|彡サッ!
|・ω・*)チラ
|彡サッ!
タイヘンオマタセシマシタ
一部表現を追記
◆
【寂しいなあ】
こえがする。さみしそうだ。
【見られたくないなあ】
こえがする。こわがっているみたい。
【でも、また会いたいなあ】
こえがする。あきらめきれないのかな。
【……いや、身勝手だよな。最後に会ったのだって、もう2年以上だよ】
こえがする。あきらめたみたい。
【音信不通で、死んだと思われてたとしても不思議じゃない。それに……こんな外見だしな】
こえがする。ないているのかな。
【ダイアークの手先だと思われて、家族や知り合い、友達らが余計な差別とかに巻き込まれるくらいなら、会わないほうがいいよな……】
こえがする。くやしそうだ。
【でも、せめて。……母さん、父さん……】
こえがきえた。
どうして?
⬛︎にはわからない。
わからないけど。とてもとてもとても、いやだった。
だから、なかないで。あきらめないで。さみしがらないで。
⬛︎が、てをかすから。
あなたがいいひとなのは、⬛︎がしってるから。
きらきらひかる、ほしみたいなねがいは、まちがいじゃないから。
だから、だから、だから!
なかないで! あきらめないで! さみしがらないで!
⬛︎は、あなたをたすけるために、いるんだから!
◆
「もうダメだ……お終いだぁ……」
「リョーマさん落ち着いて!! 大丈夫です!! まだ大丈夫です!!」
『ルビー。あなたもかなり焦りがみえます。一度深呼吸を。ほら、ヒッヒッフー』
「それは妊婦さんの!! ノー・ラマーズ!!! プリーズ・カーム!!!!」
それは絶叫のように俺たちに冷静さを求めている君も、人の事は言えないんじゃないんだろうか。
全方位視野に意識を飛ばして意識の片隅で虚無って冷静になった結果、現実と戦わざるを得なくなり内心で何処か他人事のようなツッコミを飛ばしていた。
いやだって。考えてほしい。目が覚めた直後から『やけに地鳴りや地震が頻発してるな』なんて思っていたら冷や汗ダラッダラのルビーが、それはもう冷静さの欠片もないような顔をして言うのだ。
『リョーマさん!!!! どうしましょう!!!』
『全く伝わらんけど、とりあえずやべーってことだけはわかった!』
そこから解説を受けたわけだけど。
この地震の理由を懇切丁寧に説明された時の、俺が感じた胃の痛みは計り知れないものだった。
──俺が住んでいたこの無人島そのものが、生き物になっているってどういう事だよ。
いや、話は事前にルビーたちから聞いていた。島全域、ましてや周りの海にまで影響を及ぼす質・量共に問題的な魔力だ。
指揮性を持たせるためとは言え、最後の一押しは自分でやった事。だけどまあ、規模としてここまでの大きい存在が使い魔になるとか誰が思うよ……。擬人化とか言ってたやん……。
もっとこう、少年少女味ある感じのエルフっぽいのが来ると思ってたんだよ俺ぁ……。
…………過度な緊張か、或いは別の何かなのか。バクバクと音を猛り鳴らす心臓の鼓動が、一周回って頭を冷静にさせてくれた。
「よし。ルビー、グリム。手を貸して欲しい」
「……リョーマさん、凄いですね。こんな状況なのに、すぐ冷静になって」
「焦っても仕方ないって割り切れるだけさ。社畜の精神衛生の保身術とも言う。……ここ、笑うところだよ?」
『懐疑。何処に笑える要素が?』
「まっっっっったく笑えませんからねそれ!?」
「よし、とりあえず、2人とも。情報を俺に下さい」
◆
『それ』は、元々はただの島だった。
無人島。日本の経済水域内に無数に存在する内の1つ。
ただ少し大きく、自然豊かで、ちょっとした山があって、目敏い者が見れば観光ツアーでも考えつきそうな程度には状態がいい。そんな島。
そんな島に、流れ着いた怪人が影響を与えた。
怪人が島の恵みを食べる度、感謝の形として自らの脚を残した。その行いを、怪人は続けた。
気晴らしの一環だったのだろう。育ちの良さもあったのかもしれない。そこに悪意は全くなかったのだ。
やがて、残された脚から溢れた魔力は島中を巡り、その外の海まで魔力が侵食し、やがて島は、自我を得た。
それは弱い弱い、何かの影響で消えてしまう程度には脆弱なそれだったけど。
魔力に乗せられた「ありがとう」の思いが嬉しくて、だから守ろうと決めた。
いくら使っても余りある魔力を他の生き物がより良く成長する為の栄養に変え。外から島に近付こうとする第三者を排除する為に天候や波、凶暴な魚を誘導する等々、様々な術を得た。
そして、島は転換期を得た。
これまで以上に、怪人が魔力を与えてきたのだ。
その魔力の意図には、島は気が付いていた。本来は排除するつもりだった、島を訪れた来訪者の話を聞いていたのは、怪人だけではなかったのだから。
島はそこで、魔力と共に流れた怪人の、『ありがとう』の思いで隠されていた諦念を、寂寥を……諦め切れない、諦めたくない、それでもどうしようもない絶望感を、味わってしまった。
