怪人、悪の秘密結社が滅んだ世界にて。   作:バンバ

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 待たせたな!!!

 1つ、謝罪を。
 特殊タグ、利用をやめます。
 理由として、作者はiPhoneで投稿している為、どうしても使いにくく、また、特殊タグを利用した結果文字変換等に支障をきたす為です。
 この話が投稿でき次第、1話も編集します。

 そして2つ目の謝罪。
 ほぼ解説会と、若干の飯テロあります。

2020/12/13 作者の手元にPCが届いたため特殊タグ復活します、やったぜ。


2話

 頭部を覆うマイクに見えないこともない球体状の複眼。

 

 ガラス片めいた不揃いな牙を生やした鳥の口、傘の骨組みか、蜘蛛の脚かのように細く、それでいて硬質な1.5mはありそうな両腕は、肩、肘、手首がボールジョイント状になっていて大きな見た目の割に細かく動かせそう。

 

 干し肉のように乾いてしまっている上半身に背中には亀のような甲羅。

 

 太さや長さもまちまちな、木材の硬さとタコのようなしなやかさと吸盤を持つ、無数の触手の生える下半身。

 

 低い男性の声へ機械的なエコーやノイズを被せ、加えて無理やり絞り出したような金切り声。そのくせ妙に人間的に話すから、違和感が果てしない。

 

 いや、違うか。

 彼は被害者だ。人間だ。見た目こそ致命的だけど。間違いない。

 

 過去に相対してきたダイアークやその残党、洗脳を受けた怪人たちとは全く違う。

 

 奴らのようにダイアークに狂信的な忠義を誓って、欲望のままに悪辣を為す……そんな存在では、断じてない。

 

『ルビー。あまり思い詰めないでください。貴女は、過去に怪人を討ちました。しかし、それは仕方がなかった』

「うん、わかっては、いるんだけどね……」

 

 グリムの言う通りだ。でもね、グリム。

 いくら洗脳されていたからって、本当にどうしようもない怪人を討ったからって、無辜の人々に襲い掛かったからって。

 

『ありがとな、嬢ちゃん。アンタのおかげで、俺は──』

 

 ──家族を、手にかけずに済んだ。

 

 あんなにも家族を愛していた、改造されてしまった被害者を討った私は、どうしようもない人殺しなんだよグリム。

 

 

 揺らめく火に当たりながら待ちぼうけていると、這いずるような、木材を引きずるような音が聞こえてきた。

 

「待たせた。火の通った魚を食べるのは久しぶりだ」

「あ、おかえりなさい」

『お疲れ様でした、ミスター。火の準備は済ませてあります』

 

 全身を水浸しにし、触手の先に大振りに肥えた魚たちを串刺しに触手をくねらせ歩いてくる姿は、やはり人のそれには全く見えなくて少し身構えてしまう。

 しかし、同時に。

 

「ああ……本当に久しぶりだ」

 

 噛み締めるように、打ち震えるように堪えきれない歓喜の声を絞り出すその声は、どうしようもなく人のそれだった。

 

 なんだか、その様子がとても綺麗で、可愛らしくて、ギャップに笑ってしまう。

 

 こんなにも怖い見た目をしているのに、実体は正しく人のそれである。その事実がなんだか妙におかしくて。

 

「っふ……あ、ごめんなさい、なんだか可愛らしくて」

『肯定。ルビーの言う通りです』

「可愛い……この姿のどこかだ……?」

 

 心底困惑、動揺したような声。それもまあ、仕方ないかな。

 事実、彼の言う通りではある。私たちの言う可愛らしいは、外見から来るギャップ萌えを感じてのものだ。

 

「あ、脚は折ってきてないですよね?」

「それも大丈夫だ。オレが、いつもやっていたことが、環境破壊を引き起こしていたんだろう?」

 

