新人魔法少女囲って幼女ハーレム作ろうとしてたらもっとやべぇ奴が転がり込んできた件   作:オーバードライヴ

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ハーメルンの特殊タグシリーズは優秀


§4 いまだに、善悪を図るにはまだ早い

「……かえでちゃん、たしか前にも調整受けてたと思うんだけど、再調整なの?」

 

 いろはが診察台の上で目を閉じているのを陽菜や瑞波が見守るなか、北条がそう声をかける。

 

「は、はい……」

「たまたま三色ダンゴの強いのに当たったんだとは思うんだけどね。それにしても使い魔にさくっとやられるのはさすがにマズイからさ」

 

 ももこが補足するのを聞きながら、北条は腕を組んだ。

 

「ももこ、どう見る?」

「かえでのこと……じゃないね、聞きたいのは。最近の動向ってやつ?」

「まあね」

 

 北条はそう言ってステンドグラスの方を見る。

 

「神浜の魔女の出現率が高すぎる。今、コメット(うち)のスイトにも探りを入れてもらっているが、妙に魔女が多い……それも、加速度的に強くなっているような印象がある」

「……更紗さんもやっぱりそう思うかぁ。グリーフシードの供給って面では喜ばしいかもしれないけど、これじゃあキリがない。いくらかえででも使い魔に歯が立たないなんて事態、妙だ」

「ご、ごめんなさい……」

 

 真正面からリーダーに一刀両断され、かえでが目に見えて凹む。それにわたわたするのはなぜか陽奈である。

 

「大丈夫! ほ、ほら! 距離感! かえでちゃん近距離苦手だから!」

「うぅ……どうせ苦手だもん……戦うのダメダメだもん……」

「あーあ、かえでちゃん泣かせた。ヒナ、とどめを刺してどうする」

 

 野次を入れる北条に溜息をつく瑞波。陽奈のわたわた度合いが増していく。

 

「ちがっ……! 遠距離戦! アウトレンジならうちのしゃちょーにも勝てるっ!」

「ゼロ秒でウソだとわかる慰めなんていらないよぉ!」

「あら? なら一緒にトレーニングしてみる? かえでちゃんみたいな子ならお姉さん大歓迎だけど」

「……更紗さん、あんたが言うと変な意味にしか聞こえない」

 

 ももこが頭を抱えるが、そう言われた北条はどこ吹く風だ。

 

「ももこもうちに来るなら大歓迎だよ?」

「だから変な意味にしか聞こえないって……これさえなければいい先輩なんだけどね」

「これさえとは失礼な。北条さんの生きがいなのに」

「悪ノリしてるでしょ……それで理子ちゃんとかまなかちゃんとかに引かれるんだよ」

「えー、理子ちゃんは今でもよくメッセージくれるよ? あの子ソロでやってるみたいだけど、『困ったら頼らせてください!』って可愛いんだもう」

「童女趣味か……」

 

 ももこが本格的に顔を引きつらせている。それに気が付いた北条は肩をすくめる。

 

 

「でもまぁ、かえでちゃんの戦闘は一回見せてもらったことあるけど、レスポンスさえ改善されればかなり()()()と思うんだけどね。実際なにがあったの?」

「えっと……。使い魔を追い込もうとしてたら、なんというか……これまでがむしゃらに向かってくるだけだったのに、なんだかバラバラに逃げたり、いきなり後ろに回りこまれたり……」

「いきなり頭がよくなった?」

 

 そうももこが聞き返すと、こくりとうなずくかえで。

 

「うーん、そんなのだったっけ“三色ダンゴ”。確かに砂場の魔女は最初の討伐が遅れて使い魔が大量に分散したせいで、めんどくさいヤツではあるけど。そのうちの何体かは魔女になってる頃合いだろうし」

「突然変異……としても妙かな。喰った人間の脳を取り込んでるとかじゃないといいんだけど」

 

 北条の声に明らか嫌そうな顔をする小学生組の陽奈と瑞波。

 

「そ、それは嫌かな……。みーちゃんはどう思う?」

 

 話題を振られた瑞波が首を横にブンブンと振る。白い髪がその動きを後から追って、デンデン太鼓のように彼女の頬を叩いた。

 

