フェイト・オブ・ストラトス~世界に描く軌跡~ 作:シューティング☆
それでは、どうぞ。
ALO事件から数ヶ月。あれだけの事件が明るみになったとは言え、数ヵ月経った今、世間は受験シーズン。一つのことばかりを気にかける余裕などない。
本来ならば16歳になるワンズこと織斑一夏も受験生なのだが、SAO帰還者は一部を除き、帰還者を集めた学校に通うこととなっている。一夏やキリト、アスナもその中に入っている。簪は自身の都合上、違う学校の受験もしており、落ちるつもりはないが複雑な心境だ。
「それにしても、会場ってあそこだろ?デカイな」
「確か実技も同じところでやるってカンザシが言ってましたから、まああれぐらい広くないといけないでしょう」
「でも、一緒にお弁当食べても大丈夫?去年カンニングで大きな問題があったから、今年は対策が厳しいってテレビで言ってたけど」
「だからこそ、ある程度中身の分かるタッパー指定なんです。それに今日は午前中に筆記試験が終わって後は実技試験だから、中に入らなければ問題ないってカンザシが言ってました」
「それならまあ、大丈夫ね」
そして現在、一夏、キリトこと和人、アスナこと明日奈は、カンザシこと簪と一緒にそれぞれのカップルでお弁当を食べるダブルデートついでのリハビリをするべく、簪が試験を受けている会場、IS学園入試会場へと向かっていた。
10年ほど前に篠ノ乃束博士によって発明、発表されたIS、正式名称インフィニット・ストラトス。宇宙空間での活動を可能としたこのマルチパワードスーツは、性能こそ既存の数多の機械を大きく上回るとんでもない代物だが、大きな欠点としてほぼ女性しか使えないのだ。
一応男性も使う方法が無いわけではないが、それでも女性のほうがかなり多く使えるためそれが女尊男卑という思想に繋がり、今でも問題を残している。
そんなISだが、10年ほと前に日本に迫るミサイル群を、さらにその3倍以上は余裕であった破片を2機で全て破壊、被害はあり重軽傷者を出したものの、行方不明一人とそのIS一機以外は辛うじて死者を出さずにはすんだ。
このことからISは兵器としても認識、アラスカで条約が結ばれ今や宇宙開発以外に一応軍事、救助、深海探索、さらにはISバトルという軍事の延長線上とは言え、スポーツの用具として認識された。
そんなISを学べる国際教育機関が、日本に建てられた高等専門学校IS学園だ。もっとも治外法権+αがあるため日本であって日本でないIS学園である。
そこに簪が受験しているのは、自身の姉への対抗意識からそんなスポーツとしてのISの日本国家代表の候補生になっていたことと、さらに当時優秀(政府側の意見)であったために簪専用にISが作られることになっており、2年の月日を経て専用機は作られほぼ完成していたことから、一応受験しておいてほしいのと日本政府の意向だ。
とはいえ、彼女が代表候補生になったのはSAO事件の始まる数ヶ月前、知識学力は多少どうにかなるが身体能力はかなり落ちている。よほどのことに含まれていないのか、それとも日本国家代表になれないと高をくくっているのか、未だ代表候補生な簪は合格すれば一夏に自由に会えなくなることが不満であるし、かといって手を抜くのは姉に負ける気がして嫌という、複雑な心境だ。
「それにしても、ISって空を飛べるんだよね。どんな感じなのかな」
「確か、PICっていう、慣性を抑えて宙に浮いているとかなんとかだったから、ALOとは違うだろうな…全然分からない」
「まあ、束さん、千冬姉の友達ですから交流はありましたけど、ISについては…難しくてオレも分かりません」
篠ノ之束、ISの開発者である天才、あるいはその破天荒さから天災とも呼ばれた女性だ。
「だよな…しかし、意外だよな~。まさかワンズが織斑千冬の弟とは」
「でもよく見たら似てるよね」
「まあ、よく言われます」
織斑千冬、一夏の実姉でありISバトルの世界大会、モンドグロッソ第一回大会で総合優勝を果たしてブリュンヒルデの称号を得た、IS業界にその名を轟かせる超有名人だ。
第二回大会については個人の部、決勝に代理を立てて本人は試合に出ず、第二回大会はイタリア代表と代理人が戦い引き分け、第二回から団体戦も追加されその団体戦で日本が優勝。個人の部では引き分けだったことから総合優勝は逃した。
