まだスッカスカですが、話が進めば埋まっていくのでご容赦ください。
「ぐあっ……。」
唐突に繰り出されたバーサーカーの蹴りによって、兄と弟の感動的な再会はわずか二秒で終わりを迎えた。
既に左手を拳の対応に割かれている真也にはもはや防御する手段はなく。
バーサーカーのその超人的な脚力でもって、目視するのも困難なほどの速度で弾き飛ばされた。
「がはっ……。」
「ぐえっ。」
何故か真也の飛んで行った先でうめき声のようなものがもう一つ聞こえたような気がしたが、そんなことは気にしていられない。
「ど、どうする……。」
人は切羽詰まった時ほど正しい答えを出すのが難しくなるものだ。
特に、その答えがびっくりするほど近くにある時には。
この時の信也の頭の中には「令呪を使う」という選択肢はかけらも存在していなかった。
故に、颯爽と登場した救世主がこれまた盛大な出落ちをかました時、信也は今度こそ死を覚悟した。
ぎゅっと目をかたく閉じ、最後の一撃を待つ。
「………………。」
しかし、十秒たっても、一分たっても、「その瞬間」は訪れなかった。
恐る恐る目を開くと、依然としてバーサーカーの姿はそこにあった。
ただ、彼の様子はどう考えても「普通じゃない」状態だった。
地面に胡坐を書いて座り、両腕を組んで目を閉じているその姿はまるで瞑想しているかのようだ。
どうあがいても通常のバーサーカーが唐突に始めるようなことではない。
そんなあまりにも奇妙な状況に、信也が逃げるのも忘れて呆気に取られていると。
「っし、勝った!」
「うわぁ!?」
突然バーサーカーが「言語」を発した。
それだけでなく、バーサーカーはふいに立ち上がると
「さて。すまなかったな、マスター。理性を取り戻すのにちょっとばかし手間取った。」
「バーサーカー!?しゃべれるのか?」
「まあな。」
驚く信也から軽く目をそらし、軽い舌打ちと共にバーサーカーは続ける。
「まったく、こんな狂気ひとつ自力で抑えこめない自分が腹立しくて仕方ねえ。……まあ、それはそれだ。サーヴァント、バーサーカー。真名をアシュバッターマン。召喚に応じ参上した。よろしく頼む。」
「佐山信也です。えっと、よろしくお願いします……?」
バーサーカーの語った真名。
マハーバーラタにてかの大英雄カルナに並ぶと称された、バラモン最強の戦士、アシュバッターマン。
それが、信也の召喚してしまった英霊の名だった。
彼と魔力経路の繋がる左手を閉じたり、裏返したり。
そうやって信也が英霊召喚の余韻に浸っていると。
「う……。」
不意に背後から弱々しいうめき声が聞こえた。
「そ、そうだ、兄貴はどうなった!」
バーサーカーが正気を取り戻してから役三分。
ここにきて信也はようやく頭から抜け落ちていた兄、真也のことを思い出した。
慌てて後ろを振り返ると、信也から少し離れたところに折り重なって倒れている二つの人影があった。
片方は言わずもがな、先ほどバーサーカーに蹴飛ばされ、意識を失っている真也だが、もう片方に関しては全く見覚えがない。
丈を詰めた青色の派手な和服に高下駄を履き、赤、青、黒の三色の髪をツインテールに結った若い女性がちょうど真也の下敷きになるようにしてのびていた。
「一応、気ぃ付けとけよ。サーヴァントだからな、それ。」
真也を助け起こそうと近寄ると、後ろからバーサーカーの声がかかる。
「え、この着物の人が?」
聖杯戦争では、よほどのことがない限り日本人のサーヴァントは召喚されることは無い。
真也の右腕の傷を調べながら半信半疑でバーサーカーに聞き返すと、バーサーカーもまた少し困惑したように答える。
「いや、どっちかっつ-と
召喚の反動で疲労困憊だった信也は、この後のことをよく覚えていない。
半分落ちかけのまぶたで真也の手当てがどの程度できたのかは定かではないが、結局、真也と一緒に和服のサーヴァントらしき人物も家に担ぎ込んだのは覚えている。
その間にバーサーカーとした会話も大半は忘れてしまったが、ともあれ、これが信也とバーサーカーの出会いだった。
……いつからバーサーカーが喋らないと錯覚していたッ!
……主人公鯖だし、しょうがないよね!
それではまた次回。