フェイト・オブ・ストラトス~世界に描く軌跡~   作:シューティング☆

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 本当なら最新話を投稿するべきなんですが、プロローグ2つに押し込めるには文字数が多いかなと考え、3つに別けました、すみません。

それでは、どうぞ。


プロローグその3 無限の成層圏へ

「とまあ、うまく行った…は、いいんだけど、この後がね…」

 

 と、(前回終わりの)ハイテンションからいきなりトーンダウンした様子に、簪以外はなんだ?と言いたげに首を傾げる。

 

「まあ、ね…さすがに三人分の専用機用意するとなるといろいろかかるのよ。一応一夏くんは知り合い補正で開発中止していたやつを再利用するからまだいいけど、桐ヶ谷くんと明日奈お嬢様はね…」

「あんたに世話になるくらいならそんな補正いらなかったです」

「どんだけ嫌いなんだよ…」

「思い出させないでください忘れようとしてるんですから」

「そ、その、スマン」

「…」

「あだっ!さっきより痛い!」

 

 簪が明らかに怒りを込めてハリセンを振り下ろした。一応専用機の開発チームのリーダーではあるのだが、それとこれとは別なのだろう。

 

「だー、痛みが癖になったらどうすんのもー…」

「今ので終わりと思わないでください。さあ、続けて」

「はいはい。とまあ、元々ソードスキル使えるISは、簪ちゃんが生還者だから使えたら強いそうだし、いいデータとれそうだなと思ったのが始まりだったから、簪ちゃんの専用機改修しないといけないのがね…いろいろやるから今あるものを使って急ピッチで仕上げてもかかるのよ。でまあ、あなた達にすこーし協力してほしいのよ」

「…何を、ですか」

 

 少し悪そうな顔をしたヒカルノに、明らかに信用していない和人が質問する。その側で明日奈がなんだか罰の悪そうな顔をしているのに気付かず。

 

「とまあ、ここまで言っておいてあれだけど、SAOのローカルメモリーのデータ使わせてもらいたいってことなんだけどね」

「何故です?」

「ソードスキルを使えるようにするって言ったって、ソードスキルはまあ、武器の種類以上はあるだろからね。

こっちは詳しく知らないにしても、武器の種類名を冠したスキルとそうじゃないのがあるだろうから、専用機作るなら、慣れ親しんだ自分のデータのほうがやり易いし時短になるっしょ?ついでに言えばそれが入っているものは持ってきたから。桐ヶ谷くんのは明日奈お嬢様が持ってきたよ。ご家族だってOK出したし」

「え?」

「ご、ごめんねキリトくん、時間もて余しているだろうからってこの人が言ったから、なら持っていこうって思って…まさかこんなことになるなんて」

「あれ、オレのは…まさかカンザシが?」

「ううん。それは」

 

 簪が伝えようとしたその時、閉まっていたドアが勢いよく開き、何者かがヒカルノに襲いかかり滑らかな動作で組み伏せた。

 

「いだだだだだだ!?腕折れる折れる!!ほんと折れる!シャレに!シャレにならいだだだだ!?」

…篝火さん?私、言いましたよね。今後、一夏に近づくなら容赦はしないと。

まったく姉さんから話しを聞いたときは心臓が止まったかと思いましたよ?あなたのところで一夏達の専用機を作ることになったって。国も姉さんもあなたも何を考えているか分かりませんよ、全然。あ、一夏、お姉ちゃんがいるからもう大丈夫」

「……はっ!いや三春姉ストップストップ!本当に折るのはまずいって!いくらなんでもダメだからもうやめて!!」

 

 一夏以外襲撃者のあまりの速さと行動に唖然としていたが、一夏が襲撃者を止めに入る。その際、呼び方からして和人に言っていた三春姉が、この襲撃者であるようだ。よく見れば、どことなく一夏に似ている。

 

「…一夏に、セクハラ、しませんね?」

「いたたた……はーい」

「…さすがに、私もやり過ぎました、すみません」

 

 よく見れば一夏、というよりも女性だからか一夏の姉、織斑千冬のほうに少し似ている。

髪色こそ濃い茶色で目元が優しげだが、顔立ちが似ていることに加え、先ほどヒカルノを組み伏せた際の目付きは織斑千冬によく似ている。目に光がなかったのを除けば。

 そして、そんな織斑千冬が部屋に入ってきた。

 

