょうだい。こっちも用意があるんだから」

「ごめんなさい」

 

 瑞波も陽奈の声に合わせてぺこりと頭を下げる。

 

「二人で連れ込んだんだ、お茶の用意とか色々はちゃんと二人でできるな?」

「! はぁい! まっかせて! お客さん用のいいヤツ入れていい!?」

 

 ドアの隙間をくぐってどたどたと上がり込む陽奈。靴もそろえずドアの影に消える。

 

「ミズ、ちゃんとヒナについてあげてよ。あの調子だと絶対濃く淹れすぎるから」

 

 タブレットを本人に返した家主はドアを開け、瑞波も中に入れる。ついでに陽奈の分の靴もそろえた瑞波を見送った家主が笑った。

 

「とりあえず上がって。魔法少女仲間なら協力できることもあるだろう。……いろはさん、だっけ」

「はい……。あの……あなたは」

北条(ほうじょう)更紗(さらさ)。一応、あいつらのまとめ役。こんなナリだけど一応まだ戦える現役だ」

「えっ……」

「こんな大学生みたいなのが魔法“少女”を名乗ってるのが珍しいかい?」

「いえ……そういうつもりじゃ」

「冗談冗談。気にしないよ」

 

 そう言って肩をすくめる家主……北条に連れられ、部屋に入る。お香でも焚いているのか、グリーンノート系の香りが漂う。短い廊下の向こうにはこざっぱりとしたリビングがあった。灰色のソファーに勧められるままに座る。キッチンの方を見るとどうやら紅茶を入れようと瑞波や陽奈が湯を沸かしているらしい。

 

「いろはさん、『外』の人なんだってね」

 

 北条はローテーブルを挟んだ向かいに腰かけつつ、そんなことを言う。テーブルに置きっぱなしになっていたペンと付箋を手に取るその人を見つつ、慎重に言葉を選ぶ。

 

「……はい」

「そんな警戒しなくても大丈夫だよ。縄張りだから出てけって話をするわけじゃない」

 

 さらさらと付箋に何かをしたためつつ、笑う北条。

 

「ちび二人はおっちょこちょいだが人を見る目は確かだよ。あいつらは君を調整屋に連れていくと言っている。なにかお嬢さんの力になりたいとあいつらは思ったとしたら、それはきっといいことだ」

 

 そう言って、付箋を机にペタペタと張っていく。日付といろはの名前。あとは謎の数式が書かれた紙が、ガラスのテーブルに乗せられていく。それがどんな意味を持つのかわからないまま、それを見ていると、北条の声が耳に入る。

 

「私も協力するよ。もちろん、お嬢さんが望めば、だけどもね。……ついでに、左の脇腹辺りをかばっているように見えるけど、できれば治療もしておきたいかな」

「……やっぱりバレちゃいますよね」

「まぁね。魔法少女が大変な目に遭っているのは嫌というほど見てきたから、なんとなく見分けはつくよ。……ミズ!」

 

 北条が声をかけるとキッチンの入り口から白い顔がひょっこりと顔を出す。

 

「グリーフシード使っていいから自分の浄化しておいで。ミズが中途半端で治療をやめてるってことは、退避が必要になったかミズのソウルジェムが注意域かだろう。さっさとキレイにしておいで」

 

 こくりとうなずいて、別の部屋へと入っていく瑞波。そのタイミングでキッチンからそこそこ大きな声が飛ぶ。

 

「しゃちょー! お客さん用の茶葉ないんだけどー! 買っといてって言ったよねー!?」

「ひと月前に買ったばっかりだったはずだよ。お客さん用だっていうのにがぶがぶ飲むヒナが悪い」

「ちぇー……じゃぁいつものティーパックかー。次は買っといてよねしゃちょー」

「はいはい」

 

 陽奈をそうあしらいつつ、肩をすくめる北条に、いろははちょっと笑った。

 

「社長さん……なんですか?」

「あぁ、あれ。ヒナたちが勝手に呼んでるだけなんだけどね、一応私たちのチーム……ほんとはもう一人いるんだけどね、まぁ、4人チームで動いてて、神浜市内で『コメット・カンパニー』の名で通ってるのよ。カイシャ(カンパニー)のトップだからって社長って寸法さ」

「慕われてるんですね」

「私からしたらこんな高卒フリーターにかまって何が楽しいやらって感じだけどね」

 

 そうけらけらと笑う北条。つられたようにいろはも微笑む。

 

「でもそういうの少しあこがれちゃいます。私、あんまり友達っていなかったし、家でも……一人っ子……で……」

「……お嬢さん?」

「……あ、いえ、何でもないです。疲れてるんですかね、なんだかぼうっとしちゃって」

「それはよくない。魔法少女は体力勝負だ。あんまり無茶しないほうがいい」

 

 北条がそう言ったタイミングで瑞波がもどってきた。左手の中指にはまった指輪をなぞり、それをソウルジェムに変える。

 

「ちゃんと浄化した?」

 

