表記ゆれが酷いのは彼らの能力です。
「…あなたのパーティの私掠権は本日限りとなります。
現時点よりダンジョン探索が禁止、明日の正午以降は冒険者向け施設の利用が禁止となります。尚、町への帰還隊は明日の日の出に出発しますので、退去の準備をお急ぎください。」
冒険者と呼ばれる屈強な男達の集団…パーティに、頭からローブをかぶった二人が淡々と告げる。
冒険者の一人が反論しようとするのをリーダーの男が遮りうなずく。
「了解した。」
「これまでのご協力に対するお礼となります。」
ローブ姿の一人が革袋を差し出すと、男達は手慣れた風に分配について話始める。
同じやりとりは、町の各所で行われている。
この町は密林の奥で発見されたダンジョン攻略のために急遽興されたもので、滞在には厳しい身元調査と許可が必要だ。
密林には危険な魔物も徘徊するため野営は厳しく、町での滞在許可を失えば、片道で三日はかかる密林の外まで追放されることになる。
そんな憂き目にあった冒険者は100名を越えていた。
その様子を見下ろし苦い表情を浮かべる二人の若者がいた。
二人が立つのは、町の中央にある館の二階部分だった。
「やつら、地元では英雄とか勇者なんて呼ばれるような連中だろ。よくあんなひょろいのに素直に従うな。」
より若い小柄な男アロンが皮肉な笑みを浮かべる。
「貴族様が出張ってきたんじゃ仕方無い。それにあのローブの奴らは貴族に仕える魔人か魔獣だ。
あれが相手じゃ勇者様でもタダじゃ済まないさ。」
窓枠に腰掛けた男ハヴェルが空を仰ぎながら応える。
「魔人や魔獣ねえ。どれくらい強いのかな。戦っている所を見てみたいよ。」
「少なくとも戦闘要員でない、トレジャーハンターや錬金術師じゃあ、ひとひねりだろうよ。
…噂をすればだ。喧嘩を売ってみるか?」
ハヴェルが指さす階段からローブをまとった者達がやってくる。
身の丈は180センチほどだが、ローブの外からは体のシルエットが分からず、肩がなくひょろりとした印象を受ける。
ローブの隙間から見えるのは暗い影のみで、足下は影なのか長いローブを引きずっているのかすら定かで無い。
足を動かす気配は無いが、革製の靴で上品に床を踏んだような足音を立てながら移動する。
「この中でもやるのかよ。」
「らしいな。部屋に戻ろう。」
ハヴェル達が逃げこんだ部屋は、高い天井とゆとりある間取りに巨大な机と棚によって、普段なら調査中の発掘品が大量に並び、二十名程が執務を行っても広々としたくつろいだ印象を受けるが、今はローブの者達によって緊張感が漂う。
「なあ、あのローブの中身は魔人か魔獣なんだろ?
魔人はともかく魔獣が人の形に収まるってどういうからくりなんだ?」
茶化すアロンに「よせ。あんまり見るな。」と声をかけたのは、鍛え抜かれた肉体をした中年の男ヴァレールだった。
「ハヴェルとアロン、お前達はセーフだ。良かったよ。」
安堵からアロンは気持を昂ぶらせ、ヴァレールにローブ姿の者達がどれくらい強力な存在なのかをに聞こうとする。
それを小突きながらハヴェルは自席に戻る。
ハヴェルの自席は遺跡解読班で共用する円卓で、ダンジョン内の遺跡に書かれた文字や模様の写しが積まれている。
それらの情報からダンジョン内の財宝の有無や価値を推測するのが彼の仕事だ。
ハヴェルが写しを眺めていると、耳元で鈴のように美しい声に呼びかけられた。
「モーシャさん、宜しいでしょうか?」
振り向いた先には、ローブをまとった美しい女性が親しみに溢れた笑顔を向けていた。
その余りに美しい声、笑顔にハヴェルは言葉を失う。
モーシャは自分の上司で人違いだと知らせることが惜しまれる程にその女性は美しかった。いや、美し過ぎた。
ハヴェルはとっさに目を瞑り、呪い避けの言葉をつぶやき、ゆっくり目を開けると、そこには美しい女性の顔はなくローブに包まれた真っ黒な影だけがあった。
「モーシャは上司です。えっと、人違いです。モーシャはおそらくあちらの部屋にいます。」
ハヴェルの言葉にローブ姿の影はくぐもった声で「失礼しました。」と応え、もう一人のローブ姿の者を従え去った。
額に浮いた汗を拭いながら、先ほどの美しい声と顔の記憶を振り払っていた。
「なあ、今、奴らと話してたよな。強そうだったか?」
その様子を見ていたアロンが好奇心に溢れた笑顔で駆け寄って来る。
ハヴェルとヴァレールという名前はこちらからいただきました。
http://www.worldsys.org/europe/
アロンという名前はこちらから。
https://oshiete.goo.ne.jp/qa/1165258.html
多国籍な感じにしたいなあと。
名前の来歴などは調べておらず、音だけで選んでます。