デート・ア・ライブ~二天龍を従えし者~   作:眠らずの夜想曲

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第2話~実妹?~

―――教室。

 

 

「わたくし、精霊ですのよ」

 

 

狂三はそれを言ったあと、一瞬俺のほうを見て微笑んだ。

 

 

「え……ええと……はい!!とっても個性的な自己紹介でしたね!!」

 

 

狂三がもう言葉がないことを察したんだろう、タマちゃんがパン!!と手を叩いて終了を示す。

 

 

「それじゃあ時崎さん、空いている席に座ってくれますか?」

「えぇ。でも、その前に一つお願いがあるですけど」

「ん?なんですか?」

 

 

タマちゃんが言うと、狂三が指を一本立ててあごに当てた。

 

 

「わたくし、転校してきたばかりでこの学校のことがよくわかりませんの。放課後に誰でもいい構いませんから、誰かに案内していただきたいのですけれど」

「あ、なるほど。そうですねぇ……じゃあクラス委員の―――」

 

 

だが、狂三は、タマちゃんの言葉の途中で前方に歩き出すと、俺の席の真ん前に来た。

なぜに?

 

 

「ねぇ―――お願いできませんこと?刃さん」

「なんで俺なんだ?」

「駄目ですの……?」

 

 

狂三がさも悲しそうな、断られたら泣いてしまいますわ、みたいな顔を作る。

 

 

「別にかまわない」

「じゃあ決まりですわね。よろしくお願いしますわ、刃さん」

 

 

狂三はニコリと微笑むと、ポカンとしたクラスメートの視線の中、軽やかな足取りで指定された席に歩いて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――放課後。

 

 

黒板の上に設えられた時計は、もう三時を回っている。

俺の視界の中では、帰りのホームルームが進行されていた。

タマちゃんが教卓に出席簿を開いて、連絡事項を伝えている。

何の変哲もない光景、だが、一つだけ気になることが。

 

 

「……はぁ」

 

 

狂三が先生の隙をついて俺の方にちらりと視線を寄越し、小さく手を振ってくる。

まぁ俺は特に反応しないけど。

 

タマちゃんがパタンと出席簿を閉じる。

 

 

「連絡事項はこんなところですかね。―――あ、それと、最近この近辺で、失踪事件が頻発しているそうです。できるだけ複数人で、暗くなる前におうちに帰るように」

 

 

確実に狂三の仕業ですね。

そう言えば朝のニュースで聞いたような気がする。

 

起立の号令が響き、それに従って椅子から立つ。

そして、礼。

タマっちゃんは「はい、ではさようなら」と言って教室を出て行った。

周りから席を立つガタガタという音と、クラスメートの談笑が聞こえてくる。

 

下校時刻。

だが―――俺にはまだ仕事が残っているのだった。

 

ちょんちょん、とつつかれる。

 

 

「刃さん、刃さん」

「ん……」

 

 

どうやら狂三さんのお出ましらしい。

 

 

「狂三か……」

「名前で呼んでくれるのですわね」

 

 

俺がそう言うと、狂三は嬉しそうに微笑んでから言葉を続けてくれた。

 

 

「学校を案内してくだされるのでしょう?よろしくお願いしますわ」

「あいよ」

「さ!!早く参りましょう。ふふ、楽しみですわ」

 

 

狂三が足取りも軽やかに廊下に歩いて行った。

それに俺も続く。

 

 

「それで、どこから案内してくださいますの?」

 

 

教室を出てすぐのところに待ち構えていた狂三が、小さく首を傾げなから言ってくる。

 

 

「そうだな……食堂と購買でも見ておくか。何かと必要になるかもしれないし」

「えぇ、構いませんわ」

 

 

俺が言うと、狂三は可愛らしい微笑を浮かべながら小さく首肯した。

トン、トン、と上履きの底でステップを踏むようにしながら、俺の横に立つ。

 

 

「では、参りましょう」

「おう」

 

 