 北条が瑞波の透明に近い白のソウルジェムを覗き込む。Vサインを出して答える瑞波に北条はつられたように笑う。

 

「おっけーだね。よし、ヒールかけてあげて。たぶん片付くぐらいにはお湯もわくでしょ」

 

 そう言う間にも瑞波がいろはのとなりにすとんと座る。そのタイミングで一瞬だけ彼女が光に包まれる。次の瞬間には彼女の服が真っ白に変わる。淡いクリーム色ワンピースに白いエプロンドレス、真っ白な頭巾で髪をまとめた姿は、いつか軟膏が詰まった缶の蓋にみた看護婦さんを真っ白にしたような姿だ。ふわっとした服に包まれた両手がいろはの方に伸びる。

 

「お嬢さん、ミズの手を取ってあげて。その子、触れている相手を治療(ヒール)できるの」

「あ、はい……」

 

 差し出された両手に、いろはも両手を重ねる。瑞波の手が暖かくて、そっと握られた手は華奢で、強く握ったら壊れてしまいそうだ。

 

「え……?」

 

 次の瞬間、脇腹の痛みが、ふっと消し飛んだ。治っている感覚というより、文字通り()()()()()()()()()()のだ。

 

「はい、お嬢さん、手を放して大丈夫だよ。あとはミズがなんとかする」

「は……はい……あの、瑞波ちゃん」

 

 笑った瑞波が自分自身を抱くように少し体を丸めたので、いろははちょっと不安になって声をかける。

 

「ミズのヒールは少し特殊……というか、お嬢さんのケガをミズの体に移して、それを治療するんだ。自己治癒力は折り紙付きだし、数秒でなんとかなる」

 

 それはすなわち、一度いろはのケガを瑞波が肩代わりしたということで。驚いて瑞波をのぞき込もうとするが、すぐにVサインで答えが返ってきた。変身を解除して彼女の手にソウルジェムが残る。それをリーダーに見せに行く。

 

「うん、穢れも大丈夫そうだね。お疲れ様、ミズ」

 

 頭を撫でられ、瑞波はどこか気恥ずかしそうだ。撫でられ続けながら、何かをタブレットに打ち込んでは、北条に見せているのがほほえましい。

 

 そのころになって、注意深くお盆を運ぶ陽奈が部屋にやってくる。

 

「あー! みーちゃんだけズルい!」

 

 そう膨れながらも、人数分のティーカップを置く陽奈。レモンの輪切りも置いてくれていて、ストレートと選べるようになっている。

 

「ヒナもお疲れ様。あとでなでてあげるから」

 

 渡された紅茶をすする北条。その隣……瑞波を挟んで反対側だ……に座り、感想を求めるようにじっと北条を見つめる陽奈。その視線に気が付いたのか、その頭を撫でつつ、北条はカップを置いた。

 

「ん。おいしい。……それで、そろそろ本題に入ろうか。外の方だと帰りの時間もあるだろうしね」

 

 そう言って笑った北条はまっすぐいろはの方を見た。

 

「できれば君の力になれればと思っている。お嬢さんも気が付いているかもしれないけれど、ここのところ神浜は魔女がやたらと多い。戦力は整えておきたいし、共闘できるなら共闘したい。協力をするためにはお嬢さんが何を求めてこんなところに来たのか知る必要があるのだけど、……どうして神浜に?」

 

 まっすぐに聞いてくるその声に、一度深呼吸をするように間をおいてから、いろはは口を開く。

 ……ずっと目の前でイチャイチャされているのは、見なかったことにした。

 

「……小さいキュゥべえって、ご存知ですか?」

「最近この街に出るようになったのだね。入れ替わりで普通のキュゥべえが一切でなくなったけど」

 

 北条がさらりとそう言う。

 

「やっぱり……この街にいるんですね」

「つまりお嬢さんはその小さいキュゥべえを追ってこの街に?」

「はい……。小さいキュゥべえを見てから、私、おかしくなったんです」

「おかしくなった?」

 

 こてんと首をかしげる陽奈。

 

「毎日毎日、知らない女の子が出てくる夢を見るんです。小さいキュゥべえを見た後から、ずっと。同じ夢ばっかりみるんです。その知らない女の子を見る度に、胸がざわついて、なにかが欠けているような、大切な何かがなくなったような、そんな気になるんです……」

「ふむ……」

 

 それを聞いた北条は手元の付箋に何かを書き留める。

 

「なにかが欠けているような感覚を埋めるなにかに、小さいキュゥべえが関わっているかもしれない……お嬢さんはそう思うんだ」

「はい……」

「それを確かめるために神浜市に? 前から時々来てたとかかな?」

「はい。この辺りにはよく来てたので」

「それはどうして」

 

 北条がさらさらと付箋に何かを書き留める音が響く。

 

「あぁ、言いたくないなら言わなくていいよ。無理に聞きはしないよ。……ちなみに、最後に小さいキュゥべえを見たのはいつどこで?」

「たしか……3か月前くらい前に、新西区の……大きな病院の側です」

 

