「それではオーナー、お疲れ様でした」
「あ、おつかれ〜〜スタッフさん」
ガチャリとドアを閉め新設中のライブハウスを後にする
「なんか…だんだんあのオーナー馴れ馴れしくなってきましたね…(〜〜←主にこの辺)」
独り言を呟きながらの帰り道、ようやく作者の筆が乗ったのか久しぶりの登場で何なら明日は花の連休というわくわくの帰り道だと言うのに出てきたのがこんな独り言とは…あ、いえ何でもありません、こちらの話です
「まあ、職場は人間関係に重きを置きたい側の人間なので慣れてきたと言うのは良い事ですね」
などと呟きながら ハァ…と一息つき、空を見上げると雪がちらついていた
「しかし…まだまだ函館は寒いですね…」
何日か前までは絶好の春日和でArgonavisの皆さんとワイワイやっていたというのに(←別にやっていない)さすが北海道、油断しているとこんな天候になったりする…まあ雪は好きですが
とはいえさすがに今日は薄着でしたかね…風邪を引いてはせっかくの連休が台無しになってしまう…仕事を休むのには良い口実ですがそれとこれとは別です(←別ではない)
………。さきほどから何かにツッコまれているのがうるさいですね…まあいいです はやく帰ってコタツで暖まるとしましょう…
足早にマンションへと向かうその途中
「♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪」
「おや?」
通りかかった道で何やら歌声と歓声が聞こえ野次馬の血に火がついた私は早速その方向へ転換してみると一人のボーカリストがゲリラライブをしていた
「っ!あれはっ!」
ボーカリストの正体はこの界隈では知らぬ者の方が少ないほど有名なバンドのボーカリスト
そう、GYROAXIAの旭 那由多の姿があった
「マジですか!?これは幸先が良い!」
年甲斐もなく目を光らせながら子供のように観客の輪の中へとダッシュし、現場で会得したすり抜け術を使って最前へと到達する(※そういった場ではルールとマナーは絶対守りましょう)
「ああ…本物です…」
圧倒的な歌声、絶対的な存在感、漂うカリスマ性、まさに王者…いや暴君と言った方がいいのだろうか…とにかくすごいものを見ているという実感にただ胸が高鳴っていたのだが…
「♪♪♪ゴホッ♪♪♪ゴホッ♪♪♪♪♪」
「何か今日の那由多変じゃない?」
「調子でも悪いのかな?」
何か様子がおかしいという事に気付くのに大衆も私もそう時間が掛からなかった
音の途中に雑音が混じっている、これは…咳だろうか…
次の瞬間
「ゴホッ‼︎ゴホッ‼︎ゴホッゴホッゴホッ‼︎」
雑音が確かな音に変わり、次第にその音は激しさを増し、数秒間の轟音のあとバタンッと大きな音を立ててそのボーカリストは倒れた
「ちょっ!あれヤバイだろ!」
「大丈夫か!」
「誰か人を…!」
突然の出来事に観客達も混乱しだす
これはいけません!そう思うより前に勝手に私の足は動き出していた
「みなさん落ち着いて!まずは他の通行人の邪魔になるので今日はこのまま散って下さい!」
観客達はハッとした表情で各々その場を後にする
「次はそこの貴方!至急救急車を!」
「お、おう!わかった!」
近くに残った数名へはそのまま声を掛け留まらせる
「ゴホッ!!ゴホッ‼︎ゴホッ!!」
「しつかり!大丈夫です!ゆっくり呼吸を整えて、もう少しで救急車が来ますからね!」
「ゴホッ…ゴホッ…」
少し咳が弱くなったところで救急車が到着する
「救急です、患者さんはこの方ですね、早く担架を!それと誰か付き添いを!」
「私がいきましょう」
「ご協力、感謝します」
そう言って救急車へ同乗する
本来であれば通報した方が付き添いを要求されるのですが通報させたのは私なのでまあいいでしょう
全く……休日前から幸先が良いのやら悪いのやら…
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