やたらと積極的だな。

まぁ俺を食うためだろうけど。

 

ここから一階の購買部に向かうとなると、西階段が一番だ。

ゆっくりとした歩調で廊下を歩いていく。

道中、下校中の生徒たちから、何やら意味深な視線が注がれた。

内容はこんな感じだった。

 

 

「わー、何あの子、かわいー。転校生?隣にいるのって四組の五河くんだよね、なんで?」

「あぁ、なんか直接案内役を指名されたんだってさ」

「え、五河って夜刀神さんのダンナじゃなかったん?」

「うそー、五河くんったお猿さーん」

 

 

ボロクソに言われていた。

なんか……くやしいな。

 

狂三の方を向く。

すると、狂三が、髪に隠れていない右目で、俺の方をジッと見つめてきた。

自然に目を合ってしまう。

その瞬間、狂三は心底嬉しそうにニコッ微笑んだ。

まるで俺に見てもらうのを待っていたとでも言わんばかりに。

 

 

「狂三、歩くときは前を見た方がいいぞ」

 

 

そう言うと、狂三は「まぁ!!」と目を開いた。

 

 

「気をつけますわ。わたくしを気遣ってくださるだなんて、刃さんは優しいですわね」

「そうか?」

「ご謙遜なさらないでくださいまし。刃さんの横顔に見とれてしまったわたくしが悪いのですわ」

 

 

なんだかなー。

悪い気はしないんだけどな。

本性を知っているとどうもな。

 

 

「そうだ狂三」

「えぇ、なんですの?」

「朝、『私は精霊だ』って言ってたよな。精霊とは一体何のことだ?」

 

 

俺が問うと、狂三は一瞬キョトンとし―――すぐに、ふふっ、と微笑んで見せた。

 

 

「―――うふふ、とぼけなくてもいいんですのよ、刃さん。あなたはちゃんと知っているのでしょう?精霊の、ことを」

「まぁ……つーか、なんで俺のこと知ってんだよ」

「ふふっ、それは―――秘密ですわ」

「へぇ……」

「でも、わたくしは刃さんに会うために、この学校に来ましたの。刃さんのことを知ってから、ずっと焦がれてしましたわ。刃さんのことを考えない日はないくらいに。だから―――今は、すごく幸せですわ」

 

 

そんなことを言って、狂三が頬を桜色に染めてくる。

なんだこれ。

すんげぇいい娘じゃないか。

でも騙されないかんな。

 

 

「さ、行こうか」

 

 

また歩み出す。

いよいよT字路にさしかかろうとした時だった。

狂三が俺の右手を握ってきたのだ。

右の手の平に、細くて柔らかくて少しひんやりとした指が絡みつき、きゅっと力を込めてきている。儚げで健気な圧力。

最高だった。

 

 

「なんだ?」

 

 

俺の手を握った狂三は、少し恥ずかしそうに目を伏せ、顔を背けていた。

 

 

「やっぱり……ご迷惑でして?」

「んにゃ、別に」

 

 

俺がそう言うと、狂三はホッと息を吐くように肩に入っていた力を抜いた。

 

 

「やっぱり刃さんは、優しいお方」

 

 

そう言って、照れくさそうに微笑んでくる。

 

 

「そうか?」

 

 

基準がわからない。

ただ手をつなぐのを了承しただけなのに、優しいって。

 

 

「―――ねぇ、刃さん」

「なんだ?」

「わたくし、刃さんにお願いがありますの……聞いてくださいまして?」

 

 

その時だった。

 

 

『お兄ちゃん、メールだよっ!!お兄ちゃん、メールだよっ!!』

 

 

最近変えた俺のメール着信時の音声、『お兄ちゃん、メールだよっ!!激アマ紅ボイスver.が鳴り響く。

すぐにスマホを取り出して、メールを見る。

 

 

『やっほー、お兄ちゃん。〈ラタトスク〉から見てたけどすごいね。好感度上がりまくりじゃない。その調子でがんばってね♡』

 

 

……なら何でこのタイミングでメールをしてきた?