「大丈夫大丈夫。そうなったらしゃちょーが全部ぶっ飛ばしてあげるから」

「えー? でも最近しゃちょー、後半バテて私たちに魔女の処理任せること多くない?」

「多くない! これでもまだ10代! バテてなんてないっ!」

 

 北条がそう言い張るとそのやり取りにかえでが笑った。ももこもつられて苦笑いだ。

 

「で、でも……どうしたら、強くなれるのかな……」

「場数を踏むしかないだろうけど……ヒナ、今度かえでちゃんと手合わせしたら? 遠距離の攻撃手段皆無なんだからお互い勉強にはなるんじゃない?」

 

 北条の提案にポンと手を打つ陽奈。かえでとさっそくいつやるか決めようと詰め寄り、かえでは困惑。瑞波が陽奈を引き剥がすまでがワンセットだ。

 

 そんなやり取りに苦笑いを浮かべるももこの肩をトンと叩いた北条。そのまま部屋の外に出るように足を向ける。ももこはいぶかしみつつもそれについていく。外開きの建付けの悪いドアを開けて外に出れば、中の小奇麗さとは裏腹に、どこかほこりっぽいがらんどうの空間が現れる。夜の中で少しばかり涼しい風が二人の髪を揺らした。

 

 

「……更紗さん」

()()

 

 

 苗字でももこを呼び捨てた北条は、廃墟の壁に体を預け直した。コンクリートの破片、割れたガラス、それらをうつろに見据えた北条の雰囲気に、ももこは言葉と一緒につばを飲み下す。

 

「どういうつもりだ」

「どういうつもり……って」

「今調整を受けているあのお嬢さんのことだ。うちに押し付けた理由。七海がカバーに入っていることをわかって私たち(コメット)を巻き込んだ理由。……そして、小さいキュゥべえの件。こっちは口に出してないのになんで十咎が知っている?」

「それは……」

「あのお嬢さんがかえでちゃんに小さいキュゥべえのことを聞いていた、だな。……なぁ十咎、わかってて押し付けただろう? そして、それを説明するためにもここで私たちを待っていた、違うかい?」

「……更紗“先輩”にはお見通し、か」

 

 軽く髪をかき上げたももこ。

 

「舐めるな。こちとらほぼほぼ6年魔法少女をやってんだ。それで」

「……追ってるのがやちよさんだからだよ」

 

 北条の隣にももこが並ぶ。

 

「最近のやちよさんは手段を選ばない。根は変わってないのもわかってる。たぶんやちよさんは優しすぎるんだ。でもあの子にはあの子なりの理由があるんだと思うし、それを外野がわめいてやめさせるのはあんまりじゃないか。だから助けてやりたいと思った」

「それが理由なら、十咎は甘すぎる。……七海の比じゃないくらい、こちらも手段を択ばないことを知っているだろう」

「……更紗さん、さっきからどうしたんだよ。怖い顔しっぱなしだ」

 

 ももこは不安そうに北条を見つめる。北条は胸ポケットから自分のスマートフォンを取り出すとロックを解除した。

 

「お嬢さんは小さいキュゥべえを探している。()()を見て以来、知らない女の子の夢を毎日のように見るんだそうだ」

「夢……?」

「夢のはじまりと小さいキュゥべえを見た時期が一致しているらしい。彼女が小さいキュゥべえを見たのは新西の大きな病院の側、おおよそ3か月前だそうだ」

「それって……」

 

 北条がスマートフォンを叩いたタイミングでももこのスマートフォンが着信音を立てた。メッセージアプリが通知を知らせる。

 

「キュゥべえが一切姿を見なくなったのが3か月前、小さいキュゥべえが目撃された情報は2か月前がこれまでで一番古かった。……あのお嬢さんはキュゥべえが目撃されなくなった直前直後に小さいキュゥべえを目撃していたことになる。現時点では一番に小さいキュゥべえを目撃した人物ってわけだ」

 

 スマートフォンをのぞき込んでいたももこの目が見開かれる。

 

 

北条更紗

 

この人は環いろはさんです。

『サンドボックス』で助けました

同じタイミングで結界に入ったや

ちよさんとももこさんが使い魔を

何とかしている間にサンドボック

スから連れ出して治療しました。

市外の人で調整屋さんに紹介が必

要です。

19:21

 