「千冬姉!」

「一夏、大丈夫か?何か変なことはされてないか?」

「まあ、オレは平気だけと、アスナさんが、まあ、篝火さんの魔の手に…」

「…無事か、篝火」

「痛い以外は。折れてないし」

「そうか、これからはやるな」

「…」

 

 切れ目でクールビューティーな千冬、有名人の登場に和人や明日奈は驚いている。簪は知っていたようだがそれでも少し驚いている。まあその前にいきなり人が組み伏せられたのを見れば少しの間、驚いているのも無理はない。

 

「…んん、ほとんど始めましてですね。織斑一夏の姉で、織斑千冬の妹、織斑三春です」

「三春、一夏の姉、織斑千冬だ。初代ブリュンヒルデと言ったほうが知っているかもしれないがな」

「あ、えっと、結城明日奈です」

「更織簪です」

「…ほら、キリトくんも」

「あ、え、えっと、桐ヶ谷和人です、どうも」

「そして私は!篝火…すみません」

 

 家族である一夏以外自己紹介する際、さりげなく自己紹介をしようとしたヒカルノだが、先ほどのがよほど効いたのか、三春の目付きが鋭くなり、お前はいいと言わんばかりの視線を突き刺すと、あっさり引いた。

 

「…それで、あの、そこの篝火さんと、姉さん以外は…SAOで知り合った、一夏のお友達で、いいでしょうか?」

「!…はい」

 

 三春の言葉に、和人は思わず強ばる。先ほどのヒカルノへの襲撃から、一夏に対してかなりの過保護と考えられるし、何かあったのも分かる。それに加え一夏の言っていたことからも一夏のことを大切に思っているのは予想できる。

 そんな過保護な人物ならSAOのことを毛嫌いしていてもおかしくない。実際、被害者家族でSAO事件からVR全般に嫌悪を表すものは多い、和人の家族がかなり珍しいぐらいだ。

 そんなことを考え強ばっていた和人だが、三春は深々と頭を下げると、思いもよらなかったためか、少し驚く。

 

「SAOで、一夏を助けていただき、ありがとうございます」

「……え?」

「あの、三春さん?」

「三春姉…」

「…あのようなことになり、一夏が死んでしまうんじゃないかと、毎日不安で、不安で…でも、一夏はこうして、生きて帰ってきてくれました。一夏も頑張ったのは分かりますが、それでも一人ではどうなっていたか分かりません。一夏が生きて帰ってきたのも、皆さんのおかげです。本当に、本当に…ありがとう、ござい、ます!」

 

 最初は一夏がSAOが囚われていた頃のことを思い出したのか体が震えていたが、それもすぐ治まり、途中から泣いて、もう一度お礼を言った後は泣きながら嗚咽を溢し、近くのイスに座る。

 

「…そうだな。先を越される形になったが、私からも、お礼をさせてもらいたい。一夏を助けてくれて、本当にありがとう。そして、今のような状況に置いて、すまない」

「…助けた、か。まあ、本人の前で言うのは少し恥ずかしいところもありますけど…オレ達だってワンズ…一夏に、助けられましたよ。戦いでも、日常でも」

「私もそうですよ。呆れて笑っちゃったこともありましたけど、大変なときにみんなを勇気づけることもありました。それに、ワンズくんは私に料理を教えてくれた師匠なんですよ」

「彼に助けられました人は、私達以外にもいます。確かに、彼も助けられましたけど、でも、彼が助けた人も確かにいます」

「みんな…」

 

 さすがに照れるのか、少し恥ずかしそうにする一夏。それに対して、少し誇らしいのか嬉しいのか、顔が緩む千冬。だが仕事モードに入ったのかキリッと表情を締める。

 

「さて…さすがにそこの篝火から聞いたとは思うが、織斑一夏、桐ヶ谷和人、結城明日奈の三名には、専用機が与えられる。それに加えさらに織斑一夏、桐ヶ谷和人の二名は話し合いの末、IS学園に保護の名目の元、入学してもらうことが日本政府によって決定された」

「…え?IS学園…って、あの?」

「女子校、ですよね…?」

 