なぜ?

Why?

スマホをしまい、また歩み出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――帰り道。

 

 

午後六時。

一通り学校内の施設の案内は終わった。

そして校門をくぐり、夕日に照らされた道を歩いていた。

もちろん、俺の手は自由になっている。

 

 

「まぁこんな所だ。わかったか?」

「えぇ、感謝いたしますわ」

「んにゃ」

「それでは刃さん、わたくしはここで失礼いたしますわ」

 

 

十字路に差し掛かったあたりで、狂三がぺこりを礼をして、そう言った。

 

 

「あいよ、じゃな」

 

 

俺は小さく手を振って見送った。

 

そしてしばらく歩く。

すると、前方から、ざっ、と、スニーカーの底でアスファルトの道をこするような音が聞こえてきた。

そちらに向く。

そこには、ポニーテールに泣き黒子が特徴的な、琴里と同年代くらいの女の子が驚愕に目を見開きながら立っていた。

 

パーカーにキュロットスカートというラフな格好。

白いスニーカーには血痕。

血痕?

しかも具合から見てまだ新しい。

 

そしてもう一度顔を見る。

あぁ、こいつは……こいつの名は―――

 

崇宮 真那

 

俺の妹、だっけか?

 

 

「に」

 

 

少女が、震える唇を動かした。

 

 

「に?」

 

 

俺は訊き返す。

しかし、少女は答えず、バッとその場からかけ出すと、俺の胸に飛び込んできた。

 

 

「むぅ」

 

 

そのまま身体に手を回し、感極まったようにぎゅぅぅ、と抱き着いてくる。

 

 

「―――兄様……ッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――五河家。

 

 

「おぉ、ここが兄様の今のお家でいやがりますかっ!!」

 

 

五河家のまえにたどり着くなり、真那がポニーテールというのには少し短い髪をブンブンと振りながら、敬語になってんだかなていないんだかわからない言葉を弾ませた。

自称だが、俺の妹、崇宮真那。

路上で突然抱き着いた後、その場にへたり込み、目に涙を浮かべながら、自分がど

れだけ俺に会いたかったかを切々と語りだしたので、ここに連れてきたのだ。

 

 

「む、しかし驚いたぞ。ヤイバにもう一人妹がいるとは……」

 

 

と、十香は真那をまじまじと見つめながら言ってくる。

十香は俺が家に着いた瞬間、見計らったように家から出てきた。

 

 

「まぁな」

 

 

俺は適当に返す。

すると真那が、

 

 

「そうだ十香さんでしたね。単刀直入に訊きます。あなたは兄様とお付き合いしていやがられるのですか?」

 

 

と、十香に問う。

いきなり何訊いてんだこいつ。

 

 

「何言ってんだ?」

 

 

真那が十香に訝しげな目を向ける。

 

 

「……十香さん?兄様とデートなどしやがったことは?」

 

 

と、真那が俺の脇かわ顔を出し、十香に質問をする。

 

 

「おぉ、あるぞ!!」

「……………」

 

 

真那がじとーっとした目で俺を睨んでくる。

そして、真那が頬を染めながら、恐る恐るといった調子で、十香い再度室温をする。

 

 

「十香さん、もしかして、ちゅーも既に……?」

「ちゅー?」

「き、キスのことです」

「ん、したぞ?」

「……っ!!」

 

 

十香があっけらかんと答えると、真那がくわっと目を見開いた。

 

 

「ふ、不潔ですっ!!」

「落ち着け」

「まさか兄様がこんなジゴロになっていようとは……!!真那は悲しいです!!強制です!!矯正が必要です!!」

「ヤイバ、ジゴロとはなんだ?」

 

 

十香がまたも、興味津々といった様子で問いかけてくる。

このまま十香がここに居るのはマズイ。

面倒なことになりそうだ。

 

 

「十香、部屋に戻ってくれ。夕飯をハンバーグにするから」

「わっかたぞ!!」

 

