新人魔法少女囲って幼女ハーレム作ろうとしてたらもっとやべぇ奴が転がり込んできた件   作:オーバードライヴ

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バリバリの戦闘回、いきなり戦闘だらけで頭パンク気味ですが、どうぞ。


§6 いつかは、たどり着くべき場所

 結界に飛び込んだ瞬間に敵に囲まれる。どうやら相手も用意万端だったらしい。

 

「まぁ、そりゃそうだよねっ、と!」

 

 北条の姿が一瞬で変わり、真っ黒な燕尾服の袖口から飛び出した刃渡りの短いペーパーナイフを、適当に横に腕を薙ぐようにして周囲に放り投げた。過たず魔女の使い魔に突き刺さり、後方へと弾き飛ばす。そうして稼いだ距離を活かして、真上に飛び上がる北条。

 

「ヒナ!」

「はーい! いっくよー!」

 

 爆発的な加速で前に飛び出した陽奈。手近な敵を相手の懐に入りこむと、団子のような見た目をしたその魔女の手下を、勢いを殺すことなく殴り飛ばす。その瞬間に青い稲光がほとばしり、面白いほどの勢いで手下が奥の方へと吹っ飛んでいく。

 

「ヒナ、五時方向に敵性個体(ホスタイル)

見えてる(アイデント)!」

「ミズ、バックアップお願い、アクセル、二秒後」

 

 瑞波が筒状の短い笛を一回吹いた。瑞波の手元の大きな薬箱がカタンと音を開けて開き、そこから飛び出したカプセルのようなものが空中で弾けた。光の環が底を中心に広がる。

 

「えっ……」

 

 驚いたいろはのそんな反応も追い抜いて、その光の環が弾ける。次の瞬間、体が一瞬ふわりと浮いたような気がした。笛が鳴る、長音一回、短音一回。爆発的な加速で北条が前へと飛ぶ。

 

「今のって……?」

「西海さんの能力強化。体感的には身体能力強化……加速度を稼ぐって感じかしらね」

 

 やちよの言葉に大きくうなずく瑞波。その合間にも北条は空中高くに陣取り、後方から飛び出してきた新手の足止めをしていく。その間に第一陣は大かた陽奈が殴り飛ばしている。……少し前にアレに大苦戦していたいろはの口から感嘆の声が漏れる。

 

「す、すごい……」

「空中戦と電撃戦が専門の魔法少女集団『コメット・カンパニー』……あれはあれで規格外だから、あれがこの街のスタンダードだと思われるとちょっとこっちもしんどいかな」

 

 ももこがそう苦笑いしながら、弧を描く独特な形をした刀を担ぎ直す。

 

「さて、入り口で待機しててもあれだ、そろそろ動こうか」

「そうね。せっかく西海さんに強化してもらったんだもの。効果が切れる前になんとかしましょう」

 

 やちよが再度前に飛び出していく。正面から使い魔の集団がまだまだ飛び出してくる。魔女もどうやら必死らしい。

 

「ヒナ、3時方向に仲間(フレンドリ)、七海さんをぶん殴っちゃだめよ」

「えー!」

「『えー』じゃないでしょ、『えー』じゃ」

 

 やちよも正面の加勢に入ったことで敵の動きが変わる。陽奈とやちよを包囲するように集団戦に持ち込もうとしている。

 

「ここまで私たちを無視されるとやっぱり癪には触るよね」

 

 それを見たももこがどこか不満げに鼻を鳴らした。

 

「敵が固まってくれてるからあのあたり蹴散らそうか。いろはちゃんボウガンってことは遠距離だよね? ここからでも狙える?」

「はい! やってみます」

 

 いろはがボウガンを構え、正面から離れたところを狙う。真正面だとやちよや陽奈が射線に入ってしまうのだ。撃った反動で腕が大きく跳ねる。

 

「えっ……」

 

 突き刺さった矢が一発で跡形もなく使い魔を消し飛ばし、それにも驚く。これまでと同じぐらいの魔力を込めて撃ったつもりだった。予想外の衝撃と予想外の威力。

 

「これってまさか……」

「調整がうまくいってたみたいだな。なによりなにより。うちが代金を払った甲斐があったってもんよ」

 

 ももこは上機嫌に笑い、怒り狂ってダンゴを吹っ飛ばしてくる使い魔を真っ二つに叩き切る。

 

「それじゃみんな前進。コメットとやちよさんがヘイト稼いでいる間に抜けるよ! とはいえ、いろはちゃんは飛ばし過ぎないようにね。この後が本番なんだから」

「はいっ!」

 

 砂の浮いた足元に気をつけながら走っていく。接近戦は分が悪いと敵も察したのか、遠距離からダンゴが飛んでくるが、ももこが真っ二つにしていく。ももこの背後に入ろうとしているのをいろはが打ち抜けば、ももこも笑う。

 

「サンキュ!」

 

 いろはに向けられたその声に笑みが浮かんでしまう。そうか、笑える余裕があるのかと、その時になって気づく。背後でバキバキと音がして、背中を守るように木の枝の壁が立ち上がっていた。かえでがすでに半泣きになりながら操っている。

