ダンジョン攻略より会議の方がやばかった   作:Intail

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ベルスが語るどっかで聞いたようなエピソードは、実在の人物や団体などとは関係ありません。


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 クエストに出払う冒険者を見送るナルルースの元にレコが歩み寄る。

「流石だな。」

 ナルルース直属の冒険者達は反抗も逃亡もせず、迅速にクエストに取り組んでいる。

実力によって呼び集められ、信頼によって成り上がった者達だ。汚れ仕事であっても、期待通りの結果を出してくれるだろう。

「任務はこなすさ。」

「そうだな。それと、ここは明後日に領主の離宮として譲り渡されることになった。」

「もうか?」

「あんたには相談役としての席を残す。好きに使え。

王都からも特別報酬が出る。

王家もベルスも、まだまだ君の助けが要るらしい。」

レコは仮面で顔が隠されたナルルースの心情を測るべく仕草を観察する。

「ふん。それだけ軍資金があれば、結構な戦が起こせるな。」

機嫌は最悪だなと…判断するレコの脇を抜けナルルースは貴賓館へと向かう。

 

 ベルスはいつも通りに魔人達を従え、貴賓館正面庭園の東屋に居た。

ナルルースは荷造りをした使用人達とすれ違いながらベルスの姿を見つけた。

彼もまた彼女に気づき軽く手をあげ「やあナルルース。よくやってくれた。」と声をかける。

「さあこっちに来てくれ。」

魔人達の給仕を受けベルスは食事と共に、複雑な装飾が施されたグラスで秘薬を飲んでいた。

 ベルスはナルルースを満面の笑顔で迎える。彼女の活躍を高く評価しているのだ。

ナルルースは仮面を脱ぎ、苛立ちを隠さない足取りで彼の元に歩み寄る。

彼女の苛立ちを察したベルスは皮肉な笑みを浮かべる。

「冒険者たちに同情しているのか?

君や私たちを見ろ。名誉どころか神罰すら免れん所業の数々を犯してきた。

ところがどうだ。君は王国最大の冒険者ギルドの、私は王国学府のグランドマスターだ。

地位も名誉もあるのだろうさ。」

ナルルースは短くため息をつく。

「自分の立場は弁えているし任務はこなす。しかし連中は違う。」

「随分入れ込んでいるな。だが、冒険だって本質は略奪だろう。

辺境への領土拡大遠征では亜人達の集落にわざと疫病を広めることもある。

感染症の拡大を促す呪いは、私が初めて国から認められた研究成果だったよ。

 勇者が魔王を倒しただと?

一帯の生態バランスを整えていた魔獣をくびり殺しただけだ。

その後の混乱を治める任務で私は初めて君と組んだ。

 自らの力で引きよせる黄金で人間に鉱山を作らせ、地上に這い出ようとする本当の魔王も居る。

町に毒をまき鉱山からの発生したガスと謀った任務ではレコが大いに活躍してくれたよ。

その町は、11年経った今でも死の町と言われており、魔王は大人しく眠ってくれている。」

 ナルルースは席に着くと給仕を行う魔人から秘薬をボトルごと受け取る。

「守るべき者のために、戦うべき者が行う当然の行為だ。

だが今回は私たちが過ちを犯した。

そして、守るべき者を置き去りにして、戦うべき者が逃げた。」

ナルルースはボトルから直接秘薬を飲む。

「それは思い上がりだ。

今回私たちは戦うことが叶わないほど弱々しく、彼らにこそ戦える武器があった。

彼らの活躍により、私たちは貴族と戦える武器を手にする。

その武器で、今度は我々が彼らを守る。」

ベルスの言葉にナルルースは凄惨な笑みを浮かべる。

「あんたの言う彼らは、今犠牲になる彼らではない。」

「生き残る者も居る。それが叶わなくとも、彼らから何かを引き継いだ者達ではあるだろう。

私たちには生存者を選別することなど出来ない。

何かが引き継がれていくのを見守るだけだ。」

「それが呪われたものであっても?」

「呪いであっても乗り越えて引き継ぐのが人の歴史だ。

エルフには滑稽に聞こえるだろうが、そんな君にも引き継ぎ続けなくてはならないものがあるだろう。…ここ以外の多くの場所にも。」

ベルスの言葉にナルルースは「ほう」と殺気を込めた声を上げる。

ただならぬ気配に魔人達がざわめく。

「止めておけ。今持っている富と地位を手放さなければ、お互いより多くを守れる。

…そういう話をしている。」

ナルルースはしばらく悩むが吹っ切れたように力を抜く。

「ふん。情けない限りだが、従おう。」

「責任ある生き方とはそういうものだろう。

…さて、ここの片付けをしなくてはならない。」

 ベルスは食事を済ませると、魔人から人の頭くらいの宝珠を受け取る。

東屋から庭に降り立つと、低く響く声で長い呪いを唱える。

それに反応して、巨大な貴賓館はゆっくりと崩れ樹木に包まれていく。

魔法によって作られた館が元の形にもどっていくのだ。

「この館は引き渡さないのか?」

「まだ他領には伏せておきたい流行の調度品が多くあったからね。」

ベルスがにやりと笑うとナルルースは肩をすくめる。

彼女が執務館に目を向けると、レコとハヴェルがこちらに向かって歩いていた。

ハヴェルは館が消えていることに驚いていた。

「彼は生存者で?」

ナルルースに問われベルスは「そうだ。王都でも同僚になるだろう。」と応える。




原作ではサブプライムローンについて描かれていたのですが、ファンタジーぽさを強調するために、少しミシシッピバブルに寄せています。
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