「お世話になりました。」
「おう、お疲れさん!次の仕事先でも頑張れよ!」
「はい、お世話になりました」
そういって会社に背を向け歩き出す
「はぁ…本当いい加減ちゃんとした仕事探さないと…」
この台詞、今までどれだけ呟いてきたのだろう…
これまで色々な仕事をしてきたが実はこの男、どれも長続きせず、幾度となく職を転々とし続け、気が付けば20代も半ば
周りの友人たちは皆それぞれのやりたい事や分野で各々に活躍していたり、中には既に家庭を持っている者までいる。常に周りと比べ、自分にコンプレックスを抱きながら毎日を過ごしている。いやまあ、自業自得なんだけども
そして今日もまた就職活動に勤しむ
………
……
…
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
≪コンビニ≫
「いらっしゃいませ~~~」
相変わらず今日もゆるい口調だな…と思いながらコンビニへ来た。ていうかいつも思うけど本当あの子らみたいに学生の内にバイトとかしておけばよかった、いや本当に…まじで
「ありがとうございました☆またお越しくださいませ」
求人雑誌を手に取り店を出る。その後喫茶店で腰を落ち着けたところでページをめくる
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
《喫茶店》
「なんだこれは…どれもこれも全部最近俺が落ちたところばかりじゃないか…誰も採用する気が無いなら募集するなよ…」
色々と自業自得なのだが自分が落ちた会社の募集ばかりが目に入ると愚痴りたくもなる、が、そんなことをいつまで言っていても状況が変わるわけでもなく、仕方がないので、そのままページをめくり続ける
「お待たせしました。本日のケーキセットです。」
といったとこで、注文の品がきたので手を止め 食す
「(あの店員、若いのにてきぱきしてて凄いな…)」
さっきのコンビニでも思ったが最近の若者というのは本当にすごい、学生の頃から働くなんてなかなかできる事じゃないと思うし別にお世辞でもなんでもなく素直に尊敬している
「もう少しだけ、頑張ってみるか」
“頑張る”という言葉は正直好きじゃないがあんな姿を見ると不思議と励みになることもある
「(どんな形でもいい、色んな若者達を応援できるような職に就けたらいいな…)」
などと漠然とした事を思いながらページをめくっていくと、ある求人募集が目に留まる
『CiRCLE』
音楽を始める君へ!
学生、社会人応援キャンペーン実施中!
我々と共に今を生きる人々を応援しませんか?
「これだ…!」
俺は多分この時人生で初めて、考えるより先に身体が動いた、という言葉を体感した
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
《翌日》
「それでは面接は以上になります。結果は後日お伝えます。本日はありがとうございました。」
「よろしくお願いします。失礼しました。」
そういってCiRCLEを後にする
正直、手応えをあまり感じなかった。転職を重ねすぎただけあって心なしか面接の人が神妙な顔つきだった気がする。職歴に関しては同年代はおそらく自分には勝てないまである
しかも冷静に考えるとライブハウスって何をすれば良いのか検討もつかない、機材とかよくわからないし本当に勢いと気持ちだけで面接を受けてしまったことを帰りながら激しく後悔していた
せめてもう2~3年ぐらいはやくこういった物に興味を持っていれば良かった…
なんて悲観的になってしまっても埒があかないのでここは諦めて早々に見切りを付け、また求人雑誌を手に他の仕事を探すことにした
良くも悪くもこう言うときの俺は早い。落ちたと思ったらダメ、即、行動、これがモットー
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
そして数日後
≪ファーストフード店≫
「いらっしゃいませ。ご注文お伺いします。」
案の定、あれから連絡はない、やはり落ちたのだろう。だが職歴と面接に関しては人より場数は踏んでいる。このぐらいではまだめげない
と言うことで今日も就職活動に勤しみながらファーストフード店に入って一息ついていた
「ありがとうございました!」
「私、そろそろ時間だから上がるね」
「函館から帰ってきたばっかりなのにもうレッスンなんて大変だね…無理しないでね」
ふとそんな会話が聞こえてきたので思わずページをめくる手を止める
「レッスンとな」
最近の若者は本当にすごい、バイトした後に更にレッスンしかも少し聞こえたが函館から帰ってきたばかりとは……これはたまげた、これが若さか… とは言っても自分もまだ20代、そう、まだ20代なのだが…それにしても最近の若者は実にエネルギーに満ち溢れている。どこまでも突き進んでいって欲しい
「(さて、今日はここまでにして帰ろう)」
そういってファーストフード店を後にした
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
≪ショッピングモール≫
「あ、新曲出てる…」
帰り際にショッピングモールに立ち寄ることにした
音楽は好きだ、なんだかんだカラオケ店員をやっていた頃がもしかしたら一番長続きしたかもしれない、音楽のある環境は良い、嫌なことがあっても好きな曲が流れてくるとそんな事どうでもよくなるぐらいには
「ありがとうございました、またお越しくださいませ」
ひとしきり目当ての物を買い漁り、店内をぶらついていると楽器店が目に入り立ち止まる
「………」
ふとCiRCLEへ面接に行った時の事を思い出していた
「………帰ろう」
あれから本当に連絡がこない、びっくりするほどこない、不採用通知すらこない、どんな形にせよせめてはっきりした結果が知りたい、やれ見切りを付けるだとか諦めるだとか言ったもののそれでも結果が出るまではほんの少しは期待しているのである
「だぁ~もう うぜぇ~!付いてくんな~!」
「待ってよ~~!何で逃げるのさ~!」
「青春だねえ…」
帰り道、すれ違った学生達を遠目に見ながら思う、とてもキラキラしていて眩しい、また少し元気を貰えた気がして頬が緩む、そして決心がついた、こちらから連絡してみよう。例えどんな結果であっても
そう思ってリダイヤル画面を開こうとすると
prrrrrr…
タイミングよく電話が鳴り
「もしもし…」
その相手は
「もしもし、私、 CiRCLEの月島と申します。お待たせさせてしまい大変申し訳ございません。先日の面接の件なのですが…」
「はい…」
唾を飲む
「採用ということにさせて頂きました。後日手続きのご案内をさせていただきたいのですが御都合のよろしい日はございますか?」
………
……
…
「もしもし、姉ちゃん…?俺、仕事決まったわ……」
察しが良い方はもうお気付きかもしれませんが、そういうことです
では