ダンジョン攻略より会議の方がやばかった   作:Intail

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アロン君は元いじめられっ子です。


残業です!

 ハヴェルとアロンが並んで歩く町には、今日解約を宣告された者達が、明日出発準備を整えつつ最後の夜を過ごしていた。

ダンジョンを諦めて気持を切り替えた者がいる一方で、怒りを露わに酒を呑んだり、泣き崩れている者もいた。

「地元では英雄とか勇者なんて呼ばれるような連中だってのになあ。」

アロンが昼間と同じ言葉を繰り返す。

「それにこだわるなあ。」

「俺みたいな腕っ節がないやつは、ガキの頃からああいう連中には頭に来ているのさ。

それが俺が残って連中がお払い箱だ。ざまあみろだよ。

それも俺は汚いダンジョンに潜ることもなく、持ち帰ってきた資料からの安楽椅子探索だけでだ。」

「罠や呪いがついたままの品の鑑定や解除や、緻密な会計までこなしている。

アロンの評価は貢献に見合ったものだろう。」

「見合った評価なんてないさ。ヴァレールは今回の報酬として莫大な黄金に加えて、彼の地元に城を一つと、騎士の称号が決まっているらしい。」

ハヴェルは城で暮らすヴァレールを上手く想像出来ず思わず笑ってしまう。

「すごいな。…でも、冒険者がライフワークみたいな人だぞ。」

「冒険者なんてろくなもんじゃない。

駆け出しから多少実力をつければ、町を守る衛兵が弱くて馬鹿に見えるらしい。

巨大な怪物退治でもした日には、騎士より役立つ尊敬される存在だと勘違いする。

でも実際にはどうだ?ローブ姿の使いっ走りに逆らう事も出来ない。」

そう語るアロンの表情はいつもの皮肉めいたものではなく、苦い思い出を振り返るようなもので、ハヴェルは「そうだな」という言葉の後が続かない。

「…おい。あの宿じゃないか?なるほどエグゼクティブだ。」

気まずい空気を察したのかアロンはいつもの皮肉交じりな物言いに戻し、大げさな仕草で宿を指さす。

そして、受付でモーシャについて聞くが、姿を観た者はおらず次の宿へと向かう。

 

 ハヴェルたちを見送ったヴァレールは、館の裏手にある広場へと向かう。

ナルルースはよくこの広場で鍛錬を行っているのだ。

 ヴァレールの予想通り、広場の入り口には犬くらいに大きい黒猫が座っている。

広場は夜の闇と比べても不自然な暗闇と静寂に包まれている。

黒猫はヴァレールに非難めいた視線をおくりつつ低く鳴いた。

「俺だって時間くらいは分かってます。緊急です。」

不機嫌さを露わにする黒猫の相手はナルルース本人よりもよほど緊張するとヴァレールは苦笑いをする。

 黒猫が仕方無くという風に鳴くと、広場を中央に巨大な炎の柱が現れ、低い空気を揺らす音が響く。

何らかの呪いによって隠されていたものが露わになったのだろう。

館の三階にまで届く、巨大で真っ赤な光を直接見ないように、目元を隠しながらヴァレールは炎に近づく。

 広場の中央ではナルルースが炎の柱を巻き上げる剣で剣舞の形をとっていた。

彼女が短く何かをつぶやくと炎の柱は剣に吸い込まれるように消える。

「どうも火力がイマイチだ。」

「あれで?どんな魔獣でも一太刀だろう?」

「まさか。炎は赤よりも青い方がより強力だろ?…で緊急がどうした?」

ナルルースはヴァレールから見れば危険極まりない剣を無造作に鞘におさめる。

「モーシャの資料から、遺跡の呪いの存在が明らかになった。」

「どれくらいヤバイ?」

「財宝の全てを失い、その宝剣まで錆びになる可能性があります。」

「錆びか。以前にもそういう力を持った魔物に酷い目にあったな。

しかしモーシャは今日去ったのだろう?何故、今になってわかる?」

「モーシャの部下ハヴェルが彼の残した資料をさっき解明しました。」

「…ハヴェル?そういえば夕方に裏庭で話した時、何かを熱心に見ている若い奴がいたな。

そいつの言うことに間違い無さそうか?」

「俺にそんなことが分かるとでも?」

ヴァレールは目をそらしながら諸手を挙げてる。

「何にしろ、上へ説明しなくてはな。」

ナルルースはやれやれと肩をすくめる。

 

 ハヴェルとアロンは、全ての宿でモーシャの不在を聞きいったん館へ戻ることにした。

「呪いのことが分ければどうなるんだろうか?彼らはこの町に足止めか?」

アロンの疑問にハヴェルは分からないと首を振る。

「それこそヴァレールやナルルースが考えることだろうよ。」

「そうだな。この件で彼らの報酬はどう変わるんだろう。」

「おい。彼らの前で言うなよ。」

「なんでだよ。」

ハヴェル達が館の正面入り口に戻るとヴァレールが待っていた。

「モーシャは見つかりませんでした。」

アロンは気まずく顔を伏せるが、ヴァレールはむしろ彼らを頼もしい存在と向かえていた。

「そうか。仕方無い。お前達ちょっと一緒に来い。」

 ハヴェル達はヴァレールに連れられ、普段なら立ち入りが禁じられている館の庭園の奥へと向かうと、隠された貴賓用の館があった。

館の正面口には巨大な甲冑姿の門番が立っているが、その姿と気配から魔獣か魔人であることが察せられた。

「おかしなマネをすると切られるぞ。」

「大人しくしておけよ。」

ヴァレールとハヴェルの同時の注意に、アロンは神妙にうなずく。




貴賓館って言葉は正しいのだろうか。
怖くて調べられません。
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