先見の明
蝶屋敷でのちょっとした騒動から翌日…。
炭治郎達が次の任務地へ行くのを獪岳と蝶屋敷で一緒に見送り行き、見送ってから屋敷に戻ろうとした俺達にカナエとしのぶに折角なら蝶屋敷で休んでいかないかと誘われた。俺も獪岳も次の任務までやることも無かったので、蝶屋敷で少し休んでいく事にした。蝶屋敷の門を潜ろうとした時、俺の元に耀哉の鎹鴉が鳴きながらやって来た。耀哉の鎹鴉は俺の肩に止まり、耀哉からの大至急屋敷に来て欲しいという呼び出しの伝令を預かってきていた。
「すまないが俺は耀哉の元に行く。獪岳、お前も着いてこい」
「分かりました師範!!」
誘ってくれたしのぶとカナエには悪いが、俺は直ぐに獪岳を連れて産屋敷邸に向かった。俺を呼び出す理由に皆目見当もつかないが、きっと何か嫌な予感がしたのだろうと思いながら足を速めた。蝶屋敷から暫く走り続けて、ようやく目的地である産屋敷邸に辿り着いた。到着した産屋敷邸の門の前に、あまねさんが立っていた。俺と獪岳はあまねさんに近づき、門の前で待たせた事を謝った。俺達の謝罪にあまねさんは、俺達が来る1分前に門の前に来たから気にしなくて良いと言った。長時間待たせてなくて少しホッとしてから、あまねさんに耀哉の元へ案内をしてもらった。
「突然呼び出してすまないね」
「いや、別に気にしないが。それより大至急って何かあったのか?」
「少し嫌な未来を予知をしてしまってね…」
産屋敷耀哉…と言うよりは産屋敷家の男には少し先の未来を予知する【先見の明】という能力が顔に広がる呪いの痣と共に代々受け継がれてきた。耀哉も例外なく【先見の明】をしっかり受け継いでいる。
「透也は無限列車の事は知ってるよね?」
「ああ…。無限列車に乗った乗客、調査に向かった隊士が行方不明になっていると報告があった列車だろ?」
「無限列車に杏寿郎と姫乃の柱二人を向かわせ、合流する形で炭治郎達を向かわせたのだが…」
「その無限列車に嫌な予感がしたから、俺に行ってきて欲しいって事か?」
俺の問いに耀哉はゆっくりと頷いた。
耀哉の頼みでも、俺はあいつらの顔を見たくは無いし断ろうとした。だが、無限列車に炭治郎達が行くことが分かり、炭治郎達の誰かが命を落とす可能性があるかもしれないと思った俺は、獪岳と一緒に行く事にした。俺の本来の任務は、吉原の遊郭で忽然と姿を消す遊女の調査に向かう予定だった。無限列車の任務が終わり次第、遊郭の任務に行くことになった。
「二人共、頼んだよ」
「はいはい、行ってくるよ」
○
俺と獪岳は一度屋敷に戻り、軽い身支度を始めた。
怪我人に応急処置ができるように、消毒や包帯などを箱に詰めたりしていた。身支度をしている間、義勇と蔦子さんが屋敷にやって来た。もてなしてあげたいが、二人にはこれから任務で無限列車に向かう事を伝えた。無限列車の事は蔦子さんにも伝わっているみたいで、危険な任務に赴こうとしている俺を心配してくれた。
「何故、透也が無限列車へ?遊郭の調査では無かったのか?」
俺が遊郭へ任務に行く事を知っている義勇が蔦子さんに暴露しやがった。遊郭へ任務に行くことを蔦子さんが知った瞬間、白玉の様に白い肌がみるみるうちに赤くなって行った。赤くなって行った蔦子を可愛いと思いながら、任務で客として店に潜入するが決して体を重ねる事は無いと断言した。蔦子さんに遊郭への任務を理解してもらおうと話していたら、隠の後藤が車に乗って俺達の所にやって来た。
「透也さん、駅まで送りますので乗ってください」
「悪いな後藤…。それじゃ、俺と獪岳は任務に行きますんで話はまたで」
「2人共、絶対に生きて帰ってくださいね」
「武運を祈る…」
蔦子さんと義勇に見送られながら、後藤の車で俺と獪岳は駅へ向かった。現代から過去へ転生した俺は、改めて車の凄さと有難みを実感した。車に乗ってから数分で、無限列車が停車する駅に着いた。
「ありがとうな後藤」
「いえ、ご武運を祈ります。任務が終わり次第、迎えに来ます」
後藤が去っていくのを見えなくなるまで見送り、俺達は切符を購入して停車している無限列車へと乗り込んだ。
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