デート・ア・ライブ~二天龍を従えし者~   作:眠らずの夜想曲

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第2話~雨の少女はイタズラが好き?~

―――来禅高校、教室。

 

 

「おーう五河……て、ものすごくご機嫌だな」

 

 

朝、かなりるんるんしながら教室に入るなりかけられたのは、殿町の驚きの声だった。

まぁ、殿町以外の人が見てもそう思うだろ。

だって、普段と比べたらものすごくご機嫌だからね。

 

 

「あぁ、ちょっとな♪」

 

 

いやぁ、十香がまさか一緒に寝るのを許可してくれるなんてな。

最高だ。

 

 

「殿町、おまえ何見てんだ?」

 

 

殿町は、漫画雑誌巻末のグラビアページを深刻そうに眺めていた。

 

 

「あぁ、これか。―――そうだ、五河にも訊いておきたいんだが……」

「なんだ?」

 

 

俺が問い返すと、殿町は今までいたことのないような真剣な様子で続けてきた。

 

 

「ナースと巫女とメイド……どれがいいと思う?」

「……究極の選択だな」

「あぁ、そうなんだ。読者投票で次号のグラビアのコスチュームが決まるらしいんだが……悩むんだよなぁ」

 

 

あぁ、思い出すなぁ……

ナース服で治療をしてくれたレイナーレ。

ミニスカ+白ニーソのすさまじいコンボでいつもいてくれたミツキ。

そして、俺の本妻で『箱庭』ではメイドとして奉仕もしてくれたレティシア。

 

これは……ガチで悩む。

だが、俺は決めたぞぉぉぉぉぉ!!

 

 

「どれも素晴らしいと思う。だがな、俺はメイドを押す。特別な思い入れがあってな」

「―――まさかおまえがメイドが好きだったとはな!!悪いが俺たちの友情はここまでだ」

「そうか、あばよ」

 

 

俺はさっさと自分の席に着く。

 

 

「あっ、おい、どこ行くんだ五河」

「友情はここまでじゃなかったのか?」

「なんだよノリ悪すぎだろおーい。メイド好きとナース好きが手を取り合う。そんな世界があってもいいと思いませんかー」

 

 

どうやら殿町はナースが好きなようだな。

 

さて、ホームルームまではしばらく時間があるな。

どうしようか。

と言ってもあと十分くらいだ。

 

 

「おっす、十香」

「おはようだぞ、ヤイバ」

 

 

十香がやっと来た。

なんで俺の家に住んでいるのにこんなに遅かったんだ?

 

 

「どうした?ちょっと遅かったじゃねぇか」

「いやな、少し寄り道をしていてな」

「そか……」

 

 

なんだ、そうだったのか。

 

 

「あはようございまぁす」

 

 

お、タマちゃんが来た。

まぁ、遅刻しなかったからいいか。

今度は十香と一緒に登校したいな……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――昼休み。

 

 

「ヤイバ!!昼餉だ!!」

 

 

俺の机に右からがっしゃーん!!と机がドッキングされた。

もちろん机の主は十香である。

 

 

「ほれ、これだ」

「おぉ、すまないな」

 

 

十香に弁当を渡す。

そして、俺の弁当も取り出し、ふたを開ける。

そして―――

 

 

「「いただきます」」

 

 

俺と十香がいただきますをして、食べ始める。

十香は「うまい」と、どんどん食べ進めてくれている。

作った本人としてはとてもうれしい。

その時だった。

 

ウウウウウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ―――――

 

街中に、空間震を伝える警報が鳴り響いた。

 

 

「……皆、警報だ。すぐに地下シェルターに避難してくれ」

 

 

白衣を纏った眼鏡の物理教師―――令音が廊下の方に指を向ける。

 

 

「ぬ?ヤイバ、一体皆はどこへ行くのだ?」

「シェルターだ。学校の地下にある」

「シェルター?」

「あぁ。とりあえず説明はあとだ。俺たちも行くぞ、十香」

「ぬ、ぬぅ」

 

 

十香は、もう少しで食べ終わりそうな弁当に名残惜しそうな視線を残しながらも、俺の指示に従って立ち上がった。

 

だが、俺は途中までついていき、離脱する。

 

 

「令音、行くぞ」

「……あぁ」

 

 

