もし南雲ハジメが全集中の呼吸の使い手だったら   作:籠城型・最果丸

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初めましての方は初めまして。最果丸です。

雷の呼吸は私のお気に入りの呼吸です。特に壱ノ型と漆ノ型が格好いいと思いました。

ハジメがほぼ善逸になってしまいました。


物語開始
第一話 召喚


月曜日。それは一週間の内で最も憂鬱な始まりの日。きっと大多数の人が、これからの一週間に溜息を吐き、前日までの天国を想ってしまう。

 

そして、それはこの俺、南雲ハジメも例外ではなかった。

 

「不味いな、急がないと遅刻だ。二日の徹夜で物凄く眠い……」

 

始業のチャイムが鳴るぎりぎりの時間に登校し、徹夜の修行でふらふらの身体で何とか踏ん張り、教室の扉を開けた。

 

その瞬間、教室の男子生徒の大半から舌打ちやら睨みやらを頂戴する。女子生徒も友好的な表情をする者はいない。無関心ならまだいい方で、あからさまに侮蔑の表情を向ける者もいる。ねえさっきから何で黙ってるの?何か喋れよ!

 

かなり疲労が溜まっているので一々相手をする暇がない。だというのに、毎度の如くちょっかいを掛けてくる者がいる。俺は心底辟易していた。

 

「よぉ、キモオタ! また、徹夜でゲームか? どうせエロゲでもしてたんだろ?」

「うわっ、キモ~。エロゲで徹夜とかマジキモイじゃん~」

 

俺はキモオタじゃないし。そもそもオタクですらないし。エロゲなんか生まれてこのかた一度もやったことないんですけど?まあいいや。どれだけ俺をぼろくそに貶そうが知ったこっちゃないし。っていうかゲラゲラとバカ笑いしてるお前らの方が気持ち悪いんだけど?

 

先程俺に声を掛けてきたのは檜山大介。俺は裏で塵山って呼んでる。毎日飽きもせずに俺に絡んでくるし、絶対碌な奴じゃない。その近くでバカ笑いしているのは斎藤良樹(カス藤)、近藤礼一(クソ藤)、中野信治(タコ野)の三人。こいつらも地味にうざったい。こいつらの声を聞くだけで耳がおかしくなりそうなんだけど。

 

オタクオタクっていうけどオタクの何が悪いの?別に全国のオタクが一斉に犯罪を起こしたわけでもないのに。確かにオタクに対する風当たりが強いけど、ここまで敵意剥き出しってことある?俺がオタクだったら速攻であの世逝きだったんだぞ。あといい加減俺オタクじゃないし。何故男子生徒が敵意や侮蔑を剥き出しにしてくるのか。

 

その答えが彼女だ。

 

「南雲くん、おはよう!今日はギリギリだったね」

 

ニコニコと微笑みながら一人の女子生徒が俺のもとに歩み寄った。このクラス、いや学校でも俺にフレンドリーに接してくれる数少ない例外であり、この事態の原因でもある。学校で俺がイラつく原因の九割が彼女だ。

 

彼女の名は白崎香織。学校で二大女神と言われ男女問わず絶大な人気を誇る途轍もない美少女だ。腰まで届く長く艶やかな黒髪、少し垂れ気味の大きな瞳はひどく優しげだ。スッと通った鼻梁に小ぶりの鼻、そして薄い桜色の唇が完璧な配置で並んでいる。率直に言って麗しゅうございます。

 

いつも微笑の絶えない彼女は、非常に面倒見がよく責任感も強いため学年を問わずよく頼られる。それを嫌な顔一つせず真摯に受け止めるのだから高校生とは思えない懐の深さだ。うん、女神だね。

 

そんな彼女は何故か俺によく構う。彼女と会ったのはこの高校に入学してからだし、それから今に至るまで特に接点も無い。

 