 

「でも、ちょっと、数が……多い……!」

「かえでちゃん! あの壁まで道作って! こう、その木でババーっと二つ壁作る感じで! できる?」

 

 陽奈がそう叫びながら結界の奥……魔女がいるであろう空間とを隔てている壁を指さす。

 

「で、できるけど……どうして?」

「いいから!」

 

 陽奈が急かすようにそう言うと、あわててかえでが杖を振る。両脇に壁を作るように植物のツルのようなものが、バキバキと音を立てて伸びていき、使い魔といろはたちの間を二分した。次の階層までの一本道ができる。その通路が完成する直前、陽奈が通路の中に飛び込んだ。

 

「ナイスかえでちゃん、スゴイじゃんっ! 私のイメージ通り!」

 

 陽奈がそう言ってブイサインを作ると、かえでもどこか恥ずかしそうにブイサインを作って答えた。その頭上をペーパーナイフが光の軌跡を描きながら飛びぬけ、通路の終点の結界の境界線に突き刺さる。円状の切り取り線でも描くように突き刺さったそれは、遠くからでもわかるほど、魔力がこもっている。ナイフの背から細いピアノ線のような魔力の糸がつながり、北条の手元に集まっている。

 

「ヒナ、ブリーチ!」

 

 瑞波が陽奈に向かって何かを投げた。ソレを背に受け、前に飛び出した陽奈が壁を殴りつける直前、魔力の糸が燃える。陽奈が殴りつけるのと、ナイフが破裂するのはほぼ同時。強烈な稲光が走り、衝撃波が吹き抜ける。強烈な砂ぼこりが治まると結界の壁にいびつな円形の虚空が開きショートカットが開通。

 

「でも、陽奈ちゃんのほうがすごいよぉ……」

「いくら瑞波ちゃんのバフやら調整やらでブーストしまくって、更紗さんのナイフで脆くしてるとはいえ……ふつうは入り口探すよなぁ……」

 

 引きつった笑みを浮かべるももこに、いろははどこか救われる。このレベルで戦えと言われると正直ついていける気がしない。

 

「まぁこれで魔女とご対面なわけだね」

 

 あっけらかんとそういいつつ、北条が下りてくる。突入してからおそらく三分も経っていない。いろはのローブをつんつんと突かれる。驚いて振り向くと瑞波だった。直後薬箱からやたらと開閉し、一瞬頭痛を覚えるいろはだったが、それもすぐに収まり、目を白黒させる。

 

「あーあ、ミズ。そんなにバフを山盛りにしたら、さっすがに七海さんにバレると思うよ?」

 

 北条は口調こそあきれているものの、顔は笑っていた。その間にも瑞波は手にしたグリーフシードで自分のソウルジェムを浄化している。そんな様子にいろはは不安そうだ。

 

「えっと、あの……」

「でもまぁ、いいか。魔女をお嬢さんが倒せばいいわけで、私たちが直接手を出すわけじゃないんだし、後で小言を言われたら言われた時だね。というわけで、お嬢さん。ここから先は一人旅だ。といっても、七海さんとももこは突っ込むだろうけど手出しはしない」

 

 虚空の入り口で北条が笑って見せる。

 

「大丈夫! 何かあったらカバーはするからね!」

 

 ももこもそう言って親指を立ててみせた。こくりとうなずいてその入り口に立ったいろはに、北条は静かに問いかける。

 

「この先にいる『砂場の魔女』は遠距離攻撃がキツい。足場には十分注意して、逃げ道を常に確保するようにしなよ。砂嵐に追い込まれて叩きつぶされたら正直コトだよ。……改めて、覚悟のほどは?」

「……大丈夫です」

「よろしい。それじゃあ、行っておいで。善戦を期待する」

 

 北条は三つ指を揃えた敬礼を送ると、いろはの背を押した。いろははそれを合図に虚空へと身を躍らせる。

 

 

 

「――――――モキュ!」

 

 

 

「え?」

 

 そのあとを追うように白い何かが飛び込んだ。

 

「小さい……キュゥべえ?」

 

 残った面々が顔を見合わせる。

 

「本当にいたんだね、小さいキュゥべえ……」

 

 陽奈がボソッとそう言う。瑞波はどうしていいのかわからないのか、周囲をきょろきょろと見回していた。

 

「あのキュゥべえ、どう見てもいろはちゃんを追いかけてたよね」

 

 ももこの声に北条は少し考えこむようなしぐさをみせた。

 

「……作戦変更だね」

 

 淡々とした声に、皆の視線が集まる。

 

「ヒナ、ミズ、あのキュゥべえをチェイス。なにがあるかわからないから手は出さないように。ももこはお嬢さんを追いかけて。七海さんがいたら状況を伝達。かえでちゃん、この穴適当にふさいで。ふさぎ終わったら私と一緒に降下してももこと合流。ヒナ、ミズ、ゴーアヘッド」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 落ちた先もやはり砂だらけの空間だった。巨大な砂の城の上に着地したとたん、その城が崩れ去る。ちょうど魔女の真正面に降り立ったらしい。