 

俺がそう言うと、十香は目を輝かせて、手を振りながらかけて行った。

 

 

「ヤイバ!!上に目玉焼きもだぞ!!」

 

 

俺は手を振ってその背を見送る。

 

 

「……随分と女性のあしらい方に慣れていやがるようですね」

 

 

真那が半眼を作りながらそう言ってくる。

俺はそれを無視して、五河家の門をくぐる。

そして、玄関を開ける。

 

 

「―――おかえり、おにーちゃん」

 

 

玄関で待ち構えていたのは、私服の琴里だった。

無論、リボンはクロノまんまだった。

あと、なんか知らないけど『おにーちゃん』の部分に力を込めて言ってきた。

どうやら、〈フラクシナス〉で先回りして待機したんだろう。

 

 

「おう、ただいま」

 

 

何か言い知れないプレッシャーが俺を襲う。

今までさまざまな修羅場を経験した俺をここまで……

すさまじいぜ、妹の力は。

だが、これで決定した。

この場が修羅場になることが。

 

琴里はわざとらしく、俺の左隣の真那に視線やってから声を上げる。

 

 

「あら、そちらはどなた?」

 

 

少し威圧感がある声で言う。

迫力満載。

 

 

「ん?えーと―――」

 

 

俺が次の言葉を紡ごうとしたが、続けられなかった。

なぜなら、真那が口をはさんだからだ。

 

 

「お家の方でいらっしゃいやがりますか!?うちの兄様がお世話になっていやがります!!」

 

 

満面の笑みでそう言い、半場無理やり琴里の手を取ってわっしわっしと握手を交わす。

珍しく、琴里が辟易気味に汗を流した。

 

 

「兄様?刃が?」

「はい!!私、崇宮真那と申します!!兄様の妹です!!」

 

 

琴里は鼻から息を吐き出すと、真那の手を払って家の奥を指した。

 

 

「まぁ、とりあえず入って。詳しい話を聞かせてちょうだい」

「はい!!」

 

 

真那が元気よく返事をして、琴里の後についていった。

これからが本当の修羅場だ。

俺も二人のあとを追ってリビングに行く。

 

既に、テーブルにはお茶とお菓子が用意されていた。

そして、向かい合ったソファにはそれぞれ琴里と真那が腰掛けていた。

琴里にあごで示され、真那の隣に腰掛ける。

なんだか三者面談みたいだ。

 

 

「―――さて、と。じゃあ話を聞きたいんだけど」

「はい!!」

 

 

琴里の言葉に、真那が快活に返事をする。

 

 

「真那、っていったかしら。あなたは……自分が刃の妹だっていうのよね?」

「その通りです」

 

 

真那が深々とうなずく。

琴里はチュッパチャプスの棒をピンと立てながら、真那の反応をうかがうように言葉を続けた。

 

 

「私は五河琴里。―――私も、刃のなのだけれど」

「……?」

 

 

琴里の言葉に真那は一瞬首を傾げ、

 

 

「はっ……!!ということはまさか、姉様……!?」

「違うわっ!!」

「あ、これは失礼。―――ごめんね琴里。お姉ちゃんてっきり」

「妹でもないわよ!?」

 

 

琴里が、司令官モードでは珍しく大声を出す。

 

 

「いやはは、てっきり私の記憶にねー姉妹がいやがるのかと思いました」

「まったく……」

 

 

琴里が溜息混じりに頭をかく。

随分とペースを乱されているようだった。

 

 

「しかし……妹、ね」

 

 

琴里が、半眼を作って真那を睨め付ける。

あ、そうだ。

 

 

「おまえのおふくろって今は?」

 

 

もし俺の妹なら知って得いるはずだ。

ガキだった俺をすてた実の母、おふくろをな。

 

 

「さぁ」

 

 

真那は首を傾げると、あっけらかんとした調子でそう言った。

まさか真那も知らないとは……

もしかして真那も捨てられた?

