ゾイドワイルドZERO NEARLY EQUAL   作:高杉祥一

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IMPRESSION

・ゼロファントス
 野生個体、発掘個体といった形で人の目に触れる多くの地球産ゾイドは、その生来の器官のみを持った状態で発見される。希に存在する長距離攻撃手段を持ったゾイドは、それ故に貴重な存在となり得る。
 だがこのゼロファントス種は、そういった自然の造形、生態系の要求とは明らかに異なる構造を持った状態で人類の前に現われた。
 さらに欠損している場合が多い外装構造部も本体に癒合した状態で保持されていることから、外部からの影響を排し戦闘を継続できる、兵器として設計されたゾイドであるという推測も根強い。自由に投擲できるA-Zスリングボムも、近接レンジでの多彩な攻撃手段として有効であった。
 人類に敵対的な勢力によって運用された実態が存在するが、その勢力が現在のゼロファントスを開発した勢力だとは断定されていない。過去に潜むそのルーツがいかなるものかは、これからの歴史が明らかにしていかねばならない問題となるだろう。


A.D.20xx『END OF THE WORLD』(後)

西暦二〇――年 一〇月一三日 二〇三四時

東京都 立川市 機獣遊撃隊新拠点

 

 突発的なディメパルサーの撃破を果たした夜、立川に移動した機獣遊撃隊のもとに数台のトレーラーが訪れた。

「やあやあ皆さん一日ぶり」

 交代での休憩にしようかとしていた来賀(くるが)達の前で、先頭のトレーラーの助手席からは富井(とみい)が降り立ってくる。

「富井博士……。なぜこちらに?」

「来賀君が珍しいゾイドを確保したと聞いたので! ……なーんて、そんな一存で動ける人がいるのは漫画の中だけでーす。

 私もこっちに異動になったんですよ」

「博士は移民船の方の担当では?」

 疑問を呈する来賀に、富井は若干顔を引きつらせながら詰め寄る。肘が脇腹を小突き、

「そっちの比重が大きかったのは事実だけど私も先端技術関係で君達の側にも関わってるからね」

「そういうものですか……。済みません、詳しい編成などは自分達には伝わっていないので」

「わかればよろしい」

 腰に手を当ててふんぞり返ると、富井は身を翻す。

「これから検分するけど、ファーストインプレッションはすぐ終わると思うのね。種族の特定が終われば済むから。

 その後に少し、今後の戦い方について指示があるかもです。ちょーっと寝ないで待ってて欲しいかな」

 富井の中では話すことがおおよそ決まっているという風なその指示に、置いて行かれる来賀達は視線を交わす。そして成川(なるかわ)は腕を組み、

「来賀の勘が当たったかな? あれは特別なゾイドだって」

「まあ、俺も国内未発見の種だって同行していた人から聞いてましたから……。

 ……葛城(かつらぎ)?」

 来賀が視線を巡らせると、一度はこちらを見た葛城は富井が乗ってきたトレーラーへ向き直っていた。トレーラーの列は富井とは別に、天幕の間を拠点の奥へと向かっていく。

「……荷物が多いと思わない? 来賀。

 あんなにたくさん……」

「補給物資とか、あと富井博士が使う機材なんじゃないか?」

「そういうのは博士自身が言うようにきちんと管理されて、正式な輸送隊が運ぶはずでしょ。それに博士は、ここには特定と話をしに来ただけって言ってるし……」

「他の用事だってあったっておかしくないよ。葛城君、ちょっと気にしすぎじゃないか?」

 来賀の指摘に、葛城は疑念を捨てきれない渋い表情を見せる。その様子に成川が肩を叩き、

「古代ギリシャの軍人じゃないんだから、あんまり入れ込み過ぎるな? 

 なに、悪い方に転がりそうだってんなら俺がなんとかしてやるよ。腐っても尉官様だからな」

「ゾイドに乗れるようになってからの昇格ですけどね、我々全員。(さかい)さんの方もそうですかね」

 来賀は元々普通科の一兵卒。葛城も同様で、成川は機甲科で装甲車を操縦していたという。

 人類側についたゾイド達の基準は何か。夕刻の出来事から来賀は考え始めていた。辛そうに眉根を寄せた葛城や、気楽そうな成川と自分達の共通点とは。

 そのまま他愛ない時間が過ぎると、富井は戻ってきた。その表情はあまり変わりが無いが、視線だけはなにか決意を込めた強さを宿している。

 

西暦二〇――年 一〇月一三日 二〇三四時

機獣遊撃隊新拠点 遊撃隊詰め所

 

「確認前に受けていた報告通り、今回来賀君が撃破したゾイドはディメパルサーという種でした。

 この種は他の地域からの報告で、ワイルドブラスト時に背びれから電磁波を放射して周囲のゾイドを操ることがあると確認されているのね」

 元の拠点から自販機が移設された詰め所に、富井の説明が響き渡る。プレハブ造りの小さな部屋には、他には洗面台とテーブルセット。あとは成川や来賀が持ち込んだ私物の漫画本があるばかりだ。

「それで……海外の研究チームでは、このゾイドクライシスでゾイドに人間を襲わせているのが、このディメパルサーの電磁波の影響なんじゃないかって説が出ているのね……」

「それじゃあ、ゾイドクライシスの元凶がこのディメパルサーってことですか?」

 成川の問いに、来賀と葛城も『言われてみれば……』と目を見開いた。ここまでの話からは、そのような構造が導き出せる。

 しかし富井は首を振り、

「他にも電磁波を活用するゾイドとしては、やはり今回来賀君が撃破したゾイドであるディロフォスと……あと一部のファングタイガー亜種なども報告があるのよね。

 それらが全部統一的にゾイドを人間にけしかけているとは考えにくいし……実は海外では、遊撃隊の皆さんと同じように、肝心のディメパルサーを手懐けた人もいるぐらいなんですよ」

「それは……不思議ですね」

 人間の側に付いたゾイドは、その後人間に反抗するような態度はほぼ見せない。故に今日のワイルドライガーブレードについて来賀は驚いたのだし、そしてディメパルサーに人間を襲う種としての性質があるなら他のゾイドのようにはいかないだろう。

「そこでさっきの説の発展として、ディメパルサーを中継役として、ゾイド全体に人類攻撃を命じている何者かがいるんじゃないか……ってのが最新の推測として北米チームから出ているわけ。

 人類側についたゾイドだけじゃなくて、戦線の後方なんかで不活発なゾイドの観察報告なども合わせて考えると、ゾイド達も好き好んで人類を襲っているようには見えないしね」

 切り出す富井。その言葉の意味を図りかねた来賀達はまたしても視線を交わして考え込み、

「ゾイドクライシスの首謀者がいる……?」

「者、かどうかはわかんないけどね。でも地球上の生物の中でも、選択的に人類を襲うのはゾイドにとっても不合理だから、なんというかそこには意図を想定せざるを得ないわけです」

 確かに、ゾイドクライシスという一連の出来事の裏には悪意のようなものが透けて見える――。それは漠然とした共通認識として、機獣遊撃隊だけではなくこの時を生きる全ての人々が共有しているものだった。

 だが『災害』にそんなものがあるはずがない。思い込みと、人類自体に罪を求める自罰的風潮が可能性を探る目を曇らせていた。だが人類の知の代表者達はその限りではなかったということだろう。

