もし南雲ハジメが全集中の呼吸の使い手だったら   作:籠城型・最果丸

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カミ様です。

今回は最奥の隠れ家での短めの話です。


コメントで「鬼滅に寄せすぎ」、「主人公の性格ぐらい守ってほしい」とご指摘を頂きましたので、次回以降は軌道修正していきます。

過去の話もちょくちょく修正するつもりです。

他にもなにかありましたらコメントお願いします!!


第十二話 最奥の城

俺は体全体が何か温かで柔らかな物に包まれているのを感じた。あの化け物を倒してからの記憶が全くない。もしかして、俺は死んだのか? ここはあの世なのか?

 

あの世と聞いて花畑の中を川が流れているイメージだったのだが、真っ暗だった。ここが極楽か地獄かは判らない。だけど、ただ……温かい。

 

かれこれ五分程心地良さを堪能した後、いつまでも真っ暗な理由が瞼を閉じたままであることに気づいた。

 

俺はこれから飛び込んでくるであろう光景に怖れながらも見てみたいという思いを抱きつつ、ゆっくりと瞼を持ち上げた。

 

「……何だここは」

 

広がる光景は、極楽でも、地獄でも無かった。俺は布団の上で眠っていたのだ。まるで旅館の一室に敷かれた高級感溢れる布団だ。場所は、和風の屋敷の吹き抜けような所で、畳の上にいる。爽やかな風が天蓋と俺の頬を撫でる。周りはごく普通の書院造だ。藤の花が薫る大正時代の旅館といえばイメージできるだろうか? 空間全体が久しく見なかった暖かな光で満たされている。

 

「……んぁ……ハジメ……ぁう……」

「!?」

 

そして俺の右では、一糸纏わないユエが俺の右手に抱きつきながら眠っていた。気づけば着物を上半身だけ脱がされていて、包帯を巻かれていた。

 

体に痛みは……無い。もしかしてユエがずっと付きっ切りで看病してくれていたのか?

 

「……お願い……死んじゃ……ダメ……」

 

ユエはぽつりと言った。閉じられた両目からは涙が音も無く流れていた。魅力的な体型も相まって妖艶さが一層引き立つ。

 

俺がどれほどの間、眠っていたのかは知らないが、ずっと看病してくれていたであろうユエに感謝し、左手でユエの頭を優しくそっと撫でた。ユエの顔に安らぎが戻る。

 

「目が覚めたかい?」

 

別の誰かの声がした。男の声だ。だが、何だろう。この感じ……不思議な高揚感を感じる……1/fゆらぎか?

 

掛け軸が掛けられている方に、黒い着物を着た青年が正座をしていた。見た所普通の人間のように思えたが、瞳孔は縦に割れている。

 

俺が体を起こそうとすると、

 

「ああ、そのまま寝ていて構わないよ」

 

と言った。

 

「貴方は一体……」

 

青年は心地良い声音で自己紹介をする。

 

「試練を乗り越えよく辿り着いた。私はオスカー・オルクス。地上では玄鐵(くろがね)と名乗っている。この迷宮を創った者だ。反逆者と言えばわかるかな?」

「迷宮……反逆者……」

 

話し始めた彼は玄鐵ことオスカー・オルクスというらしい。【オルクス大迷宮】の創造者のようだ。内心驚きつつも彼の話を聞く。

 

「俺達はどうしてここに?」

「君の隣で眠っている女性が、泣きながら君をここまで運んで来たんだよ。傷の手当ては私が施した」

 

どうやら包帯を巻いてくれたのはオスカーのようだ。

 

「んんっ……」

 

ユエも起きたようだ。

 

「ハジメ……良かった……生きてて……」

 

寝起き早々俺に抱きつくユエ。とても麗しゅうございます。

 

「二人共起きたようだね。さて、これから君達に世界の真実を語ろう。……我々は反逆者であって反逆者ではないということを」

 

そうしていきなり始まったオスカーの話は、俺が聖教教会で教わった歴史やユエに聞かされた反逆者の話とは大きく異なった驚愕すべきものだった。

 

「神代の少し後の時代、世界は争いで満たされていた。人間と魔人、様々な亜人達が絶えず戦争を続けていた。争う理由は様々だ。領土拡大、種族的価値観、支配欲、他にも色々あるが、その一番は〝神敵〟だから。今よりずっと種族も国も細かく分かれていた時代、それぞれの種族、国がそれぞれに神を祭っていた。その神からの神託で人々は争い続けていた」

 

だが、そんな何百年と続く争いに終止符を討たんとする者達が現れた。それが当時、〝解放者〟と呼ばれた集団である。

 

彼らには共通する繋がりがあった。それは全員が神代から続く神々の直系の子孫であったということだ。そのためか〝解放者〟のリーダーは、ある時偶然にも神々の真意、そして正体を知ってしまった。

