蝶屋敷で治療を受けてから数日が経っていた。那田蜘蛛山で負った傷はすっかり治り、しのぶさんから機能回復訓練?というものを明日から受けてもらうと言われた。俺と伊之助は明日から機能回復訓練を受けるけど、善逸は那田蜘蛛山で鬼の毒を受けてしまい、俺達より治りが少しだけ遅く、善逸が機能回復訓練を受けるのは少し後になるみたいだ。
禰豆子は俺や伊之助より早く傷が治っていたが、ここ数日間の禰豆子は心ここに在らずって感じで元気が無かった。
長男として、禰豆子の兄としては、妹の悩みを解決してあげたいと思っているんだけど、年頃の女の子の悩みが分からず、どうすればいいのか分からずに居た。
「嫌だー!その薬苦いから飲みたくないよ〜」
「駄々をこねてないで飲んでください!」
善逸の薬を飲む時間が来たみたいで、隣に居る善逸は泣きながらアオイさんが持ってきてくれた薬を嫌がって飲もうとしなかった。今日もアオイさんを困らせていたから、薬を飲むようにと言おうとしたら、出入り口の方から桃が飛んできて、騒いでいた善逸の口を塞いだ。
「ピーピーうるせぇよカス」
「もご!?」
桃が飛んできた出入り口の方を見ると、見知らぬ男の人が立っていた。いきなり桃を投げてきた人は誰なんだろうかと考えていたら、善逸から驚きと嬉しそうな匂いがした。善逸に知り合いなのかと尋ねると、桃を口にくわえたまま頷いた。
「あの!俺は竈門炭治郎と言います!貴方の名前を教えてくれませんか?」
「桑島獪岳…そこに居るカスの兄弟子だ」
「久しぶりに会ったのにカスカス言うなよ獪岳!泣くよ?俺、めっちゃ泣くよ?いいの?獪岳の名前を言いながら泣くよ?」
「どんな脅し方だよカス…。それより、周りに迷惑と生き恥を晒すんじゃねぇよ」
「生き恥ってなんだよ!」
この人が善逸の兄弟子か…善逸の話で聞いていたよりも優しそうな人だった。獪岳さんが此処に来た理由を尋ねると、獪岳さんは御影さんから俺達の見舞いに行くようにと言われて来たみたい。
「お前からは強い気配をビンビン感じるぜ!!俺と勝──」
獪岳さんに勝負を挑もうとしていた伊之助は、何時の間にか背後に回っていた獪岳さんによって気絶させられベッドに寝かされていた。一瞬の出来事に、俺と善逸は目を見開いて獪岳さんを見ていた。
「ったく…。うるせぇのはカス一人で十分だ」
「あの!」
獪岳さんが伊之助を気絶させ終わると、アオイさんが意を決して恐る恐る獪岳さんに話しかけた。
「御影さんは御元気でしょうか?体調をくずされたり、大怪我を負ったりはしてませんか?」
「何故、師範の事を聞いてくるんだ?」
「いえ…偶に町中で会ったりするのですが、ここ最近は御影さんの姿を見ていないので心配になって」
アオイさんは獪岳さんに御影さんが元気なのか、どうしているのかを聞いていた。御影さんの事を聞いている時のアオイさんから、不安、心配、寂しいといった匂いがしていた。表情からでも、御影さんを心配しているアオイさんを見た獪岳さんは、御影さんが元気に過ごしている事を伝えた。
「そうですか…柱で任務が大変だと思いますが、体調をくずされませんようお元気でお過ごしくださいと宜しくお伝えください」
「ああ、分かった。この包は師範からこの屋敷で働いている人に渡せと言われた物だ。中には師範が作ったものだから有り難く食え」
「有り難く頂きます」
獪岳さんはアオイさんに包みを渡すと、アオイさんは包みを持って部屋を出て行き、獪岳さんは俺の方に視線を向けた。どうしたのかと尋ねようとしたら、俺が口を開くよりも早く、獪岳さんが口を開いた。
「竈門炭治郎、お前の事は師範から聞いている。お前の境遇には同情する…お前達兄妹の為に師範も命を賭けている」
「御影さん…」
「師範が命を賭けている以上、俺もお前達の為に命を賭ける。こう言っては重荷になるが、自分の役目から逃げるなよ?妹を救いたいなら強くなれ」
俺と禰豆子の為に多くの命が賭けられていることを、俺は改めて実感した。俺は、俺と禰豆子の為に命を賭けてくれている人達に恩を返す為にもっと強くなろうと決心した。
「おいカス」
「な、何だよ!まだ何かあるのか!」
「さっさと治して復帰しろ…。鰻屋に連れて行ってやる…」
獪岳さんは善逸に一言かけると、善逸の返事を待たずにこの部屋から出て行ってしまった。優しい善逸の兄弟子だと思って、善逸に話しかけようとしたら口を開けておかしな顔をしていた。
「どうした善逸?そんな変な顔をして?」
「い、今の聞いた!? 獪岳が!獪岳が鰻屋に連れて行ってくれるって! 何時もカスカス言ってきた獪岳が鰻屋に連れて行ってくれるって!」
「分かったから落ち着け善逸!他の患者に迷惑だろ!」
この後、目覚めた伊之助が獪岳さんを探して部屋の中を暴れ回ったせいで、俺達三人はしのぶさんとアオイさんの二人に説教されるはめになった。
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