 

「ズシャアァア☆●△▼◇ー!!!!」

「いきなり真正面から飛び込んだのはまずかったよねこれ……」

 

 飛んできた鉄拳を後ろに飛び上がりつつ回避。足場もなくそのまま降りてきた以上選択肢はないとはいえ、ここまで相手がお怒りとは思わなかった。

 ボウガンで破魔矢を打ち込む勢いも利用して距離を取る。改めて見るとその魔女は、バケツを頭にかぶった黒いドレスをまとった女性のように見える。ただ、砂の城を崩されたのが不満なのか、耳障りな金切り声を上げている様子はどこか不釣り合いに映る。

 

 回転ジャングルジムの上に降り立ったいろはに向かって、今度は砂を巻き込んだ竜巻が飛ぶ。それを躱しつつ、連続で破魔矢を打ち込む。反動に慣れてしまえば、ひっくり返ることもない。矢羽根まで埋もれるほど強く刺さったそれに、魔女はまた金切り声。

 

「よし! 効いてる!」

 

 まるでハエでも潰そうとするように飛び出した両手を避ける。次の攻撃の前になんとか相手の目を狙う。

 

「――――――え?」

 

 直後、背中側に衝撃が走り、弾き飛ばされる。視界が一瞬ブラックアウトし、上下がわからなくなる。頬の痛みに目を閉じる。砂が傷に入りこんだのか、痛みで気絶ができない。それに少しは感謝するべきか迷い、そんなことを考えている余裕もないかと跳ね起きる。横に巨大な拳が降ってきて判断が間違っていなかったことを知る。

 

「まだまだっ……!」

 

 怒り狂ったのか、乱暴に振り回される魔女の腕を必死によけつつ距離を取る。魔女の背後から大量の竜巻が飛び出してきた。それを躱すだけで精一杯だ。四方八方から突っ込んでくる砂嵐。足元の砂を巻き込まれ、ぐらりと体が傾いた。

 

「しまっ……!」

 

 そのまま砂嵐に呑まれる。目を開けていられずに腕で顔を庇ったら、その姿勢のまま横から叩かれた。今度は意識を手放しそうになる。その視界の中に、ふわりと白いモノが現れる。

 

「キュゥべえ……?」

 

 砂場に叩き落され、息が詰まる。いろはの肩にその小さな影が飛び降りる。少しだけ重く、暖かい感覚に、薄く目を開ける。

 

「キュゥべえ……」

 

 魔女の金切り声で自分の心臓以外の音が掻き消える。その騒音の中でいろはは手を伸ばす。魔女との間に立つ白い影の背が見える。

 

「……逃げて」

 

 その背に指が触れる。

 

「モッキュゥゥウウウウウウウウッ!」

 

 大きな鳴き声が響く。直後、いろはの目の奥で何かが弾ける。まるで夜にカメラのフラッシュを浴びたような、くらりと脳と目の奥を溶かされるような。

 

 

 白い影が甘く白い光に呑まれるころ、何かが流れ込んでくる。

 

 

 

 

 

 

――――――お姉ちゃん! 今日も来てくれたんだね!

 

 知らないはずの声。懐かしい声。白い光の奥底で、それを聞く。

 

――――――お姉ちゃん、息が……はぁ……うぅ

 

 私はすべてを知っている。この子の苦しむ顔も、喜ぶ顔も、声も、すべて。

 

 知っている。覚えている。わかっている。わかっていたのだ。そのはずなのだ。

 

 頭が割れるように痛い。白い闇の奥に魔女が見える。白い闇の中に、あの子が見える。

 

 

 救わなければならない。守らなければならない。そのためには、強くならなければならなかった。

 

 

「……やめて」

 

 

 その先のすべてを背負うと決めた。あの子に嘘をつき通すと決めた。あの子のために私が何をしたのか知ったらきっとあの子は泣いてしまうから。それを知っているから、口を閉ざすと決めたのだ。

 

 そして、願った。

 

 

 

 

「――――――お願い、キュゥべえ。ういを助けて。私のたった一人の妹の病気を治して!」

 

 

 

 

 

 

「守らなきゃ……」

 

 半分溶け落ちた意識の中で左手を伸ばした。魔女が腕を振り上げるのが見える。

 

「私が、あの子を……守るんだ」

 

 体だけが覚えている。何をするべきか、どうすればいいか、覚えている。

 

 魔力を固めて実体化。シャフト・ポイントを成型。この距離なら矢羽根がなくとも命中させられる。

 

「あの子の未来を、ういの未来を、どうか」

 

 左腕を振り上げる。ありったけの魔力を矢に込める。

 

「導いて、ストラーダ――――――」

 

 魔女が腕を振り上げる。相手と目が合った。

 

「――――――フトゥーロ」

 

 

 弓鳴りの音、一つ。

 

 

 




技名叫ぶ組少ないんですが、私は大好きです。
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