逆柱は嫌われている   作:星天さん

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柱合会議編
柱合裁判…①


炭治郎と禰豆子を隠に預け、俺は一人静かに那田蜘蛛山を降りていた。那田蜘蛛山を降りる際、カナヲが何故か着いてこようとしていた。蟲柱の方に戻る様に言ったのだが、俺ともう会えなくなるじゃ無いかと思って着いてこようとしていた様だ。自分をこんなにも慕ってくれている事を嬉しく思いながらも、カナヲには蟲柱の元に戻る様に言い、また今度会う約束をして蟲柱の方に戻ってもらった。

 

「おーい、戻ったぞ獪岳!」

 

「お帰りなさい師範!!」

 

久しぶりの我が家に帰ると、獪岳が何時もと変わらずに出迎えてくれた。逆屋敷から美味しそうな匂いがしてきて、何をしているのかと尋ねたら、俺が帰る事を[蓮]から聞いたらしく、帰って来る俺の為に色々と料理を作ってくれていたみたい。

 

「一休みしたい所だが、これから柱合会議に顔を出さなくちゃならなくなった…」

 

「柱合会議終わったら、休めるように布団を引いておきます」

 

「ありがとう獪岳…」

 

柱合会議へ行く支度をする為、一度、屋敷の中に入った。何時もの死神スタイルに戻る前に俺は風呂へ向かい、那田蜘蛛山で付いた汚れを落とす事にした。風呂に向かうと、湯船に湯が張られていた。俺が帰ってきたら風呂に入ると予想していた獪岳が湯を張ってくれたようで、獪岳のお陰で冷たい水で体を洗う事態にならずに済んだ。

風呂が済んでから自室へと向かい、死覇装に着替え羽織を羽織って支度を済ませた。柱合会議へ出席したくないが、炭治郎と禰豆子が耀哉の屋敷に連れていかれている以上、柱合会議に参加せざるを得ない。

 

「行ってくる…」

 

「待ってるんで、早く終わらせてきてください」

 

獪岳に見送られながら、俺は柱合会議が行われる産屋敷邸に向かった。

 

 

 

 

産屋敷邸──。

鬼殺隊の長である産屋敷耀哉が住んでいる屋敷に、御影を除く柱達、そして隠に運ばれる途中で眠ってしまった炭治郎がその場に居た。隠達は柱達の前で眠っている炭治郎を叩き起し、柱の御前だから姿勢を正すようにとキツく言い渡した。

 

「禰豆子は何処ですか!善逸、伊之助…御影さんは何処に居ますか!」

 

自身が傷を負っているのにも関わらず、炭治郎は仲間の安否を心配していた。炭治郎は他者から見れば優しい心の持ち主だと分かるが、数名の柱達からは炭治郎が御影とどのような関係なのかが気になっていた。

 

「落ち着いてくださいね竈門炭治郎君?」

 

仲間の安否が気になって騒がしくしている炭治郎の元に、柱の一人である愛柱・愛崎姫乃が声をかけた。

 

 

 

 

なんだろうこの人は──。

御影さん達の安否を聞きたい俺に話しかけた女性の柱から、とても甘い匂いがしていた。その甘い匂いを嗅いだ瞬間、頭がボーッとしてクラクラする…。

 

「大丈夫か…?」

 

「冨岡さん?」

 

甘い匂いで頭がボーッとして意識が遠のきそうになっていた俺の肩を、冨岡さんが強く叩いてくれたお陰で遠のきかけた意識を元に戻せた。

 

 

 

 

「お久しぶりですね冨岡さん!お元気にしていましたか?」

 

「ああ…」

 

愛柱・愛崎姫乃は義勇に話しかけるが、義勇は一言だけ返事をするとその場を離れ、誰もいない所に行きポツンと一人で立っていた。義勇が離れた事に、炭治郎は愛崎姫乃を警戒して匂いを出来るだけ嗅がないように細心の注意を払っていた。

 

「冨岡さん!そんな所に居ないでこっちで集まりましょうよ!」

 

「結構だ…。御影が来るまで此処に居る」

 

「おい義勇、姫乃が誘ってくれているんだからこっちに来たらどうだ?」

 

「うむ!鱗滝の言う通りだぞ冨岡!」

 

愛崎姫乃の誘いに乗らない義勇に対して、義勇と同じ水柱の鱗滝錆兎、炎柱・煉獄杏寿郎は愛崎姫乃の好意を受け入れる様に迫っていた。

 

「あの…冨岡さんがそこで良いと言っているので、無理に呼ばなくても良いんでは無いでしょうか?」

 

「南無…。甘露寺の言う通り、冨岡がそこで良いと言うのであれば、無理強いをする必要は無い」

 

恋柱・甘露寺蜜璃、岩柱・悲鳴嶼行冥の二人から無理強いする必要は無いと言われ、愛崎姫乃、鱗滝錆兎、煉獄杏寿郎の三名は、それ以上義勇に何も言えなくなり黙った。

微妙な空気になり、状況が飲み込めない炭治郎はオロオロとしていた。

 

「今は冨岡よりも、そこの地味な奴についてだ」

 

「隊律違反を犯したんだ、即刻鬼と共に斬首した方がいい。鬼を連れている奴だ、鬼の仲間かも知れない」

 

微妙な空気の中、音柱・宇髄天元は隊律違反を犯した炭治郎に話題を変えた。宇髄天元が話題を変えると、蛇柱・伊黒小芭内は隊律違反を犯した炭治郎、鬼である禰豆子を即刻斬首にするべきだと言った。

 