「とりあえず日本でも確認された以上、これからはディメパルサーを発見次第撃破してみると、今後は戦いが楽になるかもだね。

 ディメパルサーとディロフォスが小集団を形成してた例は珍しいから、この国では顕著な効果があるかも。あんまり推測を言い過ぎると科学者っぽくないけれどね」

 富井はそう言って拳を握る。不器用な激励を前に、成川は「なるほどなー」と呑気な声を上げた。

 そして来賀は、まだ表情が晴れない葛城に気付く。

「葛城君?」

「ん……いや、なんでもない……」

 明らかになんでもなくはない表情だったが、そこに踏み込むだけの切っ掛けが来賀には無かった。

 

西暦二〇――年 一〇月一三日 二二五六時

機獣遊撃隊新拠点

 

 その深夜、成川から始まった交代での仮眠回しの中で、来賀は遊撃隊詰め所の外に出ていた。

 詰め所が見える範囲、声が届く範囲であればよかろうというのは湾岸に拠点が設けられていた頃からの慣例だ。葛城も風通しの悪いプレハブから外に出ている。

 家族――剣道場をしている実家の面々に向けてメールを送ったところで、来賀は詰め所入り口のステップから立ち上がる。

 都内の携帯電話基地局は辛うじて稼働している。それでも本来なら作戦行動中に私的な連絡は御法度だが、この終末的な状況はそんな規則にも緩みをもたらしていた。

 周囲でも夜番の中で休憩時間を迎えた隊員達が自販機の周囲にたむろし一服している。葛城はどこに、と視線を巡らせた来賀はそこに姿を見いだせないが、

「つまりそれは、ガイア理論みたいな――」

「ええと、そういうのはよくわからないけど……」

 ぼそぼそと話す声が、プレハブの裏から聞こえてくる。来賀は忍び足でその声に近寄り、

「富井博士が言っていた、何者かの悪意っていうもの……。それは、人類を地球から追い出そうとしているんじゃないかって」

「いや、ゾイドが襲ってくることと、移民船の建造は別の意思決定でなされたことだよ! 米国の提案を国連が仲介して……」

「だから……。ゾイドが襲ってくることも、宇宙船が降ってきたことも、そういう意思決定に導くためのことなんじゃないかって……。僕は、そんな気がするんです」

 葛城の弱音に、富井はあたふたと応じている。科学者の矜持としてか、不確かなことは言えないのが足枷となっている様子だった。

「葛城君?」

「……!? く、来賀っ。なっ……何聞いてるんだよお!」

「んああ来賀君! ちょうど良かった聞いておくれよ! 葛城君が不安がってるのさ!」

 対照的な反応が二つ。立場の違いを加味し来賀は富井の誘いを受け、葛城の白い目を向けられる。

「来賀君、葛城君は一連のゾイドクライシスが、人類を地球から追い出す意図が込められているんじゃないかと疑っているんだよ。君はどう思う?」

「んんん……それは……」

 来賀にもそんな発想が無かったわけではない。だがそんな荒唐無稽な事実があったとして、来賀にはどうすることもできない。

「――ってのは、ゾイドに乗れる身としては志が低すぎるか」

「何の話?」

「ん……こっちの話。

 なあ葛城」

 来賀は理屈立てて話すのは苦手だ。だが言いたいことはある。

「俺達自衛官は、国民と国民の財産を守るのが役目だ。だとすれば、その……人類を地球から追い出そうってのは、当然防がなきゃならないことだろ?」

「それは……それはそうだけど」

「なら、俺達が自衛官としてすることはこれまでと何も変わらないだろ。攻めてくる相手が言っていることでこっちが対応を変えることもないだろ?」

 それは信念から導き出される来賀の答えだ。その内容には葛城も異存は無いようだが、本人の納得はついてこない。

「でも、実際人類は追い詰められてて……移民船が出発したらその後、どうなるか……」

「勝つのさ、そのための俺達なんだから。相手がどんなだろうとさ。

 戦う俺達が、負けることなんて考えちゃ不景気すぎるぜ」

 前向きな割り切り。葛城はそれに理解の頷きは見せてくる。だがそれが葛城の求める言葉ではないことは、傍らの富井もよくわかっている様子だ。

 なにか葛城の言い分自体に突きつけられる証拠は。それを思った時、来賀の脳裏に浮かぶのは夕刻のワイルドライガーブレードの姿だった。

「――それにさ、葛城君。ゾイド達はディメパルサーを通じて操られているかもしれないんだろ? だったらゾイド自身は、人間のことそんなに悪く思ってないと思うぜ。

 現に俺達のもとに来てくれたゾイドもいる。葛城もアンキロックスに話しかけてみろよ。言葉は通じないけど、それ以外で通じるものもあるぜ。

 俺とライガーは今日、そうだったし……」

 それは葛城と共有するものではなく、自分の実感に基づく意見。それ故に心から出た言葉だ。

 果たしてそれは葛城に届いたか。目の前の仕方なさそうな笑顔からは手応えが薄い。

「……あの子、引っ込み思案だからどうかな?」

 どこか震えた声の葛城。

 そしてその背後で、富井は無言で葛城の背と――来賀の眼差しを窺っていた。

 

西暦二〇――年 一〇月二〇日 一九〇〇時

東京都

 