徹夜のせいで俺は授業中よく眠る。っていうか午前中の授業は九分九厘寝る。そのせいで俺は不真面目な生徒と思われている。だが俺は何故か昔から耳が良かったから、寝てても何時の間にかノートは取れていた。ちなみにノートの字は俺のだ。学校で寝てる分、家では必死に勉強しているので成績はそこそこ良かった。だが、家で必死に勉強して学校で寝るくらいなら学校で勉強して家で寝ろ、と担任に怒られた。早く生活習慣を直さねば。

 

生来の面倒見の良さから白崎さんが気に掛けていると周りから思われている。将来良い母親になりそう。って何考えてんだよ俺!

 

これで俺の授業態度が改善したり(周りから見た俺)、あるいはイケメンだったら白崎さんが構うのも許容できる。だけど生憎俺の容姿は平凡だし、午前の授業はぐーすか寝てるから態度改善も見られなかった(周りから見た俺)。寝ながら授業聞いてるからいいでしょうが。

 

そんな俺が白崎さんと親しくできることが、同じく平凡な男子生徒達には我慢ならないのだ。「なぜ、あいつだけ!」と。女子生徒は単純に、彼女に面倒を掛けていることと、なお改善しようとしないことに不快さを感じているようだ。まあ無理もないよね。俺が言うのもなんだけど。

 

「あ、ああ、おはよう白崎さん」

 

彼女に挨拶を返した瞬間、鋭い殺気が俺を射抜く。待って!俺物凄く居心地悪いんだけど?

 

それに嬉しそうな表情をする白崎さん。なんでそんな表情をするの!?俺を殺したいの?何か俺に恨みでもあるの?冷や汗で下着が濡れて気持ち悪い。

 

何故学校一の美女である白崎さんが俺なんかにここまで構うのか。どう見ても彼女の性分以上に何かがある。そういう音するし。

 

でもまさかこんな俺に気があるなんて旨い話なんてあるわけないし、仮に付き合いでもしたらまず間違いなく男子に殺されるんだけど。俺なんかよりもいい男なんて幾らでもいるよね?何で俺なの?白崎さん一体俺に何がしたいの?

 

正直言って白崎さんはこのクラスで一番苦手な人物だ。口に出したらまず間違いなく体育館裏で殺されるから言わないけど。

 

早く会話を切り上げたくてうずうずしていると、三人の男女が近寄って来る。その中の一人はイケメンだった。

 

「南雲君。おはよう。毎日大変ね」

「香織、また彼の世話を焼いているのか? 全く、本当に香織は優しいな」

「全くだぜ、そんなやる気ない上に自分勝手なヤツにゃあ何を言っても無駄と思うけどなぁ」

 

やる気がないって何だやる気がないって!?お前!こっちは勉強と修行必死に頑張ってんだよ!自分勝手なのは認めるけど!!

 

話が逸れてしまった。この三人の中で唯一俺に挨拶してくれた女子生徒は八重樫雫。白崎さんの親友だ。ポニーテールにした長い黒髪がトレードマークである。切れ長の目は鋭く、しかしその奥には柔らかさも感じられるため、冷たいというよりカッコイイという印象を与える。

 

百七十二センチメートルという女子にしては高い身長と引き締まった体、凛とした雰囲気は侍を彷彿とさせる。同じ女子からも告られそう。

 

事実、彼女の実家は八重樫流という剣術道場を営んでおり、彼女自身、小学生の頃から剣道の大会で負けなしという猛者である。現代に現れた美少女剣士として雑誌の取材を受けることもしばしばあり、熱狂的なファンがいるらしい。後輩の女子生徒から熱を孕んだ瞳で〝お姉さま〟と慕われて頬を引き攣らせている光景はよく目撃されている。だから何なの?平凡な俺に対する当てつけか何かなの?