 IS学園、日本にあるISを学べる高等専門学校であり、国際教育機関だ。そしてISは女性のほうが圧倒的に多く扱えるのもあって、IS学園に在席しているのは女子生徒だけ、そんなところに入学するのは、彼女持ちの二人としては不安ばかりだ。

 

「既に入学予定だった帰還者学校のほうにも話しがつき、さらに定期的なカウンセリングを受けることを条件に入学となる。そして、そこの結城明日奈さんは、編入試験にて合格すればカウンセリングを条件にIS学園への入学を許可することに決まった」

「え!?」

「やった!ありがとうございます!」

「えっとアスナ、これはどういう…」

「兄さんが言ったの、多分2人はIS学園に保護の名目で入学するんじゃないかって。IS学園は他の国からの干渉をあまり受けないからって」

 

 IS学園は様々な国が出資しており、それをダシにいろいろされて下手に問題が起きても困るため、IS学園は国際教育機関でありながら、他の国からの干渉をあまり受けない+日本からも治外法権であるため、小さな自治区のような少しだけ独立した特殊な場所となっている。そこなら下手に誘拐されることもないという日本政府の考えだ。

 

「それに、IS学園って、トレーニング設備が充実しているからリハビリにもいいよ」

「なるほど」

「カンザシも、一緒にリハビリするか?」

「もちろん。まだまだ鍛えないと」

「学園側からも、いい人を寄越すそうだ」

 

 ついでに言えば、リハビリをするにはとても充実したトレーニング設備があるため、リハビリとその後の筋トレにはちょうどいいのだ。そして一通りの説明が終わったところで、千冬が思い出したかのように手に持っていた謎の手提げを一夏の側に置く。

 

「それと、忘れていたが、これはそこの変態に頼まれて持ってきたものだ」

「え?…オレのアミュスフィア…」

「よーし準備は整った!さあさあさあ!メモリーをプリーズ!ハリーハリーハすみません…」

 

 いよいよと三春に睨まれていたヒカルノがテンション高めに要求した結果、再び睨まれてた上に構えられて大人しくなる。

 

「…はあ……まあ、決定が覆らないなら…仕方ない…会う時間は少ないほうがいいので早く返してくださいね」

「もちろんだとも!なんのためにこの特製ノーパソを持ってきたと思う?この場でコピーするからだ!」

「んー…大丈夫、ですよね、セキュリティとか」

「ネットワークも何も繋がってないから平気平気」

「まあ…なら、どうぞ」

「…早く返してくださいね。絶対ですよ」

 

 三人とも承諾したところで、一夏は簪がメモリーを持っていないことに気がつく。

 

「カンザシはいいのか?」

「私はもう渡した後。改修プランを建ててるときにこの騒動だったの」

「その、なんだかごめん」

「ううん、気にしないで」

 

ヒカルノがテンション高めに作業を進める横で、ヒカルノの話しが終わったからか、千冬が別の荷物を取り出す。それは分厚く大きい本だ。

 

「それとこれが、授業でも使う参考書だ」

「…電話帳?」

「デカイし、分厚いですね」

「本なら電子書籍でいいと思いますけど」

「…まあ、ともかく、入学が確定している一夏、桐ヶ谷は確実に全部を、結城は転入試験に落ちたくなければ基礎部門を覚えろ」

「姉さん、誤魔化さないで。電子書籍のほうが授業で使うときも範囲が分かりやすいはずよ」

 

アスナの指摘に誤魔化すように覚える範囲を教えた千冬だが、それを三春が容赦なく指摘をする。

 

「…まあ、そうだが…電子書籍だと容量が大きすぎる。あれだけの容量、専用の端末を用意してもらわなければ影響が大きいのが難点だ…見てみろ、このページだけでうんざりする文章量だ」

「あー…」

「うわー…」

「こ、こんなに…」

 

千冬か軽く捲り、見せたページには図形や絵があるものの、それの比較にならないレベルで文字がびっしりと詰まっており、捲り捲って何ページが見せるがどのページも多少差はあるが大量の文字が詰め込まれている。

 

「いくらIS学園でも、教室の机にデータは入れてあるが、それは学園の備品、個人支給の端末はあるが小さい、プライベート用含め個人の端末にこれを入れるのは、な…全員が全員複数の端末を持っているわけではない。その上で、これは日本語版、海外ならもっと量が多いところもあるぞ」

