「ふおおぉぉっ!?こ、これは…!!」
頭の寂しい教師コルベールは興奮していた…何故なら…
「ノルマンディー王国の自動車がまさかここにあるとは…!」
そう、コルベールはシリウスが持ってきた自動車をみて興奮していた。無理もない。自動車はノルマンディー王国の道路設備及び職人が完璧になった頃に作られ、ノルマンディー王国はガリア以外には輸出はしていない。
しかも自動車一つだけでもトリステイン王国の予算の2/3以上はいく。最もそれはカール達が銀行を作って1万エキューを一枚のお札に変えインフレ化させてぼったくっている(とは言え最高級の物になるとカールの妹達がスクエアクラスの魔法を使って作っているのであながちぼったくりでもない。)のとノルマンディー王国とは違い、トリステインは道路が完成されていないのが理由である。
「何にしてもシリウス君に頼まなければなりませんな…!」
コルベールの顔のそれは教師としてではなく研究者の顔だった。
~数日後~
「これじゃ掃除の時間だな…」
シリウスはこの前の三年生をボコボコにして以来、次から次へと自分に楯突く馬鹿がいるのだ。だがその馬鹿は全員弱く、一斉に襲いかかってもシリウスには敵わない。
シリウスは闘技場で最強である。次兄カルロス、三兄ルドルフらチート転生者が相手でも勝っている。
「はぁ…退学したらしたで問題…と言うかカル兄と戦えないからやめておくか。」
シリウスは再びため息をついた。彼はまだ13歳になって刺激が欲しいのだ。彼が唯一戦ってみたい相手で戦っていないのが長兄カールのみである。次兄カルロスや三兄ルドルフも成長している今では楽に倒せるようになってしまい刺激がなくなった。
その為自分と同じく闘技場無敗のカールと戦うことを望んでいた。それをカール達は利用してトリステイン魔法学院に入学させたのだ。
「(まあ…俺に我慢を覚えさせるのが目的なんだろうな。)」
そんなことを考えているとシリウスは誰かに服を引っ張られる感覚がした。
「ん?誰だ?」
シリウスが振り向くとそこにはタバサがいた。
「私。」
「ん?タバ子じゃないかどうした?」
シリウスとタバサは面識はある。社交界の時に二人は幼馴染となり、友好度も互いに高い。
「これ。」
タバサがタバ子と呼ばれたのをスルーし、そう言って渡して来たのは闘技場のチケットだった。
「あ~…もしかしてお前の試合近いのか?」
「そう。シリウスとは違って私は弱い。まだ重賞を1勝…しかも風魔法部門しか勝っていない。」
実際にはタバサの実力は高い。それこそシリウスが倒した三年生を雑魚みたくあしらう程度には。だが闘技場はレベルが高く、特にシリウスの参加している無差別部門ではトリステインの伝説である烈風カリン級の化け物軍団達が集まるところである。
タバサが勝ったのはデビューして一年目で風魔法が使えるというかなり限定的な重賞であり、勝ったのもまぐれに近い。
「ふ~ん…しかし俺には授業があるんだ。お前みたいにサボる訳にも行かないしな。」
シリウスは口こそ悪いが一応授業態度は真面目で魔法も座学もトップである。それ故に教師も多少のことは黙認している。
「そうでもない。カルロスからこれを頼まれている。」
タバサはそれを否定し、手紙を出した。
「あん?手紙か…」
シリウスは手紙をみると地面に座り読み始めた。
『闘技場にお前やシャルロットが参加する時にはお前達は認欠扱いになる。もちろんお前達のローテーションはこっちが決めているから安心しろ。シャルロットを通して半月前くらいに闘技場の連絡をする。以上だ。』
と書かれており、闘技場の認欠を認められた。
「なるほどな…ま、認欠扱いされるだけマシな方か?」
ちなみにシリウスは軍事学校時代では自己責任である為認欠扱いされなかった。主席で卒業出来たのは圧倒的な魔法と格闘術、そしてカルロスやルドルフに勝ったことが大きく評価に繋がった。
「そういうことだから私は後一週間したら行く。」
「そうか。そん時は車で送ってやるよ。お前は小さい子供だしな。」
ここでシリウスは自分よりも年上なのにタバサを子供扱いしてしまった。
「…」
当然、タバサは怒りシリウスに向かって杖で殴ろうとする…が見事に躱され、逆に
「隙有り!」
とシリウスがふざけたことを抜かし、関節技をタバサに味わせた。
バンバン!