短く返してくる令音。

見つかると面倒なので、さっさと移動する。

校舎の外に出ると、〈フラクシナス〉も拾われた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――フラクシナス。

 

 

「―――あぁ、来たわね二人とも。もうすぐ精霊が出現するわ。令音は用意をお願い」

 

 

俺と令音が〈フラクシナス〉艦橋に着くなり、艦長席に座った琴里から、そんな言葉が飛んでくる。

 

 

「……あぁ」

 

 

令音が短くうなずき、白衣の裾を翻して、艦橋下段にあるコンソールの前に座りこむ。

 

突然、艦橋内にけたたましいサイレンの音が鳴り響いた。

 

 

「どうした?」

「非常に強い霊波を確認!!来ます!!」

 

 

男のクルーの叫び声が聞こえてくる。

琴里はそれを聞くと、パチンと指を鳴らした。

 

 

「オーケイ。メインモニタを、出現予測地点の映像に切り替えてちょうだい」

 

 

琴里指示を発すると、メインモニタに、街の映像が俯瞰で映し出された。

いくつもの店が建ち並ぶ大通りだ。

だが、当然のごとく人の姿はない。

そして、その映像の中心がぐわんっ、と撓む。

 

 

「おぉ……」

 

 

何もないはずの空間に、水面に石を投じた時のような波紋ができていた。

すごい……

始めてみたが、美しい。

そう思ってしまう俺は悪くないと思いたい。

そして、さらに空間の歪みがさらに大きくなる。

画面に小さな光が生まれたかと思った瞬間、爆音とともに、画面が真っ白になった。

 

数秒後、画面に映し出されていたのは穴だった。

 

いくつもの建物が並んでいた通りの一部が、すり鉢状に削り取られている。

その周りも、ハリケーンに襲われたかのようにめちゃくちゃになっている、

 

 

「〈ハーミット〉……四糸乃か」

 

 

画面を見て、そう呟く。

 

 

「あら、知っていたのね。それもアスカロンの恩恵かしら?」

 

 

少し、意地悪く言う琴里。

 

 

「そうだといいな」

「何よそれ……」

 

 

だから俺も意地悪く返す。

 

画面が四糸乃を拡大して映し出す。

 

 

「あ、昨日会ったわ。この子」

「何ですって?」

「学校から帰る途中にな、急に雨が降ってきてな。その時だな……時間帯は午後四時から五時までの間ぐらいだったと思う」

 

 

それを聞いた琴里は、艦橋下段のクルーに指示を飛ばしだす。

 

 

「昨日の一六○○時から一七○○時までの霊波数値を私の端末に送って。大至急!!」

 

 

そして、手元の画面に視線を落とし、苛立たしげに頭をがりがりとかく。

 

 

「……主だった数値の乱れは認められないわね。十香のときのケースと同じか……刃、なんで昨日のうちに言わなかったの?」

「面倒だったから」

 

 

そう言うのと同時に、〈フラクシナス〉艦橋に設えられていたスピーカーから、けたたましい音が轟いてきた。

 

 

「AST共か……」

「―――精霊が現れたんだもの。仕事を始めるのは私たちだけじゃあないでしょうね」

 

 

そりゃそうか。

画面に目をやると、四糸乃がいた場所に煙が渦巻いていた。

ミサイルでも撃ち込まれたか?

 

そして、その周囲にASTのアマ共が浮遊していた。

 

煙の中から、小さなシルエットがぴょん、と飛び出した。

四糸乃だぁぁぁぁぁぁ!!

ヒャッハー!!

 

四糸乃は左手のパペットを掲げるような恰好のまま宙に舞うと、周囲を固めるAST共たちの間を抜けるように身を捻り、空に踊った。

 

可愛いなぁ……

 

だが、ASTのクソ共はすぐにそれに反応すると、一斉に四糸乃を追跡した。

そしてそのまま、身体中に装着していた武器から、かなりの量の弾薬を発射する。

 

 

「クソアマ共が……」

 

 

俺の呟きは意味をなさず、AST共の放った無数のミサイルや弾丸は、無慈悲に四糸乃の身体に吸い込まれていった。

 

 

「琴里……もういい加減俺は出るぞ?」

「あ……」

 

 

忘れていたのかよ……

 

