永遠亭を出た私たちは妹紅さんの家へ向かった。
ここの竹林は本当にたくさん竹が生えている。
道なんて覚えられそうにない。心なしか頭がぐらぐらしてくる。
妹紅さんの家に着くまで私は妹紅さんにここ、幻想郷について教えてもらっていた。
「…というのがこの世界での常識だ。あ、私の家はここだ」
思ったよりも普通の家だった。
「今日はもう暗い。それにお前には家がない――いや、あるかもしれんがわからないんだろう?
それなら親が心配するかもしれんが妖怪に食われるよりは遥かにいい。ここに泊っていくといい」
「いいんですか!?ありがとうございます。」
妹紅さんは親切だな。永淋さんも鈴仙さんも親切だったな。きっと他の人たちも親切なんだろうな……
そんな事を思うと同時にさっき聞いた幻想郷の話を思い出した。
ここは結界で隔離されていて私はその外の人だという可能性があるとか。
もし私が外の人だったらもう家族には会えないのかな……
「どうした?」
「う、ううん。なんでもないよ。」
私は少しぎこちない笑顔を浮かべた。
▽
――――次の日
「心音、今日は慧音に歴史を見てもらいに行こう」
妹紅さんが朝起きるなり突然言った。
「歴史を見る?慧音さんって?」
「行けば分かる」
慧音さんというのは妹紅さんの友人で、とりあえずついてくればいい、という話だった。
「ふあぁ……」
眠い……
早朝にたたき起こされた私は眠い目を擦った。
▽
「ここが慧音のいる寺子屋だ。」
慧音さんの家は寺子屋――学校だった。
「妹紅じゃないか、その子はどうした?」
白い髪に青い髪が少し混ざっているような、そんな人が私をさして言った。
青いワンピース、頭に変な帽子を乗せている。
「心音、この人が慧音だ。」
「心音といいます。よろしくお願いします」
「慧音、心音は記憶喪失なんだ」
「それで私に歴史を見てもらいに来たのか。」
「それもあるけど人里に住んでなかったかなーなんて思って」
「いや、この子は見たことが無いな。まあここでは何だし中に入れ」
慧音は寺子屋の方を指して言った。
「じゃあそうするか」
「おじゃましまーす」
▽
「……で、この子の歴史だが見えなかった」
「見えなかった?」
「それはどういうことですか?」
慧音さんの言葉に不安に思う。
歴史が見えない……よくわからないけど、良くない気がした。
「何か…体が歴史を拒絶しているような……」
「体が歴史を拒絶……」
どういうことだろう?
……記憶がなくなる前に何かがあったってこと?
私の中の何かが過去を否定している?
「少し私が見た事のない世界が見えた。たぶんこの子は外の子だろう」
「私は……外の人間……」
昨日考えていた事をまた、思い出した。
「若い人間は歴史が無いこともあるが……それでも不安だな。
何か拒絶したくなる過去があるのかもしれない。」
「拒絶したくなる過去……」
「無理に記憶を戻す必要もないと思うが……それでもお前は記憶を戻したいか?」
一体何があったのだろう。怖い。
でも、怖いけど、このままでいいのかな?
記憶は……取り戻したい。必ず、取り戻して見せる!
「……はい。私は絶対記憶を取り戻します。つらい過去なんかに負けません!!」
つらい過去を思い出すのは怖かった。
でもそんなことに私は負けたくない そう思った。
「そうか。君は強いな」
慧音さんは笑ってそう言った。
「それなら霊夢のところへ行った方がいい」
「そうだな。よし心音、博麗神社に行くぞ」
「はい!」
気持ちを取りあえず切り替えよう、と元気に返事をした。
▽
「ここが博麗神社かー」
博麗神社は名前の通り神社だった。
大きな鳥居をくぐって中に入る。
「……あら妹紅じゃない。珍しいわね。何の用?」
巫女さんみたいな服を着た人が神社の裏から出て来た。
黒い髪に真っ赤なリボン。赤い服を着ている。
彼女はこちらに訝しむような視線を向けた。
「巫女さんみたいですね」
「みたいじゃなくて巫女さんなのよ」
「あ、すいません」
少し驚いてしまった。
なぜなら私の知っている巫女というのはもっとスカートが長く、腋も出していないはずである。
これが幻想郷なのだろうか。
「霊夢、この子は外来人の様だが記憶喪失なんだ。」
「えっと……心音です。」
「私は霊夢。博麗霊夢よ。紫なら今は冬眠中。出直しなさい」
「妹紅さん、紫さんって誰ですか?」
冬眠というのが気になったがとりあえず妹紅さんに聞いた。
動物なのかな?
「妖怪の賢者だ。そいつならお前の記憶を戻して外に帰すことができるかもな」
そんなすごい人がいるなら最初からそこに行けばいいんじゃ……
「紫の住んでる所はわからないからね」
霊夢さんが心を読んだように言った。
「……まあ、試す価値はある、か……」
そう言うと霊夢さんは手でくいっと何かを動かすような動作をした。
すると突然後ろから声がした。
「博麗霊夢、意味もなく結界を緩めるのはやめて下さい」
しっぽがたくさんあるキツネっぽい人が立っていた。
1、2、3……9本もあるよ。
……この人が冬眠するのかな?
「あら、藍。紫は?」
「紫様は現在冬眠をしておられます。それでは」
というと消えてしまった。
冬眠をするのは紫さんの方らしい。
彼女も尻尾が生えているのだろうか。20本くらい生えてたりして。
「はあ……だめだったわ。また今度、春になったら来ることね」
だるそうに霊夢さんは言う。
「そんなに待てません。」
そんなに待ったら……そのころには馴染んでしまっている気がするから。
記憶がないからこそ、ここに依存してしまいそうな気がするのだ。
決意があるうちに行動しておかないとね。
「まあ、また今度こよう」
妹紅さんが言ったのでここはいったん引くことにした。
「あ、そうそう。その子――心音って言ったかしら?
能力はないけどすっごく霊力あるからいつか能力に目覚めるかもね」
霊夢さんはくるっと後ろを向いて神社の中に入っていってしまった。
▽
「能力って?」
帰り道妹紅さんに能力の事を聞いてみた。
「あぁー言ってなかったな。ここにいる人妖には能力を使える奴らがいるんだ。
私は『老いる事も死ぬ事も無い程度の能力』、
慧音は『歴史を食べる程度の能力』、
霊夢は『空を飛ぶ程度の能力』を持っているな。他にもいろんなのがある。」
「程度……私にも使えるようになるかな」
「なるかもな。でも……いや、なんでもない」
妹紅さんは少し悲しそうに言った。
彼女もまた何かあるのかもしれない。
「そっか。」
「お前は今家が無いんだったな。いいよ。今日から私の家に住むか?」
「いいんですか!?ありがとうございます!」
能力か……私ならどんな能力が付くんだろう。
私は自分が『外の人』だということを知っていながら
能力だのなんだのと無駄なことを考えているのかもしれない。
でも楽しいんだからしょうがないじゃないの、と自分で自分に言い訳をしていた。
心音「ねー作者、私に能力つかないんですか?」
作者「わかんないです。」
心音「わかんないことだらけだね。」
作者「そうですね。話の方針を決めていかないと。」
心音「サブタイトルを決めるのも苦手だとか。」
作者「苦手なことだらけなんですよ。」
心音「次回もいつ投稿できるかわからないですけど」
作者「こんな小説を読んでくださっている方、よろしくお願いします。」