なお、少し前に第三回が行われた。
「えーっと、待ち合わせ場所はこの辺り、だよな」
「時間もちょうどいいね」
「お、いたいた。おーいカンザシー!」
水色という日本人にしても人としても目立つ髪色なので人がいても分かりやすい簪。現に周りに人がそこそこいる中、すぐ分かる。名前を呼ばれたことでビクゥ!と全身で驚いているのが分かるくらいには驚いた様子の簪。一行を見つけると急いで合流する。
「い、いきなり大声で呼ばないでよワンズ…」
「ごめんごめん、こっちじゃ全然会えてなかったからな。お疲れ、カンザシ」
「久しぶりね、カンザシちゃん。試験お疲れ様」
「いろいろ事情があるんだよな、お疲れ様」
「…は、はい」
少々引っ込み思案で人見知りの傾向がある簪、周りは知らない人ばかりな上に一夏と和人以外は同性、その上で一夏、和人、明日奈はイケメンだったり美形だったり美人だったりする上に自分の容姿(特に髪色)は目立つ。さすがに人の目が気になるのだ。
「じゃあ、早く場所見つけて食べようか、場所は……お、あそこ空いている」
「う、うん」
「キリトさんとアスナさんもどうですか?」
「どうするアスナ」
「いいんじゃないかな」
昼食は一夏と明日奈がそれぞれ用意しており、一夏は和食を中心としたもので、彩り豊かで消化にいい物を使っており、明日奈はサンドイッチだ。
明日奈はSAO生還者の中でも一段階遅く意識が戻った中の1人、先に戻ってきた人達よりもリハビリが進んでおらず、相当頑張ってはいるが和人、一夏よりは遅れている。加えてずっと食事をしていなかったことから消化器官も弱っているため、こちらもやはり消化にいい食材を使っている。
「現実でもおいしい」
「これでもここまで戻すのに結構かかったからな。でもよかった、おいしく作れて」
「ありがとうワンズ」
「どういたしまして」
「…うん、うまい」
「良かった…まだまだあっちでの味には及ばないけど、そこは我慢してね」
「アスナが頑張って作ったんだ、うまいに決まってるだろ?」
とまあこんな感じでイチャイチャして周りは舌打ちしたり嫉妬したり、なぜか目を怪しく輝かせたりしている者がいる。
当人達は気にせず食事中。互いの昼食を少し交換したり恋人同士で食べさせっこしたりと周囲の目を集める。簪は気にしているがそれでも一夏と一緒で幸せだから耐えられる。
そして食べ終わる頃には人はいなくなっていた。他人のイチャイチャをずっとは見ていられないのだろう、当人達はもう気にしていないが。
「ごちそうさま。やっぱり料理上手だね、おいしかったよ、ワンズ」
「ごちそうさま。ありがとう。そう言ってもらえて嬉しいよ」
「お粗末様でした。やっぱりまだまだだな~。さすがワンズくん、私の師匠だね」
「ごちそうさま。どっちでも料理うまいとかすごいな」
「まあ、アスナさんに料理スキルのイロハ教えましたけど、醤油味とかはアスナさんオリジナルじゃないですか」
「ワンズくんも結構やったよね、味噌とかお酢とか」
「さしすせそで醤油だけ中々できませんでしたよ」
「先を越されたって悔しがってたね」
SAOには食事アイテムを作る料理スキルというものがあり、それを熟練度最大値まで上げたのは数少なく、そこにワンズとアスナが該当し、特にワンズは最初に最大値まで上げたプレイヤー。現実とは違う味や細かい数値のことを気にして調整、悪戦苦闘の末様々な味を作り上げたレジェンドだ。大手ギルドに依頼され料理を作ったこともあるぐらいで、その関係からアスナに懇願され料理スキルのイロハを教えた間柄だ。
「そういえば、試験の時間っていつ?」
「えーっと…あ。残り15分」
「あー、ならもう行ったほうがいいな」
「試験だから厳しいでしょ?準備もあるだろうし急いで」
「はい。キリトさん、アスナさん、わざわざありがとうございます。ワンズ、また後で」
「ああ。カンザシ、ファイト」
「頑張ってね」
「しっかりな」
そうして簪は試験会場へと向かい、残った3人はというと…。
「へ~、ISの適性検査…行ってみる?」
「受験会場知らされたの直前なのにできるなんてすごいですね」
