スターダストクルセイダース~俺のスタンドがイカれてる件について~ 作:四五茶
――ドサッ……
空条承太郎と花京院典明は今まさに決着をつけんとしようとした時、突如、保健室の天井から落ちてきたのは、恐らくではあるが20代後半の男だった。その男の身なりは、20代後半にしてみれば、明らかに若作りをしているというべきか、全ての指に指輪が嵌められ、更には当然の如く悪趣味な百足のような形のゴツイ黒いブレスレットが付けられている。真紅の革ジャンに、同じ色のジーンズを着用するその男は、喩えるならばどこかのバンドのヴォーカルのような感じというべきか。
「ジョ、ジョジョ! き、貴様ぁ! 仲間を隠していたのか!」
「……やれやれだぜ。学ランしてない時点で俺の知り合いじゃねぇな。が、そんなことはどうでもいい。この空条承太郎はいわゆる不良のレッテルを貼られている。ケンカの相手を必要以上にぶちのめ――」
承太郎は花京院に今からブチのめすことを宣言しようとした、その時。何と花京院は、何の躊躇もなくその男の口の中に忍ばせていたのだ。ズルズルとその男を自分の近くにまで引き寄せた花京院は勝ち誇ったかのよに、承太郎に挑発をするかの如く、左耳に手を当てながらもう一度同じ台詞を吐くように促した。
「て、てめぇ……!」
「ジョジョぉ~? これはいい身代わりだなぁ~? 私のハイエロファントグリーンは接近戦は不向きなスタンドではあるが、この男を盾にし、再びエメラルドスプラッシュをお見舞いするだけでなく――」
ハイエロファントグリーンは承太郎が戸惑った瞬間に四方八方に触手を伸ばし、なんと承太郎の周囲に蜘蛛の巣状の罠を張り巡らせてしまったのだ。承太郎は今や囚われの蝶の如く身動きが取れない状態だと花京院は確信し、承太郎を再度挑発する。
「これはハイエロファントグリーンの結界だ! その結界に触れてみろ! エメラルドスプラッシュが貴様を襲う! フハハハハハ! 私は実に『運』がいい! この男が誰か分からんが――っ!?」
突如、花京院がもがき苦しむ。承太郎は何事かと思った時、花京院の首にある違和感がハッキリと見えたのだ。まるで絞首刑を執行されてるかの如く、漆黒の鎖が何重にも巻かれ、ゆっくりと花京院が天井に吊るされていく。「ばがな……」と言いながら、花京院は自分の首に巻かれた鎖を解くために、両手で鎖を掴むも、徐々に鎖が太くなり、その太さは承太郎の腕くらいまで達していた。
「っ!? コイツはヤバい! 花京院! てめぇをブチのめす前に、てめぇを助けなきゃいけなくなったぜ。やれやれだぜ……」
ハイエロファントグリーンが煙となって消えた瞬間、承太郎は花京院を助けるためにスタンドを動かし、花京院の首から鎖を解こうとする。が、承太郎のスタンドですら、なんとか鎖を解くのに精一杯の力を持つ鎖に承太郎は戸惑いつつ、この鎖がスタンドであることを承太郎は察した。そしてスタンドを繰り出しているのが誰か自ずと分かり、まだ気を失っている男の腹を思いっきり蹴り、無理矢理起こさせた。
「おい! てめぇのスタンドを何とかしろ! やれやれだぜ……」
「っ……。ここは……?」
「そんなことはどうでもいい! スタンドを何とかしろって言ったんだぜ? 俺の冷や汗が分からないのか? あぁん!?」
「スタ……ンド……?」
その瞬間、承太郎は最悪な事態であることを悟ってしまった。
「やれやれだぜ……。てめぇには何の恨みもないが再起不能になってもらうぜ?」
「――は?」
「オラオラオラァ!」
承太郎はすかさずスタンドで男に攻撃を仕掛けた瞬間、その男を守るかの如くスタンドが男の身を庇った。が、結果的に言えば花京院を解放できたことになるのだが、その男のスタンドの敵意は今度は承太郎に向いていることが分かる。
「攻撃スルトイウコトハ、排除シテモイインダヨナァ?」
「こ、このスタンド……。自分の意思があるのか?」
そのスタンドの像は、無数の漆黒の鎖が人型を象っているかのようであり、禍々しい真紅の目が特徴的だ。大きく裂けた口から涎を垂らし、それはさながら飢えた狼かのような感じというべきか。自分のスタンドよりも一回り大きい力強い象に、同じタイプのスタンドであると承太郎はすぐに悟ったのだが――。
「――は? な、何だこの化け物!? うわぁ……、アメコミの敵役にいそうというべきか、クトゥルフ神話の神話生物というべきか――」
「アメコミナンカト同ジニスルンジャネェ、ソレヨリコイツヲ排除シテモイインダヨナァ?」
「い、いやいや! お、お前何者だよ! だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! 今何時だ!? 会社行かなきゃヤベェだろうが!」
「遅刻確定ダ。諦メロ。ソンナコトヨリ排除シテモ――」
「るせぇ! というか何で学校にいるんだよ! それにこの格好は何なんだ! 俺は昨日クマちゃんのパジャマで寝てただろうが!」
その男とスタンドはまるでそこでコントのようにボケとツッコミを始めだした。「やれやれだぜ……」と言いつつ、承太郎は花京院を抱きかかえ、その場を後にしたのであった。