四糸乃は比較的出現回数が多いらしく、その行動パターンの統計と、令音の施行解析を組み合わせれば、おおよその進路に目算がつくんだと。

 

それから計算された場所は、商店街の先に聳える大型デパートだった。

琴里に〈フラクシナス〉から転移させると言われたが俺はそれを拒否し、自分の力で転移をした。

 

もちろん俺の右耳にはインカムがついており、琴里が指示をしてくる。

 

 

『―――刃。〈ハーミット〉の反応がフロア内に入ったわ』

「そうか……」

 

 

気合を入れ直す。

だが、その瞬間、

 

 

『―――君も、よしのんをいじめにきたのかなぁ……?』

 

 

頭上から声が響いてきた。

俺は、顔を上に向ける。

そこには、四糸乃が、重力に逆らうような逆さの状態で浮遊していた。

 

 

『駄目だよー。よしのんが優しいからってあんまりおイタしちゃ。……って、んん?』

 

 

と、四糸乃は逆さになっていた身体を空中でぐるんっ、と元に戻して、床に降り立った。

そして、パクパクとパペットの口を動かす。

 

 

『ぉおやぁ?誰かと思ったら、ラッキースケベのおにーさんじゃない』

 

 

俺の顔をまじまじと見て、パペットが器用にぽん、と手を打ってくる。

すごい技術だな……

 

 

「ん?あぁ、そういえばそんなこともあったな」

『やー、しかしラッキースケベのおにーさん。珍しいところで会うねー。ぁっはっは、おにーさんみたいなのは歓迎よー?どーもみんな、よしのんのこと嫌いみたいでさー。こっちに引っ張られて出てくると、すーぐチクチク攻撃してくるんだよねぇー』

 

 

そう言って、パペットがわははと笑って見せる。

 

 

「よしのん、ってのは?」

『あぁっ、なんてみすていくっ!!よしのんともあろう者が、自己紹介を忘れるだなんてっ!!よしのんのナ・マ・エ。可愛いっしょ?可愛いっしょ?』

「あぁ、すごく可愛いぞ」

 

 

よしのんはものすごくハイテンションだな。

 

 

『―――よしのん、ね。ふぅん、この精霊は十香と違って、名前の情報を持っているのね』

「……なぁ、そういうのいちいち言わなくてよくないか?はっきり言うとさ、集中できないから」

『ご、ごめん』

 

 

琴里があわてて謝ってきた。

あわてた琴里も可愛いな。

 

 

『ぅんで?おにーさんのお名前はなんてーの?』

「俺は刃。五河刃」

『刃くんねー。カッコいい名前じゃないの。ま、よしのんには勝てないけどねぇー』

「なぁ、よしのん」

『んー?何かな刃くん』

 

 

わくわくした様子で問い返してくる。

 

 

「時間があったらさ、デートしないか?」

『ほっほ~!!いいねー。見かけによらず大胆に誘ってくれるじゃーないの。うふん、もちろんオーケイよん。ていうか、ようやくまともに話せる人に出会えたんだし、よしのんからお願いしたいくらいだよー』

 

 

そう言って、カラカラと笑う。

 

 

「なぁ、よしのん。少しデパートの中を回らないか?」

『もちろんオッケーだよ』

 

 

こうして俺はよしのんとプチデートをすることにした。

俺とよしのんはゆっくりとデパートを周る。

しだいに会話の花が咲いていく。

 

 

『やっぱりお喋りするのはたーのしーいねー。どうもあの人たちは無粋でさー』

「あー、確かにな」

 

 

よしのんがパクパク口を開きながら言うのに、軽い調子で返す。

そんなことよりも、よしのんは雄弁に喋っているのに四糸乃の口はまったく開かないことがものすごく気になって堪らないんだけど。

すげぇ、技術。

 

 

『―――おぉ?』

「ん?」

 

 

不意に、よしのんがこちらを向く。

 

 

『すっごーい!!何かねありゃー!!』

 

 

よしのんが興奮気味に手をバタつかせると、その場からとてとてと走っていく。

もちろん走っているのは四糸乃の足だ。

 

よしのんが興味をもったのは、玩具売り場の一角に組み込まれていた、お子様用の小さなジャングルジムだった。

やたらカラフルな強化プラスチックのお城に、両足と右手だけで器用に上っていく。

そして頂点に到達すると、

 

 

