それは街を歩いていた時のこと
「ったく…やってられないよ…めちゃくちゃだ…」
通りがかったライブハウスから楽器を背負った若者がぶつくさと呟きながら肩を丸めて去っていく
何かあったのでしょうか…
と、そこへ
「ん?スタッフさんじゃないか」
「その節はどうも」
「おや、七星さんと桔梗さん」
何か探しているような様子の七星さんと桔梗さんにバッタリ会った
「最近よく会いますね、今日は2人ですか?」
「まあな、って…すまない、急いでたんだった」
「何かお探しのようでしたが」
「ああ、ちょっとな…よし蓮。入るぞ」
「うん」
そう言って先程若者が出てきた目の前のライブハウスに入っていく2人
「これは…何かありそうですね…!」
そして好奇心に正直な成人が1人その後へ続こうとすると
「あのー…」
「はい?」
くっ、いまいいところだったのになんと間の悪い…そう思いながら振り返ると
「あ!やっぱりスタッフさんだ!」
「お久しぶりです!」
まん丸ピンクとブシドーこと丸山彩さんと若宮イヴさんがそこに立っていた
「あ、どうも、それじゃあ」
「ええー!?ちょっと待って下さいよ!」
「ぐっ、離してください!今いいとこなんです!」
「何もないじゃないですか!せっかく久しぶりに会ったんだし少しぐらい話しましょうよ!」
中に入ろうとする私を思いのほか強い力で引き止めようとする丸山さん
この人のどこにそんなパワーが…
「アヤさん!落ち着いてください、注目されています!」
「でも〜」
それはそうだ、変装していてもパスパレのような芸能人がこんなところにいるとなったら周りはほっとかない、よくいる野次馬のような輩が出てきてもおかしくはないのだ
抵抗を諦めて私は好奇心を押し殺しながら2人と向き合おうとしたところに
「どうしたの?スタッフさん」
「随分と騒がしいようだが…」
ライブハウスから出てきた七星さんと桔梗さんが駆け付ける
「あ、2人とももうよろしいのですか?」
「ああ、用事は終わった、ところでもしかしてその2人は…パステルパレットの…」
「ば、バレてしまいましたアヤさん!ここは一時撤退です!」
「ええー!!?ちょっとイヴちゃーーん!あ、今後ともパスパレをよろしくお願いしますーー!!」
七星さんと桔梗さんにそう言い残し嵐のように去っていく2人の背中を見ながら呆然と立ち尽くす
「一体なんだったんだ…」
いや、本当にその通りである、まあ原因は私なのでしょうが…
「というか、スタッフさんの人脈は一体どうなってるんだ…」
「まあそこだけは自信あります、それより2人は結局何をしに入ったのですか?」
「ああ、実はな…」
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
ようやく落ち着いたところで改めて話を聞く
「なるほど、そんな事が」
「ああ、とりあえず今日のところは俺達は五稜たちに報告しに帰る。またな」
「さようなら!」
「ええ、ではまた」
さて、
つまり要約するとこう言う事らしい
5人目をどうするか相談していたところに最近、道場破りのような事をしているスーパードラマーがいるという噂を聞く
↓
五稜さんがそいつを仲間にするぞと意気込む
↓
とりあえずサブマリーナへ、するとちょうどメンバーに加入したいと言うドラマーが面接に
↓
色々と問題があるという事で一時保留、というかほぼ不合格に
↓
という訳で例のスーパードラマーを早速探しに行くことになりここへ
↓
実はそのスーパードラマーの正体が面接に来た彼だった
という事らしい
「これは…なかなかにクセが強そうな方ですね…」
「ねえねえ、そこの人」
そう思いながら佇んでいるところへライブハウスから出てきた1人の若者が私に声をかける
「はい、なんでしょう?」
「いまチラッと見てたんだけどさ、もしかしてあいつらの知り合い?」
「海よりも深く山よりも低い関係ですね」
「なにそれ、変なの」
「よく言われます」
「それで、あんたはあいつらと知り合いなの?」
「グイグイ来ますね、そうだと言っているでしょう」
「いま初めて聞いた気がするけど…まあいいや、それよりさ、俺バンドに入って金儲けしたいんだよね、あいつらに口効いてくんない?」
「む?その言い方からするともしや君がスーパードラマーの」