「ま、待ってください!! 禰豆子は確かに鬼ですが、人を一度も食べた事はありません!! それに禰豆子は鬼殺隊の為に戦えます!!」

 

炭治郎は禰豆子の斬首を回避すべく、禰豆子が人を食べない事や鬼と戦えると伝えるが、鬼に強い恨みを持つ柱には信じてもらえなかった。

 

「オイオイ、何か面白い事になってるなぁ。鬼を連れた馬鹿隊士ってのはお前かい?」

 

炭治郎が必死に訴えている中、鬼殺隊風柱・不死川実弥が禰豆子が入っている箱を手に持って現れた。不死川の後ろから、女性隠が現れ、禰豆子が入った箱を渡して欲しいと頼むが、不死川は女性隠の話を無視した。

 

「不死川さん、勝手な事をしないでください」

 

炭治郎に目線を合わせながら話を聞いていた胡蝶しのぶが立ち上がり、不死川の勝手な行動に意見するが、不死川は同じ柱である胡蝶しのぶも無視して炭治郎に話しかける。

 

「なあ坊主、鬼が鬼殺隊として人を守って鬼と戦える?そんな事は有り得ねんだよ馬鹿が!!」

 

不死川は腰に差している日輪刀に手を掛け、禰豆子が入っている箱を刺そうとした────だが、日輪刀が箱に到達する寸前、不死川が手に持っていた箱が大玉のスイカに変わっていた。

 

「!?何故箱がスイカに変わった!! 」

 

「プフッ…」

 

不死川は箱が大玉のスイカに変わった事に困惑し、禰豆子の血気術によるものだと疑った。不死川の様子を見て、甘露寺蜜璃は笑ってはいけない場面なのは分かっているのだが吹いてしまった。

 

「箱は何処────御影透也!!」

 

禰豆子の箱を探していた不死川は、産屋敷邸の縁側に腰掛けている人物──御影透也を見つけた。産屋敷邸の縁側で林檎を食べている御影の横には、不死川が先程まで持っていた禰豆子が入っている箱が置かれていた。

 

「てめぇ…その箱には鬼が入っているって分かっているよな?その箱を守るって事はてめぇも冨岡と一緒で隊律違反を犯してるって事だよな?」

 

「俺は御館様から与えられた任務を遂行しているだけだ。竈門炭治郎 及び 竈門禰豆子を監視し、柱合会議まで護衛するという任務だ。 もし、二人を傷つけようとするなら…俺が相手になるぞ?」

 

御影から発せられた威圧感に、誰も異議を唱える事が出来なかった。錆兎、小芭内、杏寿郎、天元、実弥、姫乃の六名は、御影を忌々しく思っていた。そんな事は露知らず、御影は林檎を軽快な咀嚼音と共に美味そうに食べていた。

 

「南無…お前の話は分かった。御館様が来るまで待とう」

 

「話が早くて助かる。それと、久しぶりだな行冥」

 

「ああ、久しいな御影。お互い多忙の身、中々会えないものだな」

 

産屋敷邸の縁側に座ったまま、禰豆子が入っている箱を守っている御影の元に行冥が近づき話しかけた。

 

「なら、今日飯食いに来いよ。獪岳がいっぱい料理作ってくれてるみたいで、お前の好物の炊き込みご飯もあるぞ?」

 

「ご相伴に預からせてもらおう」

 

御影と行冥は互いに鬼殺隊の古株であり、合同任務をそれなりにこなしていて仲は良好である。年齢では行冥の方が上だが、鬼殺隊歴は御影が上の為、合同任務が終わると御影はよく行冥を食事処に連れて行っていた。

 

「お、お久しぶりです御影さん!」

 

「久しぶりだな蜜璃。良かったらお前も行冥と一緒に来るか?」

 

「良いんですか!」

 

「屋敷に俺と獪岳では食えない量の食材があってな、俺も料理するから食ってくか?」

 

「ご、ご迷惑でなければ!」

 

(や、やった!御影さんの御屋敷に行けるわ!)

 

甘露寺蜜璃は、御影の屋敷に行ける事を表情に出さずに喜んでいた。甘露寺蜜璃が喜んでいると、霞柱・時透無一郎と無一郎の補佐をしている時透有一郎が御影の元に訪れた。

 

「「お久しぶりです御影さん!」」

 

「久しぶりだな無一郎、有一郎」

 

「俺と無一郎も御影さんの屋敷に行っても良いですか?」

 

「別にいいぞ?食材は大量にあるし食べに来いよ」

 

御影が甘露寺、悲鳴嶼と会話をしていると、自然に義勇、時透兄弟も話に入り、義勇、時透兄弟、この場にはいないが蔦子も逆屋敷に行く事になった。その光景に愛崎姫乃は面白くなさそうに、6人を見ていた。逆ハーレムを狙っている愛崎姫乃は、義勇、行冥、時透兄弟を引き入れたいが御影側に行ってしまっている為、話しかけられずにいた。

そして、胡蝶しのぶも御影に話しかけたいが見向きもされない為、複雑な気持ちを持ちながらその場に立っていた。

 

「「御館様の御成です」」

 

突然聞こえてきた声に、柱達は1箇所に集まり片膝をついて頭を下げた。炭治郎は何が起きたか分からず、困惑していると御影から真似るようにと言われ、柱達と同じ様に炭治郎も頭を下げた。




大正コソコソ話…①

甘露寺蜜璃が鬼殺隊に入る前に透也と会っているぞ!

大正コソコソ話…②

那田蜘蛛山から蝶屋敷に戻ったカナヲはアオイに透也と会ったことを自慢し、ちょっとした揉め事が起きてしまった!

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