デート・ア・ライブ~二天龍を従えし者~   作:眠らずの夜想曲

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第4話~よしのんの救出大作戦(笑)~

―――折紙のマンション。

 

 

なぜここに来たか?

答えはこうだ。

よしのんを受け取るためだ。

『答えを出す程度の能力』でよしのんの居場所を導き出した時、折紙の家にあると出たのだ。

やっかい極まりない。

この前の腹に穴を開けられたときのをまだ引きずっていたらと考えると……怖いな。

まぁ、それも含めて家に来てもいいと言ったのだろう。

 

琴里にはもちろん何も言ってない。

まぁ、バレている可能性もある。

だって、上空に〈フラクシナス〉があるんだぞ?

簡単に捕捉されちまう。

 

十香も心配だ。

あれからずっと部屋に引きこもっている。

学校にもちゃんと来ているが、会話を交わすことはない。

 

とりあえず、逝くか。

マンションの自動ドアをくぐり、エントランスに設えられている機械に、折紙の部屋番号を入力する。

すぐに折紙の声が聞こえてくる。

 

 

『だれ』

「俺だ、五河刃」

『入って』

 

 

返答がやけに早いが気にしない。

エントランス内側の自動ドアが開く。

それを確認して、俺はマンションに入る。

そして、エレベーターに乗って六階まで上がり、指定された部屋番号の前に到着した。

呼び鈴を鳴らす。

するとすぐさま―――いや、これは玄関で待ち構えてたな。

そんなタイミングで、扉が開けられた。

 

 

「折紙、悪い―――」

 

 

な。

とは続けられなかった。

折紙の服装が……

もちろん、ここは折紙の家だ。

折紙がどんな格好をしていようが構わない。

でもさ、さすがにそれは普段着じゃないだろう。

そう、俺が目にしたものは―――

 

メイド服

 

しかも、秋葉原とかでコスプレ用として売られているものではない。

黒のワンピースに、フリルの付いた純白のエプロン。頭には可愛らしいヘッドドレス。

完璧なメイドさんスタイルだ。

うんうん、グレイフィアやレイナーレを思い出す。

レイナーレもなんだかんだいって最終的には完璧なメイドになったしな。

 

でもさ、クラスの奴がメイド服を着ているのはちょっとクルものがある。

でもよくよく考えてみると、案外みんなメイド服程度なら着てくれてたな。

それ以上のものも。

 

 

「その格好は?」

「きらい?」

「いや、むしろたまんねぇ」

 

 

おっと、本音が飛び出てしまった。

 

 

「入って」

 

 

折紙は何も気にする素振りも見せず、俺を部屋の中へ招き入れる。

 

 

「邪魔しまーす」

 

 

後から入った俺が扉を閉める。

そして、靴を脱いで部屋に上がる。

……ジャミングかなんかしてんのか?

ものすごく変な感じがする。

ほら、俺って五感がものすごく鋭いからよくわかる。

他にもたくさん何か仕掛けてるな。

ここは要塞ですか?

 

 

「……なんだこの匂いは」

 

 

リビングに入った瞬間、ふわっと甘い香りがした。

コレは食べ物の匂いではない。

お香か?

 

 

「折紙、お香でもたいてるのか?」

「そう」

「ふぅん……」

 

 

怪しいな……

これ、媚薬じゃないか?

すごいギンギンになりかけてるし。

 

 

「座って」

「うぃ」

 

 

促されてがされて、リビング中央に置かれていた背の低いテーブルの前に座る。

俺が座ったのを見届けてから、折紙も腰に落ち着けた。

それも、俺のすぐ隣に。

 

 

「ん?」

 

 

普通は向かいに座るものだと思うのだが……

折紙は涼しげな表情だ。

 

 

「そういえば、折紙は一人暮らしなのか?」

 

 

この問いに折紙は小さく首肯をした。

 

 

「いつ頃からだ?」

 

 

こんなこと聞いても意味がないのに訊いてしまう。

折紙が捕足するように続ける。

 

 

「五年前に両親がしんでから、しばらく叔母と一緒に暮らしていたけれど、高校に入るときに、一人でここに移った」

「高校に入ってからね……」

 

 

折紙は俺の顔をジッと見据えて言ってくる。

そして、距離が近いんだよ!!

あれ?何ですか?このバカップルみたいな距離は。

俺たち別に付き合ってませんけど。

 

 

「待っていて」

 

 

そう言って、折紙は立ち上がる。

そしてそのまま足音もなく、キッチンの方に歩いていく。

どうやら、お茶の準備をしに行ったらしい。

そのすきに、俺は部屋を見渡す。

淡色で揃えられたシンプルな家具が、綺麗に配置された部屋だ。

女の子らしさはない。

それどころか、モデルハウスみたいだ。

そして、見たところパペットは見当たらない。

もの自体は少ないのだが、家の構造上収納スペースが多そうだ。

だからといってどういうわけではない。

能力で簡単に見つけられますから。

 

だが、問題なのはタイミングだ。

折紙がトイレに立った時にでも探すのが妥当だ。

いや、ここはいっそ俺がトイレに立つ振りをして探す方がいいのか?