 その夜。東京のあらゆる場所にチャイムが鳴り響いた。街角のスピーカー、大型ビジョン、店頭のテレビ、そして避難する人々が持つラジオ、スマートフォン。

『日本国政府から、国民の皆様にお伝えします。

 放送を聞いている皆様は、お近くの方にも声をかけ、できるだけ多くの方がこの放送を聞くよう呼びかけて下さい』

 男の低い声。映像が伴うデバイスは、ニュースで見覚えがあるような記者会見の場を映していた。しかしそこにいるのは、背広姿の男一人。

 彼は、この苦境にあって内閣総理大臣を務める人物だった。

『かねてから続いているゾイドクライシスについて、皆様の被った害に深くお見舞い申し上げます。その件につきまして本日ご報告いたします』

 張り詰めたその様子に、蓄積している避難生活の不満を示していた層も黙り込む。その間を読んだような沈黙を見せていた総理は、手元の原稿に視線を落とし、

『皆様もご存じの通り、現在全世界的に地球環境の変化を避けて人類を太陽系外惑星に移住させる計画が進行中です。

 我が国では二隻の移民船が東京湾、呉にて建造中ですが――昨今の情勢を鑑み、この二隻の最終艤装作業を小笠原諸島に建造したドックで行うこととします』

 それは東京の要所からは必ず見えていた、東京湾に浮かぶ影についての報告。だがそれだけのことなら、こんな大それた報告は行われないはずだ。

 本題はそこにあった。

『これに際しまして、日本国からの移民船搭乗者をあらかじめ乗船させた状態で二隻は本土を離れることが、最終ドックへのアクセスの都合などから決定されました。

 乗船メンバーに選ばれた人物には日本国政府から告知が送られ、乗船地点に移動していただくようあらかじめ通知をお届けしました。

 乗船の条件は、

 移民船の運航要員。

 学術・文化上の重要人物と、指導に適切な人材。

 そして一三歳から二三歳までの若年者。

 これらに適合する内から最終的には自己判断のもと、日本全土で合計六〇〇万人。一隻あたり三〇〇万人を収容する予定です』

 出し抜けの事後告知。それに対するどよめきは東京のあちこちで起こった。避難所の一角、未だ明かりの付いたビル、人影の少ない路地。

『二隻は現在の建造地点より離陸し、乗船メンバーを回収しながら全土を周回した後、最終ドックへ向かいます。この作業の開始時刻は、只今からです。

 引き続き日本国政府は国土・国民の防衛を続行します。国民の皆様には、ご協力をお願い申し上げます』

 定型的な締めくくり。しかし総理は、強い決意を込めた表情で最後に付け加えた。

『――ご意見、ご不満は首相官邸にのみお問い合わせ下さい。心よりお願いいたします』

 下げられる頭。それはこの通達が大多数の人々の納得を得られないことを覚悟した所作だった。

 それを読み取る者達は息を呑み――そしてそれ以外の全ての人々がどよめきのうねりを上げ始める。

 しかしその響きを掻き消し、海鳴りが東京湾から大地に染み渡っていく。護衛艦やクレーン船が離れた移民船が海面を引きちぎって浮上する響きだ。

 大瀑布じみた水音と共に、移民船は夜空にその全体像を表す。それを照らすわずかな明かりと――さらに遠い炎。

 東京最後の夜が始まる。

 

西暦二〇――年 一〇月二〇日 一九一二時

機獣遊撃隊新拠点

 

 その時を、来賀達は立川の拠点で迎えていた。放送が始まる前から集合がかかり、屋外に持ち出されたプロジェクターに投影された通知を拠点の総員が見聞きする。

「――以上だ。これより東京エリアの各部隊は移民船搭乗者の護衛を任務に加える。

 搭乗作業が行われる場所は……立川広域防災基地である。大きな混乱が予想されるため、同地の護衛に以下の部隊を動員する。

 まず普通科――」

 拠点司令の号令が集合した自衛官達に響く。それは国民を相手にした防衛命令であり、多くの者にとっては複雑なものだろう。

 だが状況は葛藤を許さない。司令の下に伝令が駆け寄り、

「――東京北方、西方、南方戦線のゾイド群の活動が活発化しつつあるという報告がある。立川の防衛に加え、多摩丘陵からの進撃に対応しなければならない。

 対応部隊の選定は――」

 東京に迫るゾイド群の存在。それは自衛隊が立ち向かうべき相手だ。その動きに、ぎこちないながらも隊員達は意気を上げ始める。

「――これらに加え、機獣遊撃隊も多摩丘陵に展開。ゾイド群を迎撃せよ。解散!」

 静から動へ。この夜での立川拠点の戦いも始まる。そして一塊に集まっていた成川は、来賀と葛城に振り返った。

「……ま、俺も色々言いたいことはあるが……俺達の仕事は一つだ。

 相棒達と一緒に戦って人々を守る。今夜も気合い入れていくぞ!」

 拳を振り上げる成川に、来賀も同じように腕を上げた。そして葛城はその様子を一歩引いて見つめ、そして背後から走ってくる整備隊員に気付く。

「遊撃隊の皆さん! 各ゾイドの武装について変更がありまぁす!」

 予想だにしない言葉に、来賀達はいつものように視線を交わす。ゾイドへの武装搭載は試みられてきたことではあるが、激しく機動するゾイドの上から敵を狙えるだけの火器は最新鋭の車載砲塔レベルのものが要求されることから断念された計画だった。

「富井博士から皆さんへ……最後まで調整していたもので、正しく作動するはずです!

 装着作業は一〇分です。マニュアルに目を通して下さい!」

 

『陸上自衛隊東京方面機獣遊撃隊 特殊兵装簡易マニュアル』より

 

『機獣遊撃隊の皆さんへ。

 突然の通達があって驚いたと思います。ですが移民船の移動は状況の切迫もあって内々に進められていた事案で、混乱を起こさない方法を煮詰める時間も無かったのです。

 ご存じの通り私達もこの計画の一端を担っていました。こうして皆さんに端書きを残すのも、艤装要員として最終ドックへ同行しなければならないからです。

 皆さんに隠し事をしたために、謝らなければならないことはたくさんあると思います。誤解を招くような言葉も多く、悔やむばかりです。

 その償いというわけではありませんが、皆様の今後の活躍の助けになることを願ってこれらの装備を残します。〈ディスカバード〉から発見された、ゾイド用の武装のデータを解析して作り上げたものです。

 私の学術生命をかけて、国内で建造したものとなります。もし上手く稼働しなかった時は……私のことを末代まで呪って下さい。

 短い時間でしたが、興味深い時間をすごすことができました。皆さんのさらなる活躍を祈ります。最後まで親身な言葉を選べなくて済みません。

 でも本当に、皆さんがこれからの新しい時代を担う人々だと信じています。頑張ってください。

 

 富井綾香(あやか)

 

西暦二〇――年 一〇月二〇日 一九四九時

東京都 福生市

 

 福生は一週間前を上回る戦場と化していた。

 山岳地帯と面するために車線が通りにくく、この地に配備された正面戦力は普通科と、装輪式の一六式機動戦闘車が中心だ。その分航空支援が向けられているが、貴重な国内戦力が火力を集結させても押し寄せるゾイド集団を食い止めるのが精一杯である。

 砲火をくぐり抜け、防御陣地にスコーピアが迫る。土嚢越しに射撃する普通科隊員の火力ではその足取りは止まらない。

「チクショウとんでもない夜だ! この世の終わりみたいな有様だぜ」

「まあ実際我々の戦い方次第で終わっちまうわけですが」

 迎撃する隊員達の諦観は否定できない。だがそこへ、圧倒的な破壊力が頭上を越えてスコーピアへと降り注いだ。

 明らかに一六式でも、航空戦力のものでもない火力。思わず振り向いた隊員達が目にするのは、赤い国籍標識を刻まれたゾイドの姿だった。

「機獣遊撃隊、福生戦線に参加します。アンキロックス・ガンブラスト、火力支援開始」

 葛城が駆るアンキロックスが、その背部に搭載した武装の集合体を躍動させる。複数種の火器を連結させたそれは、幅も奥行きも広い範囲に破壊力をまき散らした。

「ゾイド部隊も火力を確保しました。敵の接近により多角的に対応できます。敵が突破しそうな位置にはすぐ派遣して下さい」

 アンキロックスに並ぶ成川のトリケラドゴスは、頭上の双角に同軸の火砲を連結していた。トリケラドゴス・ブリッツェンカノーネも火力増強仕様だ。

 そして二体が火力支援に加わる背後に、来賀がワイルドライガーブレードを待機させる。その背には後方へ向けて折りたたまれたコンパクトな複合兵装が装備されていた。

「来賀君とライガーの装備は機動力向上の効果もある。リザーブとしての機動は頼んだぞ!」

「任せて下さい!」

 富井が残していった装備が持つ意味。自分達に出来ることと、やりたいこと。複雑な積み重ねがあるが、今ここにある力は一つの目的のもとにまとまっている。

「ワイルドライガーブレード・アタックブースター……コンディショングリーンです。戦線のどの位置にも急行できます」

 ワイルドライガーブレードに与えられた装備は、ロケットブースターと、新開発の高収束ビーム兵器を組み合わせたものだ。遊撃隊最速のライガーの長所と打撃力を強化できる。

「ライガーもこの装備に好感触みたいです。本当にあつらえたみたいにマッチしている……そういう雰囲気を感じる」

 他の二体が重たげな装備を担う一方で、ワイルドライガーブレードは武装の重みを感じさせず――それどころかあるべき形を取り戻したかのような凜とした空気を纏っていた。来賀の知らぬどこかで、この姿であったかのように。