「実技は今日だからだろ。実技ってことはISを使うってことだからな。まあ、記念に行くか」
「あー、そっか、使うなら用意しますからね…ではお邪魔なオレはここで」
「ここまで来たんだからワンズくんも一緒だよ」
「あ、はい」
明日奈主導の元、IS学園受験会場なためか設営されたIS適性検査場にいる。検査としては簡易だが、起動しないよう処置が施されたISへの反応速度がどれくらいなのか、さらに言えば、反応するかだ。このISを動かせるのはほとんどが女性だが、男性でも動かせないわけではない。
女性はほとんどがISを起動させ動かせるのに対して、男性は(女性ならほぼ)誰でも使える汎用設定では反応させても起動させることができず、その人専用に設定しなければ起動させ動かすことができない。
そのため既存の兵器を上回れるISを誰でも使える女性のほうが偉いという女尊男卑の思想が流行り、影響は今もある(2回目)。
「そういえば、ここで男性がIS動かしたらどうなるのかな」
「ここにあるのは動かせないタイプだぞ。だよな、ワンズ」
「さすがに動かせないようにはしてあるでしょうし、まあ、男性は個人専用のものじゃないと動かせないですから、検査で使うものにそういうものは持ってこないでしょう。反応はさせられるかもしれませんけどね」
この時間で検査を受けにきた人は結構いるようで、列は長い。この適性検査は最終的な評価を最低評価Eから最高評価A、それとS。最高評価はSなのだがそれはある程度ISに乗った上でモンドグロッソの部門ごとの優勝者、ヴァルキリーレベルの実力者がほとんど、例外こそいるがその例外は極端に少ないため、基本はAが最高評価扱いなのだ。
「お、次アスナだな」
「その次はキリトくんだね」
「オレとキリトさんが同じくらいですね」
そうこうしているうちに明日奈の番がくる。明日奈の前には深緑のIS、ラファール·リヴァイヴというフランス産のISがあり、その前にある計器に明日奈か触れると、近くの画面にいくつかの文字が浮かび、最終的にAと表示された。
「あ!キリトくん私Aだって!」
「アスナがAか、すごいな。じゃあオレだな」
「オレもですね。よーし」
一夏の前には日本の甲冑を模したIS、打鉄があり、一夏、和人は計器に触る前に、なんとなく、ISそのものに触ってみた。計測後はすぐ離れる必要があるがその前なら少し触っても良さそうと見ていて思ったから、どうせならと触った。だが、直後に異変が起こる。ISが光を放ち始め、二人の頭に様々なデータが流れてくる。
「っ!?な、なんだこれ」
「こ、これはいったい」
「えっ!?キリトくん、ワンズくん大丈夫!?どうしたの!?」
「え!?離れてください!これは…」
そうこうしているうちにISが光になって分解され、それぞれ一夏、和人に纏わりつく。そして…。
「…やっと治まった……ん?あれ?なんか、視界が高いような」
「いったいなんだった……いっ!?ワンズお前、それ…」
「え?……え!?いやキリトさんなんで、ISを」
「え?!…いやお前もだよ!」
「ん?………は?え、えっ!?」
「…き、キリトくんと、ワンズくんが、ISを、動かしちゃった…?」
そう、一夏が打鉄に、和人がラファール·リヴァイヴに乗って動かしている。それを認識した人達は皆パニックになり、叫ぶ人もいれば冷静になるよう呼び掛ける人もいる、唖然としている人もいるなどだ。
「……これからどうする?」
「むしろこれからどうなるか、ですよね…」
「「はあ…」」
こうなってしまった以上、もう何が起こるか分からない。先が見えない不安と明らかに面倒なことに巻き込まれると分かるため、二人でため息をついた。
「「…」」
…とまあ、あるから記念にという感覚でISの適性検査しようとして、検査前に触って、ISを動かしてしまった一夏と和人。騒ぎになってすぐに人が来て、あれよあれよと言う間にホテルへ連行され軟禁される。
それが一週間前のことであり、一週間はIS触らされたりよく分からない検査を受けたりする以外、二人でずっと同じ部屋にいる。見張りの人は定期的に変わっているのが羨ましいとも思えてしまう状態だ。
「…うちの家族、みんな心配してるよな…」
