救えなかった少年 改訂版 作:ニック
一週間がたった土曜日俺たちは入隊式当日を迎えていた。
「よう。」
「おう。おはようさん。」
「お前それおっちゃんみたいだぞ。」
「うるせ。ほっとけ。」
と俺は不貞腐れる
「そういや、今日から入隊式だけど訓練内容って。」
「多分実戦訓練だと思うぞ。」
「だよなぁ。とりあえず新記録更新を狙おうかな?」
「俺はもう縮まりようがないんだが。」
俺はため息をつく。今の俺の最速タイムは0.4秒。
なおボーダーの忍田部長と太刀川さんという人くらいしか今のボーダーには超える人がいないらしい
「しかし仮訓練受けてなかった人も多いんだな。」
仮訓練時は30人と比べて今は50人
20人ほど増えているな
「まぁ、スカウト勢がいるからな。」
「スカウト?」
「あぁ、才能がありそうなスカウトするんだよ。そういった奴は試験とか全部免除されるんだよ。」
「ほへ〜。知らなかった。」
俺はキョトンとしてしまうがそれは一瞬で変わる
茶髪の少年が女の服を着ていた少年が立っていたからだ
「あれ?吉井だ。」
「……えっ?」
「ほら、女子の制服を着ている茶髪のバカっぽいやつ。」
「おい。ちょっと待て。色々とツッコミたいことがあるんだが。」
まぁ当たり前だな。俺も初めてみた時は本当に驚いたものだった
「あいつ。家では立場がとことん弱く姉さんに女子格好させられているらしい。俺、小学校ではあいつと結構仲よかったんだよ。その時聞いた。」
「マジで?」
「小学校のころは吉井はめちゃくちゃ明るくてクラスのムードメイカーだったし俺もスポーツやっていたからな。自然と仲良くなったんだよ。」
よく遊んでいったしな。
……俺は少し悩んでからリスクとリターンを考える。
……まぁトリオンも身体能力はかなり高いしすぐにボーダーに順応するだろうな
「ちょっとスカウト行ってくる。」
「お前肝っ玉すげぇな。」
「うん。俺も関わりたくないけどゲットできれば戦力になるからな。」
俺はそうやって吉井に近づき思いっきり吉井の頭を叩いた
「ちょっと何をするのさ!!」
「明久、お前な何女の服着ているんだよ。」
「えっ?あっ。巧久しぶり。巧もボーダーだったんだ。」
「おう。てか質問は無視か。お前仮入隊いなかったんだけどどうしたんだよ。」
「へ?仮入隊とかあったの?」
「あったわバカ。」
俺は呆れてしまうがこういった奴なので話していたら別だ
「てか普通にスカートで着ているんんだよ。」
「だって姉さんが着なければ濃厚で濃密なキスをしますっていうから。」
「……はぁ全くお前らの家族は。」
俺は呆れる
本題を忘れそうになるのはいつものことなので早めに
「まぁいいや。それで早速なんだけど。俺とチーム組まね?」
「へ?」
するとザワザワし始める
俺自身ボーダー。それも今季入隊では圧倒的な成績を収めていて今季新入生ではどこも手に入れたいと呼ばれていた
「いや、俺大侵攻で家族死んだからな。生活費のためにボーダーに入ったんだけど合ったチームがないんだよ。吉井なら昔から付き合いあるし、多分すぐにB級に上がれるだろうかなな。」
「あっ。もしかして予知使ったの?」
「……お前まだ信じていたんだな。その話。」
俺は少し呆れたようにしてしまう。俺が予知を使えることを信じたのはこいつくらいだ。
「えっ?嘘だったの?」
「嘘じゃないけどさ。まぁその話は後だ。とりあえず理由は2つ一つ目は行動力。そして二つ目は身体能力だ。どうせお前アタッカー希望なんだろ?カッコいいとかそんな理由で。」
「本当に予知使ってないんだよね?」
「お前が単純すぎるんだよ。俺もアタッカー型オールラウンダー目指すからな。連携重視か機動力を生かした近距離型のチームにしたいんだよ。」
「なるほどね。僕はいいよ。」
「……やけにあっさりだな。」
「うん。友達とやるほうが楽しそうだし。」
「お前一応命がけの仕事ってこと忘れんなよ。」
呆れたようにいうとまぁこういう奴だしいいやと何度目か分からないくらいのため息を吐く
「とりあえず俺はこれ終わったら開発室行かないといけないから。」
「えっ?訓練受けなくていいの?」
「あぁ、俺はC級じゃないからな。」
「どういうこと?」
首を傾げる吉井に俺はため息を吐き
「仮訓練の結果俺は先にB級に上がったんだよ。全部ぶっちぎりでトップだったし。」
「……あぁ。まぁ予習できるからね。」
「そういうこと。まぁランク戦みたいに30分くらいの長い時間見なければ普通に問題ないしな。まぁもうそろそろ始まるから学校で話そうぜ。さすがにお前の服装だと話したくないし。」
「うん。明日からは男用の服を着てくるよ。ボーダーで安定したら一人暮らしするつもりだし。」
納得。こいつあの姉さんから離れたい為にボーダーに入ったのか
「んじゃまた学校でな。」
「うん。またね巧。」
俺は手を振る。まぁとりあえずエース候補は確保か
「うす。」
「よう。どうだった?」
「アタッカー確保。後はオペレーターだけ。」
「そういえば綾辻ってオペレーター希望だろ?綾辻誘えばよかっただろ?」
「嵐山隊のオペレーターが今期で退社するから代わりに入るらしいぞ。」
オペレーターをスカウトして自分のチームに入れてもいいか上層部に確認をとったときに嵐山さんから聞いたことだ
「あ〜そりゃ無理だな。」
「でも今オペレーターは人足りてないらしくて入隊したいのであればスカウトしていいらしい。から三上にも声かけるか。これからオペレーターも増え始めたらオペレーターでも階級を決めるらしいし。早めの方がいいな。明日あたりにでも声をかけて誘ってみるか。」
「行動力すげぇな。」
「生憎A級トップ目指したいしな。」
それに俺の目もある予想は確定している。それに備えての一歩でもある
もう二度と失いたくないからな
すると忍田本部長が入ってくると全員が静まる
そして入隊式が始まった
……なお余談だがあの後うとうとしている明久を何度も叩き起こしている巧がいて結局ほとんど仮訓練は付き合っていたのだが