夕刻になり片付けが終わったアロンはハヴェルに宴に行くように誘った。
ハヴェルは相変わらずモーシャから受け取った写しと部屋にある資料との突き合わせを行っていた。
「なあ一緒に行こうぜ。」
「いや。遠慮しとくよ。」
「おいおい。モーシャさんがいなくなったんだから、ヴァレールさんともっと親しくなっておかないとだろう。」
「へぇ。ちゃんとそういうの考えてるんだな。」
「盗賊はな、そういうことしか考えてないんだよ。」
「わかったよ。ホールか?」
「ああ。なんか今日は亜人の娘達が来てるらしいぜ。
俺、もふもふしたのが良いなあ。」
だらしなく鼻の下を伸ばすアロンにハヴェルはため息をつく。
「わかった俺も少し頭を冷やしたい。付き合うよ。」
「雪女指名か?」
「雪女ってなんだ?イエティか?」
「そりゃあもふもふだ。」
ホールではヴァレールが両隣にエルフの娘を座らせ、その周りを囲う冒険者達に自らの冒険談を語っていた。
偉大な冒険者である彼の言葉に、若者は目を輝かせ、古参は懐かしがりながら笑う。
魔物が徘徊する密林にあるため、今回の冒険には各地から猛者が揃えられている。
荒くれ者も少なく無いが、ヴァレールは彼らを上手くまとめ尊敬を集めていた。
そんな場であってもハヴェルはモーシャからもらった写しやいくつかの資料を持参し、ホール隅にあるソファにいた。
少し離れた席からは、「もふもふ姐さんと呼ばせてください。」と浮かれたアロンの声も聞こえてくる。
それにしても、自分はなぜこうなっているのだ?とハヴェルは思う。
彼はソファ席で下半身が蛇のいわゆるラミアなどと呼ばれる亜人の娘に、膝枕ならぬ、とぐろ枕をされており、時折冷たい濡れタオルで首筋や額を拭いてもらいながら、茶を飲んでいた。
静かに頭を冷やせる場所で楽しみたいとは言ったが、まさかこういうことになるとは。
しかしラミアの娘は時折、色っぽく舌を見せるだけで、話かけてくるわけでもなく、ほどよいタイミングで体を冷やしてくれる。
…ピット器官ってやつかなあと愚にもつかないことを思いつつも、彼の考えはいつも以上に冴え始めていた。
夜が更けはじめたころハヴェルは暗いため息をついた。
不思議そうにのぞき込むラミアの膝…とぐろから起き上がると、ヴァレールとアロンの席に向かう。
「ヴァレールさん、すぐ部屋で話したいことが。」
ヴァレールは酒気を含んだ声で「おいおい。なんだよ。」と不平をこぼそうとするが、ハヴェルが「モーシャに渡された写しから遺跡について…」と言葉をかぶせると真顔になりその先を遮りながら辺りを見回す。
こちらを意識している者の姿が無いのを確認すると、ヴァレールはアロンを獣人の娘から引き剥がして執務部屋に向かう。
部屋に戻るとヴァレールはハヴェルに改めて説明を求める。
何かしらの呪いによって、ヴァレールとアロンの酔いが醒めているのを確認するとハヴェルはいきなり核心から話す。
「遺跡と遺跡の財宝には呪いがかかっています。」
モーシャから可能性について聞かされていたヴァレールはため息をつく。
「まあ、作った側から見れば冒険者は盗掘者だ。呪いの妨害もあるだろう。
で、具体的にはどんな?」とその先を促す。
「錆びの呪いです。」
「くそ最悪だ。」
様々な冒険を経験するヴァレールはその一言で呪いについて察した。
あらゆる金属を錆へと変える魔物は、冒険者にとって最悪の脅威として恐れられている。
その後、ハヴェルは錆の呪いの広がる仕組みや影響についての説明を行う。
相当の覚悟をしていたヴァレールだったが、事態は遙かに深刻だった。
「くそ、モーシャは何故見抜けなかった?」
「財宝発見を優先しろという指示に従ってました。」
「そうだったな。」
ヴァレールは眉を抑えながら、いくつかの宿名を告げる。
「お前達は、町の宿をあたって来てくれ。モーシャが居そうな宿だ。
俺はナルルースを探す。」
錆の怪物は、名前を言うと大変なことになります。
土下座はいやずら
…サブタイトル、ガルパンっぽいの叱られないかなあ。