「うちは三春姉が一番心配ですよ…千冬姉も、戻ってくる前には充分心配かけたとは言え、三春姉、かなり責任感じているようですから」
「帰ったら、謝らないとな…」
「でもなんて?不用意にIS触ってすみませんとか?」
「…うーん…それは、ちょっと……でもな…心配させてすみません、か。今回だと」
「まあ、確かに…」
一応リハビリ中のため、室内用にと調整されたリハビリメニューをこなしてはいるものの、あまりに代わり映えしない一週間、やることがなければ話しの内容も減る。
テレビでは連日自分達のことを名前を伏せて報道しているが、まあ情報化社会の嫌な面というべきか、ネットのほうでは間違いなく個人情報突き止められているだろうなと、二人は心の中では何度もため息を溢している。
和人の娘のユイはAiのためできる限り動こいているようだが人は数が多い、処理するには限界がある。和人としてはそれより無茶しないかどうかが心配である。
代わり映えのしない一週間、だがそれが変化を遂げる。不意に部屋の扉が開く。今度はなんだと思っていた一夏や和人、扉が開いたとき、不意に和人目掛け誰かが…いや、和人はしっかり見えた。長い栗色の髪を持つ彼女の姿を。
「アスぐふ!」
「キリトくん!よかった無事で…いきなり連れていかれて、連絡もつかないで心配で…でも、無事でよかったっ…」
「し、心配させてごめん…」
「アスナさん落ち着いてください少し絞まってます」
「…災難だったね、ワンズ、キリトさん」
「カンザシ!…と、その人は……あれ?」
明日奈の後ろからは簪、そしてその後に……何故か白衣にダイビングスーツ着た女性がいる。
「…えっと、なんでいるんですか、篝火さん」
「うわー、嫌そうな顔、傷つく~。久しぶりだね一夏くん。前に会ったのは…ああ、うちに千冬の弁当届けに来たときだから…小学生のときか」
「…ワンズ、この人誰だ。というかお前、そんな顔できるんだな、すごい顔だぞ」
嫌悪がダッシュして顔面崩壊している一夏は、渋々説明をする。
「…篝火ヒカルノさん、倉持技術研究開発機構ってところの第二研究所の所長さんで、千冬姉の知り合いです。本人もまあ、技術者って確か千冬姉が言ってました。それと変態」
「まあ、うちは何故か変人変態ばっかりだからね、私含めて」
「…一応、こんな人でも私の専用機の開発チームのリーダー」
「えっ、マジ?こんな人が?」
「…うん」
えぇ、この人がと簪以外のその場にいる全員が引いている最中、何も考えていないのか何か考えたのか、自分に背を向けていたアスナのお尻を目にも止まらぬ早業で何の迷いもなく触る。
「ひゃあ!?な、何を」
「あっ!しまった!その人尻フェチだった!」
「!ごめんなさい、止められなかった」
単なる性癖だった。
「んー……SAO生還者とはいえ、そこそこ鍛えられてるじゃん、関心関心」
「いったい何がしたいんだよあんた!いきなりアスナの、その、お尻触って!!」
「キリトくん恥ずかしいから大声で言わないでよ…」
「話し完全に脱線してるじゃないですか篝火さん!さっさと本題入ってください!!」
「えー。じゃあ一夏くんのお尻も久々に」
「いい加減にしてください」
「あだっ!」
話しが完全に脱線して一夏のお尻をロックオンして手をわきわきと握って開いてをしているうちに、簪によってどこからか取り出したハリセンで頭を叩かれた。そして簪は2回目ができるよう構える。
「痛いなもー……はいはい分かりましたわーかーりーまーしーたー、説明しーまーすー。まあ、簡潔に言えば、あんた達の専用機、うちで作るからよろしく」
「えー……」
「せ、専用機?」
「そ、専用機。そこの簪ちゃんみたいに、個人専用にチューニング施したISをプレゼント、バンバンデータ採らせてもらうから。そこのお嬢さんはまあ、ちょうどいいから一緒にね」
「どうして、そんな」
困惑する和人の呟きに、ヒカルノは少し笑みを作り理由を語る。
「そんなって、あんた達、特に男子二人は貴重だぜー?なんせ汎用設定のやつ、動かしたんだから。本当なら女性しか動かせないし、男性なら反応させるのが精一杯。だから貴重。
あ、そのこととは別になるけど、あの検査用のやつ、本当なら展開、装着しないようになってたんだよね、で、これはまだまだ調査中なんだけど、どうも思考反応速度が前列にないレベルで速かったのが理由じゃないか~って結論出たんだ」