 彼の発言に心底ホッとする。

 同時に、なんで説明をしたらいいのか困ってしまった。

 事実を事実のまま伝えるのは簡単だ。彼自身に悪気はなく、加えて洗脳処理を受けていない。生きる為に狩った命や、自然の恵みへの感謝の為にそれを成していた。

 

 ……結果的に、とんでもないことを引き起こしていたので総合的にアウトなのだけど。

 

「えーと、ですね。説明に移る前に、改めて自己紹介を。『異能連』所属の魔法使い、ルビーと言います」

『私はルビーのマジックデバイス、グリムです』

「オレの名前は青山竜馬。まあ、しがない元社畜だ。とりあえず、焼いてしまおう」

 

 そういうと彼、リョーマさんは近くに生えていた細い木の枝を折って、指先で削り串の形に成形してした。

 どうにも力強いだけでなく、よくよく見ると指の腹側が鋭利な刃物のようになっているらしい。

 

 ……間違っても大岩を削れるような力と鋭さを併せ持つその手を私に向けてこないことを願う。

 

 そのまま手慣れたように魚の腹を人差し指で切り裂いて、ワタを取り出し先ほどの串を魚に刺した。

 

「手慣れてますね。魚は久しぶりなのでは?」

「生では食べていたからね。こんなナリだし大丈夫かって自暴自棄になってたことがあったんだ。寄生虫のようなものに当たって、体調不良はまだ出ていないしね」

 

 「流石に生身の、いや、怪人でもなさそうな女の子に食べてもらうには火を通したほうがよさそうだと思っただけだよ」と朗らかに話す声色には、痛ましい程にコミュニケーションに飢えていそうな寂しさが見え隠れしていた。

 

 優しい人なのだろう。『自分が大丈夫だから、他の人もきっと大丈夫』と安直に行動しないあたり、しっかりしていると思う。

 

「皿と箸はあるが、使うかい? 見た目は悪いけど」

「あ、お願いします」

 

 いや待ってなんでそういうものがあるのだろうか。

 顔に出ていたのか、その返答は「寂しさを紛らわす暇つぶしに作ったんだ」と、割と切実な事情が見え隠れしていた。

 ……ごめんなさい。

 

 

ホクホクと湯気を上げる、姿そのままに焼かれた魚が石皿の上に鎮座している。

 サクサクと焼き上がった表皮を箸で突けば、中から溢れ出る脂の混ざった旨味のエキス。

 少し身をほぐして、箸で持ち上げれば、ホロホロと崩れ落ちてしまいそうなほど柔らかい。

 

『……このままだとルビーが説明を放棄しそうなので代わりに私が、今回この無人島を訪れた経緯を解説します。

 事の発端は、我々『異能連』当てに入った情報です。1、2年程前からメガロドンもかくやと言わんばかりのサイズの巨大サメたちの襲撃、突発的な大波や暴風によって、多くの漁船が沈没・座礁を繰り返している海域がある、と』

「……既に環境被害なんて目じゃない事態が起こっていないか?」

 

 慌てて口に運べば、まず口を支配する濃い脂っ気。微かに甘味を含んだそれだけで十分に美味しいそれについで、脂を押し流すほどの強い旨味に、表皮に残っていた海水由来の塩が譲らず自己主張して、口の中で混ざり合う。

 

『我々『異能連』は所属する魔法使いルビーを派遣する形で、状況把握、究明に取り組みました。ルビーはそういった調査や研究に長ずる魔法使いである為です。

 調査の結果、この海域はこの島を中心に異界化、つまり大量の魔力に満ち溢れ、それによりこの海域一帯がある種生命のように活動していると発覚しました。

 脳をこの島、体内をめぐる血液の白血球がサメたちと表せば良いでしょうか』

「……ふむ」

 

それはあまりにも強く、瞬きの間に流れてしまうも、1つの幸せの形だった。

 

 日本人に生まれてきて良かったと思うと共に、ご飯がないことが悔やまれる。

 

