「機材のチェックOK、フロアの清掃OK……!よしっ。今日も1日お疲れ様!」
「お疲れ様でした」
「君がうちのライブハウスで働き始めて、どのくらい経ったっけ。どう? 慣れた?」
「まだそんなに経ってないけど…そうですね、少しだけですが何とか」
今話しかけてきている人は月島まりなさん、あの時の面接官である
「うんうんっ、それはよかったよ。ちょうど人手が足りなくなっちゃったところに君がきてくれて、私もすごく助かってるからね。」
第一印象ではわからなかったがまさかこんなにフランクな人だったとは思わなかった
最初は右も左も上も下も前も後ろもわからなかったがやってみると存外わかってくるもので今も何とかこうして続いている
「とは言ったものの…最近肝心のお客さんの入りがね……」
「良いところだと思うんですけどね、すぐそこにカフェテリアもあるし」
まあ個人的にはお客さんは少ない方があまり忙しくなくて済むのだがそうなったらなったで暇疲れしてしまうのも確か、もう少し刺激が欲しいなとは思っていた
「うーん……こんなんでイベント、大丈夫なのかなあ……」
「イベント?」
不意に月島さんがそんな事を口にする
「ん? そっか、君はイベントのことをまだ知らされてないんだ。もう、オーナーってば……それじゃ、私から説明するね。」
「はあ…」
知らされてないも何も、オーナー事態手続きの際1度だけ顔を合わせた程度だったことを思い出す
まりな「このライブハウスは元々、オーナーがこのあたりで活動しているガールズバンドを応援したくて作ったものなのは、知ってるよね、とは言えもちろん普通にバンドをやっている人達も含めてだけどね」
そうだったのか、人の情熱と言うものは凄い、ここのオーナーは一体何者なんだ
「それで、今度ガールズバンドを集めたライブイベントをやることになったの、今回で3回目ぐらいかな」
「参加資格はガールズバンドであること。実力やプロアマは問わず、やる気があれば出演可能! ……なんだけど……」
「肝心のバンドからの応募が1つもなくてねえ……ライブハウスとしての知名度は武道館の時もあってけっこう有名になってるはずなんだけど」
「オーナーからは『このイベントを成功させて、うちのライブハウスの目玉としてもっともっと続けていきたいから頼むよ!』って言われてるんだけど……どうしたものかなあ……」
オーナー、どうしてこの事を最初に言ってくれなかったんですか…
働き始めてまだ日も浅いと言うのにいきなりこんな重大プロジェクトを聞かされて早速もう続ける自信がなくなってきた
と、そこへ
「こんにちはー!」
「まりなさん!今日もスタジオ大丈夫ですか!」
「あ、香澄ちゃん!いらっしゃい!あ、そうだ、君、紹介するね。この子は…」
突然勢いよく現れた訪問者は“戸山香澄”さんと言うらしい、まさか日本にまだこんな積極的な若者がいるとは…見たところ学生だろう
「はー、はー……やっと追いついた……まったく、ほんっとに言うこときかねー奴だな。ちょっとは人の言うことを聞けっての!もう3年だろ!」
後を追って彼女の仲間と思わしき金髪の子とポニーテールの子が入ってきた
「……あ、あはは~! す、すみません、また香澄が急にお邪魔しちゃって……今日もよろしくお願いします」
「有咲ちゃん、沙綾ちゃんもいらっしゃい。もう慣れちゃったから大丈夫だよ」
「まりなさん、こんにちは」
「今日もオッちゃんについてお話が…」
続いて小動物のような愛らしさの女の子と長髪の美人な子が入ってくる
「あはは…りみちゃん、たえちゃんいらっしゃい。これでポピパちゃんが揃ったね」
どうやらこれで全員らしい
ポピパ、と言った彼女達のバンドの正式名称は“Poppin' Party” というガールズバンドらしい、そういえばこの子達みたことあるな、けっこう有名人のようだ
そしてこの状況に置いてけぼりを食らっている俺を見て後から入ってきた金髪の彼女がハッとした様子で月島さんに訪ねる
「ところでまりなさん、この人は?」
「ああ、この子は最近入ってくれた新しいスタッフくんだよ、みんなよろしくね」
「あー、あいつまだ函館だもんな…」
「あはは、お恥ずかしながらそういう事」
「なら、私たちも自己紹介だね」
ポニーテールの子を先人にそれぞれ自己紹介が始まる
「さっきそこの香澄からもありましたけど、私たちPoppin' Partyっていいます。私はドラムの山吹沙綾です。よろしくお願いします。」
「花園たえです。リードギター、してます」
「市ヶ谷有咲、キーボード」
「牛込りみですっ! えっと……ベース担当です!」
「ほら、香澄ももう1回ちゃんと挨拶しろっ!」
「はーいっ! 改めて、私は戸山香澄、ギターでボーカルですっ。キラキラ、ドキドキしたいって思ってた時に、このランダムスターに出会って……まあ色々あってみんなとバンド組んでます。バンドは毎日楽しいです!」
ひとしきり挨拶を終えたところで
「うんうん、ポピパちゃん達はやっぱり元気があっていいね!はい、という事で君も自己紹介!」
「あ、はい。えっと…こんにちは、まだ入ったばかりの新人ですが、ここのスタッフをやらせていただいています。よろしく」
「よろしくお願いしまーっす!」
香澄さん…本当元気だな…
「あ、そうだ!ちょうどいいところに!みんなにまた相談があるんだけど、いいかな?」
「どうしたんですか?」
と、香澄さん
「実はね…」
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
「というわけで、またお願いできないかな…」
「もちろん参加します!!」
イベントの内容を説明すると二つ返事で承諾する香澄さん
「お前もうちょっと考えてから返事しろっていつも言ってるだろ!」
同感である、この子はあれだ、書類をよく読まないで判子を押してしまうタイプだ、俺も人のこと言えないけど…
「まあ出るけどな!」
ツッこんでおいて結局あんたもかい、じつは有咲さんってノリがいいタイプなのかもしれない
「と、いうわけでポピパちゃんにはまたバンド集めをお願いしたいんだけど…」
と、月島さん
「もちろんです!」
「ありがとう!それじゃあまず After grow のみんなを集めてきてくれないかな…」
「蘭ちゃん達ですね!りょーかいです!!」
あふたーぐろー?蘭ちゃん?よくわからないが既にその子達とは皆は親しいらしい、なんだろう…この疎外感…いやいや、めげるな俺…!
「それじゃあみんな!行くよ!」
「はいはい、香澄は相変わらずだね〜」
そういって香澄さんを先頭にポピパのみんなが駆け出していく
バイタリティ溢れるその様が今の俺には羨ましくもあり微笑ましい、そして何より眩しすぎた……
「ほらっ!君もせっかくだから彼女達について行ってみんなと知り合ってくるといいよ!」
「え、俺もですか?仕事は…」
「これも仕事のうち!あの子達のことよろしくね!頼りにしてるよ男の子!」
そう言って月島さんは俺の背中を押す、なんか…本当に良い先輩だな…月島さんって…
「了解しました!」
なんだか背中を押されてやる気ぐ湧いてきた俺は彼女達の後に続きスカウトへと赴いた
ありがとうございました、皆様の感想や評価?お気に入り?がとても励みになっております…いや本当に…
ではまた次回