「状況が状況ですが、最善を尽くせるはずです。結果も……きっと付いてくる」

「文字通り船出だ。盛大に送り出したいもんだな。

 葛城君も、盛大に撃ちまくってくれよ! 火力は君のゾイドが一番だ!」

「は……はい」

 盛り上げる成川に対し、葛城は声を濁しがちだ。現状への迷いはまだ引きずっているし、移民船が強行発進している真っ最中なのだから。

 歴史が動き出す夜、誰も平静ではいられない。そんな中で普段と変わらないのが、目の前に迫るゾイド集団という現実も平和な時代との別離を感じずにはいられない。

 やけっぱちじみた空元気が静かに広がる戦場。その一方で、鋼の兵器達は無言で仕事をこなしていく。陣地からの火力がゾイドを食い止め――そして陣地の外に残る建造物も削り落としていった。

 東京が大地に還っていく。そしてその進行を告げる爆音が連続する中、陣地後方からも火の手が上がる。

「……なんだ?」

 来賀達も、異なる方向から飛んでくる音圧に敏感に振り向く。闇夜に周囲からの光を浴びて薄白く見える煙に、来賀が真っ先に想定するのは立川からの移民船搭乗を嗅ぎつけた暴徒の殺到だが、

「――穴を掘って、ゾイドが戦線後方に現われたみたいだ。

 接近戦も出来る我々に、現場に急行するよう指示が来た。転進だ、二人とも!」

 通信を受け、成川が二人に号令を飛ばす。すでに市街地に侵入した敵に迫れるのは、機獣遊撃隊の強みだ。

 機体に踵を返させた先から、爆発音は散発的に続いてくる。三体の人類側に立ったゾイドは、その方角へ向けてためらいなく踏み込んでいく。

 

西暦二〇――年 一〇月二〇日 二〇〇八時

東京都 昭島市

 

 移民船への乗船地点となる立川広域防災基地を東に望む昭島市。立川に続く青梅線を横に見ながら駆けつけた来賀達の前で、市街地をスコーピアの群れが埋め尽くしていた。

「このエリアにも多摩川が繋がっているから、ガブリゲーターも現われるかもしれないな……。

 奴らと防災基地の間に割り込む! 一匹たりとも通さないぞ!」

 青梅線の架線を防衛ラインとして背後に置きつつ、三機が並び立つ。その中央に立つトリケラドゴスが狙いを定め、

「戦闘開始! 撃ちまくれ葛城君!

 来賀君は機動力を活かして柔軟に頼んだよ!」

「了解……!」

 アタックブースターを前傾させたビームキャノンモードとし、来賀はワイルドライガーブレードをゾイドの集団に立ち向かわせていく。

 初めて扱うビーム兵器。それは高熱が機械の中を駆け抜ける高音と、大気を焦がすチリつくような残響を残してスコーピアの群れへ飛び込み、炸裂で数体を夜空に吹き飛ばしていく。

「うほっ、すごい威力だぜ来賀君! 俺達も負けてられないな!」

 威力の炸裂に成川は指を鳴らし、そしてトリケラドゴスからの攻撃も続行。市街地に溢れるスコーピアの群れが吹き飛んでいく。押し寄せる波濤を手で押し返すような反撃だが、町並みに分断されたスコーピアは辛うじて受け止めきれる状況だ。

「昭島の街も……」

 葛城の呟きは爆音に掻き消されていく。だがそれでも撃ち出される火力はゾイド群の接近を食い止め、そして同時に市街地を破壊していった。

 しかし三人の背後で、立川広域防災基地は健在だ。射撃の勢いは増し、スコーピアの集団を押し返し――そして三機のゾイドの背後で青梅線のバラストが夜空に吹き飛ばされる。

「――真後ろっ!」

 すかさず振り向いた来賀の視線の先、線路を断ち切りながら地中から飛び出す野太いシルエットはキャタルガのものだ。その頭部装甲殻が反り返り、ドリル器官が前方に突き出している。

「こいつがゾイドの後方浸透を手引きしている……ならば!」

 飛びかかったワイルドライガーブレードがキャタルガの腹に爪を立て叩き落とす。しかし開かれた穴からは、すぐさまラプトールの群れがわき上がってきた。

 そこへ脚を踏み下ろすのは、成川のトリケラドゴスだ。トンネルを崩落させつつ、土砂を掻き分けて地上に出ようとするラプトールには角を叩きつける。

「チックショ……こういう手もあるのは厄介だな! 来賀君! 埋めろ埋めろ!」

「くそっ、他の場所からも現われたりは……」

 慌てて対処に当たる来賀と成川。その間に正面からの敵に対応するのは葛城とアンキロックスのみとなるが、

「……っ! 正面から中……大型ゾイドが来ます!」

 葛城の弾幕が炸裂する中を突き進んでくる黒い影。砲撃の光を跳ね返す銀の背びれが、左右に開いてその鋭利さを発揮し始める。

「ステゴゼーゲ種……!?」

 同じく人間を狙う側であるはずの、周囲の小型ゾイドをも巻き込みながら突撃してくるのはステゴサウルス種ゾイド・ステゴゼーゲだ。

 そしてこの種は群れを形成することが知られている。現に続けて後方でもスコーピアの集団が蹴散らされ、黒々とした影が接近しつつあった。迫る姿は、水面を断ち切るサメの背びれのようでもある。

「うおおっ、二人とも躱せぇっ!」

 成川はトリケラドゴスを前に。先頭のステゴゼーゲを激突音を立てて受け止めるが、さらに後続の影が路地から姿を現わし殺到してくる。

「わ……ワイルドブラスト戦許可! 葛城君も相手を食い止めろ! 来賀君は――」

「俺は――平気です!」

 トリケラドゴスに比べれば軽量で腰高なワイルドライガーブレードは突進を受け止められない。そこへ突っ込んでくるステゴゼーゲの一体に対し、青のライガーは宙へ飛んで突進をバラストに向かわせた。

 まき散らされる砂利の上から、アタックブースターのハイデンシティビームキャノンが光弾を撃ち下ろす。その炸裂が展開した背面を襲えば、顔をバラストに突っ込んだステゴゼーゲは止まるが――、

「来賀! まだ来てる!」

 アンキロックスのワイルドブラストで成川のサイドからの敵を威圧する葛城が、横目で来賀側の状況を見ている。そこにはすでに二体、三体のステゴゼーゲが続き、そしてライガーの跳躍は落下に転じつつあった。

 来賀の視線の先にはステゴゼーゲの刃が連なり、ミキサーの底のように銀色の切断力が旋回していた。鋼鉄の体を持つワイルドライガーブレードでも飛び込めばどうなるかはわからない。

