あるてまれアスカちゃん劇場´ 作:立花アスカの偽猫
◆『一人でおつかいできるかな?』◆
アスカ
「燦ちゃんは、子供の頃におつかいを頼まれたことってありますか?」
燦
「……そう言えば、ないかも」
アスカ
「そうなんですか? 子供を一人でおつかいに行かせるのは危険だ、という批判的な話も聞きますし。燦ちゃんもそんな感じだったのかな?」
燦
「まぁ、うん。……危険というよりは、危なっかしいだけど」
アスカ
「小さい頃の燦ちゃん、写真で見たことあるけど、すごく可愛らしかったからね。心配になる気持ち、分かる気がします」
燦
「アスカちゃんは子供の頃におつかいに行ったことあるんだよね? そのときって、どんな感じだったの?」
アスカ
「どうだったかな? 詳しくは覚えてないけど、……お恥ずかしながら、不安と寂しさからずっと泣いていたような気がします」
燦
「あぁー、そうだよね」
アスカ
「でも、お家に帰って褒められたときは、すごく嬉しくて。それと同時に誇らしくもあって、きっとあのときの経験がなければ今の私はなかったと思いますね」
燦
「……なんかちょっと羨ましいかも」
アスカ
「ふふっ、だったら、今からでも初めてのおつかいをしてみませんか?」
燦
「え? まぁ、アスカちゃんの頼みなら、おつかいくらいするけど。……なにか違くない?」
アスカ
「そうかな? でも、物は試しと言いますし」
燦
「う~ん、……一人で買い物はちょっと寂しいけど、行ってくるよ」
アスカ
「ありがとうございます! それでは急いでお買い物リストを用意するね。えっと、にんじん、じゃがいも、たまねぎ、お肉、ターメリック、ハラペーニョ、シナモン、カルダモン、パプリカ、コリアンダー……」
燦
「ちょ、ちょっと待って! なにそのラインナップ。難易度高過ぎだよね!」
アスカ
「え? でも、燦ちゃんは子供じゃないし、これくらいの難度じゃないと初めてのおつかいにならないよね?」
燦
「そ、そうかもだけど。……うぅ、後半の呪文みたいなの、見たことも聞いたこともないよ」
アスカ
「あは。呪文ではなくて、香辛料の名称ですよ。大丈夫です、ちゃんとメモしておきますから。燦ちゃんならできます!」
燦
「……うん、頑張ってみる」
アスカ
「はい、それでは行ってらっしゃい」
燦
「行ってきます。……はぁ、不安だなぁ。名前だけ分かっても、売り場が分からないし。店員さんに聞くのも、ね。ホントに大丈夫かなぁ、……ん?」
アスカ
「燦ちゃん、一人で大丈夫かな」チラッチラッ
燦
「……うん、なんか大丈夫な気がしてきた。よし、頑張るぞ!」
◆『猫すいとーよ?』◆
アスカ
「ん~っ、いいなぁー」
燦
「どうしたの?」
アスカ
「その、猫の動画を見ていたのですが、ちょっと羨ましいなぁって思いまして。例えばこの子とか、すごく可愛らしいですよね?」
燦
「あ、可愛い」
アスカ
「そうだよね! はぁ。私も飼ってみたいけど、お世話できるか自信がないし。なので、猫を飼っている人が時々だけど、羨ましく思うことがあるんだよね」
燦
「よかったら、私が猫の代わりになろうか?」
アスカ
「……いいの?」
燦
「私を誰だと思っているのさ。黒猫燦だよ。アスカちゃんのためなら、猫にだってなりきってみせるよ!」
アスカ
「で、では、そのっ、……昔から憧れていたことをしてもいいですか?」
燦
「もちろん。抱くなり撫でるなり好きにしていいよ」
アスカ
「本当にいいんですね? それじゃあ、……失礼しますね」
燦
「……えと、アスカちゃん。頭がこそばゆいんだけど」
アスカ
「すーはー。すーはぁ」
燦
「こっ、これはもしかして! 猫吸い?」
アスカ
「すぅーはぁー。……はむっ」
燦
「ぴゃっ!? み、耳は、だっあっ、んっ、はぁぅ!?」
アスカ
「……すーはー。あは、これ好きかも」
燦
「あああアスカちゃん! はい、終わり。猫タイム終わり!」
アスカ
「え、もうですか? 次はお腹を撫でてみたかったのに……」
燦
「うっ、……そんなしょんぼりした顔をされても、……されても。…………もぅ、ちょっとだけだよ」
アスカ
「はいっ!」
◆『それはちょっと笑えないよ』◆
アスカ
「う~ん、どうしようかな」
燦
「どうかしたの?」
アスカ
「そのっ、お恥ずかしながら急に欲しいものができまして。アルバイトでもしようかなって、求人情報サイトを見ていたんだけど。隙間時間にできるお仕事がなくて……」
燦
「へぇ、そうなんだ。……うん、確かにあまりいい募集がないね」
アスカ
「そうなんだよね。……はぁ、どうしようかな」
燦