「姉さんごめんなさい。まさかこんなに文字ばかりだなんて…」

「…えーっと、この量、いつまでに全部を?」

「一夏、桐ヶ谷は入学までに、結城は…まあ、まずは試験前に基礎の部分を、合格したなら二人と同様だ」

「は、はい……えっと、基礎ってどの辺りです?」

「えーっと…ここから…………ここまでだ」

 

 と、分厚く大きい本を大雑把に捲り目的のページを見つけ、さらに捲って目的の範囲を指で摘まむ。紙のため薄いのだが、それでもあの文章量を考えると見た目以上に厚みがあるように見える。

 

「そ、そんなに…」

「教わりたいのなら、そこの更識に頼むのが早いか?」

「…アスナさん、がんばりましょう」

「そ、そうだね、う、うん。よ、よーし…」

「カンザシ、オレもいいか?」

「できれば、オレも」

「うん。教える側も勉強になるからいいよ」

 

 事前に学習しているため、この際、簪の試験の合否は置いておき、教わらなければ遅れるのは間違いないだろう。

 

「ありがとうカンザシ、さすがにこの量全部は自力じゃ厳しい」

「分かる人が確実に一人いるのといないのとじゃ違うからな」

「ありがとうカンザシちゃん。あ、そうだ。カンザシ先生はどうかな」

「先生…」

 

 先生と言われて照れているのか嬉しいのか、簪は頬を赤くしている。嫌そうな感じではないため、満更でもないのだろう。そんなやり取りを微笑ましそうに見ている三春と千冬。

 

「まあ、後は一夏、桐ヶ谷は、本来なら寮に入ってもらうところだが…何分話しが急だ、部屋が用意できるまで自宅通学になる」

「ああ、そっか。IS学園って全寮制か…でも今の時期だと新入生がまだ寮にいないだろうし、部屋ならすぐ用意できるんじゃあ」

「本来、女子寮に男子がいること自体、あまり言いとは言えん。だが、男子寮があるわけではない以上は、部屋割りを気にしなければならない。それに、男性で動かせるやつが、二人だけとは限らない」

 

 その千冬の言葉に、一夏や明日奈、おまけに三春ははっとなり、和人はなるほどと言いそうな顔をする。簪は事情をちゃんと知っているのか特に反応しない。

 

「日本じゃあ立候補した人だけとは言え、男子も検査対象、近いうちに検査をする学校もあるから、それが終わってから最終調整をする、ということですか」

「ああ。すまない…日本以外も検査を行っている以上、どう転ぶかは分からん。状況次第ではギリギリ間に合うかどうかもあり得る」

「えっと、私は」

「まずは試験を行ってからになる」

「は、はい…がんばります」

「しっかり教えます、先生ですから」

 

 案外、簪は先生と呼ばれたことが嬉しいのか、かなり乗り気だ。あまり変わらない表情でも、なんだか嬉しそうに見える。それを見て一夏も嬉しそうだ。

 

「…さて、早ければ明日、明後日には解放されるはずだ。そのときまで、寛ぐなり勉強するなりしていてほしい。篝火、終わったか?」

「もーちょい」

 

 先ほどから口を挟まないヒカルノは、パソコンの画面を見つめ作業中。そしてもうちょいの言葉通りに少ししたら3人から受け取ったメモリーを読み取り装置から取り出した。

 

「作業完了っと。はい、しっかりお返ししまーす」

「大丈夫ですよね…変なことしないですよね」

「その時は報復するから安心しろ」

「そんなことになったら殴り込みしないと、ね」

「徹底して管理します!」

「千冬姉も三春姉も落ち着いて」

 

 目が明らかに本気のため、冗談ではなく本当にそうなったらヒカルノの元に突撃しかねない。

 

「…では、私は行くぞ。さすがにまだまだやることがあってな…篝火、お前ももう用事はないだろ、戻って仕事をしないと間に合わないぞ」

「OK。じゃあ諸君、楽しみに待っていたまえよ~!」

「三春、お前もだ。積もる話しもあるだろうが、私の身内なだけで、特別に通してもらったお前を置いていくのはまずい。心配なのは分かるが、頼む」

「……分かった。一夏、何かあったらお姉ちゃんに言ってね?」

「う、うん」

 

 

 

 

 