「そ、白石 万浬。よろしくー」
「私はスタッフと呼ばれています、よろしくやれるかどうかはちょっと怪しいですがとりあえずよろしくお願いします」
「めっちゃ警戒してんじゃん、ウケるね」
「いやウケねーですから」
「とりあえず早速質問が」
「どぞどぞ〜」
何かいちいち軽い奴ですね…まあそれは今は置いといて…
「白石さんでしたね、金儲けしたいと言うのは正直大事だしそこはむしろ同感です。ただ何故その為に選んだ手段がバンドなのですか?」
「それは今の時代だね、大バンドリ時代って言うの?そう言う感じ。ドラムなら叩けるし手っ取り早いと思って」
「え、それだけですか?」
「え、それだけだけど?」
「本当に?」
「うん。」
「何か事情があるとか」
「……別に?」
「金儲けの為だけにドラム、と言うことは、音楽事態は好きではないのですか?」
「もちろん好きじゃなきゃやってないよ、てかそれ、さっきも言われたんだけど」
「ふむ…」
「………」
「………」
「………」
「………」
「………」
「何だよ、何かあるなら喋りなよ」
色々思考しているところを痺れを切らした白石さんが少々不機嫌に私にそう言ってきたので
「本当は?」
こう切り返す
「は?」
「いえ、さっきから話をしていて思ったのですが、君はまだ何か隠している事があるような気がしたので」
「何もないよ、バンドに入って金儲けしたい、それだけ」
「ふーーーーーーーん」
「その反応なんかムカつくな、なんなんだよ一体」
「よし、わかりました。少し君の身の上話を聞かせてください」
「はぁ!?意味わかんない、なんで初対面の人にそんな事まで話さなきゃダメなのさ」
「まあまあそう言わずに」
「………なんなんだこいつ………」
このまま問答を続けてもラチが開かなそうな事に観念したのか白石さんは諦めたように大きな溜息を吐き、承諾した
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
「って言う事、もういいでしょ?」
率直に言うと、白石さんの実家は牧場か何かなのでしょう、そして色々あって現在は休業中、となれば結局お金が必要、自分が稼いでここを復活させたい
そう言う事らしい
「全く、そう言う事をまず彼らに話しておくべきでしょう、プライド高いですね。嫌いではありませんが」
「いきなり初対面の人にこんな事情だから入れてくださいなんて言える訳ないでしょ、かっこ悪い」
「私も初対面なのですが話してくれたじゃないですか」
「いやそれに関してはあんたがしつこいからなんだけど!?」
「???」
「はぁ…もういいよ疲れた…ま、どうせ不合格なのはわかってるし、また別のとこ探すよ」
「諦めるにはまだ早いかもしれませんよ?」
「それ、どう言う意味?」
「特に意味はありませんよ、そんな気がしただけです。こう言う時の私の勘はよく当たるんですよ。では私はこれで」
「ホントなんなんだあいつ…」
「…諦めるにはまだ早い……か……。ま、明日になっても何もなかったらまた他のとこ探すか」
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
後日、また私はサブマリーナへ足を運ぶ事にした
「さて、あれからどうなったのか…」
そう思いつつ店のドアを開けると
「それじゃあ、俺達の船出を祝して…」
「「かんぱーい!」」
ほら、やっぱり
「あ、スタッフさん、いらっしゃい」
「こんにちはマスター」
「お!スタッフさんか!聞いてくれよ!ついにバンドが完成したんだ!」
「どうやらそうみたいですね、五稜さん。おめでとうございます」
「おう、ありがとうな!」
さて、
「ね、言った通りになったでしょう?」
「そうみたいだね、悔しいけど…まああんたのおかげだよ。あんがと」
白石さんのところへ駆け寄り、こっそりと話しかける
「ん、なんの話をしてるんだ?」
「いえなんでも、それよりメンバーが決まったと言うことはバンド名はどうなったのですか?」
「ああ、それな」
「【Argonavis】って言うんだ」
そしてここからようやく物語が始まる
もう今週で最終回なのか…
新たにコメントやお気に入り頂いた皆さん、本当に申し訳ない、そして本当にありがとうございます
では次回