小さいキュゥべえについて何かを

知っている様子ですが、詳しくは

まだ聞いていません。

19:21

 

でも、いろはさんを追うように小

さいキュゥべえが飛び出したのを

遠くにですが見ました。

たぶん、小さいキュゥべえもいろ

はさんを追っています。

19:21

 

それと、治療のためにいろはさん

に触れたとき、いろはさんの記憶

が入ってきちゃいました。

19:21

 

いないはずのだれかと話してます

少し変です。

19:22

 

記憶が変になってるかも

19:22

 

 

 

 

「……これ、瑞波ちゃんか」

「ミズの固有魔法は、十咎も知ってたよね」

 

 北条はそう言って携帯の画面を落とした。

 

「『傷を奪う能力(スティール)』……触れた相手の傷を瑞波ちゃんが奪う……」

「そうだ。言うまでもないけど、あのお嬢さんのプライベートでもあるから他言無用ね。ミズにも厳重注意をしてある」

「……ならなんで、アタシにわざわざ伝えたんだ」

「十咎ならあの子を捨て置かないからさ」

 

 その声にももこが顔を上げる。

 

「ミズの能力であのお嬢さんの記憶が流れ出たということは、その記憶自体は彼女にとって“あるべきものではない”ものということになる。……あの子にはまだ何かあるんだ。それがどう転ぶかわからないけど、この街に牙をむくなら、私たちは彼女を排斥する必要に駆られる……かもしれない」

 

 北条はそう言って寂しそうに笑う。

 

「その時に、彼女には理解者が必要だろう。その時に理性をもってそのロールをこなせるのは、現状ではあんたぐらいだよ。あんたがあの子をうちに押し付けたんだ。それぐらい差し戻しても罰はあたらないでしょ、ももこ」

「……なんというか、いまだに更紗さんのことがよくわからないよ。打算コミコミの今の更紗さんと、陽奈ちゃんたちの前の更紗さんと、どっちが本物なんだ」

「どっちもだよ。私は……私の正義を徹すだけ。そのために必要ならば、感情も理性も利用する。都合よく頭は切れる方だしね」

「だったらその無駄に自信家なところもなんとかしなよ。あとロリコンなところ」

「性格だけは性分だから勘弁して? 別にももこがストライクゾーンから外れたとかじゃないんだよ?」

「誰がそんな心配するかっ!」

 

 ももこが吼えるのを聞いて高らかに笑う北条。

 

「そういうことにしとこう。私もちっちゃい子たちを守れればそれでいいしね。……そろそろ」

 ――――戻ろうか、といいかけたタイミングで、調整屋の扉が外に勢いよく開き、人が飛び出していく。

 

「いろはちゃんっ!?」

 

 ももこが驚いたような声を上げるが、桃色の髪は立ち止まることなく、外へと飛び出していった。ここは五階。魔法少女なら飛び降りてもなんら問題ない高さだが、そんななりふり構わず飛び出すことの方が大問題だ。

 

「ヒナ、状況報告(インフォメーション)

 

 いろはを追いかけるように飛び出した陽奈を北条が呼び止める。

 

「いろはちゃん、キュゥべえにかなえてもらった願い事覚えてなくて、それを小さいキュゥべえに確かめるって言って飛び出した!」

「あの子おとなしい顔して相当アグレッシブだね。了解。ヒナ、ミズ、お嬢さんを追いかけて。詳細を調整屋に聞いてから私も追いかける」

「りょーかいっ!」

 

 瑞波も頷いて答えると、夜の街に飛び出していく。

 

「さて……。このタイミングだと、七海の方とエンカウントするかな。まあ顔合わせしておくこと自体は悪くはないけど……。ま、何とかするしかないか」

 

 北条はどこかのんびりとそう言って、中を覗き込む。

 

「んで……みたまさん。ヒナの言ってたこと、合ってるの?」

「え、えぇ……なにを願ったのかいろはちゃんに聞いたら、急に頭押さえて苦しみだして……。小さいキュゥべえになにかあるんだって……」

「おっけー。ありがと。情報提供感謝するよ。情報代替わりと言っちゃなんだけど、今晩だけは周囲の魔女狩っとくから」

 

 北条は笑う。夜風が強く吹いた。

 

「それじゃ、追いかけるとしますか」

 

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