――唐突な急展開――
――やっぱり失敗すると思った――
午前二時。この時間ともなれば町はずれのこの場所は完璧な静寂に包まれる。
昼間のうちに描かれた神社の裏手の魔法陣は、その役目を果たすべく赤い光を放っていた。
すなわち、英霊の召喚である。
「――告げる。」
昼間とは打って変わった真剣な面持ちで召喚のための呪文を唱える真也。
そして、信也もまたそんな彼から数歩ほど離れたところから儀式の様子を見守っていた。
「汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。」
儀式は、順調に進んでいるように見えた。
だから、油断した。
轟音。
「――え?」
信也が我に返った時には全てが終わっていた。
最初に、一瞬前とは比べ物にもならないほどの異常な輝きを放つ魔法陣が。
次に、粉々に砕け散った「触媒として用意されたはずだったもの」の残骸が。
そして、地面に横たわってぴくりとも動かない右腕の潰れた兄の姿。
一瞬のうちに視界内のあらゆる物が情報としてなだれ込んでくる。
「あ、あに………き……?」
恐る恐る、横たわったままの真也に声をかける。
彼まではほんの少し、手を伸ばせば届く距離だ。
だが、手を伸ばすことはできなかった。
彼に触れてしまった途端に、今、必死で考えないようにしている「現実」からもう目をそらせなくなると。
そう頭の片隅で理解しているから、だった。
果たして、返事はなかった。
何も考えることができないまま、周りの時間だけが過ぎていく。
まるで、自分だけが世界から取り残されたかのように。
数時間、あるいは数分かもしれない。しばらくして、信也を現実に引き戻したのは焼き付くような左手の痛みだった。
始めは赤い点のような物に過ぎなかった「それ」は次第にその面積を広げ、一つの模様を描いていく。
「令呪……なんで……。」
そして、信也の手に令呪が刻まれるのと同時に、魔法陣の輝きも最高潮に達する。
英霊の座と接続した魔法陣は彼を新たな術者と認め、今ここに儀式は完成した。
「GrArrrrR……!!」
そして、魔法陣から現れた「彼」は高らかに咆哮する。
それこそは聖杯によって選ばれた七騎のサーヴァントが内の一騎。狂戦士の英雄。
「バーサーカー……。」
2m近くはあるかと思われる体躯に、褐色の肌を持つ大男。
その瞳は狂気と、果てしない「怒り」によって紅く燃えていた。
「RrRrrrrrRrr!!」
「なっ、ま、待って!」
限界した彼が最初に取った行動。それは、今この瞬間に彼の目に映った命を亡き者にすることだった。
狂気に飲まれた瞳が信也を見据え、その拳が振り上げられる。
「やめろぉぉぉぉ――っ!!」
サーヴァントの驚異的な力によって振り下ろされたその拳によって、信也はその短い生涯を終えた……。
と、思われた次の瞬間だった。
人間の常識を遥かに超えた速度で、彼らの間に割り込んだ影があった。
右腕を失いながらも、残る左腕に満身の力を籠めて、人智を超えた拳を受け止めたその姿は。
「兄貴……!?」
まさしく信也のただ一人の兄、真也のものだった。
はい。
サーヴァント召喚編ですが、リアルが忙しく力尽きてしまったので二回に分けさせていただきました。
その余波で前書き、後書きも雑になっております。申し訳ありません。
なるべく間隔は開けないようにしていきますので、また次回でお会いしましょう。