「くっ……。っ……!」

 瞬間、来賀は発想した。アタックブースターは今ビームキャノンモードとして前傾している。

 操縦レバーに配置された緊急点火のスイッチを押し込めば、保護カバーを展開しロケットブースターが推進力を生み出す。その噴射炎は前方――地上の方向へ伸び、ワイルドライガーブレードを空中に押し戻す推力となる。

 噴射は一瞬。蹴り上げられた玉のようにライガーは体を丸め、回転しながら空中に跳ねる。そしてその回転の中から光弾の連射が飛び、続くステゴゼーゲをその場に縫い止められる。折り重なるその巨体がスコーピアを堰き止めるのを下に、来賀は昭島を埋め尽くすゾイドの群れを空中から見渡す。

「こんなことが続いたら保たないぞ……と?」

 一部で火の手が上がっている昭島の景色。しかしその中に、見覚えのある動きと電光が見えた。

「……ディメパルサー!?」

 目にしたのは一度だけだ。だが印象は深い。

 着地するワイルドライガーブレードを、成川と葛城はカバーしてくれた。そしてトリケラドゴス背部の操縦席のキャノピー越しに成川が振り向き、

「曲芸だな! そうそう何度も出来ないだろう? 後は任せて――」

 危機を乗り越えた来賀に、成川は労いを込めた軽口を飛ばしてくる。だが来賀はそれを遮ってでも声を上げなければならなかった。

「成川隊長! 敵の奥にディメパルサーがいます! 奴らを撃破できればこの状況を打破できるかもしれません!」

「例の電波ゾイドか……。だが富井博士の話じゃ、ヤツがゾイドを操っているのかどうかは確実じゃないと――」

「しかしここで敵を食い止めるだけではジリ貧です! 防災基地はすぐ後ろなんだ、手を打たなければ……!」

 来賀は無線機に声を飛ばしつつ、キャノピー越しの成川に直接視線を向ける。こちらを見ていた成川は真正面から来賀の目を受け止め、

「……腹が据わってるなら、俺の口出しは野暮かな。

 オッケー来賀君! ライガーとの単騎駆けになるけれど……頼んだぞ!」

「了解!」

 成川のサムズアップを受け、来賀はワイルドライガーブレードを前進させた。そしてその様子に、葛城のアンキロックスが視線を向けてくる。

「来賀――」

「葛城君、ここは頼む! 上手く行けば……戦況は変わるはずだ!」

 告げ、来賀はライガーの操縦レバーに活を入れる。その勢いのままに、青の機獣は夜の中に駆け出していった。

 

西暦二〇――年 一〇月二〇日 二〇一四時

東京都 昭島市

 

 夜の昭島の中を、ワイルドライガーブレードは駆け抜ける。その足にかけられたスコーピア達が金切り声を上げながら吹き飛び、燃え上がる世界に飲み込まれていった。

 多数のゾイドが蠢くその市街地は、もはや来賀が知る日本の景色ではない。しかしその一方で、ライガーはこの世界の終わりじみた朱色の光の中で強い叫びを上げた。

 彼は知っているのだ、こんな空間を。そして駆け抜けたことがあるのだ。

「ライガー、お前はまるでこの地球で生まれる前にまで人生があるみたいだな。

 いや、人のそれとは違うか」

 思わず来賀は呟く。揺らめく炎と影が生み出すトランスのためか、興奮の底でライガーの感情が来賀にも繋がっているように感じられた。そしてそんな来賀の前のめりな感情に同調するように、ライガーも市街地を駆け抜けていく。

 そして周囲から飛びかかってくる小型ゾイド達。しかしその目が宿す光は、闇夜にもおぼつかない。己の意思というものが欠落していると、来賀は感じた。

「ライガー、これを誰かが手引きしているのか? ディメパルサー……いや、その背後にいるヤツが?」

 来賀の問いに答えるように、ワイルドライガーブレードは足早に駆ける。その行く先は宙空から見つけた敵の在処。その速度は獲物ではなく、敵に迫る勢い。

 そして国道とも交わる多摩街道の十字路に、来賀達は敵の姿を捉えた。背びれを展開しながらうずくまるディメパルサーが三体。彼らもまた、苦しみに堪えているように震えていた。

「ディメパルサーも、やはり自分の意思で動いているわけではないのか……?

 黒幕を仕留められればいいが……ライガー! 今は直接奴らを叩くぞ!」

 来賀の声にワイルドライガーブレードも頷くように身を低くし、加速を重ねる。そして切り込む相手は、最も手前に見えていたディメパルサー。

「破甲切断爪!」

 背後になびくようなタテガミクローが展開し、そして振り上げられる。脇腹に叩き込まれる斬撃は、肋骨骨格を切り裂いて威力を胴体に突き抜けさせた。

 続けざまに斬りかかろうとする来賀が顔を上げれば、残るディメパルサー二体は這いずって逃れようとしている。だがワイルドライガーブレードを一瞥することもなく、何かに導かれるような足取りだ。

「やはり何かがゾイドを誘導してい――」

 る、と推測を口にしようとした来賀。しかしそこに、横様に叩きつけられる衝撃。

 町並みが横に流れた瞬間、来賀は自分達が何者かに激突されたことに気付いた。そして身を折りながら回るワイルドライガーブレードは、その闖入者を視界に収める。

「また……今までに無いタイプか!」

 それは夜闇にボンヤリと浮かび上がる白紫の巨体。四足歩行のようだが、こちらを正面に見据える姿で目に付くのは左右に広がった耳と、

「鼻!? ――象か!」

 未知の敵に、来賀は看破の声を飛ばす。それに応じるようにゾウ種ゾイドは双眸をボンヤリと赤に光らせると、頭部から真下に伸びる鼻を高く掲げ背に回して見せた。

 そこにあるのは、他のゾイドと比しても妙に機械的なもの。コンテナのようにも見えるが、ゾウ種ゾイドはそこから何か砲丸のようなものを鼻先でつかみ取っている。

「マガジン……武装だ!?」

 来賀の気づきに、ワイルドライガーブレードは即座に応じる。まだ宙を行く体から爪先を伸ばし強引にグリップを確保すると、急停止から横に跳躍。そして一拍遅れて、風を切る何者かがライガーがいた場所に飛び込んでくる。

 翳りにしか見えない何かは道の上を放物線を描いて飛んでいき、そして夜の街に爆風を上げた。擲弾……グレネードだ。

 ゾイドはその体に機械に限りなく近しい金属組織を持つ。中には火器を持つ種も確かにいるが、来賀が受ける感触は違う。これは人為的に組み込まれたものだ。

「ディメパルサーと同じように操られて……。いや、武装しているなら俺にとってのライガーと同じか!?」

 疾走するライガーからは、建造物越しにゾウ種ゾイドの巨体が見えている。横を回っていくルートからの視界は敵の全身を観察できるが、操縦席の類いは――、

「くっ……犯人達はいるのか? 倒せば……確認できるか!?」

 意を決し、来賀は旋回軌道を曲げワイルドライガーブレードを突入させていく。ロケットブースターも使用した突撃は、相手の転回速度を上回っていた。

 斜め後方からのタテガミクローによる一撃。それは装甲を貫くことはないが傷を刻み――そしてその断裂から何か液体が噴き出す。

 ライガーの横顔に浴びせかけられる紫の液体。その粘着質な飛沫が弾けた途端、ライガーは喉の奥から叫びを上げて飛び退いた。キャノピーの外に来賀が見る空間に蒸気が立ちこめ、キャノピーに飛んだ一滴が泡立っている。