 

すると、俺の表情から施行を推し量ったのか、真那が首を横に振ってくる。

 

 

「あ、ちげーますちげーます。そう言うことじゃなく―――」

 

 

真那は恥ずかしそうに苦笑すると、手元に置かれた紅茶を一口飲んでから言葉をつづけた。

 

 

「私―――実は昔の記憶がすばっとねーんです」

「……なんですって?」

 

 

その言葉に、不審そうな色を濃くしたのは琴里である。

軽く姿勢を直して、真那に向かい、再び唇を開く。

 

 

「昔のって、一体どれくらい?」

「そうですね、ここ二、三年のことは覚えてやがるんですか、それ以前はちょっと」

「二、三年って……じゃあなんで刃が自分の兄だなんてわかるのよ」

 

 

琴里が問うと、真那が胸元から銀色のロケットを取り出し、中に収められている、やたらと色あせた写真を見せてくる。

そこには、幼いころの俺と真那が写っていた。

 

 

「確かに……俺だな」

 

 

俺は驚きの声を上げた。

しかし、琴里は怪訝そうな顔を作る。

 

 

「ちょっと待ってよ。これ、刃が十歳くらいじゃない?その頃にはもううちに来てたはずでしょ?」

「……………」

 

 

そうらしい。

 

 

「そいなのですか?不思議なこともあるものですねぇ」

「不思議って……他人の空似なんしゃないの?確かに……かなり似ているけども」

「いえ、間違いねーです。兄様は兄様です」

「……なんでそう言い切れるのよ」

 

 

琴里が問うと、真那は自信満々に胸をドンと叩いた。

 

 

「そこはそれ、兄妹の絆で!!」

「……………」

 

 

琴里は話にならないといった様子で肩をすくめ、はふぅと息を吐き出した。

真那は感慨深げに目を伏せて言葉を続けた。

 

 

「いや、自分でも驚いていやがるのです。本当にびっくりしました。兄様を見た時、こう、ビビッときたのです」

「何それ、安い一目惚れじゃあるまいし」

「はっ、これは一目惚れでしたか。―――琴里さん、お兄さんを私にください」

「やるかッ!!」

 

 

反射的に叫ぶ琴里。

 

 

「とにかく、よ。そんな薄弱な理由で妹なだんて言われても困るわ。第一、刃はもううちの家族なの。それを今さら連れて行こうでだなんて―――」

「そんなつもりはねーですよ?」

「え?」

 

 

あっけらかんと答えた真那に、琴里が目を丸くする。

 

 

「兄様を家族として受け入れてくれやがったこの家の方々には、感謝の言葉もねーです。兄様が幸せに暮らしているのなら、それだけで真那は満足です」

 

 

そう言って、真那がテーブルを越えて、再び琴里の手を取る。

 

 

「む……」

 

 

琴里が、ばつが悪そうに口をへの字に結ぶ。

 

 

「えぇ。―――ぼんやりとした記憶ではありますが、兄様がどこかへ行ってしまったことだけは覚えています。確かに寂しかったですが、それ以上に、兄様がちゃんと元気でいるかどうかが不安でした。―――だから、今兄様がきちんと生活できていることがわかってとても嬉しいです。こんなに可愛らしい義妹もいやがるようですし」

 

 

そう言って、真那がにっと笑う。

琴里は頬を染め、以後こと悪そうに目をそらした。

 

 

「な、何よ、そんなこと言ったって―――」

「まぁ、もちろん」

 

 

と、琴里の言葉の途中で口を開く。

 

 

「実の妹には敵わねーですけども」

「……………」

 

 

瞬間、ぴきッ、と空気にヒビが入る湯女音が聞こえたような気がした。

 

 

「おいおい……」

 

 

俺は琴里を見る。

完全にキレてた。

 

 

「へぇ……そうかしら?」

「いや、そりゃそーでしょう。血に勝る縁はねーですから」

「でも、遠い親戚より近くの他人とも言うわよね」

 

 