 

次に、些か気障な台詞で白崎さんに声を掛けたのが天之河光輝。完全にキラキラネームのこいつは、容姿端麗、成績優秀、おまけにスポーツ万能と来た。白崎さんの次に苦手な奴だよ。ちなみに塵山たちは一番嫌いな奴らだ。

 

サラサラの茶髪と優しげな瞳、百八十センチメートル近い高身長に細身ながら引き締まった体。誰にでも優しく、正義感も強い(思い込みが激しい)。眩しい。兎に角眩しすぎる。

 

小学生の頃から八重樫道場に通う門下生で、八重樫さんと同じく全国クラスの猛者だ。八重樫さんとは幼馴染である。ダース単位で惚れている女子生徒がいるそうだが、いつも一緒にいる八重樫さんや白崎さんに気後れして告白に至っていない子は多いらしい。それでも月二回以上は学校に関係なく告白を受けるというのだから筋金入りのモテ男だ。いくら何でもモテ過ぎだろ!神様か何かがこいつの身体弄ったの?だからこんなにキラキラなの?

 

最後に俺をいらつかせた熊野郎こと坂上龍太郎。天之河の親友だ。短く刈り上げた髪に鋭さと陽気さを合わせたような瞳、百九十センチメートルの身長に熊の如き大柄な体格、見た目に反さず細かいことは気にしない脳筋タイプだ。こいつも苦手だ。

 

こいつは努力とか熱血とか根性とかそういうのが大好きな人間なので、俺のように学校に来ても寝てばかりのやる気がなさそうで自分勝手な人間は嫌いなタイプらしい。現に今も、俺を一瞥した後フンッと鼻で笑い興味ないとばかりに無視している。その方がこっちにとってはありがたい。だってこいつらと絡むと滅茶苦茶疲れるんだよ。

 

「おはよう、八重樫さん」

 

何かもう挨拶する気が無くなって来た。でも八重樫さんは俺にちゃんと挨拶してくれたから挨拶は返すけど。

 

「おい南雲、何故雫にだけ挨拶して俺や龍太郎は無視する?」

 

一人称被ってんじゃんこいつ。坂上もだけど。っていうか殆どの男子生徒一人称俺なんだけど。

 

「挨拶しないからに決まってんでしょ?何で挨拶もしない人間に挨拶するなんて面倒なこと態々しなくちゃいけないわけ?」

 

いつも通りに適当にあしらう。こいつらと関わると絶対碌な目にあわない。

 

「なっ、南雲!何だその態度!」

「光輝、止めなさい。南雲君が困ってるでしょう?」

 

ここで八重樫さんが止めに入る。正直助かった。眠いからもう寝るね?

 

「おい南雲、まだ話は終わってないぞ」

「はいはい、もう直ぐ授業始まるから席に戻りなさい」

 

八重樫さんに天之河と坂上が席に戻される。邪魔者がいなくなり、俺は一時限目から眠るのだった。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

昼食時、この時間は身体が覚えているのですんなりと目を覚ますことができた。いやはや、便利な機能だ。ありがたい。

 

いつものように俺はCMでやってた十秒チャージでおなじみゼリー飲料を取り出した。

 

パッケージを握力で握りつぶし、中身を吸い尽くした俺はもう一眠りしようかと机に突っ伏した。だが、そうはさせまいと俺にとってはある意味悪魔が、ニコニコと俺の席に寄って来る。

 

畜生、寝ぼけ過ぎたか……いつもなら誰もいない場所でぐっすりと眠っているはずなのに。二日の徹夜……恐るべし。

 

「南雲くん。珍しいね、教室にいるの。お弁当?よかったら一緒にどうかな?」

 

……この娘、悪魔だ。女だからサキュバスかな?でもサキュバスはえっちい悪魔だし……違うかな……っていうかさっきから視線が痛い!

 

俺は必死に抵抗をした。

 

「あ~、誘ってくれてありがとう、白崎さん。でも、もう食べ終わったから天之河君達と食べたらどうかな?」

 

そう言って空っぽのパッケージを彼女に見せる。断ったら断ったで「何様だ!」と思われそうだけどそんなもの一時だから楽だ。

 

だというのにこの女神ときたら追撃してきやがった。本当何なの!?