「溶けている……化学兵器!? ライガー!」

 着地したライガーは右の顔を押さえて唸る。だが来賀の呼びかけに応じて首を振り浴びせかけられた飛沫を振り払えば、まだ蒸気を上げつつも視線はゾウ種ゾイドの方向へ。

「火力を持つ上に、格闘戦を挑めば返り討ちか……。

 ディメパルサーだけを先に倒すことが出来れば……」

 そうは考えるが、ゾウ種ゾイドは次の擲弾をすでに鼻先に構えている。そしてブースターの速度で切り込めたものの、相手の動きも決して鈍重ではない。立ちはだかる巨体の向こうで、ディメパルサーは逃走を続けていた。

「道を空けろ! お前達にどんな意図があろうと……俺達はこの国を! 人々を! その営みを守るんだ!

 破壊するだけの存在に、この都市を蹂躙させはしないぞ!」

 アタックブースターをビームキャノン形態とし、来賀はゾウ種ゾイドめがけて射撃を繰り出す。だが光弾の炸裂に、相手は煩わしげに首を振るばかりだ。

 そしてゾウ種ゾイドは、自らの足下に擲弾を叩きつけ爆風を巻き上げた。その奥に姿が掻き消え、

「ぐっ……回り込まれる!」

 建造物の奥で砂埃が舞い上がり、足音が振動と共に伝わってくる。やはり決して遅くはない。ライガーがそちらに視線を向ければ、そこで建造物を粉砕しながらゾウ種ゾイドは接近してくる。

 投擲するパワーを秘めた鼻と、湾曲した牙が鉄筋コンクリートを粉砕して迫った。飛び退くワイルドライガーブレードの上からは、さらに遠ざかっていくディメパルサーが見える。

「くそっ……誰か、奴らを……!」

 決め手が得られないままに、ターゲットだけが遠ざかっていく。その焦りが来賀の口を割って漏れる中でライガーはゾウ種ゾイドと間合いを取って跳び回るしかないが、

『――テングよりシシマイ、何かお困りかな?』

 不意の通信。そしてゾイドの足音や建造物の倒壊音、遠い砲声に混じって空を打つローター音が響いてくる。

 来賀はワイルドライガーブレードと共に空を見上げた。そこには炎上しつつある市街地の光に照らされ、滑らかな機体外装を持つ観測ヘリOH-1の姿が浮かび上がっている。

「OH-1……先週の多摩丘陵で一緒だった……」

『記憶テストかな? ならば言おう。あの時と同じディメパルサーの件だろう。

 情報を転送してくれ。俺達観測ヘリ乗りはそいつを攻撃部隊に届けるのが役目だ』

 OH-1は攻撃手段をほとんど持たない兵器だ。しかしそれ故の役割がある。背後の空から、その存在を示す無数のエンジン音が轟いていた。

「――このゾウ種ゾイドは俺達が食い止めます! 逃走しようとする二体のディメパルサーを撃破すれば、この戦域のゾイドの動きを変えられるかもしれない……!」

 状況を伝えながら、来賀は操縦席のコンソールに手を伸ばす。C4I――高度な戦術情報システムの末端部でもあるこの操縦席は、捕捉した敵の情報を他の戦力と共有できるのだ。

『テングより各ユニット、聞いたとおりだ。

 最優先目標はディメパルサー種ゾイド。マーカーの確認をよろしく』

『了解した。航空自衛隊にここから先は任せてもらおう』

 OH-1の背後の空から夜闇に姿を現わすのは、複数の航空編隊。一つずつが別の機種で構成されているのが地上からも見えた。

 アメリカで開発された高性能汎用機、F-35。

 国産の度合いが強い対艦攻撃の雄、F-2。

 そして本来は練習機であるはずの純国産機、T-4。

『一発で決めないと納税者様方がキツいぞっと』

『相手が二体いるのに一発っすかあ!?』

『言葉の綾だよ!』

 低空へ進入していく編隊。簡易武装のT-4が先行し、高度なシステムを備えるF-35が追随する陣形だ。

『さらに今回はスペシャルゲストだ。シシマイ……いや来賀三曹、貴官の情報提供に感謝する』

「ゲスト……?」

 頭上を通過する空自の部隊。だがジェットエンジンの轟きはまだ背後の空から響いていた。

『米軍だよ。

 横須賀に停泊していた空母〈ライト・ブラザーズ〉が日本の沖合で持ちこたえて支援要請を待っていたんだ。

 移民船の件はアメリカの肝いりだからね。同盟国で失敗が出たら――って思惑はあるんだろうけど、今はただただありがたいと思うよ。

 周囲のことは彼らに任せな。上手くいくさ、来賀三曹』

 テングはそう告げて交代していく。そしてそこに割り込んでくるのは、米軍の五芒星国籍標識を刻まれた戦闘攻撃機F/A-18の部隊だ。

 艦載機らしい大推力が生み出す轟音越しに、来賀に中継される声がある。

『Call Shishimai.』

 ネイティブの英語の声だ。だがその発音のままに、

『Targeting……アリガトウゴザイマス。

 ワタシタチモ……キモチハイッショデス。Shishimai……ZOIDS rider モ、ヒトビトヲマモリタイ。オナジ、デスネ?』

 辿々しい日本語。しかし彼らの機体が描く軌道は、より攻撃的な抉り込む軌道だ。レーザー誘導弾の投下が自衛隊に続き、

『Bingooooo!』

 連続する爆煙。その巻き上がりに来賀からはディメパルサーの存在が見えなくなるが、C4Iによる情報共有が今度は逆に敵の存在を教えてくれる。

「ディメパルサーが残り一機……!」

 戦域を真上から見た戦術画面には、ディメパルサーの輝点が一つ残っている。

 そしてそこに来賀が注意を向けた瞬間、ゾウ種ゾイドの突撃があった。二つの牙の突き上げに対し、ライガーが鋭く応じて宙に舞う。

 そして再びの空中からの視点は、残るディメパルサーを捉えた。うずくまるディメパルサーと、空自編隊の中から宙返りで再攻撃に向かう一機のT-4が見える。

『おい、ドルフィン3――』

『ヤツが最優先ターゲットなんでしょうが! 逃すわけには……!』

 鋭い反転軌道からの宙返り。そこから敵を狙う急降下の先に、来賀は眼前のゾウ種ゾイドを見た。

「こいつは……俺達が倒すって言ったんじゃないか!」

 その叫びに、ワイルドライガーブレードは操縦レバーを動かすよりも先に相手に飛びかかった。その蹴り足の衝撃に、来賀は我に返る。

「――倒す!」

 自分の口をついて出た言葉に、来賀は今こそ自分を乗せた。

 役割が自分達自身を運んでいくような感触。それは人は使命感というのだろうか。

 だが今――来賀がその手に握るものは、突進する獣という確かな手応えを返す。

「ワイルドブラスト――」

 今再び切りつけられるタテガミクロー。そしてそこに来賀は、与えられた名前ではない意味を感じていた。

「キングオブ……クローッ!」

 心の底から沸き立つその言葉を、来賀は叫んだ。そして真の名を与えられた一撃は、立ちはだかる巨像に一直線に突撃していく。

「でぇぇぇぇぇ――あっっっ!」

 突撃の中で、迎撃するゾウ種ゾイドの牙と鼻の隙を来賀は見据える。そしてそこへ、片目を失ったワイルドライガーブレードは身を捻った。

 最後の踏み込みの瞬間に、アタックブースターの点火も重ねられた。それが来賀か、ライガーか、どちらの意思かはわからない。

 ただ一つ、訪れた結果は同じだ。

「…………っ!」

 跳躍から身を捻って背面を向けた軌道から、タテガミクローは敵の背を引っかける。その切断力が背面の擲弾マガジンを弾き飛ばすと同時に、刃への抗力で宙を返るライガーはゾウ種ゾイドの背後で相手に向き直っていた。