だけど、共に。そんな奥の奥、底の底に封じられている家族への想いを、確かに聞き届けていた。
島は、決めた。幼い子供の我が儘にも、偏屈で頑固な年寄りの意固地にも似た決意だ。
だから、躊躇わない。
島は、自分の形を変える事にした。
海を泳ぎながら、島を背負える形に。
木々を、土を、岩を、塩を織り混ぜて。大海原を泳げる脚と、大地を踏みしめられる脚を4つずつ。
外の様子がより分かるように、一対の眼を持つ頭を作った。
そして、より怪人が姿を隠しやすいように、島自体をより大きくした。
この時点で、来訪者の方が気が付いて島へ干渉を試みた。
が、島はこれを無視し、そして、変生した。
◆
「はっ……はっ……やっべ脚つりそう!!」
「触手の下半身でもつるとかあるんですか!? ちょっと後で詳しく聞かせてください!」
「そんなこと言ってる余裕、あるなら! 俺も! 乗せて!!」
『申し訳ありません。ミスター。重量オーバーです』
「だよねー!!!! はっ! はあっ!! あと、何キロ!?」
『既に600mは切っています』
触手をこれ以上なく、忙しなく動かして前へ前へと這い進む。無いはずの脹脛や太腿が悲鳴を上げているような気がする。それも2本以上。精神的な苦行はデスマーチとかで慣れてたけど、これはキツイ。運動不足な状態でかつ、準備運動を怠った結果だけどそんな事は今気にしていられない。
見慣れなくなった、鬱蒼と茂る木々の隙間を縫うように、土を穿ちながら目的地目掛けて一直線。
目指すのは、使い魔となった島の『頭』
ルビーやグリムの暫定的な考察を聞き、とりあえずやるべき事を決めた。
と、いうのも。グリムの言葉の通りのイメージであれば、俺の使い魔は、俺の地元を目指して遊泳しているという。
……最低でも、現状10k ㎡はある存在がそんな場所に突っ込んだりしたら大変な事になるだろう。
それは困る。非常に困る。
木々の隙間を抜けて、記憶の中に似た配置で岩礁が並んでいた。
その、やや先。島そのものから伸びるように、生物的なそれが見えた。
無理やり引き伸ばした蔦や木々を一纏めにして、亀か蛇にも似た頭を形作っていた。
目にあたるところは空洞で何もない。それが逆に迫力を増している。
ましてやそれ単体で、縦に10mはありそうなものだから思わず怯んでしまう。
それでも、脚は止められない。
「あれだな!?」
「そうです! あれがこの島の意識に、1番近いもの!」
「で、俺はあの頭に根を突き立てればいいんだな!?」
『その通りです。折らずに、そのまま』
俺は今回、自分の改造された意図に沿う形で魔力を使う。洗脳するつもりはないが、それでも不安で不安で仕方がない。
まあそもそもからして、うまくいかないとどうしようもないのだが。
首を構成する植物たちに脚を引っ掛け、突き刺し、するりするりと駆け上がる。痛覚はないのか、特に振り落とされるような事もなく、やっと使い魔の頭に辿り着いた。
「はーっ……! はーっ……! …………よし、ルビー、グリム、いくぞー!」
「はい!」
『補佐は任せてください』
一声掛けて、触手を2本、草木で作られた頭へと突き立てる。
それでも島は動きを止めない。ここまでは、予定通り。
だから、言葉にする。
「【俺と、話を、してくれ!】」
そして、頭に雪崩れ込んでくるような情報が────
●『島亀による本土襲撃未遂事件』について
・本年四月十日頃、怪人『Monotheism』(以下Aとする)が意図せぬ形で変生させた無人島による本土襲撃未遂事件。
・異能連管理下の魔法使い『ルビー』及びそのサポートデバイス『グリム』の指示の下、魔力を島に与え続けた結果、全長約6k㎡の島そのものが巨大化し、約10k㎡まで到達。魔獣に変生。暫定として個体名『島亀』とする。
・その後島亀は本土を目指し遊泳、、接近し、A、ルビーによる説得により鎮静化に成功。現在は太平洋内を回遊している。
・Aは今後島亀の背の上で過ごしながら、暫定的に異能連の監視下に置かれるものとする。
【報告書に付箋がいくつも貼られている】
【ルビーの直筆メモのようだ】
知っての通り、魔獣は創造主である魔法使いに基本として絶対服従です。ある種野生動物の刷り込みに近いものがあります。自分を生み出した魔力と同じ魔力を持つ者を親、創造主と判別する。
しかし、今回のような例は『本魔獣の持つ魔力があまりにも膨大だったこと』『魔獣として生まれた直後故の無垢さ』『竜馬さん自身の無意識化の願望を汲み取った』等々の様々な要因が重なった為だと思われます。
あと、触れ合った個人としては『善良で、ちょっと抜けてる人』『強大な力を持ってしまっただけの被害者』です。それ以上もそれ以下もありません。
この報告書に、怪人として名付けられる予定だったコードネームで、彼を示す事そのものに、忌避感が沸く程度には。