 北条のペンが止まる。

 

「……この辺りの大きな病院となると、市立大付属か里見メディカルセンターか……。まぁその辺りで探してみるのもいいかもしれないね。まぁ、どちらにしても、今日は調整屋に行って終わりにしようか」

 

 北条はそう言って、少し笑った。

 

「帰りが遅くなるのはあまりよくないだろうし、紅茶を飲んだら出発しようか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あら、今日は千客万来ね」

「調整屋、一人新顔を連れてきた……っと。先客はももことかえでちゃんか。久しぶり」

「更紗さん、久しぶりだね。最近おとなしいから死んだかと思ったよ」

「冗談。ももこが派手なだけだろう?」

 

 廃墟の奥、一時期の好景気を思わせる大きなステンドグラスのある部屋に皆で入ると、薄暗い部屋のなかにはすでに三人ほど人がいた。きれいな金髪を揺らす制服姿の女の子に、北条は肩をすくめて見せた。緊張から少しその後ろに隠れるようにしていたいろはが中を見て少し驚いたように目を見開く。

 

「あ……あなたは……」

「あ、昼間助けてくれた……」

「あれ? いろはちゃん、かえでちゃんと顔見知り?」

 

 陽奈が驚いたようにかえでといろはを見比べる。瑞波も驚いた表情をしていた。

 

「苦戦してた時に助けてもらったので……」

「ここに来れば会えるかなと思ってたんだ。かえでがお世話になったし、お礼を言いたくてね。……一応魔女結界の中で会ってはいるんだけど、たぶん覚えてないと思うから“はじめまして”だね。十咎ももこだ。うちのチームのかえでを助けてくれたみたいだね。あたしからもお礼を言うよ」

 

 そう言って差し出された手を取るいろは。

 

「環いろはといいます。あの……結界の中で会ってるって……」

「かえでから連絡があっていろいろ追いかけてたんだけどね、“三色ダンゴ”にやられそうになってるところで、そっちの陽奈や瑞波、あともう一人いたんだけど、まぁいろいろと鉢合わせたんだ」

 

 ももこは半分困ったような顔をして、頬を掻きながらそう言った。

 

「とりあえず君の出血がひどかったから、回復(ヒール)ができる瑞波たちに頼んで先に離脱してもらったの」

「やっぱりコメット(うち)に押し付けたのはももこだったか。うちは便利屋じゃないんだよ?」

 

 北条があきれたようにそう言うと、ももこは少しむっとしたようで、唇を尖らせる。

 

「んでも、()()やちよさんに目をつけられるよりはマシだし、ケガもケガだったからね。あの小さいキュゥべえも見えなかったし大丈夫かなって」

「私のケガ、そんなにひどかったんですか?」

「あー、まぁそりゃ覚えてないよね……」

 

 陽奈がどこか苦い笑みを浮かべる横で、瑞波がタブレットをタップ。

 

『魔法でなんとかなるレベルではありましたよ』

「ミズそれフォローになってないからね」

 

 北条に即ツッコミを入れられ膨れる瑞波。

 

「んで、そんな状況で更紗さんところに拾われたら当然ここに来るだろうと思ってさ。使い魔にやられたかえでの調整も兼ねて、ここに来たってわけ。今回その子の調整代はあたしら持ち……というか、かえでの出世払いでもたせてもらうよ」

「えっ、私持ちなんですか?」

 

 かえでがすっとんきょうな声をあげる。

 

「そこは今後の活躍でカバーしてよ」

「ううっ……はい……」

 

 そんなやり取りを見ながら北条は笑った。

 

「グリーフシードを温存できるのは正直ありがたいし、今日は甘えとこうかな。そろそろ本題に入ろうか」

 

 北条はそう言って、奥でにこにこしていた銀髪の女性を手招きした。

 

「お嬢さん、こっちの人が調整屋の」

「八雲みたまです。これからご贔屓に。いろはちゃんだったわね」

「はい、よろしくお願いします」

「たぶん説明するより体験した方が早いから、ささっと始めちゃおうか。それじゃ、服を全部脱いで診察台に登って?」

「ぜ、全部ですか?」

「そ、全部♪」

「おいおい、調整屋、新入りをからかってあげるなよ。もしかしたらコメットの新メンバーになるかもしれない人材なんだぞ」

「あら、小学生囲ってご満悦な更紗さんのストライクゾーンからは外れてると思ったんだけど」

「え、えっ……?」

「とりあえずいろはちゃんは脱がなくていいから。ソウルジェムを調整するんだから服脱ぐ必要ないから」

 

 みたまと北条の言い合いに困惑しているいろはにそっと助け船を出すももこ。

 

「う、ウソだったんですか?」

「はぁーい、ウソでした」

 

 こ、この人にソウルジェム弄らせて大丈夫だろうか。そんなことを考えるいろはだった。

 

 




ソウルジェムを弄るってどんな気持ちなんですかね……
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。