永遠亭に行くと今日も鈴仙さんが外にいた。
どうやら掃除をしているようだ。
今日は妹紅さんが出掛けるそうなので何となくここまで来てみたのだった。
ここまでの道を意外に覚えていて驚きだ。
てっきり諦めて帰ることになると思っていた。
鈴仙さんは私に気付くと箒を動かす手を止めた。
「あら?また来たのかしら?」
「今日はなんとなく来てみました」
「そう、まあ別にいいわよ。
……そうね。姫様が暇そうにしてたし。相手をしてくれないかしら」
鈴仙さんの姫様という言葉にすこし緊張しながら永遠亭の中へと入った。
▽
「鈴仙ーひーまー」
部屋の中にいた人はは床の上をごろごろと転がり回っていた。
それはなんとも姫様というイメージとはかけ離れた格好であったが、
真っ黒な長い髪に整った顔立ち。見た目は姫様というにはぴったりだった。
ピンクと赤の着物のようなドレスのような服を着ている。
「姫様、お客様ですよ。たぶん遊んで下さると思います」
やっぱりこの人がお姫様だった。
彼女は起き上がって私を見る。
じっと私を見つめるお姫様は先ほどとは違う、大人びた雰囲気を感じた。
が、それも瞬間ですぐに子供のような表情に戻る。
「遊んでくれるの?私は蓬莱山輝夜よ。あなたは?」
「私は心音です。昨日はお世話になりました。」
「昨日?」
「心音はお師匠様の治療を受けたんですよ」
首を傾げるお姫様に鈴仙さんが補足をする。
「はい。妹紅さんに連れてきてもらいました」
私がそう言うとお姫様は怪訝そうな顔をした。
鈴仙さんが慌てているように見える。どうしたんだろう?
「妹紅?あなた妹紅と知り合いなの?」
「はい。居候させていただいてます。」
お姫様はしばらくむぅ、というふくれっ面のまま考え込んでいたが、突然ぱちん、と手を叩いた。
「まあいいわ。そうね……月から持ってきたゲームをしましょ!」
そう言ってせっせと準備を始めた。
小さな四角い機械からは2つのコントローラーがつながっている。
どこか懐かしい。
「手伝いますよ。」
「あら、ありがとう。まったく妹紅にはもったいないわね……」
お姫様は早く遊びたい、という様子ではしゃいでいた。
▽
「うあー!悔しいっもう一回!」
「もう10回もやりましたよ……」
ゲームを始めてもうかなりの時間が立った。
結果は私の全勝。お姫様には悪いけど……
「どうしてこんなに強いのよ。だってあなた、これやったことないでしょ?」
「たぶんそうだと思います。記憶がないのでわかりませんが……」
どうも手加減が苦手なようだった。
変なところで不器用な私である。
そしてもう一度ゲームをしようとコントローラーを握った。
すると突然、それも近くで声がした。
「輝夜、永淋はどこへ行ったのかしら?」
その声にお姫様は不思議がる様子もなく答えた。
「紫ね。永淋はいま奥にいるわよ?」
すると空間が裂けてそこから女の人が出て来た。
裂けた隙間からはたくさんの目や手みたいなものが見えていて気持ち悪い。
その人は金髪の髪をいくつもに分けてリボンで結び、変わった帽子をかぶっている。
紫色のドレスを着た、大人っぽい、綺麗な人だ。
「あら?さっき見たけどいなかったわ」
「うーん……じゃあどこ行ったのかしら?」
お姫様の言った紫、という言葉が少し気になった。
どこかで聞いたような……
「あっ!紫って!」
そう。思い出した。紫というのは昨日聞いた妖怪の賢者の名前と同じだ。
もしかしてこの人が…?でも冬眠は……?
「あら、貴方、久しぶりね。」
紫と呼ばれた人は私に言った。
この人に会った事はないはずなのになぜかこの声に覚えがある。
「覚えててくれたのね。私は八雲紫よ」
「あの……あなたが妖怪の賢者なのですか?」
「ああ、そんな呼ばれ方をした事もあったわね。そうね。おそらくそれは私の事」
綺麗な金髪をさらっとかきあげる。
やはり、そうだった。でもなぜ私の事を知っているのだろう?
