ラーメンすすりながら魔王城攻略してたら勇者パーティから追放された件について。
おかしい、なにを間違ったというのだろう。
(強いていうなら、存在ぃ、ですかねぇ)
栄光とかそんなこといってられないかんじに程良く煮込まれたチャーシューのような柔らかさで瞬く間に壊滅した国軍に代わって選抜された才能ある若者たち。
実際異世界から呼び出されたかんじのメンバーと、国が用意した将来性しかないかんじのメンバー、そして道中でやらかした結果仲間になったかんじの味噌カレー牛乳ラーメンみたいな元仲間たちだが、そこまで愚かな存在だったとは。
(現実にラーメン啜りながら生死のかかった戦いに参加してる変人にそこまでいわれる筋合いはないのでは?)
いやしかしだ、ラーメン支援魔法の使い手としてはラーメン箸がなければ魔法が使えないのだが?
(そもそもあなた、支援魔法とか使ってましたっけ?というか世界樹の枝をそんな使い捨ての割り箸みたいに加工したのはそのためでしたか)
ほら、麺が伸びないようにする時間魔法とか、ラーメンスープが冷めないようにする分子魔法とか、ラーメン皿が割れないようにする物理魔法とか、ラーメンのハネた汁から身を守るための障壁魔法とか、ラーメンがおいしそうにみえるように周辺の色温度を調整する幻惑魔法とか、ラーメンの器を不意に取り落としたときに使う重力魔法とか。
(それ支援魔法やない、超レア属性の最高位魔法や)
それを攻撃に使うなんてとんでもない!?
(ラーメン食べるためにどれだけこだわるんだよこの狂人)
仕方ないだろ、私は極細ちぢれ麺流の正統な師範代だぞ。
(1分で茹で上がるからって伸びやすい麺を戦闘中に食べるために人類最高峰の魔法を軽々しく扱わないでほしいんだけどてかそれが理由になるとでも)
違うね、間違っているぞ。
私はラーメンに対して軽々しく向き合ったことはない。
全身全霊でこの世の全てに感謝を捧げながらラーメンを啜っているのだ。
このナルトの陰陽を指し示す美しい螺旋のように自明だろう。
(数十万の大軍勢が蠢いていた戦場の中心で食べてなきゃ私も信じたかもしれないんだけどね)
そういえばあらかた片付いたな、ちょうど食べ終わったことだし確かめておくとするか。
「さて、貴様がこの軍勢の首領であるか」
「きさまぁ!なんなのだそのふざけた容貌とこの惨状はぁ!我が第一魔王軍の精鋭だぞ!それがどうしてラーメン啜ってるだけの貴様のような訳の分からん存在に壊滅させられるのだ!」
「さて、チャーシュー軍の決死の陽動作戦を打ち破ってきたあたりとろけた脂身よりは固いらしいが、まあその疲れでも出たのではないか?そんなことはどうでもいいのだ、我が問に答えよ」
「ありえん、あの国軍は一切の手応えを感じなかった、つまり我が軍はいっさい消耗していなかった!我々は魔王様を一秒でも早くお助けせねばならない!それなのにもはや組織的な抵抗など不可能なレベルで損害を被っている。たった一人によってだ!なぜだ!」
「太麺だと茹でてもラーメンの芯が残っているように目に見えぬものは募っていくものさ」
「くっ、いやまあ現実がこうあるのだから受け入れるしかないか。で、わざわざこの貴様が有利な状態で対話を要するような問いとはなんだ?」
「貴様、ラーメンスープの好みは何だ」
「もうやだこの変人」
「疾く答えよ」
「このオークジェネラルである我が選ぶものなど決まっていよう」
「ほう、そうか」
「それはな、野菜豆系ヘルシースープだ!」
「はぁ、そうか、では死ね」
「まてまてまてまて!?いきなり殺意高過ぎだろうきさま!?」
「悪いがヘルシー系と豚骨系とこってり系は抹殺対象と決めているんだ」
「ふざけろ!?ラーメンの好みは人それぞれだろう!」
「ほら、よく言うだろう食い物の恨みは末代までって」
「末代どころか絶滅させる気かきさま!?」
「魔王城なるラーメン店主にも好みを訪ねておきたかったが、まあもうそれはよい、じき死ぬことになるだろうから」
「はっ、そういうことかきさま、勇者パーティーのものだったか!くっ、申し訳ありません魔王様、敵はこれほどに周到な計略を弄していたことに気付けなかった。まさかあれだけの陽動に更に足止めまで用意しているなどとっ!」
「いやまあ、すでに勇者パーティなど追放になったので私は勇者ではないぞ?」
「まさか、この魔王城への街道の中でも戦略的な要地で合間見えたのは偶然だと?」
「ラーメンの湯切りで飛び散る飛沫のように予想もつかぬことであったな」
「はは、ははは、そうか、そうだったか、これほどの理不尽か。これほどの不条理なのか、我々が相対したものは」
「どうかしたか?ラーメン分の不足で禁断症状でもでたか?」
「でる訳ないだろう、さあ、殺せ」
「おお、潔いな、では」
「ああ、魔王様、もし叶うならまたあなたとともに、あの煮干しラーメンを食べたかった」
「おい、質問が増えた」
「なんだ、手短に頼む」
「魔王はまさか煮干し派か?」
「そうだが?あの御方は部下を行きつけの煮干しラーメンの店に連れて行くのが趣味なのだ。まさかきさま、煮干し派は直接抹殺しなければ気が済まないのか?」
「気が変わった」
「は?」
「煮干しラーメンを愛するものに悪いものはいない」
「おいまて、何の気が変わった?」
「おい、お前魔王城を迷わず案内できるか?」
「まさか人類を裏切るというのか?ラーメンの好みが一致しただけで?」
「それがどうした味噌派の国王より煮干し派の魔王を選ぶのは常識だろう!?」
「な、なんて透き通った目をしやがる、まるで塩ラーメンのスープのようだ」
「ふっ、褒めるな。それで、案内できるのか?」
「当たり前だ、魔王軍近衛の我々が城を防衛できない訳がない、つまり案内はできる」
「では」
「わかった、あの御方を助けてくれるってんなら協力する」
「勘違いするなよ、煮干し派の同志を助けるだけだ、それが魔王だろうが神だろうが興味はない」
「それはそれで頼もしい話だぜ、それじゃ、いこうか兄弟」
「ああ、まだ見ぬ煮干しの同志よ、いざ汝を救援せん」
「「ラーメン!タベルヤ!」」
なお()内で会話しているのはラーメンの妖精(比較的常識と分別のある女神)です。