『ミスターの察しの通りです。貴方の怪人としての能力によって得た能力、それは栄養を撒くこともできましたが、本質ではありません。周囲に大量の魔力を散布する効果。こちらがメインでした。

 更に言えば、その魔力には依存性を誘発するものがありました』

「……つまり、ここらの海の生き物たちを薬漬けにした挙句、この島近辺を怪物サイズのサメが泳ぎ回るような環境に変えてしまった、と?」

 

 既に1匹食べ終わってしまって、2匹目を食べているけど、これは最早麻薬か何かではないだろうか。

 ……あながち間違いでもなさそうなのが辛い。

 

「お魚、ご馳走様でした。……それだけではありません」

『ルビー……美味しかったのはわかりました。ですが、流石に説明は果たすべきです

「ごめんって……」

 

 リョーマさんの言っていた薬漬けという表現は、これ以上なく正確な表現だ。

 何せ、込められた魔力の性質からして本来なら、『彼が怪人として動いていたなら』もっと悪辣な、全人類規模での被害になっていた可能性が極めて高い。

 

 この魔力が与える効果は、至極単純。

 『その魔力の持ち主への崇拝心を抱かせる事』

 『その魔力の持ち主への絶対服従』

 文字通り人の心を変えてしまう、麻薬のそれ。

 

「リョーマさん、生物濃縮って知ってます?」

「生物濃縮? 確か、生き物を食べたりするうちに、なんらかのものが体に残っていく現象だったか」

「それですね、なんなら、食物連鎖の上の方の生き物になればなるほど、その濃縮はより濃いものとなります」

 

 本来の用途を考えるなら、1、2年前から起きていた異変は起こらないはずの物だ。

 ただ魔力を散布していればそれで良かった。それだけで、世界はゆっくりと確実に、致命的な事態に陥る筈だった。

 

 そうならなかったのは、ひとえに彼が洗脳を受ける前に研究所から脱出していたから。

 

 結局、本質的な力は変わらずとも、恵みや命への感謝を忘れていなかった彼の性格上、無意識的にその魔力を栄養として散布する方向にシフトしていた。その結果が栄養のスープと呼べるほどのリソースに溢れたこの島一帯の海域。そこまでで被害は収まっていた。

 

 それが私の見解だ。

 無意識的にその能力を発揮していたなら、サメたちがこの海域に近づく漁船を襲っていたことも、何となく説明がつく。

 

 リョーマさんが、恐らく恐れていたんだ。

 当時の魔法技術協会、ヒーロー連盟、今の異能連を。ダイアークを。

 そしてたぶん、この世のすべての人を。

 

 見られたくない、知られたくない。恐らくはそういった風に、無意識的に他者の拒絶を願い、それを汲み取った海の生き物たちはこぞって侵入者を撃退した。

 

 ……想定外だったのは、あまりに過剰に供給された魔力の影響で、この島そのものが弱いながらに意思を持ち、リョーマさんを守ろうと天候や波に影響を与えていた事だ。正直、そのせいで波に飲まれてサメの餌になりそうになったのは忘れたい。

 

 過去にダイアークの研究資料を見た際、脱走したとされる怪人の資料に目を通したことがある。

 

 その怪人を用いて、生物濃縮を利用し、ゆっくりと時間をかけて人類を洗脳し、争わせ、魔法技術協会、ヒーロー連盟それぞれが疲弊しているその隙にダイアークの独り勝ちを狙う。

 

「……あれ、これってオレ、洗脳なんかされてた日には超ヤバイ怪人だったんじゃ……」

『その通りです』

「リョーマさんの研究所からの脱出は英断だったと私は思います」

 

 両手を頭に当てて、困惑と焦りを見せるリョーマさんに、善良な人で助かったと思わざるを得ない。

 これでもし、悪意ある人であったり、自分の能力の本質に気がついている人であれば、怪人でなくとももっと危ないところだった。

 

 開発コードネームは『モノセイズム』

 大それたよく考えられた名前だと感心してしまった。

 

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