「そうだ! 欲しいものリストを作って、みんなに買ってもらうっていうのはどうかな」
アスカ
「う~ん。でも自分で稼いだお金で買いたいものですし、それにちょっと申し訳ないかなって」
燦
「そういうものなのかなぁ。因みに何を買う予定なの?」
アスカ
「……笑いませんか?」
燦
「笑わないよ。約束する」
アスカ
「それなら、本当に笑わないでくださいね! えと、来月に発売される、その……」
燦
「来月発売の?」
アスカ
「燦ちゃんの公式グッズ、です」
燦
「うんうん。……へ?」
アスカ
「だ、だから。燦ちゃんの公式グッズが欲しいんです!」
燦
「え、えぇ!?」
アスカ
「ぐだっとぬいぐるみシリーズのくろねこしゃんに、公式Tシャツ、バスタオルも欲しいし、アクリルキーホルダーと、あとは……」
燦
「ちょ、ちょっと待って! え、公式グッズ!? 私、それ聞いてないんだけど!」
アスカ
「……え? で、でも運営公式つぶやいたーで告知していましたよ」
燦
「……ホントだ」
アスカ
「えっと、その……。メールとか、確認していますか?」
燦
「メール? ……あっ。一週間前に連絡来てたみたい」
アスカ
「……と、取り敢えず、どんなグッズがあるのか一緒に見ませんか?」
燦
「……そうする」
◆『ほらぁね』◆
燦
「ホラーは嫌だ。ホラーはいやだ。ホラーはイヤだ」
アスカ
「えっと、燦ちゃん? 先ほどから何やら呟いていますが、どうしたんですか?」
燦
「あ、あすかちゃ~ん。ホラーはいやだよぉ」
アスカ
「よしよし。よく分からないけど、私が付いているから大丈夫だよ」
燦
「うぅ~、ありがと。もぅ、誰だよ! あるてまホラー強化週間とかいうくそ企画を提案したの。夏が終わるっていうのにホラーとかありえないんだが!」
アスカ
「あぁ、そういうことでしたか。……因みにコラボですか?」
燦
「……九月になるまでに、一人で一回以上ホラー配信をしないといけないんだってさ。頭おかしいよね」
アスカ
「あはは……」
燦
「ねぇ、お願いアスカちゃん。一緒にホラーゲームしよう! 大丈夫、バレなきゃあとで怒られるだけだからさ!」
アスカ
「怒られることは確定なんですね。……お誘いは嬉しいのですが、やっぱり燦ちゃんのためにならないので、ごめんなさい」
燦
「そんなぁ」
アスカ
「その代わりと言ってはなんですが、怖くないホラーゲームを探すのをお手伝いしますね。だから、そんなに悲嘆しないでください。ね?」
燦
「……うん、ありがと」
アスカ
「そうと決まれば、善は急げと言いますし、ホラーゲームの候補を見繕いましょうか。……あ、これなんてどうですか? ポップでかわいいホラーゲーム。そのシュールさが逆に怖いと評判のぴ○んなんてどうかな?」
燦
「……他の人の配信で見て、普通に怖かったんだけど」
アスカ
「え、えと。それは……、そのっ。だ、大丈夫です! 燦ちゃんはやればできる子ですから。そうだ、配信に向けて一緒に特訓しましょう!」
燦
「特訓!? え、ちょっと。アスカちゃん!?」
アスカ
「まずは配信までに身体をホラーに慣れさせましょうか。大丈夫です。本番は無理ですが、特訓の間は私が傍にいるので、遠慮なく怖がってくださいね」
燦
「全然、大丈夫そうじゃないんだが!? ……ぴぃ!? だから、ホラーは無理なんだって! もうホラーはいやぁぁぁ!」
◆『先ほどのことは水に流しましょう』◆
コンコン
アスカ
「はい、どうぞ」
燦
「あ、アスカちゃん」
アスカ
「ふふっ、こんな夜更けにどうかしましたか?」
燦
「いっ、いや。そのっ。今日、ホラーゲームに付き合ってもらったから、アスカちゃんが怖くて眠れてないんじゃないかなー。って思ってさ」
アスカ
「それでわざわざ様子を見に来てくれたんですね。あは、ありがとうございます」
燦
「え? あっ、うん。そうなんだよ」
アスカ
「ん~っ。お恥ずかしながら、確かにちょっと一人で眠るのは心細くて、どうしようかなぁって思っていたところなんですよ。……燦ちゃんさえよければ、今夜は傍にいてくれませんか?」
燦
「うん、もちろん! ありがとー、アスカちゃん!」
アスカ
「ふふっ、ありがとうはこっちの台詞だよ。……あ、寝る前にお手洗い一緒に行く?」
燦
「……いく」
アスカ
「あは。はい、それじゃあ扉の前で待ってるので、燦ちゃんからお先にどうぞ」
燦
「ぜ、ぜったいそこに居てよ。約束だからね!」
アスカ
「もー、心配性だなぁ。そんなに不安なら、私も一緒に入ろっか?」
燦
「ぁ、それは、うぅ~、でも、…………うん」
アスカ
「そ、そうですよね。……え、燦ちゃん!? 今のは冗談で、……はあぅ」