スターダストクルセイダース~俺のスタンドがイカれてる件について~ 作:四五茶
この停止した時間の中で動けるのは承太郎と大輔のみ。承太郎は改めて大輔の『成長』ぶりに驚かされたが、もし大輔がこの止まった時間を自由に動けなければ、ほんのちょっぴりヤバい状況だったのではないかと頭に過るがどうでもよい。ただ事務的に目の前にいるディオをどう処理しようか、それを考えるだけでいい。
「……動けねえのに背後から近づかれる気分ってのは、例えると水の中に1分しか潜っていられない男が、限界1分めにやっと水面で呼吸しようとした瞬間――」
承太郎の右手がディオの左肩を強く握りしめる。その様子を大輔は腹を抱えながらディオを嘲笑い、ディオの目の前で笑いこける始末。
「さらに水中に引きずり込まれる気分に似てるってのは……、どうかな? まぁてめぇの目の前の奴は例外だがな」
(じょ……、承太郎……! お、おのれ……!)
「しかしてめぇの場合、全然可哀想とは思わん。オラァ!」
スタープラチナがディオの脚をへし折るぐらいのローキックを浴びせ、そして――。
「――時は動き始めた」
そのまま思いっきり大輔の方に吹き飛ばされるディオであるが、まるでサッカーのパスのやり取りでもするかの如く大輔もまたディオを蹴り飛ばす。再び承太郎の目の前に戻されたディオであったが、承太郎は冷徹な眼差しでディオを見下し、死刑宣告を宣言した。
「お前に対する慈悲の気持ちは全くねえ、てめぇを可哀想とは全く思わねぇ! ……しかし、このままおめぇをなぶって始末するってやり方は、俺自身の心に後味のよくねえものを残すぜ。その脚が治癒するのに何秒かかる? 3秒か、4秒か? 治ったと同時にスタープラチナをてめぇに叩き込む! かかってきな!」
「グッ!」
「西部劇のガンマン風に言うと……、抜きな、どっちが素早いか試してみようぜ、……という奴だぜ」
承太郎の眩いばかりの黄金の精神はあまりにも真っ直ぐであり、主人公たる資格を有するに値する。そんな彼の提案をディオがすんなり受け入れるはずなどありはしないのに――。
※
「グッ……、ウッ……」
コ、コケにしやがってぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ……! しかし……、しかし承太郎! この土壇場にきてやはりお前は人間だ! フッフフフフ……、大輔も動こうとはしていないようだし、これは絶好の機会が訪れたと見るべきか!
「ハァ……、ハァ……」
「どうした、ディオ。俺はこうやって待っているんだぜ? もうじき全てが終わる、全てがな」
その通りだ、間抜けめぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ! ごく短い時の流れでしか生きない人間の考え方をする大間抜けだ! 『後味のよくないものを残す』とか、『人生に悔いを残さない』だとか! 便所のネズミのクソにも匹敵するそのくだらない物の考え方が命取りよ!
「フッフフフフ……」
まだだ、まだ脚が完全に治癒したと思わせてはならない。こうやってゆっくり立ち上がり、承太郎のご機嫌を伺うのだ。このディオはまさに窮地であるが、ジョースターの血を更に吸えば! 大輔に勝つ可能性は見えてくる! 刹那、全ては刹那に全力を注ぎ込む! 承太郎ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ! 貴様などこのディオの相手ではない! それを証明してやる! あるのはシンプルな、たった1つの思想だけだ! たった一つ――勝利して支配する。それだけよ、それだけが満足感よ!
「過程や結果など……、どうでもよいのだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
※
ディオは卑怯にも承太郎の目に自分の血で目潰しをし、一旦バックステップをし時間を停止させた。承太郎のスタープラチナの拳は虚しく空を切り、その隙を逃さずディオは承太郎の頸動脈に向けまさに指が突き刺さろうとしていた瞬間――。
「……泣けるぜ、俺が承太郎を看護するとはな」
なんと承太郎を自分の方へ鎖を使い一瞬にして近寄らせた大輔は、すかさずディオに向け突進した。
「最終ラウンドだ、ディオ!」
「舐めるんじゃない! 大輔ぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
「貴様は承太郎の情けすら踏み
「舐めた口聞いてるんじゃないぞ、このモンキー風情がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! 無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄!」
「排除排除排除排除排除排除排除排除排除排除ォォォォォォォォォォ! URYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!」
ラッシュ比べは最早ディオは大輔には勝てない。勝てないと知りながらディオは最後の悪足掻きを見せる。なんと承太郎にやったことを、この戦闘中にやったのだ、ディオは! 悪の権化の最後の意地を大輔に見せつけディオは勝ったと確信しながら全力のラッシュを見せるが――。
「ディオォォォォォォォォォォ! 貴様は全く無意味なことをしているんだよなぁ~?
「な、何ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!?」
「フハハハハハ! 俺の中にカーズの知識が全て入った今!
一瞬、ほんの一瞬ではあるが、大輔とクレーバースレイヤーは重なったかのように同じ台詞を言い放ち、そしてなんとクレーバースレイヤーはディオの首を胴から斬り離したのだ。その瞬間、停止した時間は動き出し、ディオの首から多量の血が噴水のように噴き出した。
「GYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA! こ、この、ディオが、このディオがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
ディオの首が宙に舞う、誰しも決着がついたと思った。が、ディオはこの油断を好機と見極め、最後の攻撃を放つ!
「
ディオの眼光から血液を絞り出し水圧カッターの如き光線が大輔を襲う! それは見事に大輔の心臓を破壊するはずだった。ディオが放った空裂眼刺驚にいつの間にか大輔は消え、上から急激に落下してくる物体がディオに迫る! それは――。
「吸血鬼を滅すには波紋が効率がいいらしいからよぉ~? カーズ直伝の波紋を食らえ、この外道がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!
「馬鹿なぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! こ、このディオがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! ふ、再び波紋なんぞにやぶれ――」
「滅しろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ! このドチンポ野郎がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
――バギャン!
「こ……この……ディオが……、はも……」
ディオの頭部は一瞬にして大輔の波紋によって溶解し、無残な最期を遂げた。「……泣けるぜ」と言いながら着地した大輔は、ディオの首から下を止血しながらポツリと呟く。
「ディオ、てめぇの敗因はたった一つ、たった一つのシンプルな答えだ」
ゆっくりと大輔に近づく承太郎もまた独り言のように亡きディオへ向けて大輔と同じ言葉を口に出す。
「ディオ、てめぇの敗因はたった一つ、たった一つのシンプルな答えだ」
「「てめぇは俺達を怒らせた」」
悪の権化、ディオ・ブランド―、完全敗北。ディオの呪縛は今まさに解放されたのであった。