 

折紙が戻ってきた。

トレイにはソーサーとティーカップを二つずつ、それに砂糖とミルクを載せて戻ってきた。

そして無言のまま、テーブルにそれらを配置していく。

 

 

「どうぞ」

 

 

そう言って、折紙が再びおれの隣に寄り添うように腰を下ろす。

……さっきより距離が近い。

 

 

「ありがと」

 

 

お香の匂いとは別に、ほのかに漂ってくる折紙のシャンプーの匂いが俺の鼻腔をくすぐる。

そして、カップを見る。

!?

なんだこれは……

ふと、折紙のカップを見る。

明らかに、違う。

 

折紙のお茶は、見るも鮮やかな、透き通った赤褐色の普通の紅茶だ。

だが俺のはどうだ?

カップの底が窺い知れないほどに淀んだ、どろのような液体だ。

何を混ぜた!?

何を混ぜたらこうなる!?

少し、匂いを嗅ぐ。

うぐぅ!?

これは……生物兵器なのか!?

なんだよ……なんだよこれ!!

 

 

「どうぞ」

「遠慮したいんだが」

「どうぞ」

「いや、でもな」

「どうぞ」

「……はぁ」

 

 

有無を言わせない。

それが折紙の作戦か。

 

 

「はぁ……」

 

 

もう一度溜息をこぼし、カップに口をつける。

 

 

「うぉぉぉぉぉ……」

 

 

なんだこれ?

味がわからない。

痛い、痛いぞおぉぉぉぉぉぉぉ!!

甘ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!

苦ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!

 

……味を一つ一つ解析して行こう。

 

そう思った瞬間だった。

折紙にマウントポジションを取られたのだ。

妙に身体が火照ってるな……

もしかして……いや、もしかしなくてもアレは精力剤だな!!

 

クッソ!!ヤられた!!

いや、まだヤられてない!!

そんな俺をよそに、折紙は仰向けに倒れている俺の頭の横にてをつくと、腹の辺りにまたがる。

そしてそのまま覆いかぶさってくる。

 

 

「おい」

「なに」

「何やってんだ?」

「だめ?」

 

 

駄目ではないんだけどなー。

うれしいよ?うれしいけどさ、ほら、まだクラスメイトだし。

彼女じゃないし。

俺、結婚してるし。

 

 

「駄目だ」

「そう」

 

 

そう言うと、パちりと瞬きをした。

 

 

「では、交換条件」

「ん?」

「ここから退くかわりに私の要求を一つ、無条件で飲んでほしい」

「何言ってんだこいつ」

 

 

そんな馬鹿なことあってたまるか。

俺は折紙からマウントを奪い返す。

 

 

「何言ってんだおまえ。そんなの認めるわけねぇだろ」

「……ふふ」

 

 

な、何で笑ってんだこいつ。

 

 

「オソワレルー」

「片言で言ってんじゃねぇよ!!」

 

 

どうやら、俺がマウントを奪うこの状況を楽しんでいたらしい。

変態……なのか?

折紙の上から退く。

 

 

「まったく……馬鹿なこと言ってんじゃねぇよ」

「馬鹿なことなんかじゃない」

 

 

そうですか。

そうなんですか。

 

 

「―――刃」

 

 

折紙に名前を呼ばれた。

そういえば、初めて名前で呼ばれたかも。

いつもフルネームで呼ばれてたし。

 

 

「なんだ?」

「待っていて」

 

 

なぜか突然そう言うと、踵を返す。

 

 

「どこに行くんだ?」

「シャワー」

 

 

折紙はちらっと俺の方に顔を向けて、それだけ言ってリビングをで出て行った。

 

 

「あ……これチャンスじゃね?」

 

 

折紙がシャワーを浴びているうちによしのんを探し出せる。

でも、なんでいきなりシャワーを浴びに行ったんだ?

普通は客がいるときの行動ではない。

何かありそうだな。

 

よし、よしのんを探すか。

『答えを出す程度の能力』で導き出せばいい。

 

Q.よしのんは折紙の部屋のどこにある?

A.寝室にあります。

 

……入ってもいいよね?

と言うわけで、寝室に突入!!

 

寝室は意外と狭かった。

六畳くらいのスペースに、ベットや洋服棚が並べられていた。

あと、一つ気になることがあった。

ベットがシングルではなく、ダブルなのだ。

そして、他の家具に比べて、このべとだけが妙に新しい。

昨日今日に包装を解いた新品のようだ。

 

もしかしてさ、あの、精力剤MIXドリンクを俺に飲ませた理由ってさ……

いや、まだ決まったわけではない。

ベットの枕元に移動する。

え……?