「「「思考反応速度?」」」
何それ?と言わんばかりのいいように、ヒカルノが口を挟もうとしたが、その前に簪が口を開く。
「ISには、イメージインターフェイスって言う、思考をISの動作に反映させて操縦する機能があって、思考反応速度はどれだけ早く思考に反応して動かせるか、ということです」
ヒカルノに話させると脱線すると考えた簪がさっさと説明をする。当たりなのかヒカルノは唇を尖らせ不満げだ。
「えー、説明させてくれてもいいじゃん。あ、それと思考反応速度以外に、単純に体動かすとか一部除いた道具使う場合の反応速度は、接触反応速度って言うから」
「…まあ、脱線しないなら」
「普通じゃつまんない…わー、暴力反対ー!」
「…苦労したんだな、カンザシ」
「慣れたけど慣れたくなかった」
「カンザシちゃん、今度どこかお茶いく?」
「じゃあ私も」
「篝火さんはダメです。そして話し脱線してます」
脱線させたのそっちじゃんとヒカルノは小さく言うものの、それ以上はハリセンは嫌なのだろう、話しを本筋に戻していく。
「でまあ、どうしてそういう結論かと言うと、検査用って、検査のためにある程度は起動していて、検査機器を通じて検査する。そんでもって検査のために触っただけでもそこから展開、装着までできるようになっている。
でもまあ、そこまでされるのは困るから、途中で展開も装着も止まるようロックが作動するようになっていた。ここまでOK?」
「はい」
「まあ、分かります」
「とりあえず、簡単に動くようにはなっていたけど、動いたら困るから、動かないように途中で止まるようになっていた、ということでいいんですよね。合っているなら脱線しないうちにどうぞ」
一夏が分かりやすく言った上で、すかさず釘を刺す。ヒカルノが頷いているため、それで合っているのだろう。
「OK、まあそういう認識で合ってるよ。でまあ、そうなっていたんだけど、どうも検査機器にじゃなく、直接触った結果、ロックが作動するより早くに信号が送られて、その弾みでロックが解除、本格的に起動して展開、装着された、というのが大体の見解。分かる?」
「つまり、反応がロックよりも早かったってことです?」
「まあ、そういうこと。ついでに、思考反応速度が速いことについてだけど…って、これは脱線じゃくて必要な説明だから構えない」
「脱線しないでくださいね、篝火さん」
話しが脱線すれば叩くと、ハリセンを下ろさない簪、軽いため息がヒカルノから出るが、もう仕方ないと思ったのか、話しをする。
「まあ、調べてみたら男子2人だけじゃなく、どうもそこのアスナお嬢さんも二人ぐらい速い、簪ちゃんもそう言えば前より早くなってたのよ。でまあ、共通点とすれば、SAO生還者、超長期間VRゲームを強いられていたってところ」
「まさか、VRゲームやっているとその思考反応速度が上がるって考えですか?」
和人の質問に、ヒカルノが首を横に振って答える。
「そんなわけなーいじゃーん。ただVRやっても休日に1日中で10時間以上できるかできないか、平日はもっと短い、これじゃ10年以上かけてもどうなるやら。でもこう言っちゃ悪いけど、SAO生還者なら話しは大きく変わる。
不幸な偶然で約2年の間、ほぼ毎日24時間ぶっ続けで、現実じゃほぼ無理な超々長期間連続プレイをさせられていた。その過程で何かあってもおかしくないかもとは思う。
ただまあ政府のほうでSAO生還者の男性数名検査やったけど、だーれも動かせないし、反応させたやつもいなかったから、検査用ロックが作動しなかったことはともかく、汎用設定のやつ動かせた件はまったくもって不明よー」
謎は確信がないため完全には解けず、それ以上の謎は解けない。これ以上このことを聴いても無駄に話しが長くなるかもしれないと考えたキリトは、話しを戻しつつ、さらっと流していたことを聴く。
「…で、まあ、どうしてそちらで専用機を作ることになったんですか?それ以前に、さらっと流しましたけど、オレやワンズ、アスナのこと、SAO生還者って知っていましたね?どこでそれを?」