琴里が言った瞬間、今度は終始にこやかだった真那のこめかみがぴくりと動いた。

そして一拍おいたあと、真那が琴里の手を離し、テーブルに手を突く。

 

 

「いやっはっは……でもまぁほら?やっぱり最後の最後は、血を分けた妹に落ち着きやがるというか。三つ子の魂百までって言いやがりますし」

「……ぐ。ふ、ふん。でもあれよね、義理であろうと、なんだかんだで一緒の時間を長く過ごしているのって大きいわよね」

「いやいや、でも結局他人ですし。その点実妹は血縁ですからね。血を分けてますからね!!まず妹指数の基準値が段違いですからね!!」

 

 

真那が高らかに叫ぶ。

妹指数。

わかります。

 

しかし、琴里は疑問を差し挟むふうもなく言葉を返す。

 

 

「血縁血縁って、他に言うことはないの?義理だろうが何だろうが、こっちは十年以上妹やってんのよ!!どっちが妹指数高いかだなんて明白でしょうが!!」

「笑止!!幼い頃に引き裂かれた兄妹が、時を越えて再開する!!感動的じゃねーですか!!真の絆の前には、時間など関係ねーのですよ!!」

「うっさい!!血縁がナンボのもんよ!!実妹じゃ結婚だってできないじゃない!!」

「「え……?」」

 

 

俺と真那の声がハモる。

結婚?

 

琴里はハッと目を見開くと、頬を真っ赤に染め、誤魔化すようにテーブルを叩いた。

 

 

「と、とにかくよ!!今の妹は私なの!!」

「何を!!実の妹の方がつえーに決まっていやがります!!」

「強いって何よ、関係ないじゃない!!」

「落ち着け」

 

 

俺が二人をなだめようとすると、琴里と真那が同時にバッ!!と俺に顔を向けてきた。

 

 

「刃、あなたは!!」

「実妹、義妹、どっち派でいやがるのですか!?」

「うーん……」

 

 

考え込む。

琴里と真那が、じーっと見つめてくる。

どちらを選んでもろくなことにはならないな。

そうだ、話を変えよう。

 

 

「真那、おまえ昔の記憶がないって言ったな」

「えぇ、そうですが」

「今どこに住んでいるんだ?家族と暮らしているってわけでもないんだろ?」

「あー……っと」

 

 

ここで初めて、ハキハキとした受け答えをしていた真那が口を濁した。

 

 

「ま、まぁ、ちょっと、いろいろありやがるんです」

「いろいろ、ねぇ……」

「えーと……ですね。こう特殊な全寮制の職場で働いているというか……」

「おまえもう働いているのか?琴里と同じくらいなのに?学校はどうした?」

 

 

琴里は秘匿組織の司令官をやっているんだが、ちゃんと学校にも行っている。

真那は気まずそうに目を泳がせた。

 

 

「そ、その……えーと……ま、またお邪魔しますっ!!」

「最後に一つ!!」

 

 

駆けだすとした真那が止まる。

そして真那も耳元で一言。

 

 

「DEMからは引け。さもないと身を滅ぼすぞ」

「な、なぜそれを兄様が」

「じゃあな」

 

 

俺は有無を言わさずに帰らせる。

 

俺は真那のティーカップを回収している琴里に声をかける。

 

 

「DNA検査のついでにさ」

「何よ?」

「DEMについて調べてくれ」

「な、なんで刃がDEMを知っているのよ!!」

「真那がそこの社員だ」

「だから、なんでそんなことを知っているのよ!!」

「真那の身体からは魔力処理の痕跡が感じ取れた。ASTではまずこんなことはしないなら残るは?」

「DEMねぇ……わかったわ。調べてみるわ」

「頼む」

 

 

秘密にASTが行っているという可能性がないとは言い切れない。

他の国でやっているのかもしれない。

だが、それはないだろう。

そしたら残るは、顕現装置を我が物にしているDEM以外は考えられない。

 

さて、どんな結果がでるかな?

 

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