「スワローエッジ……!」

 返す刀の一撃。反転した一撃はゾウ種ゾイドの半身を切り抜けた。飛び散る毒液を速度が生み出す気流によって背後に散らし、来賀は振り返る。

 紫の液体を吹き散らしながら、ゾウ種ゾイドはその場に伏していた。漏出以外にも四肢の付け根のモーター器官からも火花が散って破損を示している。

 さらに吹き飛んだマガジンとの接合部も誘爆を起こし、ゾウ種ゾイドは横倒しに倒れてアスファルトを砕く。流れ出る液体が路面を溶かす蒸気の中で、薄紫の巨体は急速に色褪せていった。

「石になっていく……。

 ――ディメパルサーは!?」

『そっちは平気だぞ』

 緊張から荒い息を吐いた来賀に応じるのは、テングの声だ。そして戦いが繰り広げられる昭島の夜空に一つの煙が立ち上っている。

『ターゲットは全機撃破された。空自も米軍もよくやってくれているよ』

「T-4が一機無茶な動きをしていましたが」

『一番無茶なことをしてるヤツが心配してる場合かな?』

 テングの指摘の背後で、上空を一機のT-4がフライパスしていく。空自編隊に戻っていくその姿は、急降下でディメパルサーに再攻撃を挑んだ機体だ。

『ターゲットダウンです……!』

『お前ねえ、使ってるのが練習機とはいえ貴重な航空戦力なんだから温存を考えなさいよ』

『サンダー4、言っておくけどドルフィン3はお前よりキャリア長いよ』

『うえっ!?』

『いやあ、輸送機でのキャリアですけどね』

 言葉を交わしながら、編隊は空を突っ切っていく。そしてその奥から姿を現わすものがあった。

 それは東京湾から浮上し、立川まで到達した移民船だ。全長がキロメートル単位に達するその巨体は、たゆたう雲のように上空に存在している。

『ゾイド群の動きは確かに変化している。来賀三曹、原隊指揮官と合流し指示を受けたまえ。東京の移民船は一度南下してから日本海側から東日本を一周して最終ドックへ向かうので、その護衛の指示があるはずだ』

 移民船の接近もあってか、テングのOH-1は退避行動に入る。北への軌道を取るその姿に、来賀は呼びかけた。

「シシマイよりテング。あなたは……どうなるんですか?」

『偵察ユニットは土地勘も重要なので地域間で移動することは無いだろう。東京に残る避難民の防衛もあるしな』

 冷静な視点を持つテングは、これから始まる移民船の移動には付いてこないということだ。来賀は心細さを覚えるが、それを察してかテングは、

『ところで来賀三曹、我々のコールサインはテングだが……OH-1は二人乗りなのをご存じかな』

「えっ」

『私は情報管制担当でな。操縦手の方が機獣遊撃隊のファンということでこんなところでうろついている面もあるんだよ。

 おい幸田(こうだ)、ファンの声援を届けてやれよ』

『ちょっ……真砂(まさご)二尉! 操縦してる時にそういう揺さぶり振るのズルいですって!

 あ、え、っとぉ……来賀三曹! 遊撃隊の中でも三曹とワイルドライガーブレード推しです! さっきの白兵戦もすごかったし、これからの活躍も応援してます!』

 テングのOH-1を操縦する者の声は、これまでテングとして聞いてきた男の声と対照的な若い女性の声だった。そしてそこからの突然の声援に、来賀は呆気に取られ、

『今この世界に、文字通り爪を立てられるのは機獣遊撃隊の皆さんだと思います。私達の分も、これからの戦いに持っていって下さい!』

 去って行くOH-1。そしてその影から視線を下ろせば、周囲のゾイド達はひたむきに立川を目指していたこれまでと異なり、迷うようにその場で足踏みしているばかりだ。

 やはり何者かの意思は存在している。その手がかりになったであろうゾウ種ゾイドは石になってしまったが、答えへは一歩前進したと言えるだろう。

『来賀君! そちらはどうだ!? ゾイドの動きが変わったようだけど』

「成川隊長……ディメパルサーと、あと未知のゾイドを撃破しましたよ。そちらに合流します――」

『了解だ! いよいよ移民船への乗り込みも始まる。あと一踏ん張りだぞっ……と!』

 戦闘を続ける響きと共に、成川の激励が聞こえてくる。来賀はワイルドライガーブレードに踵を返させると、ここまで駆け抜けてきた町並みを引き返していった。

 小さくしか見えなかったディメパルサーと異なり、巨大な移民船の姿は視界いっぱいに広がる。明確な目標が見えたためか、ライガーの足取りは軽くなっていた。

 

西暦二〇――年 一〇月二〇日 二〇五一時

東京都 立川市

 

 ゾイド群の圧力が弱まったことで、来賀達が守りにつく位置も変化していた。防災基地を――そしてそこに押し寄せる群衆をも見渡すことが出来る位置だ。

 あらかじめ乗船の通知を送られていた若者達がバスから降り立ち、巨大な移民船の搬入口から乗り込んでいく。そんな彼らを見送るのは誘導を任された自衛官達であり、そして敷地の外からは移民船策への反対派や反体制活動家達のシュプレヒコールが届いていた。

「厄介だなあ……。移民が成功するかはわからないというのに、この地を離れられるという一点であれだけの声が上がるとは」

 夜の街に蠢くゾイド達をちらちらと見ながら、成川は状況をそう総括する。

「でも、非公式でも、地球上の人類生存確率は一〇年後で三〇%という話も民間には広がっています」

「葛城君?」

 うずくまるアンキロックスの操縦席から、葛城のか細い声が聞こえてくる。来賀も成川も、操縦席からキャノピー越しの葛城の姿を見た。

「一〇年後の三〇%のために……今日みたいな激しい戦いを続けていくなんて、僕には想像も出来ない。今日ワイルドライガーはそんなに傷ついたし、僕達も一〇年後までには……」

 毒液を浴びて溶解したワイルドライガーブレードの右目には、応急の補修が施されている。だが焼けただれたような横顔の大部分はそのままであり、その痛々しい姿は葛城の弱気を喚起するのに十分であった。