簪以外から訝しげな目で見られている篝火。本人はその視線を気にしていないのか、そこら辺の椅子に座り顔の前で手を組み無駄に真面目そうな雰囲気をなんとなく出し始める。
「そうね、まあ、話し長くなるから話さなくても…あー分かった分かった、話すからハリセン構えないで。さて、まずは…ALO事件は知っているね」
「はい」
「もちろん」
「あれだけの騒動ですからね」
「奔走した当事者ですし」
被害者の一人がいるが、知らなそうなら言わないほうがいいなと4人は思う。
「あの後、ALOを運営していたレクトプログレスを中心としたレクトのVR部門が別のベンチャー企業に買収されたでしょ?買収したとこ、うちの研究所とは同じ企業の系列会社で、どうにかのこうにかなんとか頼んで買ってもらいつつ、一部のデータをうちでも使えるようにしてもらったんだ♪うちも出資したし♪」
上機嫌な様子で語るヒカルノ。一部データが欲しかったのだろう、その辺りのフレーズで弾んでいた声がさらに弾む。
「んで、レクトと言えばソードアート・オンラインの開発部門も買収したところ、そのVR部門全部と来たらそのデータもある!」
「要約すると、ソードスキルを使えるISを開発したい。本来ならそのISの被験者は私だけだったんだけど、2人がIS動かして、その、この人と話しているときに2人だって知って、思わず、驚いて」
「よーし、この後は私のターン!それでまあ、簪ちゃんは生還者だからその反応からもしやと思って根掘り葉掘り深堀りで聞き出そうとしたけど失敗、でも、総務省の、えーと、確か仮想課の」
「……菊岡、誠二郎…ですか?」
総務省、仮想課と聞いた途端に苦虫を潰したような顔をした和人が名前を出すと、そうそうそんな名前!と笑いながら言うヒカルノ。菊岡誠二郎、総務省の仮想課(仮想課は通称。正式名はかなり長い)所属のエリートだ。和人に明日奈の情報を伝えたりいろいろ便宜を図った、隠し事が多そうなメガネな男性だ。
彼に助けられたとは言え、よりによって個人情報を守らないといけない人物が出てきたことで、さらに怪しむ。
「その菊岡って人が、うちがソードスキルを使えるISを作ろうとしていることをまあ、なんかで知ったんだろけど。買収したのはうちとは同じ企業の系列にあるベンチャー企業、調べれば繋がりは見えてくるなら、そう考えられるだろうし。後うちも出資してるし。
それで、あんたたちともう一人、レクトの元CEOの娘であるお嬢さんのこと紹介してくれた。あれ、これさっきので私やばくないか?どうか訴えないでくださいお嬢様」
「え、えー…」
「…さっきのって、あれですよね…ならやらなければよかったじゃないですか」
「やらねばならぬ時だった」
「うそつけ」
「あだっ!」
この場にいる全員に警戒されているヒカルノ。無理もない、早々に変態と紹介されいきなりのセクハラだ、しないほうが無理がある。
「続きお願いします」
「OKOK、そのハリセン納めようか…それで教えてくれたのよ、三人ともそこの簪ちゃん同様にSAO生還者で、尚且つ、トップクラスの実力者だってね」
「あいつ…」
「よりによってこの変態に…」
一夏は菊岡とは面識がないものの、和人から話しは聞いているため、信用はさらにできなくなる。
「そんなこと聴いたら飛び付かないわけにはいかないじゃん?というわけで、まあ、二人に専用機作ろうって政府の話しに手をあげたわけ。危うく取られかけたけどプレゼンで勝ったわ!ハッハッハッハッハー!」
「(なんで勝っちゃったかなー、この人)」
うんざりした表情を一切隠さない一夏を気にしていないヒカルノ。少し長めの高笑いを終わらせると一夏達を改めて見る。
「というわけで、一夏くんと、えーっと、桐ヶ谷くん、それと明日奈お嬢様にはうちのテスターになってもらいます」
「全力でお断りします」
「残念、政府の決定は覆らないのでーす!」
「畜生!」
そう叫ばずにはいられなかった一夏であった。
無駄にいろいろ詰め込んだ感じが酷い気がするシューティング☆です。
反省はしているし若干の後悔もありますが、これ入れたほうがいいんじゃないとか言われて良さそうだったら入れると思います、その前に感想来るか分からないんですけどね!
※やっぱり長いと思ったので、プロローグ3の設置に伴い、文章の移動を行いました。