タバサが地面を叩いてギブアップした。
「…ギブ…」
タバサがそう言うとシリウスはあっさりと力を緩めて、気持ち良さそうに
「あ~…スッキリした。」
と言ってシリウスはその場を立ち去った。
「完全敗北…」
タバサはタバサでシリウスに何も出来なかったので完全敗北したことに少し落ち込んだ。
~ノルマンディー王国某所~
カールはこの場におらずカルロスとルドルフ、そしてカールの妹達が日本語で会議をしていた。その理由は誰かが聞かれてもわからなくなるようにするのと、彼らは日本語で話した方がスムーズに進むからだ。
「それで私達に何のようですか?カルロス兄様。」
長女エリザベスがカルロスに呼び出したことについて尋ねる。
「ああ…お前達を呼び出したのは他でもない。シリウスについてだ。」
「シリウスがどうかしましたか?」
「果報部の情報によると早速あの馬鹿は上級生をボコしたそうだ。」
「早いですね…」
「そしてこの資料を見て頂きたい。」
そう言って全員が手元にあった資料の紙束をみる。
「その資料はカールが本来この世界で起こることを纏めたものだ。」
「これは助かります。」
「その資料をみて質問が無ければ先に進む。」
「カルロス兄様、もしかしてシリウスをそこに行かせたのは…原作がトリステインスタートが原因ですか?」
「そうだな。最も、しばらく前にオルレアン公爵に頼んでシャルロットを監視役に任せた。そうだな?ルドルフ。」
「そうだ。そしてカルロスはそれとは別の監視役二人を頼んだ…」
「誰ですか?それは…」
「一人は原作の学院長の秘書のロングビル。」
「ああ…なるほど。」
「そしてもう一人は…」
「もう一人は?」
「エンペルと言うトリステイン学院の水の魔法教師の男だ。」
ルドルフがそう言うと妹達が騒ぎ始めた。
「誰ですか?それ?」
「期待出来るのですか?」
二人の妹が質問をして不安要素がないかカルロスに確かめる。
「期待は出来る…でなければそんなことは言わない。」
「そうですか…」
「次に報告しなければいけないことはないか?」
「去年度の収入と支出、そして資源について報告します…」
「よし!どんなものだ?」
その後会議が何時間も長引き、延々と続いた。
~トリステイン魔法学院~
「では風の魔法の授業を始める…」
風の魔法教師ギトーがそう言って授業を始めた。
「ミスタ・シリウス…君は何の魔法の属性が最強かね?」
「かつては風のメイジが最強と囁かれていたが…今では土と水が最強だ。」
「違うな…」
「ほう?違うと?なら何で闘技場に無差別部門で風メイジがローマ公国のルドルフ国王こと、電撃のルドルフしか勝てないんだ?」
これは事実であるが、実際にはカールの独り占めの時代、カルロスとルドルフの二強が競り合っていたが、現在シリウスが無差別部門の勝ち鞍を独占しているからである。
「それは…!」
ギトーは風メイジ育成のために闘技場に行ってその事実を知っており、何一つ言えなくなる。
「ちなみに俺が最強の属性は土と水が最強と答えたのは、名だたる風メイジを一蹴にした大帝が土と水だからだ…しかもその中には無差別部門で勝った電撃もいる。」
ここで言う大帝はカールのことであり、ルドルフだけではなくカルロスとも戦ったこともあり二人に勝った。
「ぐぬぬ…!」
追い打ちをかけられたかのようにギトーは縮こまる。
「そんなに風メイジ最強説を唱えたいなら紹介状書いてやるからお前が闘技場に行って証明してこい!」
シリウスはギトーに向かって紹介状を投げた。
「くそ!今日は終わりだ!各自自習しろ!」
ギトーはシリウスに馬鹿にされたことと、自分の風メイジ最強説が通じなかったことで腹を立てて立ち去って行った。
「てめえらも自分の属性が最強だと思うなら闘技場の無差別部門に参加して証明することだ。てめえらがトライアングルになったら一応闘技場の推薦を出してやる。最も俺がいる間は無駄だと諦めな。」
シリウスのその言葉に自分が強いと思っている貴族は腹を立てた。トリステイン貴族ならではのヒステリーだった…当然彼らのやることは決まった…
「さてさて俺の愛車は…?」
シリウスは自動車を手入れする為に自動車の場所を見に来たのだが…自動車が炎上していた。
本来この車のボディは固定化しているので燃えないのだがガソリンを入れる部分に火が入り炎上したのだ。
「…くくくっ!」
シリウスは唖然としたがすぐに不気味に笑った。
「錬金…」
笑いを止めたシリウスは炎上した車の周りの空気を錬金で二酸化炭素に変えて炎を消した。
「なかなか面白いことをしてくれるじゃないか…あの貴族共も。」
シリウスは目が全く笑っておらず口元を歪ませて立ち去って行った。もちろんシリウスの部屋に行ったのではないは当たり前のことだった。