「…それにしても、お2人さんはよーく平気だねー。SAO事件の被害者家族、結構SAOのこと、嫌悪するとこが多いって聞いてるよ?そこでてきた交友関係まで及ぶとこもあるんだとか」

 

 部屋から出て別れる前に、ヒカルノが千冬と三春に質問する。そんなことを知っているためかやはり気になるのだろう、ヒカルノの気質含め。

 

「平気ではない。今でもSAOのことは嫌な記憶だ。私より三春のほうが嫌っているだろう。だがそれでも、一夏の友達なら、それまで嫌いになるのはな…」

「そうですね…正直、あなたよりもSAOのことは嫌いです。過去に戻れるなら、SAO開始前に戻って、ナーヴギアを壊して一夏を止めます」

「おいおいまさか私、比較対象に選ばれちゃった?はー、嬉しくないなー…はい、失礼しました」

 

 やはり余程効いたのか、三春の一睨みに脅えるヒカルノ。この分なら千冬の場合でも同じになるだろう。

 

「…でも、SAOでできた友達まで、嫌いになれません。地獄の中で、一夏を支えてくれた人達です。それに、一夏も支えになっていた…それは姉として、家族として、嬉しいことです」

「なるほどね…にしても千冬、大丈夫だと思う?今年」

「何か起こるのは確かだろうな。こういう大きな変化の始まりになりそうなときに、何かが起こるのは定番だ」

「一夏に何かあったら姉さんでも許さないから」

「落ち着け三春」

 

 そうして話しているうちに、ホテルのロビーの目の前までつく。3人とも帰る方向が違う。千冬とヒカルノはそれぞれの職場、三春は家だ。

 

「それではこの辺でしっつれー!次があったらお手柔らかにー!」

「今すら嫌なのに次があるとでも?」

「ヒェ」

「三春、やり過ぎるなよ。例外は認めるが」

「そこ認めないでほしかったな畜生ー!」

 

 そう言い残し、ヒカルノは去った。千冬、三春もそれぞれの向かう先へと向かう。

 もっとも、これから起こる様々な出来事は、予想外の連続であると、知る余地もなかった。

 

 

 

 しばらく時が経ち、世界に変革が起き始める。

 

「…如月坊っちゃま、ご準備はよろしいでしょうか」

「…これ以外はいい」

「左様ですか…しかし、坊っちゃまもここを去ってしまうと思うと、寂しく、不安に思います」

「…必ず戻ってくる」

 

 かの者は心の折れた生者、柱となる生きる意味を喪い、それでもなお生きる者。

 

 

 

「な、なあ、本当に、だ、大丈夫?学費とかとんでもない金額だと思うんだけど、ほ、本当に大丈夫?」

「国が出してくれるそうだから大丈夫。なんでも、データを録るためだから、とか」

「国に借を作るようであれだが…出してくれるなら、精一杯勉強しろよ、カズ」

「も、もちろん!でも、なんか落ち着かない…」

 

 その者は希望を抱く者、かつての夢に背を向け、己の未来を見ている者。

 

 

「おーい!宗輝ー!」

「なんだよヨネ」

「いやー、IS学園に入学するでしょ?双子で入学とか世界初でしょ?緊張してる?気負いしてる?」

「女子校だから気が重いし怖い」

 

 その者は臆病な者。傍に太陽のいる彼は果たして月か、それとも…。

 

 

「もうすぐ日本か。わくわくする」

「そう。でもジョー、だからってキモノはないんじゃない?」

「アレン、キモノは日本の伝統的な服、つまり正装だ。ならしっかり練習して着れるようにならないと。郷に入れば郷に従え、だったかな、そこに住むならそこにあるルールは守ろう、という言葉が日本にある」

「ジョー、キモノは確かに伝統的よ、でも正装かはケースバイケース、正装ならスーツでいいんだから」

「む?そうか?」

「そうよ。日本好きなのに妙にズレてるの、なんとかしなさい」

 

 彼は前に進む者。どこかズレているから、真っ直ぐではないが確実に進む。

 

 

 もうすぐ彼らは出会う、そして、騒乱の時が訪れる。

 世界は変わる、それが既知か未知かは、進まなければ分からない。




 ラストには入学する男子について断片的な情報を出しました。
 これにて、本当にプロローグは終わりになります。改めて、よろしくお願いします。
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