 

「えっ!お昼それだけなの?ダメだよ、ちゃんと食べないと!私のお弁当、分けてあげるね!」

 

いや、そういうのいいから。分けてもらうと俺死ぬんで。徐々に圧が増していくんだけど!?死ぬよ俺!九分九厘死ぬ!!

 

そんな時、天之河達が現れた。苦手なこいつらでもこういう時はありがたいと思う。随分と都合の良い奴だな!?俺は!

 

「香織。こっちで一緒に食べよう。南雲はまだ寝足りないみたいだしさ。せっかくの香織の美味しい手料理を寝ぼけたまま食べるなんて俺が許さないよ?」

 

そうだよ、二日も寝てないから物凄く眠いんだよ!眠過ぎて食欲湧かないんだよ!

 

っていうか白崎さん!何キョトンとしてんだよ!?あんた鈍感過ぎるだろ!?天然キャラなの?天之河のイケメンスマイルや気障な台詞も全然効果を発揮してないんですけど!?

 

「え?なんで光輝くんの許しがいるの?」

 

いや要るでしょ!?お前ら付き合ってんじゃないの!?それとそこで吹いてる八重樫さん可愛いな!

 

「ほら、南雲くんも嫌そうな顔してるよ?」

 

俺は露骨に嫌そうな顔をしていたらしい。いやこれはあんたのせいだよ白崎さん?俺を利用しないでくれ……

 

もういっそ、こいつら異世界召喚とかされないかな? どう見てもこの四人組、そういう何かに巻き込まれそうな雰囲気ありありだろうに。……どこかの世界の神か姫か巫女か誰でもいいので召喚してくれませんか~~召喚して欲しいというわけで、頼む、頼むよぉ~~

 

現実逃避の為に異世界に電波を飛ばした俺。いつも通り苦笑いで茶を濁して退散しようかと腰を持ち上げたところで……

 

 

気配が凍った。空気が揺れる。

 

 

 

天之河の足元に純白に光り輝く円環と幾何学模様が出現した。嘘だろ!?ホントに異世界召喚来ちゃったよ俺!?誰か死んだらごめんねぇ~!!

 

その魔法陣は徐々に輝きを増していき、一気に教室全体を満たすほどの大きさに拡大した。

 

もう教室から逃げてる暇はない。脱出を諦めた俺は咄嗟に教室の後ろに立て掛けてある竹刀袋に手を伸ばす。

 

俺の手が竹刀袋に届いたと同時に畑山先生が「皆! 教室から出て!」と叫んだ。しかもそれと同時進行で魔法陣の輝きが爆発したようにカッと光った。

 

俺は竹刀袋を握りながら、閃光から目を守るために片腕で両目を覆ったのだった……




「「いよっと」」

ハジメ「ったく俺のクラスほとんどやべぇ奴しかいないじゃん」
香織「南雲くん……私のこと、迷惑だって思ってる?」
ハジメ「白崎さん、そういうのは次回に取っておくものだよ」
香織「あはは、ごめんね。変なこと聞いて」
ハジメ「そう気にしないでよ白崎さん」
香織「南雲くん……」


ハジメ「ここで(まだ着いてないけど)トータスコソコソ噂話」

ハジメ「何故かトータスには日輪刀が存在するそうですよ」


香織「ねえ南雲くん、にちりんとうってなに?」
ハジメ「さぁ?台本にそう書いてあったんだけど……何のことやら」
香織「ホント?」
ハジメ「次回 第二話 ありふれない雷の呼吸」
香織「あっ、待ってよ南雲くん~」


つづく

名称変更しようかなと思っておりますが、変えてもいいと思いますか?

  • 変えてよし
  • そのままでなんとか頑張れ
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