『わーはは、どーよ刃くん。カッコいい?よしのんカッコいい?』

 

 

なんて、声を弾ませて訊いてきた。

 

 

「危ないぞー」

 

 

いくら子供用の室内用のジャングルジムだからって、ナメてはいけない。

てっぺんから落ちたら怪我をするだろう。

四糸乃が空を飛べるのはわかっているだが……どうしても『ずるべったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁんッ!!』の件があるからな……

 

 

『んもうっ、カッコいいいかどうか訊いているのにぃ―――っと、わ、わわ……っ!?』

「チッ!!ったく言わんこっちゃねぇ」

 

 

バランスを崩し、ジャングルジムの上で踊るように手を振ってから、俺の胸にダイブしてきた。

 

 

「大丈夫か……?」

 

 

声を発してから違和感に気づく。

目の前には四糸乃の青い髪と、端整な造作の貌がある。

そして唇には柔らかい感触ががががが。

 

なるほど、四糸乃のキスをしていたわけですか。

 

ヒャッハー!!

役得、役得ゥ!!

 

 

『……わお。やるわね、刃』

 

 

インカムから琴里の声が聞こえてきた。

琴里でも予想外だったか。

 

 

『……………』

 

 

無言のまま、よしのんが身を起こす。

そして俺と四糸乃の唇が離れる。

 

だが、キスをしたが力は封印されていないようだった。

あれか?好感度か?

 

 

『あったたたぁー……ごめんごめん、刃くん。不注意だったよー』

 

 

よしのんは平然と声を発した。

起こってないんだな。

 

 

『―――刃、緊急事態よ。……それもたぶん、最強最悪の』

 

 

琴里の声が焦った様子で言ってくる。

 

 

「おっふ……」

 

 

後方から十香の気が感じ取れる。

どうやら今のを見られてしまったようだ。

 

俺は視線を後ろに向ける。

 

 

「―――ヤイバ」

 

 

十香の全身はびしょ濡れで、ついでに全力疾走してきたのか、荒く肩で息をしていた。

 

だが、それより注目すべき場所は目だった。

ハイライトが、ない。

 

 

「……今、何をしていた?」

「……事故によるキスです」

「―――あ、あれだけ心配させておいて……女とイチャコラしているとは何事かぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

 

だんッ!!

 

十香が叫び、足を打ち付けた瞬間、其の位置を中心に床がベコンッ!!と陥没し、周囲に亀裂が入った。

 

おぉ……すげぇ。

 

 

「……ヤイバ。おまえの言っていた大事な用とは、この娘と会うことだったのか?」

「…………………」

 

 

なんて答えようか?

迷っていると、よしのんが声を出した。

 

 

『……いやぁー、はやぁー……そぉーいうことねぇ……』

 

 

今まで十香の登場にキョトンとしていたよしのんが、甲高い声を出した。

そして、その顔がいたずらっぽい笑顔になっている。

 

 

『おねーさん?えぇと―――』

「……十香だ」

 

 

よしのんい言われて憮然とした様子で十香が返す。

 

 

『十香ちゃん。君には悪いんだけどぉ、刃くんは君に飽きちゃたみたいなんだよねぇ』

「な……っ」

『いやさぁ、なんていうの?話を聞いていると、どうやら十香ちゃんとの約束すっぽかしてよしのんのとこにきちゃったみたいじゃない?これってもう決定的じゃない?』

「……っ」

 

 

十香が肩をぴくりと揺らし、今にも泣き出しそうな顔を作る。

仕方ねぇ……

 

 

「お、おまえ、何言って―――むぐっ!?」

 

 

俺は十香の口を俺の口でふさぐ。

十香は最初は抵抗していたが、次第に大人いしくなり受けれた。

そして、俺は言う。

 

 

「そんなわけないだろう。俺は十香のことが好きだからな」

「うぅ……な、ならいいんだ!!」

 

 

顔を赤くしながらも、はっきりとした口調で言ってきた。

 

ドオォォォォォォォン!!

 

爆音が鳴り響き、デパートの壁が吹き飛んだのを確認する。

どうやら、天使を顕現して離脱したようだ。

 

 

「とりあえず、行こうか十香」

「うむ!!」

 

 

俺は、十香と家に帰ることにした。

手をつないで、ゆっくりと歩いてな。

 

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