「あの、私を元の世界に帰して下さい!」
「嫌よ」
間髪入れず、返事が返ってきた。
「どうして?」
「だって……私が貴方を幻想郷へ連れ込んだんだもの」
ふふ、と怪しく笑って紫さんが言った。
これは予想外だ。
私を幻想郷に連れ込んだのが紫さん?いったい何のために……
どんどん疑問が湧きあがってくる。
「じゃあ記憶は?」
「それも私。」
「え、どうしてですか……?」
「だってそっちの方が面白いじゃない。」
この人は面白い、それだけで記憶を消したの!?
すごい。すごいけど……迷惑だよ……
ありえない、と私は首を振る。もっと別の理由があるはずだ。
「それに……記憶があると外に帰りたくなるじゃない?
貴方は記憶がなくても戻りたいらしいけど」
「なんで……幻想郷に私を連れて来たんですか?」
「あのー……」
先程から会話に入れなくておどおどしていたお姫様が口をはさんだ。
「何?」
「さっきから何の話をしているのでしょう?」
そーっと手をあげる。
「…わかんないなら黙ってて頂戴。」
紫はお姫様にびしっと言った。いいのかな……
そういえばどこのお姫様なんだろう。
幻想郷にも国とかがあるのだろうか?
「それでさっきの質問なんだけど……
貴方は外にいるにはもったいないくらい霊力があったからよ」
何事もなかったかのように紫さんが言う。
霊力……霊夢さんにも同じようなことを言われたのを思い出す。
「霊力って……」
「どうして迷いの竹林で人間で空も飛べない貴方が迷わず永遠亭まで来れたのかしら?」
「それじゃあ……」
「ストップ」
私が質問をしようとすると止められた。
真剣な紫さんの目にぞわり、と悪寒がする。
「もう質問は終わり。さ、永淋を探しにいこうかしら」
紫さんは何事も無かったかのようにそう言う。
空間が裂けて、そこから帰って行った。
その後私はしょんぼりしているお姫様に話をしてあげた。
「ふーん。それじゃああなたにも能力があるのかしら。
外の人間にも能力を持ってる人がいるって聞いたことあったけ」
するとたちまち元気になった。
わかりやすいな……
「よし!もう一回ゲームやるわよ!」
腕まくりをするお姫様に驚く。
この人どんなに暇してるんだろう……
「え……もう暗いですし帰ります。」
「あら、まあしょうがないわね。妹紅が嫌になったらここに来なさい。」
親切なお姫様だなー。妹紅さんが嫌になることはまあないと思うけど。
「鈴仙ー!心音を送りなさい。」
「はーい姫様」
呼ばれるなりすぐ現れた鈴仙は玄関へ向かった。
「また来てね。」
お姫様は最後にそう言った。
「お姫様は思ったよりお姫様っぽくなかったですね。」
私は帰り道、そんな話をした。
「がっかりした?」
「いいえ。楽しかったです!」
こういう感じの方が私は好きだったから。
人見知りの私には丁度いい、と話した。
「そう。ならよかった。姫様昔からあんまり他の人と関わらないから。」
「そうなんですか…私はわかんないなあ…」
うーん…と私は考えこむ。
「でも人見知りって…普通昨日初めて会った人の家には行かないわよ。」
「だって寂しいんですもん…」
一人になったときに感じた異様な寂しさを思い出す。
「早く記憶が戻るといいわね。」
「そうですね。慧音にはつらい過去があるかもって言われちゃいましたけど。」
「そう。ほら、家よ。妹紅が心配してるわよ。」
とん、と私の背中を押すと鈴仙さんは帰って行った。
作者「投稿がかなり遅れてしまってごめんなさい!」
心音「何やってたんですか…」
作者「ネタ切れです。」
心音「早!サブタイトルとかもうセンスを微塵も感じられませんよ。」
作者「次回はもっと早く投稿できるようがんばります。」