 

「人間族が崇める創造神エヒトの正体…それはかつて、平行世界で()()()に敗れ、死の間際にこの世界に逃げ落ちて来た存在だった」

 

そして何と神々は、人々を駒に遊戯のつもりで戦争を促していたのだ。〝解放者〟のリーダーは、神々が裏で人々を巧みに操り戦争へと駆り立てていることに耐えられなくなり志を同じくするものを集めたのだ。

 

彼等は、〝神域〟と呼ばれる神々がいると言われている場所を突き止めた。〝解放者〟のメンバーでも先祖返りと言われる強力な力を持った七人を中心に、彼等は神々に戦いを挑んだ。

 

しかし、その目論見は戦う前に破綻してしまう。何と、神は人々を巧みに操り、〝解放者〟達を世界に破滅をもたらそうとする神敵であると認識させて人々自身に相手をさせたのである。その過程にも紆余曲折はあったのだが、結局、守るべき人々に力を振るう訳にもいかず、神の恩恵も忘れて世界を滅ぼさんと神に仇なした〝反逆者〟のレッテルを貼られ〝解放者〟達は討たれていった。

 

最後まで残ったのは〝青い彼岸花〟と呼ばれる植物から作った薬を服用した中心の七人だけだった。その後、秘密裏に〝神域〟へと足を踏み入れた。エヒトはこの世界に逃げ落ちた際、力の大半を失ったようだったが、それでも解放者とはほぼ互角で、ぎりぎりの所で解放者に勝利した。少しでもしくじっていれば逆に解放者によって討ち取られていた所だった。

 

今の自分達では神を討つことは叶わないと判断し、バラバラに大陸の果てに迷宮を創り鍛錬を重ねながら潜伏することにしたのだ。試練を用意し、それを突破した強者に自分達の力を分け与え、いつの日か神の遊戯を終わらせられる日が訪れることを願って。

 

「君達が何者で何の目的でここにたどり着いたのかはわからない。君達に神殺しを強要するつもりもない。ただ、知っておいて欲しかった。我々が何のために立ち上がったのか……君達に私の力を授けよう。どのように使うも君達の自由だ。だが、願わくば悪しき心を満たすためには振るわないで欲しい。話は以上だ。聞いてくれてありがとう。君のこれからが自由な意志の下にあらんことを」

 

ユエと出会う前の俺なら、その話を切って捨てただろう。この世界に興味など無い。自分の世界のことは自分達で何とかしろと。しかし、今はユエがいる。そう簡単には切り捨てられなかった。

 

オスカーはゆっくりと立ち上がり、俺達をある場所へと案内する。

 

「何故、俺達に神殺しを強要しない?」

 

案内されている途中、俺はそう問う。

 

「……勘、かな」

「勘?」

「そう、勘」

 

オスカーは勘と答えた。一体何を考えているのだろうか。

 

「君達はこれからどうするつもりかな?」

 

オスカーが俺達の目的を訊ねたので率直に答える。

 

「元の世界に戻る。俺はエヒトによってこの世界に召喚されたからな。たとえ神相手だろうが、邪魔立てするなら容赦はしない」

「そうかい。なら私の勘は当たっていたわけだ」

 

オスカー曰く、今まで勘が外れたことは一度も無いのだそう。

 

「さて、到着したよ」

 

オスカーに連れて来られたのは、篝火で円形に囲まれた魔法陣だった。

 

「その魔法陣に乗れば、私の〝生成魔法〟を得られる」

「〝生成魔法〟?」

「〝錬成〟の上位互換だと思ってもらって構わない」

 

成程、なら俺はその魔法への適正は高そうだ。

 

「一人ずつしか乗れないから、順番は予め決めておくようにね」

 

一度に一人ずつしか習得できないらしい。人数が多ければその分時間が掛かりそうだ。

 

「どうする……ハジメ」

 

ユエが不安そうな目で俺を見る。

 

「俺が行って安全を確かめる。ユエの身に何か起こったら困るからな……」

 

意を決し、俺が先に魔法陣に乗る。ユエは少し心配そうに俺を見つめる。

 

「なに、少しでも危険だと感じたらすぐにお前を連れて逃げるから安心しろ」

 

この世界についての真実は分かった。だが、クラスメイト共に裏切られたこともあり、俺はオスカーをまだ完全には信用し切れていなかった。

 

「それじゃ、行くよ。ちょっと頭がズキズキと痛むけど心配はないからね」

 

魔法陣が淡い輝きを放ち、辺りを神秘的な光に包む。と同時に脳裏に何かが侵入してくる感覚を覚えた。玄鐵の言う通り頭がズキズキと痛むが別に耐えられないほどじゃない。

 

やがて、痛みも収まり魔法陣の光も収まる。俺はゆっくり息を吐いた。

 