 あるいは、鬼気迫るディメパルサーへの突撃と生還自体が葛城には手の届かないものに見えたのだろうか。

「僕はこのアンキロックスに乗ることが出来るけれど……それすらも出来ない人々はもっと不安だと思います。それをこうやって抑え込んで、分断して……。

 もう僕は、これからの世界に希望が持てない……」

 そう言って、葛城は操縦席を開けた。息苦しさから逃れるためか。だが、

「葛城君! ここは後方では――!」

 思わず来賀が声を上げた途端、そばに建つビルの合間を縫って現われる影がある。

 低空に飛来したそれは、昆虫種ゾイドカブター。その角が示す先は、操縦席を開けたアンキロックスだった。立ち上がって息を吐こうとしていた葛城が逆に息を呑んだところへゾイド一体分の質量が突撃し、

「葛城君っ……!」

 咄嗟に飛び込むワイルドライガーブレード。成川のトリケラドゴスも動くが、なにより大きく動いたのはアンキロックス自身だった。

 増設されたガンブラストユニットの上に背後から尾が掲げられ、その横薙ぎがカブターの突進を弾き飛ばす。開いたままの操縦席にへたりこんだ葛城の手は、操縦装置には一切触れていなかった。

「……アンキロックスは、葛城のことを守ろうと思ってるみたいだな」

 突発的な事態に身を乗り出していた成川が、姿勢を戻しながらそう評する。操縦席を再び閉じる葛城はその言葉に顔を上げ、

「アンキロックスが、僕のことを……?」

「こうして今のゾイド達を見ていると、素のゾイドは別に人間がいようと気にしないみたいじゃないか? それなのに、こいつらは俺達の側に来てくれた。

 来賀のワイルドライガーはゾイドを操る何かを憎んでいるようだし……きっと俺のトリケラドゴスや、アンキロックスは人間のことを守ろうとしてくれてるんだと思うんだよね」

 成川の言葉に、トリケラドゴスはとぼけた顔で口をカパカパと開けている。あからさまな素知らぬ風が逆にわざとらしい。

 そんな一番の大柄の様子に、ワイルドライガーブレードもアンキロックスも身じろぎする。ゾイド同士、どこかで思うところは通じていたのだろうか。

「バタバタしてて忘れがちだけど、俺達も元々誰かを守ろうと思って自衛官になったんだよな。それが一度挫けそうな時に巡り会ったのが、こいつらなんだよな。

 確かに俺達自身で今日の来賀みたいに格好良くは決められないだろうけど……。俺達は、俺達だけじゃない。俺達を選んでくれたゾイドがそばにいる」

 成川も元々は隊長格の人間ではなかった。それがゾイドに乗れるようになって、来賀達の隊長になったのだ。どこかに抱えているものもあろう。

 成川が言葉に滲ませる、振り絞った勇気の気配に、来賀の口を突いて出るものもある。

「そう……それに、他の部隊の人達もいる。この移民船の護衛に駆けつけてくれた航空部隊や、俺達がいない場所で戦ってくれている機甲科……。

 一人一人では諦めてしまうから、俺達は軍勢なんじゃないか」

 そう言って、来賀は移民船への乗り込みの現場を見る。

「この地に残る者も、去る者も……それぞれ孤独では――あっ」

 振り向いたライガーの視線の先では、一般乗員の乗り込みが終わり別の要員が三々五々と乗り込んでいるタイミングだった。すかさず来賀はその現場を映す視界をズームし、

「――富井博士がいる」

 来賀のつぶやきに、成川と葛城も機体を振り返らせる。濃い行列だった一般列とは異なるその場を見れば、確かに政府関係者がライトアップの中にいた。

 三機のズームの中でスーツや作業服姿の人々は足早にタラップを上がっていくが、その中に混じった白衣の後ろ姿が一人。見慣れたその髪は確かに富井のものだ。

 そして富井もこの地に残る来賀達を思ってか振り返り、その視界に遠く三機のゾイドを見出したようだった。体の前で手を合わせ、深々と頭を下げる。

「富井博士も、艤装要員としてこれから自分の戦いに向かうわけだな……」

 成川の言葉に、来賀も、葛城も自分達のゾイドに与えられた武装を思い返す。

「……ごめん、来賀、成川隊長。僕、思い詰めすぎてたかも」

 持ち直したように呟く葛城に、来賀も成川もそれぞれ微笑む。

 それはいずれ崩れる虚勢かも知れない。そのいずれは、多くの者達が支え合えば先へと延ばすことが出来るはずだ。あるいは、人類最後の日や、その先まで。

 そこへ、鋭い号令が飛んだ。

『各部隊に告ぐ。移民船はこれより次の乗員収容地点への移動を開始する。目的地は横浜エリア。これに先行してのゾイド群の排除と、東京避難民の郊外地帯への誘導が実施される。

 各部隊は以下の指示に従い行動を開始せよ。まず――』

 この東京の終わる夜から、次の時間へ。そこへと導く指示に従い、周囲で動きが始まる。

 普通科の歩兵隊員達は整列し、輸送トラックへ。

 展開していた一〇式戦車各車はトレーラーへの積み込み作業を開始し、先行して一六式機動戦闘車が南への移動を開始した。

 そして上空には滞空時間の限界を迎え北や東に後退する航空部隊と、入れ替わりに前線に進出するヘリ部隊。

『機獣遊撃隊は地上でのゾイド群突破の要となる。機甲科各部隊との連携を密に、前線に進出されたし』

「よーし……ここから横浜まで弾丸ツアーか。来賀君、葛城君、へばってないか? まだまだ今夜は長いぞ」

 成川を先頭に機獣遊撃隊も移動を開始する。アスファルトに爪を立て、三体は東京を後にしていく。

 長い夜の中へ、多くの人々が戦いに向かっていく。希望の船の前に立って。

 

新地球歴三〇年 一月一日 〇六〇〇時

極東弓状列島 関東地方

 

 そしてそれから一世紀あまり。

 かつて東京と呼ばれたその廃墟の連なりの一角に、遠い時代の記録を残すサーバーが数多く眠っている。

 墓標にも似た摩天楼の隣には体を横たえたワイルドライガーブレードの姿があった。多くの傷にまみれながら、その背に負った翼のようなアタックブースターや、右の横顔のただれたようなダメージは明確に形を残している。肩部装甲には、擦過で消えかけた赤い国籍標識の跡も。

 その周囲にも数体のゾイドや、古い時代の兵器の残骸が佇んでいる。トリケラドゴスやアンキロックスも。

 だがその中にあって、ワイルドライガーブレードだけは埃を被ってはいなかった。そして今も身じろぎし、舞い降りる砂埃を体から振り落とす。

 一〇〇年の闘争の果てにワイルドライガーブレードがここに安置された意味は、それこそ傍らのサーバーに残っている。

 それを、その情報自体を求める誰かが訪れるまでライガーはここを動かないだろう。

 そこへ――足音が響いてくる。それはライガー種ゾイドと、スパイデスやキャタルガからなる一団。装備を整えたその姿はこの地球に降り立った惑星Zi人達の部隊だ。

 ワイルドライガーブレードは、震えながらも渾身の力を込めて立ち上がる。そして現わす姿に対し、接近する一団は――。

 

 『これから』のことは、この物語で語られるべきではないだろう。

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