るるるんっとやっちゃいます
「お疲れ様でした!今日はここまでで大丈夫です」
「おや?もうよろしいのですか?お疲れ様でした」
「いやー本当助かりました、さすが都築さんのご指名」
「ハハハ」
消去法で仕方なくとは言いにくいですね…
とは言え本日の業務をなんとか終え、後は帰るのみ
ここも大きなライブハウスになりそうですね
「それではご案内致します」
「む?どこへ?」
「あはは、決まってるじゃないですか、スタッフさんの滞在中に使っていただく部屋ですよ」
おっとそういえばそうですね、一応住む場所の住所は詩船さんに頂いたのですが、地理は苦手なもので今夜は漫喫かどこかを覚悟していたのですが、これは助かりました
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
「こちらが今日から使っていただくお部屋です」
「………」
「あれ、どうされました?」
「私、もうずっと函館でいいです…」
「?」
目の前にそびえ立つそれの屋上からは、かの有名な函館の夜景が全て観れるのではないかというほど高く立派な建造物、そう、マンションだ
本当に滞在中はここを自由に使っていいのだろうか…いや、いいに決まっている
だってなんてったって詩船さんの紹介なのだから!
思わず目をキラキラさせていると
「あはは、なんかよく分かりませんが、感動してもらえたようで何よりです、まだ出来たばかりでそんなに住居人もいないので心置きなく使って下さい」
「ありがたき幸せ」
「ちなみにここ、完全防音なのでバンド練習で使う子達も来たりしてるんですよ、まさに大ガールズバンド時代ならぬ、大バンドリ時代ってやつですよね、あはは」
さらっと凄いことを言ったような気がするのですが一体CiRCLEの経済力はどうなっているのでしょうか…
「それじゃあ自分はこれで、明日もよろしくお願いします」
「こちらこそ、お疲れ様でした」
そう言ってオーナーはマンションをあとにする
さて、荷造り…は面倒ですね…休みの日にでもやりましょうか
と言ってもそんなに持ってきていないんですがね
とりあえず今日のところは布団だけ敷いてさっさと寝てしまいましょう
「あっ…でも腹は減りましたね…」
よく考えたらきて早々あれやこれやと動き回っていて気付いたらもうこんな時間
近くのスーパーは流石に閉店…となればやはり
コンビニ…ですかね
★★★★★★★★★★★★★★★★★
「しかしまあやはり、まだ少々函館は肌寒いですね、まあ私の実家もこんな感じでしたけど…」
「今頃皆さんどうしてるでしょうか…あ、そういえばりみさんに貸してたCD…まだ返してもらってませんでしたね…まあ保存用にもう一枚あるのでいいんですが」
「あ、おたえさんからオっちゃんの写真集も受け取ってませんでしたね…山吹パン…出る前に食べておけば良かった…」
「香澄さんと有咲は……特にないですね、まあ元気でしょう」
っと、単身出張となると独り言が増えていけませんね、あ、でも山吹パンを思い出したらなんだかパンが食べたくなってきました…
「おや?」
歩いていると一軒まだやっていそうなカフェを見つけて足を止め
【Sudmarinen】達筆すぎて表記がよくわかりませんがおそらく
「さぶまりーな」…でしょうか…ふむ
ガチャ
「いらっしゃい」
「こんばんは、まだやってますか?」
「構いませんよ、どうぞ」
ドアを開けるととてもダンディなおじ様が出迎えてくれた
ほう…渋い…良いですね…おや?
店内を見渡すとバンドのステージが目に入った、楽器も一式揃っている
ほう…ここはバンド練習も出来そうですね…
なんだかCiRCLEを思い出します…
「気になりますか?」
不意にマスターに声を掛けられる
「そう…ですね」
「お客さん見掛けない顔だね、もしかして引っ越してきたとか?」
「引っ越しというか、まあ出張ですね。東京から」
「へえー、そりゃまたこんな所に遥々」
「いえいえそんな、あ、コーヒーとナポリタン頂けますか?」
「かしこまりました、少々お待ちを」
「にしても立派なカフェですね、こういう店ではマスター…で良いのでしょうか、もしかしてバンド、やられてるんですか?」
「うん昔ね、けど腕はまだ現役のつもりだよ」
そう言ってドラムを叩くそぶりを見せるマスター、なかなかお茶目な方のようだ、うむ…おじさんブーム…キてますね…
「お客さん出張って言ってだけど勤め先はもしかしてこの辺かい?」
「そうですね、少し歩きますが近日開店予定のそこのライブハウスに」
「ああ、あそこライブハウスになるのかい?これはあの子達にも教えてあげないとな」
マスターが気になる事を言いましたね、この辺りにもバンドをしている子達がいるようでなんだか職業柄うれしくなりますね、もう少し踏み込んだ質問をしてみましょうか
「あの子達とは?」
「ああ、最近知り合ってね、新しいバンドを作ろうとしてみたいなんだ、ほら、そこに張り紙してあるでしょ?」
言われて下げてあった掲示板を見てみると確かに真新しい張り紙が貼ってあった
ふむふむ
見た感じだとギターとベースは揃っているようだ
「大学生ですか」
「そ、2人とも情熱のある良い子達なんだよ、とりあえず今はボーカルを探してるみたいだね」
なるほど、ギターとベースが揃っているならまずはボーカルは真っ先にメンバーに入れておきたいというのは定石
しかし応募条件がなかなかのハードルの高さ
上手いのは当然、それでいて情熱があって何より馬鹿な奴ですか…
いや、バカって言い方もう少しあると思うのですが…
なんだかこうしてみると湊さんを思い出しますね…
あ、いや湊さんがバカと言うことではなく…いやでもあの人は割とポンコツが入っているから一概にそうとも言い切れないですね…
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
「っくしゅん」
「あれ?友希那、風邪?」
「いえ、これはなんだか噂をされたような…」
「無理はダメだよ、なんかあったらすぐ言ってね」
「わかってるわ、さあ、続きをやりましょう」
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
「面白いでしょ、応募チラシに馬鹿って書いちゃうなんて」
「ユーモアがあっていいですね、いつか会ったみたいです」
歌うこと以外興味のないバカ…って事なのでしょう、結成したら凄い事をしてくれそうですね
「けっこうウチにきてステージ使ってくれてるよ、さっきまでいたしね」
「なんと…タッチの差でしたか」
「お客さんもライブハウスで働いてるってことは何かバンドとか組んでたのかい?楽器は何弾いてたの?」
以外とぐいぐい来ますね…純粋な視線が眩しい…
「いえ、お恥ずかしながら楽器は全然…学生の頃にドラムとベースなら挑戦してみたのですが、秒で挫折してしまいましたね…」
「あははは、挫折するの早すぎるでしょ、もう少し頑張ってみたら良かったのに」
「ぐっ…今思うと仰る通りで…」
「けど、音楽は好きなんだね」
「それはもちろん、実用、保存用、布教用を買い分ける程度には」
「がはははっ、面白いね君、また来てよ、楽器がダメならマイクもあるし、ストレス解消にでも歌っていきなよ、ある程度の曲なら僕も叩けるし」
気の良いマスターですね、これからちょくちょく利用させて頂きましょう
他愛のない会話をしながら注文の品を食べ終え店から出て空を見上げると
満点の星空が輝いていた
「これは…キラキラドキドキが始まりそうな予感がしますね」
なんて、香澄さんに少々影響を受け過ぎたでしょうか
少し蒸気した頬をパチンと叩きながら、新たな何かが始まるような春の夜風に当てられながら帰路に着く私でした
「あ…パン頼むの…忘れてましたね…」
この後本当どうしよう…
ではまた次回