スターダストクルセイダース~俺のスタンドがイカれてる件について~ 作:四五茶
「だ、大丈夫ですか!? だ、誰か! すぐに――」
ミレイは自分のスタンドを呼び戻し、目の前の看護師を狂乱状態にさせ、待合室にいた老人の首を絞め始めた。それをすかさず周りのスタッフが止めようとするが、ここでパープル・スケアクロウの恐るべき能力が発動。それは『狂乱状態の対象を無力化しようとした時に、狂乱状態を感染させる』というものだ。結果、待合室は地獄絵図の如く、パニック映画の世界に陥っていた。
「ナーミ、逃げるわよ……。だ、大丈夫……! 逃げきってみせるから!」
「……ゴハッ。……だ、駄目……。わ、私は無理……。ちょ、調子に乗ったわね……」
既に全身の骨にひびが入っているナーミは意識朦朧としながら、ミレイに自分を置いて逃げろと説得を始めた。彼女のスタンド――レッド・アイと呼ばれる充血した人間の目を模した蜘蛛のようなスタンドの能力は、『対象の視力を奪い、その対象が見える風景を共有し、支配できる』というもの。元々非戦闘タイプのスタンドである彼女の能力では、大輔に接近しすぎたのだ。
「だ、大丈夫! 私達なら――」
「き、聞いて……。ディオ様の忠告を無視した私達は……、と、当然の『結果』だったの……。で、でも……。ミレイ、あ、貴女なら……。貴女だけなら……、に、逃げきれる……。あっちを見て……」
ナーミが指差した方角を見ると、そこには一台のタクシーが駐車していた。そのタクシーの運転手の目を見ると、ナーミのスタンドが取り憑いており、運転手がミレイに向かって手招きをしている。ミレイはナーミが何を訴えてるのか悟り、ナーミの体をその場で置き去りにし、タクシーに向かって走り出した。
「……そ、それで……。いい……。それが……、ベスト……。私が……逃がす……」
ナーミは血を吐きながら、天井に向かって微笑む。自分達は失敗したが、大輔が生きているという情報をディオに伝えれば、彼女達の『勝利』なのだ。そのためならば、自分がここで殉教者のように死ぬのは名誉ある死、そのもの。
「……ぬ、ぬふふ♪ 『勝利』……は、目の前――」
「ククク……。『勝利』が目の前だと? てめぇらに『勝利』はねぇよ、あぁん! このダボスケガぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
その無常なる声を聞いた瞬間、ナーミはその声の主に向かって唾を吐きかけ、「バーカ」と言い挑発した。そして中指を立てつつ、自分は死んでも悔いはないことをその声の主に悟らせたのであった。
※
――バシャン!
ミレイが乗っていたタクシーが急にアクセルを飛ばしながら、川の中へと落下した。すぐに窓を開け、なんとかミレイは川を泳ぎながら車内から逃げ出すことに成功したが、それが意味することを自ずと理解していた。
「……あの馬鹿! 本当に調子に乗るからよ! 私だけならば勝てたというのに……!」
今は泣いている暇はない、大至急ディオに大輔が生きているという情報を伝えねばなるまい。彼女が生まれ持っての幸運の持ち主なのか、目の前に公衆電話がある。距離にしてほんの数十メートル程度であり、しかも誰もしようしていない。ミレイは急ぎその公衆電話に向け走り出すが――。
――ビュン!
全てを切り裂くような突風がミレイの横を通り過ぎ、目の前に鎖で出来た筋肉隆々の男がミレイを見下していた。「俺のことをちゃんと事前に調べたのか?」という意味がミレイはそこで実感し、このスタンドが大輔のスタンドであることを自ずと悟るミレイ。
「女。貴様ハヤリスギタノダ。コノワムウガ、堂々ト貴様ヲ倒シテヤロウ、カカッテクルガイイ」
「ハァ……、ハァ……! ど、堂々とですって!? に、にひひ……! ひははははは!」
ミレイはパープル・スケアクロウを出した瞬間、なんとミレイは一瞬にして地面に伏していたのだ。何が起こったかすら理解できないミレイであったが、自分の腹部がいつの間にか空洞になっていたのに気づく。多量の血が流れるが、不思議と痛みはなかった。
「……女ヲ殺スノハ趣味デハナイ。ダガ、貴様ハヤリスギタ。無関係ナ人間ドモヲ巻キ添エニシタ罪ヲ背負イナガラ死ヌガイイ。……セメテモノ情ケダ、痛ミヲ感ジズ死ネ」
「な、何を……し、したの?」
「タダ殴ッタ、ソレダケだ」
鎖で出来た男はミレイを無視し、ゆっくりとその場から去って行く。それがミレイにとって唯一の希望というべきか、既に本体の元に戻ったのを確認し、ミレイはゆっくりと公衆電話へ向かって這って行く。誰もミレイを助けることなく、ただどうなるかを見守る無情な人々。だがそれでいい、彼女は『勝利』に向かって目的地に向かおうとしているのだ。
「……も、もう少し……。あと……もう少――」
「ヒーハー! 見ツケタゼ! コノビッチ! 安心シロ! 徹底的ニ排除シテヤルカラヨォ~? 神砂嵐デバラバラニシテヤルゼェ~! 排除開始ィィィィィィィィィィ!」
現実とは無情なものである。ミレイが宙に高らかに放り投げられ、そのまま巨大な竜巻を全身に浴びながら彼女は再起不能となった。その竜巻を満足そうに見る男は、狂ったように笑いながらその場を後にするのであった。
スタンド名:レッド・アイ
本体:ナーミ・ホロロ
破壊力:E
スピード:B
射程距離:A
持続力:A
精密動作性:E
成長性:C
【概要】
充血した人間の目を模した蜘蛛のようなスタンド。
能力は『対象の視力を奪い、その対象が見える風景を共有し、対象を支配できる』というもの。
視力を奪ってしまえば、相手を意のままに支配できるという能力であり、スタンド能力がない一般人からすれば、彼女の前ではただの操り人形と化す。また視力を奪った対象は失明状態になるが、ナーミ本人はそんなこと気にせずスタンド能力を行使してきた。
但し、スタンド自体は人間の目程度のサイズしかないので、捕まえられたら逃げる術がない。そのためスタープラチナなどの近距離パワー型との相性は最悪。
大輔との戦闘の敗因は言わずもがな、あまりにも近づきすぎたため。ミレイの敗因を作ったと言っても過言ではないだろう。