「ハジメ……大丈夫?」

「ああ、平気だ……頭に何かが入り込む感覚がしたが別に大したことはないようだ」

「そう……なら私も」

 

ユエも魔法陣に乗る。オスカーの操作で魔法陣は淡く光を放ち、ユエに神代魔法を刷り込んだ。

 

「どうだ? 修得したか?」

「ん……した」

 

それはよかった。

 

「二人共習得が済んだようだね」

 

オスカーが話しかける。

 

「この魔法でアーティファクトを作れるのか?」

「そうだ。君は私と同じ〝錬成師〟かい?」

「いや、〝鍛冶師〟だ。少し惜しい」

 

少し違うが、基本は大体一緒だろう。

 

「ならば、君にはその力を最大限に磨いてもらいたいと思っているが、急ぎの用事はあるかい?」

 

手当てをしてくれたことには感謝しているが、俺は早くここを出たかった。

 

「工房には色々な道具や鉱石が揃っているよ。おまけに理論書もいくつかある。錬成師にとって楽園のような場所だと思うんだが……」

(だから俺は鍛冶師だと言っているだろう)

 

俺は腕を組み少し思案する。そんな俺の様子を見て、ユエが首を傾げながら尋ねた。

 

「……どうしたの?」

 

俺はしばらく考え込んだ後、口を開く。

 

「ユエ、俺はしばらくここに留まろうと思う。地上に出たいのは俺も山々なんだが……せっかく学べるものも多いし、ここは拠点としては最高だ。他の迷宮攻略のことを考えても、ここで可能な限り準備しておきたい。どうだ?」

 

ユエは三百年も地下深くに封印されていたのだから一秒でも早く外に出たいだろうと思ったのだが、俺の提案にキョトンとした後、直ぐに了承した。不思議に思った俺だが……

 

「……ハジメと一緒ならどこでもいい。私の居場所はここ……他は知らない」

 

そう言って、俺に寄り添いその手を取る。ギュッと握られた手が本心であることを如実に語る。ユエは、過去、自分の国のために己の全てを捧げてきた。それを信頼していた者たちに裏切られ、誰も助けてはくれなかった。ユエにとって、長い幽閉の中で既にこの世界は牢獄だったのだ。

 

その牢獄から救い出してくれたのは俺だ。だからこそ俺の隣こそがユエの全てなのだろう。

 

「……そうか。なら、俺達の取る行動は一つだな」

 

俺は玄鐵……オスカーに向き直り、そして告げる。

 

「玄鐵……いや、オスカー・オルクス。俺達はしばらくここに滞在する。その間、生成魔法の稽古を付けさせて欲しい。頼む」

 

オスカーは目を少し輝かせていたが、表情一つ変えることなく俺を見据える。

 

「……うん、君達の気が済むまでここにいるといい。そして、稽古も引き受けよう」

 

そうして、俺とユエは二か月間、この迷宮に滞在し、オスカーの指南を受けて生成魔法の鍛錬をすることになった……




「「よっ」」

ハジメ「そういえばオスカー。他にも解放者は生きているのか?」
オスカー「ああ。皆バラバラに暮らしてるけど生きてるよ」
ハジメ「連絡とかは取ったりしているのか?」
オスカー「ちょくちょく、ね。だけど、私達はエヒトとの決戦までは如何なる戦いにも参加しないことにしている」
ハジメ「それでも時々地上には出ているんだろ?」
オスカー「情報収集の為さ。コードネームを名乗ってるから早々バレないと思う」
ハジメ「そうか。今までどのようにして地上の情報を得ていたのか疑問に思っていた」

オスカー「ここでトータスこそこそ噂話。実はこの世界、『猩々緋砂鉄』なるものや『猩々緋鉱石』なるものも産出し、実際に日輪刀と同じ効果を持った武器を作ることができるそうだよ」

オスカー「そういえば君は鍛冶師なんだっけ?」
ハジメ「そうだが……」
オスカー「刀を作れたりはしないのかい?」
ハジメ「ここに来るまでに作ったんだが、最下層の化け物に溶かされちまった」
オスカー「それは災難だったね。ここで作り直すつもりだったのかな?」
ハジメ「ああ。元よりそのつもりだった」
オスカー「なら丁度素材をいくつか紹介しようと思ってたんだ。気に入ったのがあれば、それを使うと良い」
ハジメ「いいのか? ありがとな」
オスカー「次回 第十三話 鬼の産声」
ユエ「二人共、お昼にしよ?」
ハジメ「もうこんな時間か」
オスカー「よし、昼を摂ったら鍛錬再開だ」


つづく

誰が鬼になったのか、情報開示は何時が良いですか?

  • 今直ぐに!!
  • クラスメイト救出後
  • 王都侵攻編
  • 帝国編
  • ハルツィナとシュネーの間
  • 最終決戦
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