逆撫の膝枕で二度寝してから完全に目が覚めた。
名残惜しいが…逆撫と白也に感謝の言葉を伝えてから精神世界から抜けようとした時だった…。精神世界から抜け出そうとする俺に、白也が斬撃を放ってきた。俺は直ぐに瞬歩で飛んでくる斬撃を躱して、斬撃を放ってきた白也を睨んだ。
「なんのつもりだ白也?」
『何のつもりも何も…お前から体の所有権を奪おうとしてるだけだ!!』
白也は俺に真っ直ぐ向かって斬り掛かってきた。白也が体の所有権を奪おうと襲ってくるのに黙ってやられる訳にもいかず、俺も白也同様に逆撫を構えて迎え撃つ体制を整えた。俺に目掛けて振り下ろされる白也の刃を防ぎ、鍔迫り合いになった。
『くだらねぇ連中を助けては恩を仇で返されてるのにも関わらず、助け続けているてめぇに虫唾が走る!!』
「お前には関係ないだろ白也!!例え、恩を仇で返されようが!!先代の御館様に託されたものを守る為に俺は戦う!!」
耀哉の父親…先代の御館様から俺は耀哉達の事、鬼舞辻無惨を倒して産屋敷家に代々と伝わる呪いの連鎖を終わらせて欲しいと頭を下げられ頼まれた。俺は先代の御館様から頼まれた事を無下にする事無く、耀哉達を守る為、鬼舞辻無惨を倒す為に常に実行していた。愛崎姫乃の妨害があろうが、噂を信じ罵倒をしてくる隊士を助け、先代の御館様が託したものを守っていた。
「先代から託されたものを忘れた訳じゃないだろ?俺は…耀哉達を守る為!!産屋敷家が代々と鬼舞辻無惨を討伐する為に作り上げた鬼殺隊に泥を塗らせる訳にはいかねぇんだよ!!」
鍔迫り合いを制し、今度は俺から白也へ斬り掛かった。白也に攻撃に移る余裕を与えないように攻めた。白也を追い詰めながら、鬼道をくらわせようと詠唱を始めた瞬間、俺達の手から逆撫が消えた。
「2人共…そこまで」
『邪魔をするんじゃねぇ…』
「透也が大事なのは分かる…。でも、これはダメ」
『チッ…』
逆撫が白也に何かを言うと、白也は舌打ちをして消えた。白也が消えてから、今度は逆撫が俺に近づいてきて抱き締められた。いきなり抱き締めてどうしたのかと聞くと、逆撫は静かに話し始めた。
「透也…。透也が先代との約束を守りたい気持ちは分かる…でも、透也が守りたいって思っているものが私達の守りたいものじゃない」
「それはどういう───」
逆撫の言った意味が分からず、どういう意味なのかを聞こうとしたら目の前が真っ暗になった。目の前が真っ暗になるこの感覚は精神世界から出る時に何時も起こっていた。この感覚になっているって事は、俺は逆撫に強制的に精神世界から追い出された。
〇
逆撫でに精神世界から追い出された透也は目を覚ました。
目を覚ました透也がキョロキョロと周りを見ていると、槇寿郎が炭治郎へ日の呼吸についての話をしている横で、話を聴いていた獪岳と目が合った。
「師範?」
「よ…よぉ…獪…岳…」
「師範!!」
喉がカラカラに乾いている透也は掠れた声で獪岳の名前を呼んだ。獪岳は透也が目覚めた事に喜び、今いる所が病室である事を忘れ大声を上げて透也の目覚めを喜んだ。近くに居た槇寿郎と瑠火、炭治郎は透也の目覚めにホッとして居た。特に炭治郎は、自分の身を挺してまで守ってくれた透也が目覚めた事に、自然と涙を流していた。
「桑島さん?ここは病室なので静かに───透也さん!?」
「悪…い…み、水を…くれ…な、ない…か?」
「わ、分かりました!!しのぶ様とカナエ様に知らせてきます!!」
獪岳の大声を注意しに来たアオイは、透也が目覚めた事に驚いていた。アオイは透也から水を持ってきて欲しいと頼まれ、大至急で水を取りに行き、水を運んでいるついでにしのぶとカナエに透也が目覚めた事を知らせ、水を透也元へ運んだ。
「喉ってカラカラになると上手く喋れないもんだな」
「全く、お前って奴は…」
呑気な事を言った透也に槇寿郎は溜め息を吐きながら、呆れたような目で見ていた。瑠火と獪岳は透也らしいと苦笑いし、炭治郎とアオイは透也が無事に目覚めてくれた事に目を潤ませた。透也は炭治郎の頭に手を置き、無事で良かったと言うと炭治郎は泣きながら透也を抱き締め、命を張ってまで助けてくれた事への感謝の言葉を言った。
「「透也さん!!」」
アオイの報告を受けてから暫くしてカナエとしのぶが透也の病室にバタバタと駆け込んで来た。カナエとしのぶが透也の前に来ると、体の調子や痛みを感じる場所は無いかと心配そうな表情をしながら透也に尋ねた。
「寝すぎて体がだるい以外は何ともねぇよ」
肩を回しながら透也は何ともないと二人にそう言ったが、念の為に後で検査をさせてもらうとカナエとしのぶが声を揃えて言った。透也が目覚めて少し賑やかになりそうな所で、瑠火が目覚めたばかりの透也にあまり無理をさせてはいけないと言う一言で一旦解散した。槇寿郎と瑠火は「また来る(ます)」と言い屋敷へ帰り、炭治郎は伊之助と善逸にも透也が目覚めた事を伝えに自身の病室へと帰った。カナエ、しのぶ、アオイの三名も他の病人の治療やら仕事をする為に、名残惜しそうに持ち場へ戻った。
「心配をかけたみたいだな…」
「本当ですよ。産屋敷家、義勇さん、蔦子さん、真菰、行冥さん、甘露寺さん、時透兄弟も師範が目覚めるのを待ってたんですよ?」
「フッ…。俺の身を案じてくれて有難いな…だけど獪岳?俺が寝ている間に噂の一つや二つ程出たんじゃないか?」
透也の言ったことに、獪岳は苦虫を噛み潰したような顔になった。透也の推測通り、無限列車での任務が終わり愛崎姫乃、煉獄杏寿郎が負傷して蝶屋敷へ運ばれてから噂が流れた。
・炎柱、愛柱を囮に使い上弦ノ鬼を退けた鬼畜
透也が眠っている間、そんな噂が流れていた。
透也はそういう噂が出てくるだろうと予想していた為、噂が出てようが気にしないようにしていたが獪岳は悔しそうに拳を強く握っていた。
「そんなに強く拳を握ると怪我するぞ?」
「上弦ノ壱、上弦ノ参を相手に乗客や炎柱と愛柱を守ったのに…こんなのあんまりじゃないですか…。事実確認もしない、ありもしない噂に踊らされてる愚者なんかに…」
「もういい、獪岳。俺は…お前や俺を信じてくれる奴らが居るだけで十分だ」
透也の言葉に、これ以上何も言えなくなった獪岳は静かに透也のベットの横にある椅子に腰掛けた。自分の為に怒ってくれている獪岳に、透也は『ありがとう』と感謝の言葉を呟いた。
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