なぜに、枕が二つ?

しかも、そのカバーんいはポップな文字で『問題ない』って刺繍されてるし。

裏返してみよう。

『構わない』って刺繍が……

 

よし、気を取り直してよしのんを見つけよう。

部屋を見渡す。

 

見つけた。

部屋の脇に置かれた背の高い洋服ダンスの上にちょこんと、見覚えのあるシルエットが。

コミカルな意匠の施されたウサギ形のパペット、よしのんだ。

 

 

「はぁ……無駄に長い道のりだった」

 

 

やっと四糸乃に渡せる。

そう思って安心した時だった。

寝室の外から、ガチャ、という音が聞こえてくる。

この音は浴室の扉が開けられる音だろう。

折紙がシャワーを終えたのだろう。

 

急いでよしのんを掴みとり、空間倉庫に放り込む。

そして、足音を殺してリビングに戻る。

 

リビングの扉が開けられる。

俺が視線をそっちに移す。

そこで俺が目にしたものは―――

 

 

「なんでバスタオルしかつけてないんだよ……」

 

 

バスタオルを裸身にバスタオル巻いているだけの折紙がいた。

しかも、タオル地がしっとりと張り付いて、身体のラインを浮かび上がらせる。

ハッ!!まだまだだな。

レティシアの魅力とは天と地の差がある。

 

 

「おい」

「なに」

 

 

折紙は至極当然のごとくそう言うと、無言のまま、足音もなく俺の元に歩み寄ってきて、先ほどと同じように、息づかいどころか、体温まで感じられる位置で膝を折った。

そして、ぐっと身体を押し付けてくる。

 

 

「はぁ……」

「どうしたの」

「おまえさぁ……」

 

 

なんでこう無表情かな。

 

 

「あ、そうだ。おまえに訊きたいことがあったんだった」

「なに」

 

 

もちろん、そんなものは―――なくもなかった。

 

 

「なんで精霊が嫌いなんだ?」

「……………」

 

 

俺がその言葉を発した瞬間、折紙の雰囲気が変わった。

そして、俺がそんな話題を出したことをいぶかしむように、小さく小首を傾げる。

 

 

「なぜ」

 

 

俺の目をまっすぐ見ながら問うてきた。

そりゃそうだろう、何の脈絡もないのだから。

 

 

「だってさ、俺の腹に穴を開けた兵器を精霊に向かって撃とうとした―――いや、撃っただろ」

「精霊は現れるだけで世界を壊す。そこに『居る』だけで世界を殺す。あれは害悪。あれは災厄。生きとし生けるものの敵」

「でも俺は敵だと思っていない。いや、確信している」

「―――私は、忘れない」

 

 

表情も、声のトーンも何も変わっていないのになぜか少し威圧感が感じられる。

 

 

「五年前、私から両親を奪った精霊を」

「五年前ねぇ……」

 

 

折紙は小さくうなずいて続けていく。

 

 

「五年前、天宮市南甲町の住宅街で、大規模な火災が発生した。公式には伏せられているけれど、あの火災は―――精霊が起こしたもの。その身に、真っ赤な炎を纏った精霊。私は―――あの精霊に全てを奪われた。絶対に許さない。絶対に、許されない。精霊は全て、私が倒す。もう、私と同じ思いをする人は、作らせない」

 

 

静かな、しかし京子な意思を思わせる声だ。

 

 

「そして、無論それは―――夜刀神十香も例外ではない。彼女は今、精霊とは認められていない。でも、私は彼女の存在を許容できない」

「あ゛?」

「彼女から精霊の反応が消えたことは事実。しかし、原因が不明な以上、最悪の状況に備えるのは当然こと」

「そうか……」

 

 

俺は立ち上がった。

そして、リビングの扉を開ける。

 

 

「なら、俺とおまえは敵同士だ」

「……一つ、訊きたいことがある」

「なんだ」

「四月二十一日。私は作戦遂行中にあなたを見た」

「で?」

「あなたは、一体何者」

 

 

やっぱり突っ込まれたか。

まぁ、敵対することは決定したんだ。

言ってもいいだろう。

どうせ冗談としかとらえられないだろうし。

 

 

「神をも浄化する刃。神浄刃、ただ万能なだけの人外さ」

「万能なだけの人外」

 

 

折紙は首を傾げる。

 

 

「そうだ、まだ詳しくは知らなくてもいいだろう。あばよ」

 

 

折紙に言った、その時だった。

 

ウウウウウウウウウウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ――――――――

 

外から空間震を伝える警報が鳴り響いた。

 

来たか……

まってろよ、四糸乃。

すぐによしのんを届けてやる。

俺は折紙が部屋から出ていくのを見届けてから、顔に狐の面を付けて暁のコートを上から羽織る。

 

 




刃くん、折紙と敵対します。
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